※この作品はR-18です。

Hexe Serail   作:ニュービー・オムラ

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ヒスパニア戦役編5話

次の日。手早く拠点からでた三人/幸運にも、ネウロイに会うことなく目的地点にいた。

紐を持っているロスマンが時計を見る。哨戒まで後数分。そろそろ空に上がらないと、 間に合わないかもしれなかった。

 

「エディータ、時間か?」

 

隣にいた伶実/女の時計盤を覗きこむ。

 

「ええ、そろそろね」

 

若干顔を紅潮させたロスマン/彼の言葉にたいしてうなずいた。

それを見た伶実/かすかな笑みを浮かべる/もう一方の隣にいたアンジェラに視線を送る。

 

「アンジェラ、時間みたいだ」

「……解った」

彼の言葉にたいして、いささか不機嫌そうに、アンジェラは返答した。

彼女が不機嫌な理由/察知しつつ無視/伶実は一歩前に出た――その顔はやはり愉しそうに笑っていた。

アンジェラが自身の後ろに移動する/彼は乗りやすいように腰を下ろす。

彼女はその背中に抱きつくように乗った。

背中に当たる胸の柔らかさを楽しみつつ、伶実は彼女を支えながら立ち上がる

 

(おおきい)

 

 骨組みのがっちりした背中/引き締まった筋肉/黒板のように広い背中=男らしさ。それを感じて/昨日の事を思い出して――アンジェラの体温が上がっていた。彼女の心拍数が上がる/感じたことのない痺れるような快感/初めてのことに対する困惑――静めるために抱きつく腕の力を強めた。

 

「エディータ、頼む」

 

 隣で紐を準備していたロスマンに声をかけた。彼女は首を縦に降り、訓練を思い出しながら、アンジェラと伶実を紐で固定していく。

 

「これで大丈夫」

 

 ロスマンの力強い断言を受けて、伶実がアンジェラを支える手を離した。

 がちがちに固まった紐が、アンジェラをしっかりと支えている。

 伶実が目線を後ろにやり、背中に乗るアンジェラに声をかけた。

 

「どうかな」

「こちらに対する負担は一切ない」

 

 赤い顔の熱を振り払うように、アンジェラが首を横に降る。

 彼女の言葉を聞いて、伶実が笑みを浮かべて頷く。

 視線を前に戻すと、「エディータ」とロスマンを呼びつけた。

 ロスマンが彼の言葉に答える/目の前まで動いた。

 伶実は彼女を優しく横抱きにする。

 彼の腕に身を預けながらも、自身の体を紐で固定していく。意図的にか無意識にか、かなりきつく縛っている。その為彼女自身が伶実の胸に抱きつく様になっていた。

 筋ばった厚い胸板/タイヤのように固くしまった筋肉/力強さを感じる太い腕=雄のたくましさ。

 女性では感じられない物も感じて、ロスマンの体に甘い疼きが走る。吐く息が熱を持ち、心臓の鼓動が早まる。

 偶然にもアンジェラとロスマンは、頭を冷やそうとして、同時に深く呼吸する=男の体臭/雄のフェルモン――二人の体内に侵略。身体中に、甘美な痺れが走る。

 双方ともに、口を固く閉じ、嬌声が流れないようにした。

 伶実は後々の楽(・)し(・)む(・)為(・)の布石として、彼女達の様子を把握しつつも無視する。

 

「飛ぶぞ」

 

 彼の声かけに、アンジェラとロスマンはただ頷いた。彼女達の肯定を受けて、伶実に猫科の耳と尻尾が生える。荷物になるものはすべて置いていくようだ。

 足元に小さな扶桑式の魔方陣が現れて、彼等の体が浮遊していく。そのスピードは遅く、風船が浮いていくようだった。

 この状態でネウロイに襲われたら、確実に皆殺しになるだろう。だからこそ、三人とも回りを目を皿のようにして、見渡している。

 数分かけて上空10,000mまで上がり、哨戒の時間まで待機。

 しかし、予定時刻になっても、哨戒の部隊は現れなかった。さらに数分待つが、まだ姿形もない。

 

「カールスラント人は時間厳守が特色だったはずだが?」

「予定はあくまでも予定よ」アンジェラの皮肉げな言い回しに、ロスマンは余裕をもって答える。

「扶桑の列車だったら、車長がケジメとして指を落とされる案件だ」

「なんだ、それは!」

「扶桑怖いわね!」

 

 伶実の真面目な顔から出た意見に、二人の少女の顔が青くなる。

 

「冗談、冗談だとも」

 

 伶実は笑みを浮かべながら、真相をあかした。

 

「そ、そうよね。いくら扶桑でもそこまで厳しくないわよね」

 

 ロスマンは安堵のため息を吐いた。アンジェラも、彼の後ろで、ほっと息を吐いている。

 伶実のウィットに富んだジョークで、彼女達の力みも程よく抜けたようだ。

 その後も警戒を解くことなく、くっつきながら飛び続けていく。

 数分後、アンジェラの瞳が何らかの影を捉えた。

 

