異論は認める。だが変更はしない。
「失礼します」
「…………」
1人は丁寧に挨拶しながら、もう1人は無言のまま教室に入ってきた。
そして普通なら少し盛り上がるはずなのだが、このクラスではそれが一切なかった。
その理由は片方の転校生にあった。
「フランスから来たシャルル・デュノアです。まだ日本に来て間もないので、色々助けてくれたら嬉しいです」
そう言って金髪の
『えぇぇぇぇぇっ!?』
一拍置いた後、クラス中に黄色い悲鳴が響き渡った。
何故ならこの世界に2人しかいないと考えられていたISを動かせる男が、ここにもう1人来たのだから…………。
そしてシャルルの容姿が、それにさらに拍車をかけた。
セシリアより濃い金色の髪が輝いていて、それを後ろで1つに束ねている。
ニコニコと微笑むその姿は、まるで絵本に出てくる王子様のようだ。
「お、男の転校生!?」
「織斑くんの隣に立ちたくなるような雰囲気、ミキストリくんの絶対に守ってもらえる安心感、そして転校生くんの守ってあげたくなるような姿!!」
「このクラスで本当に良かった~!」
きゃあきゃあと楽しそうに、そして嬉しそうに会話する女子生徒たち。
一夏も数少ない男が学園に入ってきてくれて嬉しいのか、驚きながらも笑っている。
シャルルはそんな生徒たちの様子に苦笑いしていたが、無表情のクロウを見つけると嬉しそうに微笑んで、フリフリと手を振った。
「…………」
そしてもう1人の転校生。
輝く銀髪を腰まで伸ばし、黒い眼帯を片目につけた少女。
端正に整った顔をしているのだが、氷のような冷たさを感じさせる表情なので、まるで人形のようだ。
それに何より、その小さな身体から発している空気が一般人のそれとは違った。
まるで軍人だ。
そんな彼女は、スタスタと歩いてクロウの席の前に来る。
「久しぶりだな、ラウラ」
「…………本当に、だ」
クロウに話しかけられ、嬉しそうにも悲しそうにも見える笑顔を浮かべる少女。
その笑顔は非常に可愛らしく先ほどまでの無表情とのギャップもあり、何人かのクラスメートの心を射抜いていった。
「嫁がいきなりドイツからいなくなったときは、本当に驚いたぞ」
ぷくぅと頬を膨らませ、片目に涙を溜めて抗議するラウラ。
それは幼児退行した幼女のような反応で、クロウでなければとめどなく赤いパトスがあふれ出ていたであろう。
…………いや、鼻にティッシュをあてがっているのは気のせいだ。
しかし女子生徒たちが食いついたのは、そこではなかった。
『よ、嫁ぇぇぇぇぇぇっ!?』
ラウラの嫁発言で、さらに騒がしくなる1組。
「…………ラウラ、その嫁とはなんだ?」
「うん?日本に来る前に、クラリッサから聞いたのだ」
ラウラが言うには、日本では気に入った相手を嫁と言う風習があると、ドイツ軍特殊部隊であるシュヴァルツェ・ハーゼの副隊長から聞いたらしい。
とりあえず報復はすることを心に誓い、目の前でコテっと首を傾げているラウラの頭を撫でてやるのだった。
◆
その後、きゃあきゃあと騒ぎ立てる女子生徒たちにとうとう堪忍袋の緒が切れた千冬が雷を落とし、一瞬で沈める。
いつもより機嫌が悪そうに見えるのはなぜなのだろうか?
