夏ノ長期休暇 其ノ壱
学生にとって、八月は楽園以外の何物でもない。
約一か月もの休日が、無条件でもらえるのだ。
宿題?そんなものはなかった。
IS学園でも、例にもれず夏休み中だった。
そんな中、寮の廊下を歩く一人の少女がいた。
「あ、熱い……」
いつも元気な様子はなりを潜め、ぐったりとした様子で歩いている茶髪ツインテール美少女。
彼女は凰 鈴音。中華人民共和国の代表候補生である。
鈴が歩く廊下は、人けがほとんどない。
皆この長期休暇を利用して、母国や実家に帰省したのだ。
しかし鈴の場合、帰省してもどうせ軍のお偉いさん方に捕まるだけなので、今回は帰らなかったのだ。
「(それにあいつとも一緒にいたいしね)」
今向かっている先も、あいつのいる場所だ。
ポケットの中に入っている紙切れを確認し、頷くとまた歩き出す。
そうしてたどり着く、あいつ―――クロウが暮らしている寮部屋。
クロウの故郷とかは聞いたことがないので、おそらく帰省はしていないだろう。
小さく喉を鳴らして調子を整えると、むんっと気合を入れる。
「クロウー?私、鈴だけど開けてくれない?」
ノックを三回して、クロウを呼ぶ。
それから少しすると、ドアがガチャリと音を立てて開いた。
「……どうかしたか?鈴」
いつも通りの無表情で、鈴に話しかける。
しかし頭の寝癖から、今まで夢の世界にいたことが丸わかりだ。
真昼間からベッドの上とは、良い御身分である。
「あんた……もしかして今まで寝てたの?」
「まあな」
呆れたように言う鈴に、何ともないように返す。
とりあえずドアの前で話していてもあれなので、クロウは鈴を部屋に迎え入れることにした。
中はエアコンがガンガンに効いており、非常に快適だ。
自分のお金じゃなかったら使いまくる……最低である。
「あ~……涼しいぃ~」
鈴は幸せそうな顔で、冷風を直接受ける。
外のクソ暑いところが地獄なら、このエアコンの効いた部屋は天国である。
「何か飲むか?」
「あ、ちょーだい」
冷蔵庫を開けながら鈴に聞くクロウ。
意外と気遣いができていることに驚きだ。
クロウは冷蔵庫から缶ジュースを取り出すと、鈴に向かって投げた。
女子なら怖がるような物を投げるが、鈴はそれを軽く受け止めてタブを開け飲みだす。
ごくごくと喉を鳴らして飲む姿は、そこらの男より男らしい。
ちなみにクロウはこの時、汗に濡れた喉が動くのを見て少し興奮していたりする。
起きたばかりなのに平常運転だ。
「ぷはーっ!ありがと、クロウ」
「気にするな」
こちらもいい思いをさせてもらった……とは言わない。
それにあまり考えていると、野生動物並に勘が鋭い鈴に察知されてしまう。
「でもあんた、とりあえずその頭を直してきなさいよ」
「……了解した」
鈴に言われ、洗面所に行く。
だが鈴はこんなことを気にするような女ではない。
では何故こうしたのか……?
「…………」
鈴がジーっと見つめる先には、クロウが普段使っているであろう枕が……。
スススッとベッドの方へ寄っていき、バッと枕を持ち上げた。
それから枕を意味もなくぽふぽふと叩いたり、グニグニと引っ張ったりする。
「……ふにゃぁ~」
そして枕を抱きしめて匂いを嗅ぐと、本当に猫のような声を出す。
その声はとろとろに甘い声で、目もトロンとしていて傍から見ると色気のある危ない人にしか見えない。
鈴ほどの小柄さで、スタイルもいいとは言えないのにこれほどの色気を出せるのは凄まじいものだ。
「ん……ふ」
クロウの匂いを嗅いでいると、下腹部が熱くなる。
下着の中も濡れたような気がする。
これは汗なのか……それとも……?