「あっちの方向から来ている!」

 

 影の方向を指差す/ロスマンと伶実の視線が動く――二人の目に映る。

 伶実はすぐに動けるように魔法に意識を向けた。

 ロスマンとアンジェラが、しっかりと見やる。

 緊張/期待と不安――三人の心臓が高鳴る。

 段々と大きくなる影/目を凝らしてみている二人――人の形をしている。

 

「ウィッチだ! 哨戒が来たぞ」

 

 アンジェラが声を上げて喜ぶ/助けが来た。

 ロスマンも顔がほころんでいる/手が動かせるため、大きく横に振る。

 彼女達も怜美達に気付いたようだ。飛んでいるスピードを上げて近づいてくる。

 直ぐに哨戒のウィッチ達の姿がくっきりと見え出す。

 片方は腰まで届く黒いロングヘアー/白い猫耳に長い尻尾/厚いジャケットに長ズボン――この世界には珍しいかなりの厚着。

 そのパートナーは白髪のレイザーカット/トレンチコートをだらしなく着ている/茶色い犬耳に尻尾。

 彼女達の後ろをカメラを構えたウィッチが追随している。

 

「ロスマン軍曹だ。無事のようだな」

「しかし、隊長。あれは誰が支えて浮いているのでしょう?」

 

 嬉しそうな厚着の少女に、トレンチコートを着た部下が疑問を投げ掛けた。

 彼女の言葉を聞いた三人が、怜美達を訝し気に見ていた。

 伶実達がユニットも無しにどうして浮いているのか、わからないからだろう。

 観察力のある従軍記者のウィッチが、伶実の足元にある魔方陣を見つけた。

 

「もしかして!」

 

 カメラでしっかりと三人を撮影/男が空を飛んでいる――世界初である男の魔女の発見に興奮。

 

「ガランド中尉!ボニン少尉!男です!男が魔方陣で空を飛んでいます!」

 

 大声で報告/伶実の足元を指差す。

 

「なんだって」「なんだと」

 

 二人同時に指の先へ視線を動かす。伶実の足先から扶桑式の魔方陣が出現しているのを発見。

 ガランド中尉と呼ばれた厚着の少女は、足先の魔方陣と伶実の精悍な面を何度も往復。部下のボニン少尉は、驚きのあまり目を白黒させていた。

 その間に、伶実達の前まで移動した。記者は何度も引っ付いている三人の姿を写真に撮っている。

 

「ガランド中尉。ボニン少尉。こんな格好で申し訳ありません」ロスマン軍曹が、お姫様抱っこのまま上官である二人に頭を下げた。

 

「いや、無事でよかった」

 

 部下が健在であったことにガランド中尉の顔に喜色が現れる。だが、隣のボニン少尉は伶実の顔に視線を合わせていた。記者もボニンも中尉をたててただ黙っている。

ガランド中尉も好奇心を抑えきれない様子で、伶実の顔に視線を移す。

 

「それで、君は?」

「どうも、レミ=アカマツだ。後ろの彼女は」

 

 顎で後ろを示す。

 アンジェラが幾分緊張した面持ちで口を開いた。

 

「アンジェラ・ララサーバルです」

 

 二人の自己紹介のあと、

「二人共に避難先までの保護を願い出てます」

とロスマンが説明した。

 

 ガランドは伶実から視線をはずさずに、

「それは良いのだが……」

と淀んだ答えを返した。

 

 何を聞きたいのか察した伶実が、口を開ける。

 

「彼女達を支えてるのは、俺の固有魔法だ」

 

 自身が魔法を使えることを告白した。

 一度ガランドがボニンへ目線を会わせる。

 ボニンは少々後ろに下がる。どこかへ報告しているようで、ぼそぼそと小声でしゃべりだす。

 前に出たガランドが、伶実へ話しかけた。

 

「部下を助けてくれたようだね。礼を言うよ」

 

 彼女の礼に対して、伶実は軽く頭を下げることで答える。

 そして申し訳なさそうに、口を開いた。

 

「申し訳ないが、できるだけ早めに避難できないか?浮遊するための魔力が少なくなってきているんだ」

 

 自身の魔力事情/嘘――申し出る。

 一瞬ガランドは困った様に顔を掻く。後ろにいるボニンへ視線で問う。

 その視線を受けたボニンは、黙って頷いた。

 伶実に顔を向け直したガランドは、「解った。今直ぐ移動しよう」と言い、先導していく。

 守るように彼等の横に移動したボニンが、「我々カールスラント軍が安全な場所まで保護しよう」と申し出るのだった。




 この小説は、男と女じゃなくて雄と雌という風に書いてます。
 その為、ある程度の差別的な表現があるかもしれません。気に障ったら申し訳ありません。
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