「自己紹介をしろ、ボーデヴィッヒ」
「はっ!教官」
バッと敬礼して千冬に返すラウラ。
これには理由がある。
それも単純なことで、数年前にある借りでドイツの軍隊教官として働いていた時に、ラウラと出会ったのだ。
そこでの生活で、ラウラは千冬をかなり敬愛していた。
綺麗な敬礼をするラウラに、千冬は頭が痛そうにため息を吐いて言う。
「ここでは私は教官ではない。先生をつけろ」
「はっ、織斑先生」
やはり堅苦しさは抜け出せていない。
まあこれまで学校という場所に通ったことのない軍人に、いきなり慣れろと言う方に無理がある。
「ラウラ・ボーデヴィッヒだ。出身はドイツ。よろしく頼む」
非常に簡潔で、必要最低限の自己紹介を終えるラウラ。
それに対して女子生徒たちの反応は―――――
「何か人形みたいに可愛いねっ」
「はぁ……ナデナデしてみたい…………」
「あの赤い眼も綺麗だよね~」
おおよそ受け入れられたようだ。
銀色の髪に紅い瞳ということで、どこか兎を連想させる容姿のラウラは非常に愛らしい。
可愛いもの好きが多い女子高生には好評だったのだろう。
「…………」
教壇で立っていたラウラだが、一夏を見つけると何か思案するように顎に手を当てると、何か納得したのか頷くとスタスタと一夏の方に歩き出した。
―――――パァンッ!
「…………は?」
そして鋭い音を立てて、一夏の頬を叩いた。
先ほどまで騒がしかったクラスがシンと静まり返る。
当の本人である一夏も何をされたかわからないような顔をしていたが、だんだんと理解していくうちに怒りがわいてくる。
「何すんだ、この野郎!?」
心の中で、『やっぱり女だから野郎じゃないか?』などと考えている一夏。意外と余裕である。
それに対して、ラウラは悪気が一切ないように言い返す。
「うむ、物語の流れ上しなきゃいけないような気がした」
「ごめん、何言ってんのかわかんない」
早口で言い切る一夏。
この世界の、何か触れてはいけないものに触れてしまいそうな感覚だったのだ。
ここでタイミングよく(?)、チャイムが鳴り響く。
「次は第二グラウンドにて、二組と合同でIS模擬戦闘を行う。各人遅れるなよ」
千冬の言葉で、場が締めくくられる。
皆それぞれ更衣室に向かって歩きはじめる。
クロウもそれにならって移動しようとしていたのだが、千冬に呼び止められる。
「ミキストリ、デュノアの面倒を見てやってくれ。まだ織斑は自分のことで手一杯だからな」
「了解」
千冬に頼まれれば吝かではない。
皆いなくなってしまっておろおろとしているシャルルのもとに向かう。
ちなみにだが、一夏は授業終了の合図とともにダッシュしていった。
「シャルロ……シャルル、着いてこい」
「あっ、クロウ!」
クロウに話しかけられたシャルルは、パァッと顔を明るくしてとてとてと駆け寄ってくる。
まるで迷子になっていた少女が、父親を見つけたような感じだ。
クロウはシャルルを連れて教室を出る。
「久しぶりだね、クロウ」
「そうだな」
シャルルは楽しそうに微笑みながら、クロウと会話する。
『お前いつから男になったのだ?』などと会話していると、どこからか現れた女子生徒たちに囲まれる。
それは皆、転校してきた男子生徒を一目見ようと集まってきた女子生徒たちだ。
流石に情報が回る速さは女子高生だというべきか。
「…………シャルル、走るぞ」
「う、うんっ」
人がいいシャルルだが、血走った目で見つめられるのは気持ち悪い。
まだ完全に包囲されていなかったため、空いていた穴を通って走り出す。
「逃がすかぁっ!」
しかし女子生徒たちも諦めないず、物凄い形相で追いかけてくる。
もうシャルルは涙目だ。
「シャルル、掴まれ」
「ふぇっ?―――――えぇぇぇっ!?」
最早最終手段と、クロウはシャルルの身体を担ぎ窓から飛び降りた。
クロウはシャルルのことをお姫様抱っこで抱えていて、シャルルはなぜか顔を赤くしていた。
クロウとシャルルがいなくなった場所では、腐属性の女子生徒たちが鼻血を出して倒れていた。
◆
「あ、あのね、クロウ。もう下ろしてくれても大丈夫かなぁって思うんだけど…………」
「む、そうか」
第二アリーナの更衣室にたどり着いたクロウとシャルルは、ようやく息を付く。
お姫様抱っこから下ろしてもらったシャルルは、顔を真っ赤にしていて湯気が出そうな勢いだ。
「さて、お前と話もしたいが、それは後だな」
「う、うん」
次の授業は、千冬が受け持つIS模擬戦闘訓練。遅刻は断じて許されない。
