あと、今回もしかしたら差別的と感じる表現があるかもしれません。ご注意ください。
夜になった。伶実はずっと本を読んでいたようだ。部屋に有ったほぼ全てを読みつくし、最後の一冊は手の中にあった。
その残り少ないページを捲ろうとする=ドアをノックする音が聞こえた。
音源に向かって応答をする。
扉が開く。中に入ってくるのは、――アドルフィーネ・ガランド中尉だ。
「やあ、赤松君。一緒に夕食でもどうかな?」
男装の麗人からの誘い文句に、伶実は笑って了承する。
許しを受けたガランドは、扉を大きく開けた。彼女の隣に、大量の食事が乗るサービスワゴンが引かれていく。
「ロスマン軍曹から報告があってね。」
彼女は約束を守ってくれたようだ。沢山の料理が伶実に向かって運ばれていく。簡素な机の上に、料理がおかれ食事の用意が整う。隣のサービスワゴンには、まだまだ料理が残っている。
食事が始まると、机の上にある料理が蹂躙されていく。
山盛りになっている、熱々のベーコン/茹でたてのウインナー/蒸気の上がるマッシュポテト――全てがあっという間に、空の皿に変わっていく。
余りの様子に、ガランドは丸く口を開いていた。
一口で消えたりしているのではない。素早くナイフとフォークを駆使して、料理を平らげていく。
豪快ではあるが野卑ではない。育ちのよさが現れている。
立派な雄を想わせる食事風景に、女として感じるものがあるのだろう。ガランドの口から熱を持った吐息が零れた。
その間にも、伶実の食事は進んでいく。口直しのザワークラフトを食べ終え、デザートであるアイアシェッケを解体していく。
それもすぐに終わり、食後のビールと相成った。二人ともビールを飲む。静かな空気が二人の間に落ちる。
「それで?わざわざ食事を一緒にする為だけに来たとは思えないのだが?」
伶実が切り込んだ。ガランドが涼しげな表情のまま、懐から新聞を取り出す。
「先程回ってきた新聞だよ」
号外/魔方陣で浮かんでいる写真/初の男のウィッチ/扶桑人/カールスラント軍が保護――伶実の事が書かれている。
「よく撮れてる」
「白々しいことを」
ガランドは笑みを浮かべたまま、皮肉を述べた。
伶実はあえて何も言わずに、ビールを飲んでいく。
日本の物とは違い、冷えてない。その分濃厚な味わいが舌を直撃した。ごくりと喉を鳴らせば、爽やかなコクが胃に流れていくのが解る。
一気に飲んでは勿体無い程のビールの様だ。伶実が一口ずつ喉を鳴らして飲んでいく。
彼はガランドが何かを言うのを待っていた。厚着の女もそれを理解している。
その為彼女は仕方なく口を開いた。
「上層部にはこってり絞られたよ。これで君を秘密利に運び出すわけにはいかなくなったからね」
「それは御愁傷様」
恨めしそうに男を見詰めながら、ガランドの話は続く。
「すでに関係各所からの電話がひっきりなしだそうだ。扶桑はまだだけど、ヒスパニアにブリタニア。ロマーニャからまで来ている」
刺さりそうなほど強い視線を、男はビールを口にしながら、受け流していた。
話を聞いて伶実の脳が、素早く回り始める。
実のところ彼にとって今の状況は最善に近い。父親所縁のカールスラント軍/新聞に乗れた/保護した軍以外にも身柄を欲している=すでに牽制会いが始まっている――――今世界で一番有名人。
これでもしも、ただ何もせず保護されていたら……。カールスラント軍/家族なし/扶桑ではすでに死んだ扱い/かなり特異な固有魔法/誰も魔力のことを知らない――――どう考えても人体実験まっしぐら=マッドの被検体。そんな未来しかなかったのである。
しかし今は彼は世界から注目の的である。いずれ扶桑に返さないといけないが、それまでにある程度の既成事実を整えたい。どこもそう考えている。
扶桑が介入にして来ない、今がチャンスなのだ。
そして一番有利なのは、ご存知カールスラント軍である。彼曰く父親所縁であり、保護しているため簡単に協力を得られる。