「(や、止めないと……)」
そう思う鈴だが、枕を手放すことができない。
むしろさらに顔に押し付けて、匂いを嗅ごうとする。
これはまさに麻薬……否、猫にマタタビだ。
「(ちょ、ちょっとだけ……そう、ちょっとだけなのよ)」
スルスルと手が下腹部に伸びていく。
そして熱い秘部に手が触れようとした、その時。
「……何をしている?鈴」
「ふひゃぁぁっ!?な、何でもないわよ!!」
ベッドの上で数十センチ跳ね上がったと思うと、ベッドに枕を叩き付ける。
顔を真っ赤にし、なんでもないと手をパタパタと振る。
勿論、何かあったことは間違いない。
「ふむ……」
「は、早くこっちに来なさいよ!あたしが来た理由を話すから!」
考え込む仕草を見せるクロウを見て、慌てて自分の方へ呼ぶ。
ベッドの上で自慰をやりかけていたなんて知られたら、朝まで一緒に運動コースまっしぐらだ。
いや、別に嫌というわけでは絶対にないのだが、一応今回クロウに逢いに来た理由は他にあるので、まずそれを終わらせたいのだ。
「で、話とはなんだ?」
「う、うん。それは……」
話そうとしていた鈴が、途中で言葉を止める。
その理由は、頭によぎった一抹の不安。
「(……もしかして、今のあたしって汗臭い……?)」
サッと顔を青ざめさせる。
クロウの部屋まで、毎年異常気象となる気温の中歩いてきたのだ。
あまり暑さに耐性のない鈴は、それはもうへばった。
それはさておき、自分の部屋からクロウの部屋という短い距離でも、鈴はそれなりに汗をかいてしまった。
特に鈴は制服を改造して肩が露出しているので、匂いが漏れているかもしれない。
「……どうした?」
クロウの反応を見る限り、気づいている様子はない。
それならさっさと誘って、退散するとしよう。
「これ見て」
そう言って鈴が取り出したのは、一枚のチケット。
それは最近完成したばかりの、ウォーターワールドの前売り券である。
「プールか?」
「そうよ、あたし……ともう一人のお邪魔虫と一緒に行かない?」
「お邪魔虫?」
「あぁ、セシリアのことよ」
一応クロウに誘っている風に言っているが、もし行かないと言われたら最悪だ。
自分の好きな男とデート―――お邪魔虫もいるけど―――から、恋敵との二人遊びになってしまうのだから。
本当ならセシリアなんてほっといて二人で行きたかったのだが、この計画がセシリアに漏れたのがいけなかった。
鈴が苦労に苦労を重ねてやっと手に入れた前売り券を、セシリアはあっという間に入手してしまったのだ。
今セシリアはイギリスに帰国しているから彼女がいない間に行けば二人きりなのだが、鈴もそこまで性格が悪いわけではない。
「そうだな……是非行かせてもらおう」
「ホントっ!」
クロウが来てくれることになり、満面の笑みを浮かべながら飛び跳ねる。
そんな子供みたいな行動を、クロウは暖かい目で見つめていた。無表情だが。
「じゃあ明日の土曜日、十時にゲート前待ち合わせね」
「うむ、了承した」
鈴の心の中は大歓喜である。
ミニマム鈴が、小さな五星紅旗をパタパタと笑顔で振っている。
そしてそのウキウキ気分のまま自分の部屋戻ろうとするのだが……。
「まあ待て」
「……ふぇ?」
細い腕をガシッと掴まれる。
いきなり止められたので、キョトンとする鈴。
「お前の身体を流れる汗などを見ていたら……興奮してな」
「……ちょ、ちょちょちょっと待ちなさいよ!せめてシャワー行かせ―――――」
続きの言葉は、クロウに届かなかった。
◆
「くろうぅ……」
鈴は小さな舌を懸命に伸ばしながら、クロウの顔を舐めまわす。
その甘えた声は、シャワーに行かせろと騒いでいたのが嘘のようだ。
すでに愛撫で心身ともにほぐされた鈴は、一刻も早く男根を膣内に挿入してほしかった。
今は二人でベッドに横になり、クロウが後ろから抱き着いている体位になっている。
鈴は顔をひねり、クロウの耳をペロリと一舐めする。
