ドイツのどこかにある、薄暗い部屋。
湿度が高く、部屋の環境はお世辞にも良いとは言えない。
そんな部屋に、一人閉じ込められている女軍人がいた。
輝くような銀色の髪に、片目の眼帯。
ドイツ軍特殊部隊シュヴァルツェ・ハーゼの隊長、ラウラ・ボーデヴィッヒだった。
普段キリッとしていて冷たささえ感じる表情は、今は疲労の色が濃くなっていた。
それも仕方がなく、この三日間不眠断食で過ごしているのだ。
体力など、もうほとんど残っていない。
「ラウラ・ボーデヴィッヒ。尋問の時間だ」
いつの間にか目の前に立っていた尋問官がそう言う。
疎ましげにそれを見上げるラウラだが、どうしても顔が陰になっていて見えなかった。
しかし声から男だということは判断できる。
「さて、先の戦闘に於いてのお前らの目的はなんだった?」
「……言うと思うか?」
ラウラは男を嘲笑う。
自分は誇り高きドイツ軍人であり、シュヴァルツェ・ハーゼの隊長である。
国を……仲間を売る行為など絶対にしない。
「ふむ、まあお前がそうすんなりと話すとは思っていない。なのでありきたりで悪いのだが、人質を取らせてもらった」
「何っ!?」
男の言葉に、疲れ切っている身体を押して反応する。
男が見せてきた写真には、同じ部隊の仲間が数人、地面に転がされていた。
全員ぐったりとして倒れており、所々痛々しい青あざが見える。
「貴様!こんなことをしてただで済むと思うなよ!」
ギロリと睨みつけて呪詛を吐く。
その瞳は軍人であろうとも恐怖で震えるほど迫力のあるものだったが、男はまったく動じた仕草を見せなかった。
「ふむ、威勢がいいのは構わないのだが、今もこいつらは私たちの手の中にあるということを忘れては困るぞ」
「……っ。それでも目的を言うことはできない」
苦々しく顔を歪めながら、それでも決断した。
一より多。部隊より国に住む国民の方を取ったのだ。
隊長ともなれば、このような決断もしなければならない。
「そうか、ならば構わない」
「……なに?」
さらに追及されるかと構えていたラウラだが、男の言葉に肩すかしをしてしまう。
訝しげに見上げてくるラウラに、男が答える。
「私には国に対する忠誠心がないからな。別に栄えようが滅びようが知ったことではない」
「……ではお前の目的はなんだ」
このような人間は危険だとラウラは考える。
自分中心的な考えをするものは、基本的に皆危険なのだ。
特にこの男はこの考えが非常に強いと見える。
「私の目的か……。まあ三大欲さえ満たされていれば、私は満足だ」
それは獣と同じだ。
眠りたい時に眠り、食べたいものを食べ、子孫を残そうとする。
そこらにいる野生の動物と同じだ。
「さて、ラウラ・ボーデヴィッヒ。私は特に性欲が非常に強い。お前の部下から何人かいただこうかと考えているのだが……」
「ま、待て!」
ラウラの制止に、部屋から出て行こうとしていた男の足が止まる。
依然として男の表情は窺えないが、雰囲気から笑っているように感じられる。
まるでラウラが呼び止めることが分かっていたかのように。
「何かな、ラウラ・ボーデヴィッヒ」
「そ、それは私がする。だから部下たちに手は出さないでくれ」
ラウラがそう言うと、いいだろうと頷く男。
彼女は自分の身を売って仲間を守ったのだ。
それが悪手だということに気づかずに……。
◆
「さて、まずはキスをしてもらおうか」
「キス?」
男の膝の上に抱えられた状態で、慌てた声を上げるラウラ。
男がかなり大柄で、ラウラ自身も148cmと小柄なので、彼女は男を見上げている形になっている。
ろくに知りもしない男に抱えられているというのは屈辱の極みだが、部下のために我慢しなければならない。
何でも言われたらやるつもりだったが、まさかキスをしろと言われるとは思っていなかった。
問答無用で組み伏せられて犯されるものだとばかり考えていた。
「心外だな。そうしてもまったく愉しくないではないか」
「……そういうものなのか?」
「そういうものだ」
キスとは接吻……口と口を合わせる行為。
特殊な育ちから一般的な考えを持っていないラウラからすれば、キスなどいくらでもできる。
