地下室にはあまり物はない/真ん中に大きな机がある。
彼はそれに近づき、「ロスマンとアンジェラはここに座っててくれ」と言って二人を待たせた。持っている武器も机に立てかけていく。
ひとつの部屋から、巻いた地図を持ってくる最中、ロスマンとアンジェラは会話を盛り上げていた。
すでに自己紹介は終わったようだ。ヒスパニア人にしては真面目なアンジェラを、ロスマンは気に入ったようである。
伶実が二人の前に地図を広げた。
少女達の視線が地図に移る。
地図には赤い×印が幾多かあり、一番大きな物は港に書かれていた。
×を指差して説明していく。
「これは、三日間の間に俺が調べた範囲にいる大型ネウロイの居場所だ」
彼の言葉に、ロスマンが目を見開いた。彼女自身その情報が如何に大切か解っている。
アンジェラは見た事があるのだろう。動じずに地図を観察していた。
ロスマンは穴があくほどに見続け、「これの信憑性は?」と問う。
それに対して伶実は困ったように頭を掻いた。
「大型とはいえ動くからな。ただ、」
港の方にある大きな×印を指さす。
「こいつは動かないと思う。一番大きい要塞みたいなネウロイだったからな」
言外にネウロイの主だと言ったのを、ロスマンは理解する。
「是が非でも持って帰りたい情報ね」
「安全な場所に避難するのは危険だ」
アンジェラの視線の先には、一か所の×印があった。
避難先である後方と、今いる地下室を結ぶ。その印が重なる。
伶実がその×印を指で押した。
「こいつを倒さないと避難できそうにないな」
「だが、我々には倒せるほどの武器はない」
アンジェラがため息をつく。
ロスマンがおずおずと口を挟んだ。
「そんなに?」
「武器として使えそうなのは、俺が持っているのだけなんだ」
横にあるクレイモアを指差す。
さすがの彼も大型ネウロイに対して、銃器もなく突っ込む気にはなれないようだ。
食料の補給は難しい/武器もない――詰みの段階である。
最悪の状況になりかけていると、ロスマンが結論に至りそうになる。
その前に伶実の声が、思考している脳に突き刺さった。
「ロスマン。軍の哨戒経路と時刻は知っているか? 知ってるなら教えてほしい」
彼は懐からペンを取り出して、ロスマンに向けた。
「え? ええ」
急な質問に戸惑いつつも、彼女は頷きペンを受け取る。そして地図に哨戒する時の軌道を描く。
その場所は、いまいる所からそれほど遠くなかった。間に大型ネウロイが居る×印もない。
「時間は……」
一度悩むように間を開けた。裾の下にある腕時計を見て、地図に時間を書く。時間は明け方になるような時間帯だった。
「でもここで救助してもらうのは無理よ。上からだと家やビルで一杯で、人なんて見えないもの」
地図上では確かに住宅が密集している。上空からでは、人間は見つかりにくいだろう。
「俺が君達二人を持ち上げて、上空で哨戒と合流すればよくないか?」
「少々危険ではないか? 煙で発見してもらった方が」
「それでは、ネウロイを呼び寄せてしまうかもしれないわね」
アンジェラの意見に対して、ロスマンが危惧を示す。
「伶実が私達を抱いたままの場合、ネウロイに襲われた時のリスクが高いはずだ」
「だが、君達二人を地面に置いたままの状況だと、それこそネウロイに襲われたとき何もできないだろう」
ロスマンは苦々しそうな表情を浮かべるが、伶実の意見に頷く。アンジェラも不満そうながら、反対意見を出すことはなかった。
彼の言う通りだったからだ。アンジェラはウィッチだし、ロスマンは軍属の機械化航空歩兵(ストライクウィッチーズ)ではある。しかし、ここにあるのは壊れたストライカーユニットしかない。
破損している飛行脚に、アンジェラの視線が移動する。
「それは使えないか?」
「駄目ね。先程確かめたけど、エンジンが壊れているから、修理しないと動かないの」
首を振りつつロスマンが、アンジェラの意見にこたえる。