ISスーツを着るために、制服を脱ぎ始める2人。
「わぁ…………」
チラリとクロウを覗き見ると、思わず熱い吐息を漏らしてしまう。
しなやかで鍛え上げられた肉体。
盛り上がった大胸筋や上腕二頭筋、割れた腹筋などに目がいく。
シャルルの吐息がだんだんと荒くなっていく。
そしてクロウはズボンに手をかける。
そしてその腕を下ろし―――――
「何をしている、シャルル」
「へっ!?な、ななな何でもないよ!?」
ちょっと残念そうにため息をするシャルルだった。
その後は特に何もなく着替えて、第二アリーナへと向かって行った。
「遅刻だぞ、ミキストリにデュノア」
「すまん」
「ご、ごめんなさい」
第二アリーナにはすでに千冬が来ており、1組2組の生徒も全員集まっていた。
千冬は普段のピシッとしたスーツ姿ではなく、動きやすさを重視したジャージ姿だった。
豊かに実った母性が、ジャージを押し上げている。
「二度目は許さないぞ」
そう言って千冬はクロウとシャルルに列に並ぶように言う。
男の転校生が来たという時点で他の女子生徒たちが暴走することは、目に見えて明らかだったからだ。
クロウは一番後ろに移動する間、女子生徒たちの様子を確認する。
ISスーツは個人で用意しても問題ないが、今はまだ発注していないので学園支給のものを皆着ている。
ISスーツは着用者の身体にぴったりとフィットしていて、発展途上の女子高生たちの肢体をくっきりと浮かび上がらせる。
何人かは十分に育っている女子高生たちもいて、魅惑的な身体を惜しげもなくさらしている。
「ふむ…………」
そんな生徒たちをじっくりと見まわし、満足気に頷いて列に加わるクロウ。最低である。
しかしクロウだけを非難できるわけでもなく、男に―――女子高故に―――飢えている女子高生たちは、ISスーツを着用してくっきりと浮かび上がる腹筋や大胸筋を見て鼻息を荒くしている。
だが可愛いので許される。
「何をなされていたのですか?」
列に加わると、隣に立っていたセシリアがクロウに話しかける。
セシリアは代表候補生としての訓練もあったので、すでに専用のISスーツを所持していた。
青色のISスーツを身に纏っていて、身体の凹凸がハッキリしている。
クロウは前にセシリアのブラを見たとき、Dと書かれていたのをふと思い出した。
「うむ、のんびりしていたら遅刻した」
「当たり前じゃない」
反省の様子がかけらも感じられないクロウに、後ろから鈴が会話に加わる。
2組と合同授業なので、当然鈴もいるのだ。
同じく中国の代表候補生である鈴も、専用のISスーツを持っていた。
桃色のISスーツで、セシリアと比べるとあまりにも身体の凹凸が窺えない。
鈴のブラを見たとき、Aと書いてあったのを何故か思い出したクロウだった。
「…………なんか変なこと考えてない?」
「気のせいだ」
野生動物の如く勘の良さがある鈴は、クロウの失礼極まりない考えを察知しかける。
追及されても無表情で返せるクロウも凄い。
「しかし織斑、素晴らしいスタートダッシュだったぞ」
「は、はは…………」
自分たち―――というか主にシャルル―――に女子生徒たちが殺到してくるのを予見した一夏は、チャイムが鳴ったとたんに猛ダッシュで教室から離れたのだ。
意外としたたかである。
ちなみに4人がこうして話しているが、口の動きを最小限且つ前を向いたままという、無駄に高度な技術を使って話していた。
「さて、今日は再確認の意味も込めてISの戦闘を見てもらおう。オルコットに凰、前に出ろ」
しかし千冬にはしっかりと見抜かれていたようで、セシリアと鈴を前に呼ぶ。
力を見せつけたいとかいう欲はない2人は断りたいのだが、教師の指示には逆らえないし自分が悪い面もあるのですごすごと前に出る。
「あの……セシリアと戦うんですか?」
鈴が心底面倒くさそうに千冬に問う。
千冬にこのような態度で接するのは自殺行為なのだが、相手がイギリス代表候補生と戦うとなれば本気になるしかない。
しかし千冬はニヤリと笑うと、違うという意味も込めて首を横に振る。
「いや、今回貴様らの相手をするのは、貴様らもよく知っている人物だ」
千冬の言葉に、セシリアや鈴だけでなく1組2組全女子生徒たちが首を傾げる。
セシリアと鈴は、2人とも世界に誇れる超大国の代表候補生である。
その実力も折り紙つきで、セシリアは実際にクラス代表決定戦で実力を示している。
そんな2人と対等に戦える相手など、この学園に何人いるのだろうか?