普通なら初めては好きな異性と……なんて考えるものだが、彼女はそんなことはなかった。
「ふむ、わかった」
ラウラはそう言うと、顔を上に向けて男の唇にキスをした。
ちゅっと音がする、可愛らしい接吻だ。
「(……これが何か意味があるのだろうか?)」
そんなことを考えていたラウラだが、次の瞬間大きく動揺することになる。
「んんっ!?」
男がラウラの柔らかな唇を割り、舌を侵入させてきたのだ。
そして彼女の小さな舌を舐めだした。
「ん、ふ……」
始め目を見開いて驚いていたラウラだが、舌を愛撫されていると次第に表情が和らいでいく。
いつの間にか自分からも舌を絡めはじめていた。
「ぷはっ……」
口を離しても、ドキドキと胸が高鳴ったままだ。
キスをしていた時よりもうるさくなっているかもしれない。
男はラウラの軍服をはだけさせると、白く透き通る肌にキスをし始めた。
唇が触れるだけのものだが、ラウラはくすぐったいような気持ちいいような不思議な感覚に襲われていた。
「立て」
男の言われた通り、膝から降りて地面に足をつける。
すると男はラウラが穿いているズボンを器用に脱がせた。
白いショーツが男の前にさらされる。
しかし羞恥心がほとんどないラウラは、別に下着を見られたくらいで騒ぎはしなかった。
「……もう濡れているな」
「う、うるさい」
ショーツをズリ下げられると、陰部からショーツに愛液が伸びていた。
流石にこれは恥ずかしかったらしく、顔を少し朱に染める。
男はラウラを四つん這いにさせる。
陰毛が一つも生えていなく、秘裂がぴったりと閉じた可愛らしい陰部が見え、キュッと閉じた肛門も丸見えだ。
「ひゃぁっ!?な、何を……!?」
ラウラは凛々しい普段では考えられないほど可愛らしい悲鳴を上げる。
その理由は、肛門から感じられたひんやりとした謎の感覚だった。
男はどこから取り出したのか、ローションをラウラの肛門に塗りつけたのだ。
「き、貴様なに―――あぁぁぁっ!?」
背を仰け反らせて大声を発する。
臓器が大きくて固いものに押し上げられる。
男はラウラの肛門に男根を挿入したのだ。
初めて感じる未知の感覚に、ラウラは戸惑いを隠せない。
そう、彼女はかなり小さいものだが、快感を得ていたのだ。
確かに臓器を押し上げられて肛門を広げられるのはかなり苦しく、痛い。
しかしぞくぞくとした感覚が身体中を駆け巡っているのも事実だった。
「ふむ、どうやらお気に召してもらえたようだな」
「そ、そんなわけ、あるか……」
そう言うラウラだが、腸内で男根を強く締め付けている。
それは異物が入ってきたことへのただの防衛反応なのか、それとも……。
「うぐっ!ひぁっ!あっ!あっ!!」
後ろから激しく突かれて、思わずといった様子で声が漏れる。
腸内を傷つかせまいと腸液が大量に滲み出し、結果男根の動きを助ける。
陰部がキュンキュンと疼き、愛液も滲み出す。
「あっ!あっ!うっ!あっ!!」
男根を突き入れられると電流が走り、小柄な肢体をビクビクと震わせる。
頭を力なく地面に伏せ、よだれが染みを作る。
「肛門でここまで感じるとはな……お前は変態だ」
「ちが、うぅぅっ!!」
息も絶え絶えに反論する。
しかし奥をゴリゴリと抉られると、またあっけなく嬌声を上げる。
男の動きが激しくなると、腰が引き締まった尻に当たってパン!パン!と肉音が発生した。
陰部の疼きも大きく鳴り、じわりと愛液が太ももにまで侵食する。
「あっ!あっ!あっ!あっ!!」
腰の動きが最高潮になると、肉音の間隔も短くなる。
ラウラは小さな身体をガクガクと痙攣させながらも、それを受け入れる。
男根が腸内でぶるりと震える。
それが射精の前兆だと悟った彼女の身体は、キュゥゥゥっと強く締め付けた。
「んぁぁぁぁぁっ!!」
ドブッと鈴口から精液が発射された。
それは男の欲望のように勢いを弱めることなく、腸内に満たされていった。
「こ、これで……部下たちに手は出さないな……」
絶え間なく送り続けられた快楽の余韻に浸りながら、達成感を滲み出させるラウラ。