ストライカーユニットがないウィッチは、よほどの訓練と才能がないかぎり無力だ。シールド程度は貼れるが、それだけだ。浮遊は難しく、逃げるすべがない。さらに言えば今の状況では銃器がない。
将来エースになる素養を持つ二人ではあるが、今現在その実力を発揮できる状況ではない。
「銃がないのが痛い」
「避難する時に、殆ど持ってかれたみたいだ」
「私のは、墜落するときに落としてしまったから」
議論していた三人の間に沈黙が落ちる。伶実がロスマンの方を見た。アンジェラも彼女の方に視線を向ける。
二人とも軍属であるロスマンの意見を尊重する構えだ。
ロスマンは一度悩むように目をつぶる。直ぐに開けて、
「アカマツのいう通りにしましょう。住宅地の逃げにくい場所で、戦えるレミが居ない状況の方が危険よ」
彼女は淡々とした声で、意見を述べていく。
「空中だったらネウロイと哨戒、どちらの発見も簡単。ネウロイだったらすぐに地面に逃げきればいいし」
ロスマンの説明が終わる。彼女の視線が、伶実とアンジェラ、両方を行き来する。
二人とも文句はない様だ。静かに頷く。
「それじゃあ、夜中の内にここを出て、明け方には」哨戒地点を指で示す「ここに着くようにしましょう」
ロスマンの言葉が議論を締めくくるのだった。
缶詰や保存食での夕食を終えて、各々の部屋に分かれた怜美達。
伶実は一人ベットで横になっていた/空腹を訴える腹を無視しながら。
一度の作戦でうまくいくと思うほど、彼は楽観的になれなかった。食料も残り少なく、補給のめどはない。能力の関係上、大食漢である彼の腹を満たす程、食べまくるわけにはいかなかった。
男にはないはずの魔力の所為か、固有能力の為のどちらかだろう。伶実は魔力を使うと、食事量が多くなる。
食べないからと言って、魔力が回復しなくなるわけではない。しかし全体的な量は少なくなる、厄介なところがあった。
とはいえ、今の状況で危惧するほど減ってはいない。
何日も戦い続けて、満足に食事が得られない。そんな過酷な環境でもない限り、魔力がなくなる事はないだろう。
だからこそ、明日の状況は万全に近い。彼が空腹を我慢するだけで済む。
寝れば気にならなくなる/明日作戦時間も早いことだしすぐ眠るべき。
伶実はそれを解っている/起きて待っていた――ある少女を待っているからだ。
食事のあと、部屋で別れるときに、秋波を送ってきた灰色がかった髪の少女の事を。
部屋のドアが静かに開く。しずしずと部屋の中に、背の低いロスマンが入って来た。
後ろ手でドアを押して、部屋を進んでいく。ドアには軽い隙間が残っている。
「少しいいかしら」
ロスマンの問いに、伶実は頷く。
彼女を近くにある椅子に座るよう促しつつ、「どうかしたか?」待っていたことをおくびにも出さずに、問いを発した。
「ええっとね。明日の作戦の事なんだけど」
顔を薄ピンク色に上気させながら、口を開く。
彼女の
明日の作戦の時、ネウロイに空中で会うかもしれない。
そのとき、二人を支えるために両手がふさがる赤松の代わりにシールドを張れる人が必要である。
ロスマンがそれをしたいが、今日の戦闘で魔力を大量に使った。
念のために、体液による魔力供給を行って起きたい。
彼の体液には、大量の魔力が溶け込んでいるため、摂取するだけで魔力量が回復するのだ。摂取するときに魔力が体内に移るために、疑似的な快楽を得ることもできる。
彼女は《両者を》体で理解していた。
ロスマンの話を聞き終わり、伶実は確かにその通りと頷く。
「ごめんさい。傷は治るとはいえ、痛みはあるのに」
「いや、いい。少し待ってくれ」
一度立ち上がり、近くに立てかけてあったクレイモアに近づく。刃に人差し指を擦りつけて、軽く切る。
切り傷からじわりと血が染み出す。
ロスマンに近づき、その指を顔の前に向けた。
「ぁっ」
染み出す血と匂いを嗅いだ彼女は、擦れた吐息を漏らした。濡れた瞳が、傷口を凝視する。