そう今ガランドの最優先目標は、伶実の協力を得ることである。
(私はただのウィッチなのだが)
大いに悩むガランドだが、彼女にとっても大きなチャンスである。
世界に一人しかいない男のウィッチから協力を得れば、ガランドにとっても大きな貢献になる。出世のための大きな一歩である事は間違いない。
つまるところ、彼女がすべきことはどうやって今一番ホットなこの男。世界初の男のウィッチ=ロスマンからの報告/特異な固有魔法持ち――赤松伶実の協力を得るか。ただそれだけの事だった。
二人の間に沈黙の幕が落ちる。その幕を破り捨てたのは、意外にも伶実からだ。
「俺は面倒が嫌いなんだ。単刀直入に言わせてもらう。カールスラントに協力はする。無論見返りは貰うが」
「……ふむ」
男の言葉に対して、ガランドは特に表情を変えずにいた。ボーカーフェイスの裏では、かなりほっとしていたが。後は上と彼の話だ。彼女にはそこまで関係ない。明日辺りに上官との話し合いになるだろう。
だが、ガランドとしては少しもやっと来るものがあるようだ。絶対に協力させろとのことだったので
女を安売りする気はないだろう。しかし、まるで興味がないという風にされるのも、それはそれで傷つくものなのである。
だから彼女にとってはちょっとした意趣返しのつもりだった。
「必要ない。君をカールスラントへ強制的につれていく、と言ったらどうする?」
男装の麗人からの脅しに、伶実の眉が一瞬動く。ビールを机において、彼の口が動き出す。
「それはない。もし今、俺を強制移送すれば周りから袋叩きに会う」
カールスラントは今他の国々から、伶実に対する追求が激しい。そんな中で、そんな奴はいない等と返せば、吊し上げは免れないのだ。
簡単に交わした伶実に対して、ガランドは残念そうにため息を吐いた。
「その通り。上官に君の申し出を言えば、明日には交渉の席が仕上がるよ」
「それはよかった」
彼女の台詞に頷くと伶実は椅子から立ち上がる。そのまま女の隣に立つ。
「?なんだい?」
不思議そうに見上げてくる、男装の麗人の手を無遠慮に掴んだ。
そのまま振り回すように引っ張る。
ガランドの体が、容易く浮く。女はベットに叩きつけられる。何かを言おうとした口は左手で/反撃しようとした両手は右手で――押さえつけられた。
「一つ教えよう。ガランド中尉」
足で蹴ろうにも伶実は股の間に入り込んでいる。
「男の部屋で二人っきりでお酒を飲む。まぁ、良くはないがいいとしよう」
叫ぼうにも、太い指が口元を押さえ込まれていた。
「だが、その上で挑発なんかしたらいけない。こうやって襲われても文句言えない」
瞳の奥を覗き込む勢いで、伶実とガランドの顔が近い。
今すぐ魔力を行使すれば、女はのしかかる男を弾き飛ばすことができる。そうなればまずいのは伶実だ。ウィッチを押し倒した=弱味を握れる。
しかし、ガランドはそんなことすら頭に浮かばなかった。
自身を拘束する太い指/腕の力強さ/襲いかかる屈強さ。男と女=雄と雌=牡と牝。
その違いを彼女は肌で感じ、思考を巡らす余裕すらない――逞しい雄に圧倒されていた。
本能で解り、女の奥底に小さな熱が燃え出す。
伶実の顔が真正面から近づいてきて、思わず彼女は目を瞑る。その後すぐに、圧し掛かる重さが消え、拘束感が無くなった=目を開ければ離れた椅子で、伶実がビールを飲みなおしている。
「まぁ今後は気を付けることだ」
ビールを口にしながらの忠告。完全に弄ばれたのだ。ガランドの頭に血が上る=顔がトマトのように真っ赤になった。
彼女が何かを言おうと口を開く/伶実が先に言葉を向けた。
「さっきの意趣返しみたいなものだ。お相子だろう?」
先制された台詞に、厚着の女は幸先を防がれた様に、口を閉ざした。
赤い顔を冷やすためだろう。足早に部屋から去っていく。扉を閉めるときにかなり重たい口調で、「覚えているがいい」といった/伶実は小さな笑みを浮かべて受け流していく。