いくら特殊部隊隊長といえども、彼女はその小さな身体で男の欲望を受け取って見せたのだ。
「何を言っている?まだ私は元気なままだ」
「なん……だと……!?」
―――――まあ男が満足したというわけではなかった。
男はラウラの体位を変えて、四つん這いからМ字開脚をさせた。
かぱっと脚が開かれると、愛液でむわっとした空気があった。
「ちょ、ちょっと待て!そっち、はぁぁぁぁっ!!」
亀頭を秘裂にこすり付け、動きがスムーズになるように愛液で濡らす。
そして男根を膣内に挿入した。
小さな陰部だが、肛門性交ですでに男を迎え入れる準備はできていたようで、軽く男根を飲み込んだ。
しかし膣内は依然としてきつく、男根を隙間なく締め付けてくる。
思っていた以上の衝撃に、思わず男の背中に腕を回して抱き着いてしまう。
「んっ!?んむぅぅぅっ!?」
不意打ちだった。
強く抱きしめられたと思ったら、唇を塞がれていた。
それと同時に男の腰も動きだし、膣内を抉る。
キスされるのは嫌なはずなのに、身体が受け入れてしまう。
「うぅっ……」
膣内を男根で広げられるので、腸内が狭められ発射されていた精液がドロリとこぼれ出した。
粘度が高いようで、ゆっくりと尻の谷間を伝ってこぼれていく。
その気持ち悪い感触に、ラウラは嫌そうに身をよじる。
「おい、気持ち悪いからなんとかしろ」
「……ふむ」
ラウラの涙目の嘆願に、男は動き出す。
正常位から彼女を持ち上げ、対面座位にする。
そして指を尻のほうに持って行き、なんと肛門に突き刺したのだ。
「~~~~ッ!!」
声にならない嬌声を上げる。
男のごつごつとした太い指が肛門に埋まり、精液の流出を阻止する。
男根で膣内を刺激されながら腸内も刺激されると、とてつもなく大きな快楽が得られた。
「あっ!あっ!んっ!あっ!!」
ラウラの小さな身体が男の膝の上ではねる。
巨大な男根は膣内を隙間なく埋め、子宮を押し上げる。
子宮口に亀頭が当たり、キスをする。
男は尻を弄るのも忘れない。
ぐりぐりと指を回転させたりして、常に刺激する。
「んっ!んっ!んぅっ!!」
ラウラの身体も本能に身を任せ、さらに快楽を得ようと貪欲に動く。
男に突き上げられると、彼女の身体は腰を動かす。
腰を回転させたり揺らしたりして、腸壁を抉らせる。
「さて、ラウラ・ボーデヴィッヒ。そろそろ終わりにしよう」
男はそう言うと膝から彼女をおろし、地面に組み伏せる。
ラウラはすでに言い返せるような気力はなく、ただ男にされるがままだった。
舌をねっとりと絡ませる濃厚なキスをする。
ラウラの顔はうっとりと蕩け、だらしなく緩む。
「あっ!あっ!あっ!あっ!!」
ズン!ズン!と激しく奥を抉られる。
ラウラの脚はいつの間にか、男を離さないように抱き着いていた。
綺麗な目から涙を流し、快楽に酔う。
「どこに
「あぁっ!あっ!あっ!」
男の質問に、ラウラは答えなかった。
しかし腰に回された脚が、雄弁にラウラの答えを語っていた。
ゴッゴッと一番深い場所に強く当たり、目に火花が散る。
一足先に、ラウラが絶頂を迎えた。
キュゥゥゥゥっと膣内が脈動し、尻穴から精液が垂れる。
「あぁぁぁぁぁぁっ!!」
そしてそのすぐ後、男も男根から大量の精液を放出した。
勢いよく噴き出されたそれは、膣内を瞬く間に満たしていった。
ラウラの顔は凛々しい女軍人の顔ではなく、快楽に酔うあさましい雌の顔だった。
「ぁ……」
だんだんと意識が遠のいていく感じがする。
ふと見上げると、先ほどまでどうしても見えなかった男の顔が窺えた。
その顔は……。
◆
「クロウぅぅぅぅぅっ!!」
「うひゃぁっ!?」
ベッドから跳ね起き、絶叫する。
顔を真っ赤にし、目には涙が溜まっている。
ラウラの美しい銀髪が、朝日に煌めいている。
「ら、ラウラ?大丈夫?」
はあはあと荒く息をつくラウラに声をかけたのは、彼女のルームメイト。
金髪で中性的な容姿をした美少女、シャルロット・デュノアだ。
「あ、ああ、大丈夫だ」
ラウラは心配そうに見てくる彼女にふっと笑いかける。
夢は自分の願望だと言われているが、私にあんな願望があるのだろうか?
