※この作品はR-18です。

Hexe Serail   作:ニュービー・オムラ

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遅くなり申し訳ありませんでした。


ヒスパニア戦役編9話

カールスラント派遣軍=コンドル軍団――駐屯地の一室。

ガランド中尉/ボニン少尉/ロスマン軍曹――彼女達に敬礼していた。

 

「レミ・アカマツ特務伍長です。よろしくお願い致します」

 

 三人共、伶実に向かって返礼する。

 

「第88飛行隊へようこそ。我々は君を歓迎する」

 

 形式的な挨拶を終えて、彼等は敬礼を解く。

 

「こんな感じでいいか」

 

 部屋の中の緊張した雰囲気が弛緩した。

 任官の儀式が終わり、伶実は体の緊張を解く。

 

「しかし」

 

 一言呟くと、体ごと後ろに振り替える。彼の視線の先には、わずかに開いた扉。

 隙間に向かって手を振る。

 ドアの向こうに居た多数の気配が、遠ざかるのを確認して、伶実は三人のウィッチに向き直った。

 

「中々楽しそうな部隊だな」

「そう言って貰えると嬉しいわね」

 

 彼からの称賛を聞きながらも、ロスマンは悩まし気なため息を吐く。

 どこか愉快そうな伶実へ忠告する為に、ボニンが口を開く。

 

「解っていると思うが、ウィッチ達に」

「同意もなしに手を出したりしないさ。まして、シールドが張れ無くなる事までの事は絶対にな」

 

 彼の真剣な面持ちでの返答に、ボニン少尉は解っているならいい、と黙って一歩下がった。他の二人もほっと安堵した様な顔つきである。しかし伶実は、真面目な表情の裏側で、どす黒い欲望を宥めていた。

 同意なく、そしてシールドを張れなくなるまでの事。つまりそれは同意さえあれば、シールドが張れなくなる事以外の事はする、と言うことに他ならないのだ。

 

(まぁ、彼女たちの上層部も俺の固有魔法の事を調べたいだろうし)

 

 伶実は怜悧な思考と共に、横目でロスマンを盗み見た。

 

(楔はすでに打ち込んでいる。それで俺の価(・)値(・)は高まる)

 

 体内をも焼こうとする情事の炎を抑えつつ、彼は下ごしらえを考えていく。

 

「特務伍長(イレギュラー)とは、上層部も中々考えてるな」

「皮肉ったとも受け取れるが」

 

 ガランドの笑みを浮かべなら放つ言葉に、伶実も皮肉気に口の端をつり上げた。特別=異物/ウィザード=イレギュラー――アイロニカルな任官名。

 彼も苦笑いを隠せないようだ。

 

「ここでの詳しい話はロスマンに聞いてくれ」

 

 下がってよしという台詞で、ガランドが締めくくる。

 伶実も敬礼をして、部屋から出ていく。彼を追うようにロスマンも去っていった。

 二人が居なくなった部屋の中=ガランドは疲れたように、椅子の背もたれへ体を預けた。

 

「ロスマンなら上手くやってくれるだろう」

「ですな」

 

 肯定の言葉と共に、ボニンは頷く。

 護衛/監視――ロスマンなら、共に上手にこなせると判断されたのだ。楔が打たれていることも知らずに。

 実際問題、伶実がウィッチの処女を破りシールドを張れなくさせたとして、罰せられるかという疑問が二人にあった。上層部はそれを望んでいる節があったのだ。

 だからといって自分達の部下を生け贄当然に差し出すほど、彼女達は冷酷になれない。

 ウィッチ達も年頃の少女達。しかも生命の危機を感じる戦争中。同姓同士で破らない程度の交(・)際(・)も、暗黙の了解として起きている。

 そんな中に、男のウィッチ。しかも、もしかしたらセックスをしても大丈夫かもしれない男。それを放り込むのだ。

 

「問題起きるかな?」

「起きるでしょうね」

 

 此れから起きるであろう事を思い、ガランドとボニンは同時に、大きな息を吐いたのだった。

 

 

 

 ロスマンに基地を案内されている伶実。

 

「こっちが格納庫。貴方の装備もすぐに来るそうよ」

 

 現在格納庫。ちょうどユニットのエンジンを吹かしているウィッチがいた。

 小柄ながらもガッチリとした体/熊の耳に尻尾/腰にテディベア/階級は軍曹――伶実をチラチラと盗み見ていた。

 彼女に向かって伶実が、手をヒラヒラと軽く降った。軍曹は直ぐ前に視線を向けて、赤くなった顔を誤魔化す。

 

「ちょっかい出してないで次行くわよ」

「了解」

 

 急かすロスマンに対して、彼は素直に着いていく。

 格納庫から出て次に向かう間も、至る所から突き刺さる目線。。

 物珍しい/好奇/猜疑――様々な感情の視線が、伶実の体に注がれる。

 それを楽しみながら伶実は、目の前のロスマンに声をかける。

 

「俺の事はすでに?」

「ええ、皆に伝えてあるわ」

 

 ロスマンは、質問の答えを隠すことなく伝えた。

 彼にウィッチ達の興味が、集中するわけである。すでに世界初の男のウィッチ(ウィザード)が、配属されたことを彼女達は知っていたのだから。

 

「まぁ」一拍置いて伶実は言葉を続ける「仕方ないか」

 