「鈴は甘えたがりだな」
「そ、そんなことないわよ……」
普段ハキハキとしていて自己主張の強い彼女からは、考えられないようなほどしおらしい態度。
暗に本当のことだと言っているようなものだ。
鈴が耳から舌を離すと、ドロリと唾液の橋が架かる。
「ん、ふ……っ」
腋の下から手を入れ、慎ましい乳房を揉む。
鈴自身コンプレックスの胸の大きさだが、そこには確かな柔らかさがあった。
いきり立った男根は閉じられた健康的な太ももの間に突っ込み、秘裂を刺激する。
今までの愛撫でほぐれたそこは、大量の分泌液を漏らしていた。
「んはぁ……ホント、あんたのって底なしよね」
まるで自分が生えているかのように太ももの間から露出している男根を掴み、亀頭を手のひらでこする。
自分の愛液と我慢汁で濡れた亀頭は、にちゃにちゃと粘っこい音がする。
「んっ……」
敏感な亀頭を擦られ、思わず乳房を掴む力を強くしてしまう。
貧乳故か、感度の良い鈴に痛みが走るが、クロウに与えられた感触と思うとそれさえ愛しくなってくる。
重症である。
「ねえ……早く
瞳に涙をいっぱいに溜め、上目づかいでクロウの目を見ながらおねだりをする。
その言葉の矢は、クロウの心臓を射た。というか貫いた。
◆
「んぁっ!あっ!はっ!あっ!!」
正常位で、小柄な鈴に覆いかぶさるようにしながら腰を振る。
膣内から掻き出された愛液が、陰毛一つ生えていない秘肉に付着している。
Aカップの乳房がプルンと可愛らしく揺れ、ささやかな自己主張をする。
シーツを握りしめ、涙を流しながら快楽に酔う鈴。
「はっ!あっ!んっ!!」
いつの間にか鈴は脚でクロウに抱き着き、逃げられないようにしている。
膣内で射精しろということだろうか。
所謂だいしゅきホールドをされながらも腰を振り続ける。
「んんんんんっ!!」
快楽の限界になった男根から、白い液体が吐き出された。
子宮口にぴったりとつけられた鈴口から、どんどんと精液が送り出されてくる。
それでも入りきらなかった精液が、数滴シーツの上に垂れた。
「……もっとしてぇ」
離れようとしたクロウの服の袖を摘まみ、甘えた声を出す鈴。
日常生活ではほとんどお目にかかれない状態であり、この世界で唯一見れるのはクロウだけだろう。
『はぁ……はぁ……クロくんの身体いいよぉ。くそ……この中国人めぇ……』
否、どこかの天災兎が見ていた。
さて、鈴にもう一回戦誘われたクロウだが、当然答えは決まっている。
しかしここで少し趣向を変えてみることにした。
「よし、鈴。もう一回服を着ろ」
「……はぁ?」
◆
服を着させた理由は、また服を脱がせながらしたくなったから。
鈴はそれを聞いて顔を真っ赤にして、『変態!』と罵った。
まあ結局着るのだけれども。
汗に濡れた身体に、制服がまとわりつくのが鬱陶しい。
特にショーツの中は、中出しされたままでショーツを穿いたので、本当に気持ち悪い。
少し身じろぎすると、にちゃにちゃと音がする。
「ん、ちゅ……ちゅ」
しかし鈴はそんなこと気にせず、一心不乱にクロウに唇を押し付けていた。
腕を首に回し、小ぶりな乳房が胸板で潰れる。
二人は身長差が大きいので、半ば鈴がクロウに持ち上げられているように見える。
「ん、ぷ……はぁぁ……」
口内だけでなく、唇まで舐めまわしていた鈴をゆっくりと離す。
唾液の橋が、何本も架かる。
キスを止めさせられた鈴は、うっとりとした様子でクロウを見上げるだけだ。
「ほら、鈴。舐めてくれ」
「……うん」
鈴は素直に言うことに従い、地面に跪く。
クロウのズボンを下げ、自分のワイシャツのボタンをはずして前をさらす。
可愛らしいブラが見え、Aカップの乳房も見える。
「ん、く、ちゅぷちゅぷ」
陰嚢をペロペロと猫のように舐めながら、手は亀頭を弄る。
我慢汁が垂れ、鈴の手を汚す。
溢れた我慢汁を見ると、それを舌で舐めとっていく。
「んちゅ、ジュポジュポっ!」