いやいやそんなはずはない。尻であれほどよがるなんてありえない。
そもそもほとんど無理やりだったではないか。
私は無理やりヤられて嬉しがるようなドM女では断じてない。
「ほ、本当に大丈夫?」
「大丈夫だ、問題ない」
ブツブツと小さく呟き続けるラウラが本当に大丈夫なのか、不安を覚えるシャルロット。
しかし本人が大丈夫と言っているのだから、大丈夫なのだろう。
それにラウラは体調管理もしっかりとしているし、心配する必要もない。
「(まあ全裸で寝ているから体調管理も何もないと思うけど……)」
シャルロットは苦笑しながらラウラを見る。
ラウラは寝間着がないと言って、寝るときはいつも全裸なのだ。
そして今も全裸である。
悪夢にうなされていたからだろうか、珠のような汗が白い肌の上に浮かび、扇情的な雰囲気を醸し出している。
異性はある男にしか興味がなく、当然同性愛好の趣味がないシャルロットでも、思わず唾を飲み込んでしまう情景だ。
「どうかしたか?シャルロット」
「な、なんでもないよっ!」
キョトンとして首を傾げながらラウラが聞いてくる。
そうすると柔らかな銀髪がはらりとこぼれ、幻想的な美しさがあった。
シャルロットはわたわたと手を振りながらそう言うと、話題を変えようと声をかける。
「ら、ラウラ!食堂に行って朝ごはんを食べない?」
「ふむ……そうだな、シャワーを浴びてからでいいか?」
そう、この汗に濡れた身体も流したいが、とにかく股のぬるぬるとした感触をどうにかしたかったのだ。
◆
いくらなんでも寝間着を持っていないのはどうかと考えたシャルロットは、ラウラを買い物に誘うことにした。
幸い今は夏休み中だし、朝からでも外出できる。
それに対してラウラは別にいらないと断ろうとしたが、シャルロットにクロウを餌にされて食いついた。
ルームメイトになってまだそう時間は経っていないが、シャルロットはラウラの扱いを心得ているようだ。
「成程、だから私のところに来たのか」
「うん、もしかして予定とかあったりした?」
「いや、それは問題ない」
そうして今シャルロットとラウラは、クロウの部屋の前にいた。
無事クロウとも会うことができて、買い物に付き合ってくれるよう頼んでいるところだ。
相手の予定を伺うシャルロットに、クロウは大丈夫という。
上目づかいで見てくるシャルロットが可愛くて、あまり考えずに出た言葉だったりする。
「さあ、嫁!買い物に行くぞ!」
クロウの腕にまとわりついて、グイグイと引っ張るラウラ。
傍から見れば猫が飼い主にじゃれついているように見える。
実際、シャルロットはどこかほんわかとした表情でそれを見ていた。
「まあ待て。私も準備があるし、お前たちも私服に着替えてきたらどうだ?」
「そうだね、行こラウラ」
こうして後で合流することにして別れた三人。
準備している途中で、ラウラが寝間着どころか私服すら持っていなくて軍服しかないことに頭を抱えているシャルロットの姿が見られていた。
◆
三人の姿は今バスの車内にあった。
一番後ろの広い席に、三人仲良く並んで座っていた。
勿論クロウは真ん中でシャルロットとラウラに挟まれた形となっている。
「その服はシャルロットに似合っているな」
「そ、そうかな?えへへ、ありがと」
シャルロットの私服は淡い水色が入った白のワンピース。
彼女の優しげな雰囲気とうまくあっている。
意中の男に褒められて照れる様子は、他の乗客が思わず見惚れてしまうほどだった。
「むぅ、クロウ。私のことも褒めないか」
「ああ、制服だが似合っているぞ」
「うむっ」
ラウラの頭を優しく撫でながらそう言うと、彼女はご満悦といった様子で胸を張った。
と言っても普段見ている制服の姿じゃ、新鮮味に欠けるのも事実。
「ただお前の私服姿も見てみたいな」
「ふむ……なら買うとしよう」
基本的におしゃれなどにまったく興味を示さないラウラが、クロウの鶴の一声でおしゃれに目覚めた。
動きやすければ何でもいいというほどのラウラにここまであっさりと考えを変えさせることができるのは、クロウだけ―――しいて言えばシャルロットも―――である。
「ねえねえ、あの制服ってIS学園だよね?」