戦うのは誰なのだろうか?
「―――――さ~い!」
そんな疑問が全員の頭によぎっているとき、遥か上空から声が聞こえた。
皆が上を見ると、空から人間が1人降ってきていた。
その人物は皆がよく知っている……特に1組の生徒ならなじみ深い人物。
「きゃあぁぁぁ!逃げてください~~!!」
空から降ってきている人間の着弾予測地点は、あの男の脳天。
「…………ん?」
その男、クロウが空を見上げると、もうすぐそこにISを纏った山田 真耶が…………。
―――――ズドォォォォンッ!!
真耶が落下した場所から、大きな砂塵が舞い散る。
生徒たちは悲鳴を上げ、落下地点から離れようと走り出す。
千冬はため息をつく。
砂塵がゆっくりと晴れていき、2人の様子が露わになる。
「あ、あの……クロウさん…………」
2人は無事だった。
ISを纏ったクロウが、真耶をお姫様抱っこで助けていたのだ。
真耶は顔を真っ赤にして、混乱もしているのか、クロウのことを名前で呼ぶ。
そんな2人の姿を見て、乙女思考の強い女子生徒たちは黄色い悲鳴を出す。
「ふむ…………」
クロウが見つめるのは、窮屈そうに詰め込まれた真耶の双丘である。
普通でもピッチリしているISスーツが、真耶が着ることによってさらに張りつめられている。
真耶が少し身じろぎするたびに、巨大な胸がプルプルと柔らかそうに揺れる。
そう言えば真耶のブラを見たときにGという目を疑う文字があったことを思い出すクロウ。
「…………ミキストリ、時間もないから早く下ろせ」
「む、了解した」
千冬がどこか棘のある口調でクロウに言い、クロウも素直にそれに従う。
ゆっくりと優しく地面に下ろされた真耶だが、少し残念そうにしていた。
さて、真耶が現れたことによってセシリアと鈴が戦う相手が分かったのだが、正直相手にならないというのが生徒たちの総意だった。
勿論、真耶がセシリアたちに勝てないという意味で。
しかしそれも仕方がないことだろう。
普段の真耶は千冬のように頼りになる先生というより、友達といった方が適切なのだ。
「一応言っておくが、山田先生は日本の元代表候補生だ。侮るなよ?」
「えへへ…………」
千冬の言葉に真耶は嬉しそうに、だが恥ずかしそうにしていた。
そしてこの言葉で、セシリアと鈴は真耶を侮ることを止めた。
日本も超大国とは言えないが、それでも世界列強の1つに数えられる大国である。
そんな国で代表候補生を務めるのは容易ではない。
ちなみに、真耶が日本の代表生を決める大事な試合で、緊張のあまり1割も実力が出せずに敗退したことは、数人を除いて知られていない。
「さて、では試合を始めるぞ」
この事に、セシリアと鈴はポカンとしてしまう。
確かに侮ってはいけない相手だと認めだが、自分たちも同じく代表候補生。2vs.1など結果は見えている。
「心配するな。『これでは』お前たちは勝てないさ」
しかし千冬に挑発された2人は、空へと昇っていく。
戦闘の場では冷静に戦える2人だが、元々2人のプライドは一般人に比べて高い。
2vs.1でいい勝負と言われたら黙っているわけにはいかない。
真耶も表情をいつもより引締め、空へと昇って行った。
「よし、デュノア。山田先生が現在使用しているISの説明をしろ」
「あ、はい」
上空で激しく戦っているセシリアと鈴、真耶の試合を眺めながらシャルルは説明を開始する。
真耶が使用しているISは『ラファール・リヴァイヴ』。
フランスのデュノア社が開発した第2世代型のISで、世界で12か国で制式採用されている。
その理由は、第2世代型だが第3世代型の初期機に劣らない性能と、操縦のしやすさにある。