陰茎の根元を手で持ち、亀頭を含んで顔を上下に動かす。
そして吸引しながら、男根を喉奥まで押し込んだ。
小さな鈴の口内で、男根はかなり奥まで進んだ。
この性技も、クロウに仕込まれたものである。
「っ、もういい」
「ん、ぷはぁっ!」
鈴が口から離すと、唾液で濡れそぼった男根が姿を現す。
それはビクビクと震えていて、今にも射精してしまいそうだ。
「次はお前の番だ」
「この体位って結構恥ずかしいわね……」
クロウはベッドに座り、鈴を膝の上に座らせる。
これから対面座位をするつもりのようだ。
ワイシャツをスルリと肩から脱がせ、可愛らしいブラも上に持ち上げる。
汗に濡れたAカップの乳房が、プルンと揺れて現れる。
鈴はそれから自分で膝をついて、男根に照準を合わせる。
張りのある尻が、プルンと波打った。
「んはぁぁぁぁっ!!」
亀頭を膣内に少し入れた後、一気に腰を落とした。
愛液がクロウの腹にも飛び散り、クロウの陰毛が綺麗な陰部に当たる。
「んっ!あっ!はっ!!」
クロウの肩に手を置き、ギュッと握る。
鈴は胸を揉まれながらも、腰を上下に動かす。
支えている足が快楽でプルプルと震えている。
Aカップの乳房は、小刻みに小さく揺れている。
手と手を絡み合わせて、触れ合う面積を増やす。
「くろう……キスして」
鈴の要望に応え、身体を起こしてキスをする。
くちゅくちゅとかきまぜられた唾液は、顎を伝ってシーツに落ちる。
「んはぁぁっ!!」
キスを止めて首筋を舐めると、大きく喘ぐ。
背筋を逸らせ、乳房を揺らせる。
鈴は両手両足を使ってクロウに抱き着く。
「んはっ!あっ!あっ!!」
腰を動かしながら、今度は鎖骨を舐める。
すると鈴の身体は面白いほど反応し、顔をとろけさせる。
「んっ!あっ!あっ!あっ!!」
敏感な乳首を舐めながら突くと、シーツをギュっと握って気持ちよさそうにする。
「好きだぞ、鈴」
「っ!?んひゃぁぁぁぁっ!!」
その一言で、鈴はさらに上の快楽を与えられた。
その間にも、クロウは鈴の乳房を嬲るのを止めない。
歯で甘噛みしながら舌で乳首を転がしたり、ただ荒々しく乳房を鷲掴みにしたり。
「あっ!あっ!あっ!あっ!!」
だんだんと上下運動が激しくなってくる。
鈴は激しく動かされているので、慎ましいAカップ乳房もせわしく踊る。
涙を流し、よだれさえこぼしながら快楽を貪る。
「そろそろ
「はっ!ひっ!う、うん!きて!!」
二つの乳房をグニュッと潰す。
鈴の太ももはガクガクと小刻みに震え、膣内はキュッと締め付けてくる。
肥大した亀頭は、ゴリゴリと子宮口を擦る。
「あぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
ドプドプと、前より明らかに多い量の精液が出た。
鈴は膣内を叩く精液の感覚に耐えるように、クロウに力いっぱい抱き着く。
ビクビクと少しの間震えていた二人は、力の抜けたようにベッドに身を投げ出す。
そして自然に顔を近づけて行って、唇を重ねたのだった。
◆
「やはり日本は暑いですわね……」
ロールスロイスから降りた金髪の令嬢が、日差しを手で遮りながら言う。
夏の平均気温が二十度以下の祖国からすれば、三十度を超す日本は本当に暑い。
金髪碧眼の美少女、セシリア・オルコットは、そんなことを考える。
「お嬢様、荷物を部屋へお運びしますね」
「ええ、お願いしますわね、チェルシー」
後ろからセシリアにそう報告したのは、彼女の専属メイドのチェルシーだった。
大人びた微笑みを浮かべて一つお辞儀をすると、荷物を部屋へと運んで行った。
しかしピタリと止まると、微笑みを濃くしながら近づいてきた。
「……?どうかしましたの?チェルシー」
「いえ、少しお聞きしたことが。あの下着はミキストリ様用ですか?」
ピシリとセシリアの表情が固まる。
何故あの下着のことをチェルシーが知っているのだろうか?