「うわぁ~、初めて見た。IS学園って確か倍率が一万倍超えてなかったっけ?」
「なにそれ怖い」
「じゃああの子も超エリートってことかな?」
「私たちとは色々と違うよね~」
シャルロットの容姿の可愛らしさや、ラウラの制服が視線を集める。
注目されたシャルロットは恥ずかしそうにしてクロウの陰に隠れるようにし、ラウラはまったく気にせずクロウに甘えていた。
そんな二人を侍らせているクロウが気になる人々だったが、筋骨隆々の長身男は怖いので話題に上がらなかった。
それからバスは三人の目的地に着き、三人はバスから降りた。
やって来たのはシャルロットが臨海学校の買い物でやって来た、駅前のデパートだった。
「う~ん、まずはやっぱり服だよね。ラウラはどんな服がほしい?」
「クロウが褒めてくれるような服」
あまりにも抽象的である。
といってもラウラほどの美少女なら、大抵のものが似合う。
そしてクロウもそれを褒めまくることだろう。
「分かりづらいなぁ……。まあとりあえず秋の服は後でにして、夏の服を買いに行こう」
「……もう秋の服を買うのか?」
「女の子は季節を先取りするものだよ」
ほへ~と感心するラウラ。
自分が見眼麗しい美少女だということを理解していたら、彼女は小悪魔になっていたかもしれない。
ちなみにクロウもほ~と頷いていたりする。
そうして三人はまず七階にある服屋に向かうのだが、夏休みということもあって人が溢れかえるほど大勢いた。
一般の女子高生より小柄なシャルロットとラウラは、埋もれてどこかに流されそうになる。
「む、手をつないでいたほうがいいみたいだな」
そんな二人の手を掴む逞しい手。
かなり長身のクロウは、二人が流されかけていることに気づいたのだ。
二人の手を優しく、しかし力強く握ってはぐれないようにする。
「あ、ありがとう……」
「た、助かる……」
シャルロットはクロウと手をつないでいることに嬉しさと恥ずかしさを感じて赤面。
ラウラは純粋に人ごみに参りかけていたので、素直に礼を言う。
というかラウラは軽く人ごみに酔っていた。
「シャルロット、ここか?」
「あ……う、うん」
目的地である店に着いたので、クロウはシャルロットから手を離す。
シャルロットは名残惜しそうにクロウの手を見ながら、コクッと頷く。
ちなみにラウラの手も離そうとしたのだが、彼女は小さな両手でギュっと握ってくるのでそのままにしている。
それをシャルロットが羨ましそうに見ていたのは余談だ。
「ど、どのような服をお求めですか?」
そう三人に話しかけてきたのは、この店の店長だ。
テレビでもそうそう見ることのできない超絶美少女が二人と、絶対に顔を合わすことができないような強面男がやって来たことで少しの間フリーズしていたが、仕事を果たすために話しかけてきたのだ。
まさに美女と野獣だなと思っていたのは、店長だけの秘密である。
「あ、この娘が似合うような服を探しているんですけど、何かいいのがありますか?」
「そちらの銀髪の方ですか?そうですね~、なんでも似合うと思うんですけどおすすめしたいのは……」
シャルロットと店長で、ラウラに似合う服が選定されていく。
当事者であるラウラや付添いのクロウは、手持無沙汰に立っていた。
「何というか……凄いな」
「それほどお前のために一生懸命なんだろう」
「ラウラ!これ試着してきて!」
クロウと話しているラウラに、シャルロットが服を押し付ける。
その勢いに押される形で、試着室に入って行った。
「(何だか知らんが、今のシャルロットには逆らえる気がしないな)」
ふぅっとため息をつきながら、制服をするすると脱いでいく。
そしてショーツ一枚になると、鏡に映る自分を見つめる。
シミ一つない真っ白な肌を、長い銀髪がさらさらと撫でる。
眼帯に包まれた片目と、赤い瞳。
凹凸の少ない身体だが、訓練を受けたからか必要な筋肉がキュッと詰まっており、張りのある肉体。
「(やはりクロウも胸がある方がいいのだろうか……)」
むにむにと胸を揉みながら、むむむと唸る。
確かに柔らかいが、シャルロットと比べてあまりにも量感がない。
「(……でもこの体型でも嫁は好きと言ってくれているしな!うん!)」