 どこか疲れたかのようなため息が続いた/演技=実際は、楽しんでいる。

 彼の様子を察したロスマンが、どこか申し訳なさそうに口を開いた/騙されている。

 

「数日もすれば収まるから」

「本当に?」

 

 伶実の訝し気な目線から、外れるようにロスマンは顔を背けた。

 内心で彼女の反応に、愉悦を感じている=表面上は、少々不満そうに、歩いていく。

 ロスマンも、困ったような表情で、歩み続ける。彼女の瞳に、食堂の文字が映る。

 

「ほら」ロスマン軍曹が、看板に指を指して、言葉を綴る。「あそこが食堂。そろそろお昼時だし、何か食べましょう」

「そうだな」

 

 話題の転換に伶実も乗り、指差す先へ目線を移す。

 食堂へ歩みを進めて二人は中に入る。

 席もそれほど混雑して折らず、直ぐに食事もできそうだった。

 トレイの先/茹でたジャガイモ/湯気だつソーセージ/ザワークラフト/ライ麦パン/野菜のスープ――伶実の面持ちが僅かに歪む。

 

(またかよ)

 

 さすがの彼もソーセージとジャガイモ料理が続くのは飽きて始めていた。

 伶実は、料理を乗せたトレイを机まで運ぶ/度々目線を送られるのを感じていた。

 ロスマンと彼は向かい合って座った。

 

「ソーセージとジャガイモ以外の食事はないのか?」

「今日のヴルストも、種類が違うでしょ?」

 

 首をかしげた彼女は、伶実が何を不満に思っているのか、理解できないようだ。

 

(ヴルスト?ウィンナーはウィンナーだろうに)

 

 今日は白い/昨日は骨付き/一昨日は赤い――どれも彼にとってはソーセージ。

 此ばっかりは伶実が我慢するしかない。彼が口出し出来ることではないからだ。

 少(・)な(・)い(・)人(・)数(・)なら未だしも、大人数の隊員達の食事に提案など、伍長の立場で出来るわけがないのだ。

 大きなため息と共に彼は食事を始めるのだった。

 

 

 

 昼食後=移動――外の運動場。

 ロスマンの隣を歩む伶実の瞳に、三人のウィッチが談笑しているのが映る。

 ガランド中尉/ボニン少尉/最後の一人は、格納庫でユニットを回していたウィッチ=腰にテディベア。

 伶実がテディベアのウィッチと目が合う。

 彼女は慌てたようにどこかへ走り去る/顔が僅かに紅潮していた。

 

「人の事、熊かなにかと勘違いしてないか?」

 

 さすがの伶実も気分を害したのか、拗ねたように口を尖らせていた。

 

「あら、隙あればかじらないの?」

 

 何も知らずに、かじられかけている当人が、揶揄するような口調で目を細めて睨む。

 

「狼に近づいた方が悪いのさ」

 

 肩を竦めて、揶揄と非難交じりの視線を躱す。

 雑談混じりに二人が歩んでいけば、直ぐにガランド達の元に辿り着いた。到着の報告を受けた、ガランド中尉が口を開く。

 

「それでは訓練を始める」

 

 軍隊式の訓練が始まった。

 特務伍長とはいえ、もとは民間人だ。どれだけ動けるか把握する必要があった。

 運動場の周回/腕立てと腹筋/ユニットの操作――何よりも銃の訓練だ。

 ストライカーユニットに乗りながら、目標に弾を当てる。一番初歩的な訓練だった。

 一応伶実が扶桑で射撃大会で優勝していたのは、ガランド達も話に聞いていた。だからといって、最初から使えるとは思っていない。撃ち方を教えなければいけない、とすら考えていたのだ。

 たから伶実が、渡されたMG34をしっかりと構えたのには、彼女達も内心で驚いていた。それを表に出さずに、ボニン少尉が彼に指示を出す。

 

「セミオートであの的に当ててみせろ」

「了解」

 

 示された小皿のような的を、伶実が狙って撃った/まるで思い出すかのようにしっかり構えていた。

 弾はしっかりと的を砕く。

 伶実の鼻に硝煙の臭いが漂う。

 黙り混むガランド達をよそに、彼は大きく鼻で息を吸う/炎の幻影が瞳にチラチラ映る。

 幻覚/家族が燃える。幻影/その先の遥かな過去へ。幻/前世の知り合いすら炎の中。

 昔/過去/前世――記憶に身を委ねそうになる伶実。

 

「レミ伍長!」

 

 彼の耳に、ボニン少尉の鋭い声が突き刺さる。

 声がした方向へ、伶実が顔を向ける。

 興味深く見つめるガランド中尉/怒り顔のボニン少尉/ロスマン軍曹は気遣わしげな表情――皆、彼を注視している。

 

「ぼんやりしているんじゃない。訓練の最中だぞ」

 

 過去へ向けていた意識を現在に戻して、伶実が軽く頭を下げ謝罪した。

 

「申し訳ありません。少尉」

 

 気を引き閉め直し、次の訓練に向かおうとした。その時、

 

「ネウロイ接近中。総員直ちに緊急出撃」

 

 警報/出撃命令。

 伶実の軍での初出撃が始まるのだった。




 ブレイブウィッチーズ楽しすぎます。
 ロスマン先生が動いている/話している。これだけでも嬉しい。
 軍内ではやっぱり結構厳しめなんだな。
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