下着屋に行ったらばれると思ってネットで買い、しかもスーツケースの二重底に入れるという徹底して秘密にしていたのに……。
別にクロウに使うのと聞かれて恥ずかしいわけではないが、さすがにあの過激な下着を見られるのは顔から火が出るくらい恥ずかしい。
「え、ええ。それが何か?」
「いえ、ただお嬢様には黒がお似合いかと思いまして」
「そ、そうですか?考えておきますわ」
顔を真っ赤にして目をぐるぐる回しながら言うセシリアにお辞儀をすると、チェルシーは今度こそ部屋へと歩いて行った。
セシリアはチェルシーを―――自分なりに―――優雅に見送った後、ガクッと膝に手を付いた。
羞恥でどうにかなってしまいそうだった。
「む?セシリアか?」
「ふぇ?……く、クロウさん」
頭上から声をかけられ身体を起こすと、そこには帰国中ずっと会いたかった人が立っていた。
嬉しさで先ほどの羞恥心は吹っ飛んでしまった。
「お久しぶりですわ、クロウさん」
「そうだな、一週間ぶりか。イギリスは楽しかったか?」
「ええ、やはり祖国はよかったですわ」
和やかに交わされる会話。
セシリアは自然体で話せるこの時間が大好きだった。
特にイギリスではオルコット家当主としてふるまわなければならなかったので、この時間が本当に楽しい。
「あ、ところで鈴さんから……」
「ああ、プールのことか?私も参加させてもらうことにした」
「そ、そうですか!それはわたくしも嬉しいですわ!」
心の中でもしかしたら鈴が裏切って二人きりで行く約束をしているかどうか心配だったが、彼女はきちんと約束を守ってくれたらしい。
まあもし鈴が意地汚くもそんなことをしていたら、セシリアは戦争を仕掛けることだろう。
「お久しぶりです、ミキストリ様」
「む?」
そんな風にクロウとセシリアが会話していると、クロウの後ろから声がかけられる。
そこにはもう荷物を運び終えたのか、チェルシーが微笑みながら立っていた。
「チェルシーか……久しいな」
「はい、何年ぶり……ですね」
ペコリと頭を下げる。
チェルシーは十八歳ながら大人びた女性で、しかも美人である。
そんな美人がメイド服を着ていると、当然クロウは目で愉しむ。
「むう……クロウさん?」
「お嬢様、嫉妬はいけませんよ」
「し、嫉妬ではありませんわ!」
頬をプクッと膨らませてジト目でクロウを見ているセシリアは、傍から見れば拗ねているというのが丸わかりである。
チェルシーは自分の主人の可愛らしい姿を見て、ニコニコと笑っている。
「しかしチェルシーも美しくなったな」
「ありがとうございます」
何でもないように言葉を返すチェルシー。
しかし幼馴染で長い付き合いのセシリアには分かった。
彼女の顔が、ほんの少しだが嬉しそうに表情を崩したのを。
◆
「いや、しかし二人ともよく似合っているな」
クロウの目の前に、水着姿でいるセシリアと鈴。
二人ともとびっきりの美少女なので、プールに来ている他の人の視線を奪ってやまない。
「ふふ、ありがとうございますわ」
そう言って優雅に微笑むセシリア。
臨海学校で使っていた水着を新調し、少し露出度が高い水着となっている。
ツンと張った乳房を覆い隠すブラだが、隠しきれずに少しはみ出したりしている。
「あ、ありがとう……」
照れながらお礼を言った鈴。
彼女は水着を新調していないものの、臨海学校の時より身体がキュッと引き締まっていた。
健康的な肢体が惜しげもなくさらされ、男たちの視線を誘う。
「ふむ……だがお前たちが見られているのは、あまり面白くないな」
「「―――――っ」」
その言葉に、キュンと胸が高鳴るセシリアと鈴。
遠まわしに『お前は俺のもの』と言われて、嬉しさがこみあげてくる。
セシリアも鈴も代表候補生ということで写真撮影などもこなしてきたので、人に見られることはどうとも感じない。
まあ時折男どもから浴びせられる卑猥な視線だけは腹立たしいが。
セシリアのきわどい水着も鈴が身体を引き締めたのも、クロウのためだけに用意したのだから。
「ふふ、ならわたくしたちが親しい仲だと見せつけないといけませんわね」
「そうねっ」
そう言って二人はクロウの腕に抱き着く。
女性らしい柔らかさのあるセシリアと、張りがあって肌触りのいい鈴に抱き着かれてご満悦のクロウである。