でへへ……とクラス内では決して見せない、だらしない笑顔を浮かべる。
こんな笑顔を見ることができるのは、これまたクロウとシャルロットだけである。
「ラウラー、もういいー?」
「ちょ、ちょっと待ってくれ」
シャルロットの声に、わたわたと着替えはじめる。
「も、もういいぞ」
着替え終えて、試着室から出てくるラウラ。
肩が露出した黒いワンピースで、パーティのドレスのようにも見えるその服を着たラウラは、照れくさそうにしている。
一方店内はシン……と静まり返っていた。
それはラウラの可愛らしさに、言葉を失っているからである。
よく一緒に行動するシャルロットでさえ、ほわぁ~と幸せそうにトリップしている。
「よく似合っているぞ、ラウラ」
「そ、そうか……」
そんな中ラウラを褒めたのが、クロウであった。
滅多に表情を変えないクロウが、少し微笑む。
そのことにラウラはまるで天にも昇る心境だった。
「うわぁ~、本当によく似合っているよ、ラウラ!さ、このミュールも履いてみて!」
わは~と幸せそうにしながらぐいぐいとラウラに迫るシャルロット。
可愛いものが大好きな彼女からすれば、ラウラはドンピシャだったのだ。
「むぅ……これは履きづら―――――」
「おっと」
普段軍用ブーツしか履かないラウラは、履きなれないミュールなので体制を崩してしまう。
あわや地面に倒れてしまうかと思われたが、その前にクロウが優しく受け止めた。
「す、すまない……」
「気にするな」
もうクロウから離れて自分で立てるのだが、ラウラは中々離れようとしない。
逆にクロウの逞しい胸板に顔を寄せ、胸いっぱいに彼の匂いを吸い込む。
そして何とも幸せそうに微笑む。
「むぅ……」
それを見ていて面白くないのが、シャルロットだ。
自分も甘えたいのはやまやまなのだが、周りに人が大勢いるので自分の性格上それはできない。
ラウラの性格が羨ましく感じる。
「あ、あの、一枚写真いいですか!?」
「む?」
幸せそうに笑うラウラを見て、ひとりの女性が写真をねだる。
それに便乗して多くの人が写真を撮り始めた。
その十数分後、某SNSで『リアル美女と野獣』として写真投稿されているのだった。
◆
「つ、疲れた……」
ぐでぇ……とテーブルに身を任せるラウラ。
写真を撮られまくったのがよほどこらえたのだろう。
いつもの凛々しさがまったく感じられない。
「あはは……ほら、ご飯食べて元気だしなよ」
「うむ……」
シャルロットが苦笑しながら勧めると、ラウラはパスタを一本ずつ食べていく。
無意識なのだが、そんな姿もシャルロットの心にズキュンと矢を穿っていた。
「次はどうするのか決めたのか?」
「あ、僕は腕時計が見に行きたいなって思っているんだけど……」
ブラックコーヒーを飲みながらクロウが聞くと、シャルロットがそう答えた。
高価な腕時計だが、代表候補生として給金があるので金銭面的にはかなり裕福なので、シャルロットでも買えるものである。
ちなみにラウラはクロウのコーヒーをちびりと飲み、あまりの苦さに顔をギュっと歪めていた。
「ラウラは何かほしいものはあるか?」
「うむ、日本刀」
「に、日本刀かぁ……」
思春期真っ盛りの十五歳とは思えない発言だが、ラウラらしいといえばラウラらしい。
といってもデパートで日本刀を手に入れることはできないだろう。
「クロウ、お前は日本刀を持っていないのか?」
「あるぞ」
「本当かっ!?」
クロウの専用機の中には、それはそれは大量の武器が入っている。
その中には日本刀も勿論含まれている。
日本といえば日本刀と頭の中で直結しているラウラは、見せてくれとクロウにまとわりつく。
「…………」
そんな中、シャルロットはため息をついている女性を見つめていた。
彼女の優しい性格上、それを見て放っておけない。
「ねえ、クロウ、ラウラ。ちょっとあの人の話聞いてきてもいい?」
「ほどほどにな」
「うんっ」
ラウラから許可をもらったシャルロットは、悩める女性の元へと近づいていく。
このことが大きな騒動に巻き込まれることだとは、まだシャルロットたちは気づけていなかった。
◆
「いらっしゃいませ、お嬢様」