扉を閉めてガランドは廊下を速足で歩んでいく。途中彼女の自室に入った。熱に浮かれた脳みそを冷やすためだろう。
扉を閉める。女は胸をぎゅっと握りしめて、すとんと腰を落とした。
片手の人差し指で薄ピンク色の唇に触れる=触れた太い指の体温を思い出すかのようだ。
体を両手で抱きしめて撫でさする=圧し掛かれた時の重さ/服の通しても解る筋肉質な体/抑えつくる時の膂力――正しく性の違いを実感したのだ。
その時体中を走った甘い疼き/危険なパルス信号/熱を持った昂奮――忘れようと、何度も体中を擦り合わせるのだった。
同じころ、ロスマンは一人自室で寝返りを売っていた。
彼女以外誰もつかってない余り部屋。そこで彼女は眠っている。
掛け布団の中でもぞもぞと女は動いていた。
「んっぅ」
体中を走る微弱な熱がロスマンを眠らせない。
いくら動いても振り払えなかった。とろとろと煮込むように、奥底からあふれ出す熱さ。
それは伶実の体を思い出すたびに、増していく。
「あれが男の人の体」
支えてくる屈強な腕/筋肉質な胸/巨木のような男の匂い――全てが女とは違うのだ。
それと共に浮かび上がってくる物がある。昨晩の夜感じた体中を走る甘美な刺激。
「駄目。いけないのに」
ロスマンの指が、ネグリジェに隠された自身の雌の部分に触れる。
膨れだしたばかりの小さな胸/先端の赤い突起物/股間にある淫花――刺激していく彼女の細い指。
体中を快楽の電撃が走る。しかし、物足りなさすら感じていた。
昨日の夜。触れてきた太い指をロスマンは思い出す。溶けそうな熱を持つ=力溢れる指。
「駄目よ。男に抱かれるなんて。思ってはいけないこと」
ウィッチは、処女を貫かれると魔力を失うのだ。だからこそ背徳感交じりの悦楽が、女の体中をかき乱していく。
「あっ、くぅ……ふっ、ぅん」
段々体を弄るロスマンの運動が激しくなっていく。
胸をこね先端の突起を潰す。
「ああっ、いっぅ……うぅ」
股間にある雌の唇を擦り上げる。
「あ、ぐぅっ……うんんっ」
恍惚に濡れた瞳が、ある男の影を追い求める。彼女の雌を刺激した男の姿。
「あっぁ……伶実」
ぼそりと名前を呟く。さらに強くなった快楽の津波が、ロスマンの理性を押し流した。
「うっぁ……そこ駄目」
女の淫花の上を右手が、中に入ってしまいそうなほど激しく動く。
左手はいつの間にかお尻の方に移っていた。そこなら大丈夫である、とウィッチの本能が囁くのだ。
尻の割れ目の奥にある蕾を、ロスマンの左手が刺激していく。
「駄目よぅ……そこ駄目だってばぁ、っぅんっ」
逞しい男の影を脳裏に映し、体中を悦楽の海に捧げている。
ウィッチになって軍に入って以来、今ほど激しい自慰はロスマンにとって初めての事だった。
それ程強烈な刺激を味合わせた男の目を彼女は思い出していく。
獲物を狩る獣のような瞳/上から見下ろすような鋭い視線/しびれるような命令口調――女を疼かせるものが確かにあった。
最後に伶実の指で舌を弄り回されたことすら、ロスマンの脳に浮かんでいった。
淫花の上にある桃色の突起を指で押しつぶす。そして後ろの蕾に深く押す。
エクスタシーの津波が、彼女の思考を洗い流していく。
「はっぁあ、いっぅっくぅっっ」
彼女の背筋を快感が駆け上り、体中を痙攣させた。激しい悦楽に身を任せていく。
数分もしないうちに彼女の快楽の電流が収まっていった。
アクメの余韻に浸りつつも、彼女の思考は色々な感情でぐちゃぐちゃになっていった。
「駄目に決まってるでしょう。馬鹿な女ね」
心臓を締め付けられるような切なさ/すべてを投げ出したくなるやるせなさ/何より胸を焼きそうな何か――全てが混ぜこぜになった黒い情動が、ロスマンの心を埋め尽くすのだった。
ウィッチはすべてアナニストであるべきそうすべき。
処女失ったらまずいからね仕方ないね!
……どうしよっかなー。