しかしセシリアと鈴がクロウに抱き着いたのは、不穏な空気を感じてでもあった。
「(……何人かクロウさんを見つめている人たちがいますわね)」
「(くぅ……こんな怖いのに惚れんじゃないわよ)」
一夏のような爽やか系イケメンではないが、クロウもそこそこのイケメンである。
しかも長身で筋骨隆々。
ゴリマッチョが好きな女性やがっしりした男が好きな女なら、どんぴしゃなのだ。
勿論威圧感もバリバリあるので、一般受けはしにくい。
まあこれのおかげで、セシリアと鈴にちょっかいをかけてくる男がいないのだが。
『えー、テステス。本日の午後一時から行われるメインイベント、水上ペアタッグ障害物競争に出場を希望する方は、フロントまでお越しください』
クロウ達がプールでイチャイチャしていると、園内放送が告げられた。
本来クロウと来ているので見向きもしない二人だが、優勝賞品を聞いて目を光らせた。
『なお、優勝賞品は沖縄旅行五泊六日ペアチケットでーす!こぞって参加してくださーい!』
沖縄青い海白い雲暖かな日差しペアクロウ二人きりイチャイチャetc…
「クロウさん!」
「クロウ!」
「「ちょっと参加して|きますわ(くるわ)!」」
「む?了解した」
こうして二人の代表候補生が参加することとなった。
◆
「今回参加したのは十二組、二十四名の女性たちです!」
司会の女性が飛び跳ねながらそう言うと、大きな歓声が上がる。
それが全部耳障りな野太い声。男だらけである。
この歓声には二つあり、一つは出場者に対する歓声。
セシリアと鈴という超絶美少女たちもさることながら、他の参加者も二人には及ばずとも容姿の整った女性たちである。
そして二つ目は、司会の女性が飛び跳ねるたびにダイナミックに揺れる胸である。
露出度の高い水着なので、揺れ方などがハッキリと視認できる。
勿論クロウは後者で歓声を上げた。
「む……クロウさんの女好きは凄まじいですわね」
クロウの視線が司会の胸にいっていることを目ざとく見つけたセシリアは、むすっとする。
観客―――八割が野郎―――が大量にいる中で、クロウを見つけられるのは流石狙撃手。
「そんなのもう分かっていることじゃない。嫌なら離れればいいのよ」
そんなセシリアにズバッと毒を吐く鈴。
澄ました顔をしているが、こめかみには青筋が浮かんでいる。
胸の話題を私に振るな。
「そんなことは死ぬまで……いえ、死んでからもありえませんわね」
そう言って鈴に見せつけるように胸を揺らす。
観客が完成を上げたのは言うまでもない。
そんなセシリアを、まるで親の仇の如く睨みつける。
セシリアも負けじと睨み返す。
まさしく竜虎相搏つ。
というか今回ペアで戦うのだが、こんなことで大丈夫か。
「大丈夫ですわ。問題ありません」
「……なに言ってんの?」
「いえ、別に」
さて、こんな会話を交わしている二人だが、沖縄旅行はペアでしか行けない。
なのにどうして共同戦線を張ったのか。
まあそれは片方がクロウと行ってもついていく気満々だからである。
費用はどうなのかと問われると、それこそ愚問。
代表候補生は国家公務員なので、毎月お給料があるのだ。
二人とも散財するような性格ではないので、それなりの額は溜まっているのである。
「ではルールの説明をします!もう一度よく聞いてくださいね!」
ルールは至って簡単で、巨大プールの中央にある浮島に飛び乗り、そこに刺さっているフラッグを取れば優勝である。
しかしこのレースの障害は、ペア参加ということもあり二人で協力しないと突破できないということになっている。
……始まる前から喧嘩している二人は大丈夫なのだろうか。
「大丈夫よ。問題ないわ」
「なに言っているんですの?」
「何でもないわ」
このレースは驚くことに、妨害が許可されている。
つまり競走ではなく戦闘が始まる可能性もあるのだ。
「ではレース、スタートです!」
「行くわよ、セシリア!」
「行きましょう、鈴さん!」
結果、原作のように仲間を傷つけるようなチームプレイをしなかった二人は見事優勝。
この優勝は、原作より二人の基礎能力が大幅に底上げされていることも要因の一つである。
それから三人は沖縄へ旅行することとなるのだが、それはまた別のお話。
違う作品も書いてみたくなってきた。
まあ書かないけどww