執事服を着た金髪の美少年が、来店した女性たちに笑顔を向ける。
女性たちは呆けたような顔をしたあと、うっとりとした表情で彼を見つめた。
「水だ」
ドン!と音を立てて水が入ったコップをテーブルに置く……というか叩き付ける少女。
メイド服を着た彼女は、その容姿の可憐さで男性客の目を引き付けてやまない。
接客がおそろしく悪くても、彼女を呼ぶ声は途切れない。
「(はぁ……まさかこんなことになるなんて……)」
金髪の執事……シャルロットは、客から見えない場所でため息を吐く。
彼女が話しかけた女性は、この執事&メイド喫茶『@クルーズ』の店長だった。
どうやら店員の男女が駆け落ちしたらしく、それで人員が足りてないとのこと。
しかも今日は本社から視察が来るので、どうにかしなければならなかった。
そんなとき話しかけてきたのが、中性的な美少女のシャルロットだった。
しかも連れも美少女ではないか。
……もう一人の連れは見なかったことにした。
そういうことで是非手伝ってほしいと言われたシャルロットとラウラ。
彼女の性格上それを拒否することはできなく、またクロウも許可したことからバイトをすることになったのだ。
「(でも僕も可愛いメイド服のほうがよかったよ……)」
クロウには褒められたが、性格が乙女なシャルロットは複雑な心境だった。勿論嬉しかったが。
しかもラウラがとても似合っていることが、羨ましかった。
シャルロットは一人テーブルについてブラックコーヒーを啜っているクロウの近くに行く。
「ごめんね、クロウ。付きあわせちゃって」
「気にするな」
そう言ってくれるが、できるだけ早く終わらせてまた買い物に行くとしよう。
そう考えて接客に精を出すが、こういう時に限って邪魔が入るものである。
「全員動くなっ!!」
そう大声を出して、店内に荒々しく乗り込んでくる三人組。
顔に覆面をつけた男の一人が、銃を天井に向けて発砲した。
「きゃぁぁぁぁっ!!」
女性客の悲鳴が上がる。
それも仕方がないだろう。
現代の日本で普通に生きているうちは一生見ることのない銃を間近で、しかも敵意を持って向けられているのだ。
「うるせぇっ!殺されたくなけりゃ黙ってろ!」
男たちの背中にあるバッグから、皆大好き諭吉さんが何枚か顔をのぞかせていた。
そう、強盗だった。
しかし日本で銃を保持しているとは、中々堂に入った強盗である。
「ちっ!もう来やがったかっ……」
男たちの見る先には、店を包囲した警察の姿があった。
リーダー格の男が車の要求をした後、警官たちにむかって発砲した。
外でも野次馬たちの悲鳴が上がる。
某SNSで『強盗なう』と書き込もうとしていた人は、恐怖で腰を抜かしていたりする。
「へへ、平和な国ほど犯罪がしやすいって本当だったんすね」
「ああ」
そういって笑い合う強盗たち。
しかし強盗たちは知らないのだろうか。
確かに平和な国ほど犯罪を起こしやすいというのは事実かもしれないが、平和な国ほど犯罪者は逃げ切れない。
だから平和な国なのだ。
「(えーと……ショットガンにサブマシンガン、それにハンドガン。よくこの国でこんなに集めたね)」
客や従業員が縮こまっている中、一人の執事が物陰に隠れながら強盗たちを見ていた。
そんなに銃器を揃えるほど頑張るのだったら、他のことで頑張ればいいのにと思ってしまうのは普通だろう。
「(さてと、どうやって―――――)」
そこまで考えて、シャルロットの思考は止まってしまった。
何故なら皆が地面にひれ伏している中、我関せずとばかりにマイペースを貫いている二人の男女がいたからだ。
「おい、お前!何で立ってるんだ!それにお前!なに平然とコーヒー飲んでんだよ!!」
強盗が言う立っている奴とはメイド服を着用したラウラで、コーヒーを飲んでいるのがクロウである。
ラウラは冷たい目で強盗たちを見つめ、クロウはまったく見向きもせずにコーヒーを飲んでいる。
ちなみにだがクロウはそれほどコーヒーが好きというわけでもない。
その後も大人しくしていろと告げる強盗だが、仲間が接客を受けたいと言うのでそれを許可した。
……そのメイドがバリバリの軍人であることも知らずに。