別名『疾風の再誕』と言われている。
「そこまででいい」
シャルルのすらすらと述べられた説明を途中で遮り、千冬は空を見上げる。
上空での戦いが終わったのだ。
結果は真耶の勝利だった。
真耶のシールドエネルギーもほぼ0に近いが、先に力尽きたのはセシリアと鈴だった。
「はぁ…………」
「むぅ…………」
ISを解除した2人は、悔しそうに呻いていた。
この勝負の結果の原因は真耶の実力もあるが、やはり2人の共闘の拙さであろう。
真耶の実力は確かにセシリアと鈴を上回っていたが、2人を普通に足し算する戦闘力だと真耶は到底敵わない。
だが共闘すれば、1+1が2になるわけではない。
共闘などしたことのない2人がいきなりそうすれば、呼吸が合わないのも当然だろう。
合わせられるとしたら、どちらかが戦闘に関して天才であるしかない。
しかしセシリアと鈴は確かに才能があったが、決して天才ではなかった。
現在ISを駆って空を縦横無尽に駆け巡れるのは、ひとえにそれぞれの努力の結果である。
「これでこの学園の先生方が有能であることが分かったな?よし、次はISを使っての実習を行う。専用機持ちである6人のところにそれぞれ分かれろ」
千冬がそう言うと、女子生徒たちはそれぞれワッと散っていく。
やはり集まりが多いのは、男子生徒である3人の所だ。
爽やか系が好みな女子は一夏の所へ、可愛い男の娘が好きな女子はシャルルの所へ、守ってもらいたい、甘えたいという女子はクロウの所へとそれぞれ散った。
ちなみにこの3人の中で最も集まりがいいのは一夏。次にシャルルと来てクロウである。
この3人に女子生徒は集中しているが、セシリアや鈴、ラウラの所にも少数ではあるが集まっている。
セシリアや鈴に集まっているのは純粋にIS機動がうまくなりたいと願う生徒たち。
ラウラの所に行ったのは、可愛いもの好きな生徒たちである。
しかし当然これでは人数が偏ってしまい、授業がまともにできない。
「馬鹿者!思い思いに散ってどうする!」
千冬の一括で出席番号順ということになった。
男3人のところにいけた女子生徒たちは歓喜し、女子陣の所にいった生徒たちは残念がるのだった。
「は~い!班のリーダーは訓練機を取りに来てくださいね~!」
そう言って真耶が示したのは、『打鉄』と『リヴァイヴ』。
クロウは班メンバーの意見を聞いて、『打鉄』を取りに行く。
「山田教諭、『打鉄』を貸してほしいのだが…………」
「あ、はい!どうぞ、取って行ってください」
クロウに話しかけられ、笑って訓練機を差し出す真耶。
その表情は代表候補生2人に勝ったからか、いつも以上に自信に満ちていた。
普段も親しみやすい教師として慕われている真耶だが、こういう風にキリッとしているとできる教師みたいな感じで慕われるかもしれない。
「うむ…………」
しかしクロウが見ていたのは顔ではなく、その破壊力抜群のダイナマイトボディである。
ISスーツに包まれて、身体の輪郭がはっきりと視認できる。
戦術兵器ともいえるGカップの巨大胸が、真耶が動くたびに柔らかそうに揺れる。
「あ、あの、ミキストリくん……そんなにじっと見ないでほしいのですが…………」
真耶はクロウの不躾な視線を感じて、顔を紅潮させる。
これで済むのは、真耶がクロウのことを好いているからだ。
そうしてどことなく気まずい空気が流れていると、後ろからクロウを呼ぶ声がする。
「クー、まだ~?」
「ああ、すまない。ではな、山田教諭。格好良かったぞ」
そう言ってクロウは『打鉄』を抱えて飛び去っていく。
その後真耶がくねくねと身体を動かしていたのは内緒である。