血から拡散した魔力が、飢えたロスマンの欲望を刺激していた。
餌を待つ鳥のように、口を開く。
伶実はその中に、血が出ている指を無理やり突っ込んだ。
「んうっ」
口への急な挿入に、ロスマンが抗議しようと、伶実に視線を向けた。
彼はじっとロスマンを見返す/覗き込む――上から睥睨するような、鋭い視線。
その間に彼女の下へ血が流れ落ちた。
その瞬間、ロスマンの背中が軽く震える。釣り上がった目が解けて濡れだす。
薄桃色に輝く唇と舌が、伶実の人差し指に絡みつく。熱く湿った少女の粘膜が、傷口を溶かすかのように舐る。
「んふぅ。んちゅ」
指を夢中になって舐めしゃぶる。
その様子をただじっと観察していた伶実は、突然ロスマンの口へ、舐められている指と同じ手の中指と親指を突っ込んだ。
「んんんっ」
再度の乱暴なしぐさに、何か言おうとしたのだろう。ロスマンは指を口から抜こうとする。
その瞬間、「続けろ」と伶実が冷酷な口調で発した。同時に三本の指で舌を掴む。
ぞわりとした痺れが、ロスマンの背筋を襲う。彼女の潤んだ瞳が、伶実の目線と交わる。力強い視線がロスマンを貫く。
その瞬間、ただ舐めるようだった舌使いが、奉仕するかのように変わる。
ただ傷口を舐めるだけだった口淫も、指全体を溶かすかのように淫靡となった。
彼女の様子を満足げに頷くと、中指と親指を動かす。
両指とも、口の中を愛撫するように激しく撫でこする。
口の中で指が動くことによる息苦しさ/快楽。乱暴に動かされる嫌悪/背徳感。口内で充満する血と男の匂い/興奮。
それらすべてがロスマンの体全体を走る快感となって子宮にたまっていく。下腹部が熱を持ちズボンが湿りだすのが、彼女のぼやけだす思考でも解っていた。
「んっぶっ。れろっ。んちゅ」
それでも指への奉仕を辞めることはない。ロスマンの目を見つめてくる、伶実の視線が奉仕を強要していた。
心の何処かで彼の要求に答えるのが喜びとなっているのを感じながら、彼女はただ指への口淫を続けていく。
「れろっ。ちゅぱ。ん、はぁっ」
指先にある爪の間に舌先を押し入れて動かす。
彼女の口内でうごめく舌が生み出す甘美な刺激を、伶実は楽しんでいる。
ロスマンの軍服のすそから見えるズボンのシミが、広がっていくのもしっかりと観察していた。
扉の向こうから覗く視線も解っていた。誰なのかなど解り切っている。一人しかいないのだから。
濡れぼったシミから液体が落ちる前に、彼は終わらせることにしたようだ。
彼女の口内で動かしてた指で、舌を思いっきり掴む。
彼の媚薬のような血が塗れた粘膜には、一番の攻撃だ。
舌から押しつぶされる痛みと痺れるような悦楽がロスマンを襲った。
「ふぇっ、ぁあああ!」
甘美な陶酔のうねりが体全体に吹き上がり、エクスタシーの声をあげさせた。
その様子をロスマンの瞳から目をそらさずに、伶実がじっと見続けている。
アクメの大波が過ぎ去り、ロスマンの脳内が正常な思考に戻っていく。
覗き込むような伶実の視線を受けて彼女は、(囚われてしまったのかもしれない)と感じた。
ロスマンの愉悦の震えが収まると、伶実は口から指を引き抜く。
唾液にまみれた指を見て、「これ以上は安全な場所に行ってからにしようか? ロスマン」満足げに言葉を発した。その瞬間、ドアから人の気配が失せていく事を確認している。
彼の発言の意味をしっかりと認識したロスマンはじっと見つめ返しながら申し出た。
「名前で呼んで頂戴」
「了解。エディータ」
彼女の提案を頷いて、伶実は答える。
ロスマンも嬉しそうに微笑むと、ドアの方に向き直り進む。
彼女が扉を開いて出ようとする=振り返って、「考えておくわ」と言い放ち部屋から出て行った。
誰もいなくなった部屋の中で、伶実は部屋のドアをぼんやりと見つめ、
「これでいい。俺の価値は上がる」
言葉少なく発言するのだった。
ちょっとしたエロス/指ちゅぱでどこまでエロくできるか。
スト魔女はどこまでするかちょっと迷いますね。