「水だ」
ラウラがそう言って持ってきたのは、大量に氷が詰まったコップだった。
最早水など見えないくらい詰め込まれたそれを訝しげに見つめていると、ラウラをそれを空中にぶちまけた。
「ほら、さっさと飲め」
ニヤリと笑うと、空中を舞う氷を指ではじいた。
「うげっ!?」
「痛っ!」
弾かれたそれは、氷の弾丸となって強盗たちを襲った。
さらにラウラは怯んでいる強盗の一人に襲い掛かり、鳩尾に深い膝蹴りを叩き込んだ。
小柄な少女といえども、軍人の攻撃をもろに喰らった男は悶絶した。
「こいつっ!!」
残った二人の強盗は、ラウラに向かって発砲する。
しかしラウラは身を低くしながら素早く移動して、物陰に隠れる。
「僕もいるんだよ」
「なっ!?」
メイドを追い詰めていたと思うと、金髪の執事―――シャルロットが強盗に襲い掛かった。
慌てて彼女に銃を向けるが、シャルロットは身を低くして脚を払う。
バランスを崩して落ちてきた男に合わせて、顎に拳を叩き込んだ。
「クソがっ!こいつがどうなってもいいのか!?」
仲間二人がすぐに制圧されたのを見て、リーダー格の男が人質に銃を向ける。
しかしその人質が問題だった。
「……む?」
そう、我関せずを貫いていたもう一人の男、クロウだ。
今も椅子に座ってコーヒーを飲んでいることから、今の攻防にもまったくの無関心だったらしい。
「あ、あの~……その人を人質にしないほうがいいとおもうよ……?」
「はぁ?何言ってんだてめえ」
シャルロットの善意の言葉も、強盗には通じなかった。
クロウはゆっくりとコーヒーをテーブルにおろし、銃を向けている強盗の手首を持つ。
そして―――――。
「うぎゃぁぁぁぁぁぁっ!?」
ぐしゃり。
日常生活では決して聞こえない音が、強盗の手首から漏れた。
そう、クロウは強盗の手首をその強靭な握力で破壊したのだ。
強盗の男は地面をのた打ち回る。
「あー……」
「ふっ、流石私の嫁だな」
冷や汗を垂らしながら苦笑いするシャルロットと、何故か誇らしげなラウラ。
そんな中、警察たちが店に押し寄せてくる。
捕まったら面倒だと、三人は逃げ出す。
こうして銀行強盗兼店内人質立てこもり事件は終わったのだった。
◆
「うわ~、かわいい~!」
目をキラキラと輝かせながら、堪らないとばかりに悶えるシャルロット。
そんな彼女の目の前には、恥ずかしそうに頬を紅潮させた一匹の黒猫がいた。
柔らかそうな毛皮に、プニプニとした肉球……の作り物を着用したラウラがいた。
「うぅ……何で私がこのような姿を……」
ちなみにだが、シャルロットも白猫に変身している。
全裸で寝ているラウラにと、シャルロットが選んだ寝間着である。
ファッションセンスは非常に乙女だといえるだろう。
もしシャルロットとラウラが他を圧倒するほどの美少女でなければ、ただの痛い女になっていた。
「ほ~ら、ラウラ。にゃんにゃん」
「や、止めろ!」
後ろからラウラを抱きかかえたシャルロットが、ラウラの手を掴んで猫ポーズを強要する。
必死でやめさせようとするラウラだったが、今まで感じたことのない圧力をシャルロットから感じてうまく抵抗することができない。
「もう~、ラウラは本当に可愛いな~」
「(こ、こんな姿を他人に見られたら私は……!)」
ラウラの考えはフラグである。
がちゃり。
「…………」
扉を開けた状態で固まるクロウ。
じゃれ合っていた状態で固まるシャルロットとラウラ。
「こ、これはね、クロウ。いろいろと事情があってね?僕の普段の寝間着はもっと大人のなんだよ?でもね?」
「あわわわわわ……」
目をぐるぐると回しながらとにかく否定しようとするシャルロット。
ラウラなどすでに人語を話せているかすら怪しい。
そんな二人の慌てる様を見て、クロウはふっと良い笑顔を見せる。
「それでね?僕は本当は―――――あれ?何でどんどんとにじり寄ってくるの?え?クロウ?」
「はわわわわわ……」
ある夏休みの夜。
一室から猫が発情したときのような声が、一晩中聞こえつづけたという。
最近文字数が多い……。
もっと短くすればもっと早く更新できるんだけど、途中で切るのは書きづらいしな~。
いやはや難しい難しい。