体育館が、生徒会の催し物である『シンデレラ』で大いに盛り上がっているころ、更衣室では殺伐とした空気が流れていた。
更衣室にいる人は三人。
「た、楯無さん……」
一人は爽やかイケメンこと織斑 一夏。
彼は王子様の典型的な衣装を身に纏い、片膝を地面についていた。
『シンデレラ』の主役である一夏だが、今は襲撃者と戦っている。
「てめえ……どうやってここに入った?ちゃんとロックしたはずなんだけどなぁ……」
一人は一夏を襲撃した女、オータム。
世界の裏側で暗躍する秘密結社・
彼女はアメリカ合衆国から強奪したIS・アラクネを纏っている。
一夏は先ほどオータムと戦闘を繰り広げたのだが、いかんせん半年前まではISをろくに見たこともない一般人だったので、彼女に手も足も出なかった。
そして白式も奪われ、命まで取られようとした時に、彼女が現れたのだ。
「ふふん。私、ピッキングの心得があったりするのよ」
口元を扇子で隠しているが、それでも隠しきれない不敵な笑みを浮かべている少女。
彼女はIS学園生徒会長・更識 楯無だ。
「おいおい、電子ロックは結構手間がかかるはずだぜ?」
「あら、私にとっては別に関係ないわ」
楯無はそう言いながら、自身の専用機を起動させた。
ロシア連邦が設計したISを元に、楯無がほぼ独力で完成させた第3世代型のIS。
白式などに比べてかなり少ない装甲で防御力に不安を感じさせるが、左右に浮遊している一対のパーツから水のヴェールが展開されていて、操縦者の身を守っている。
「ほぉ……てめえも専用機持ちか。どこの国だ?」
「いう訳ないじゃない。あなた、馬鹿でしょ?」
オータムはすでに刃向えない一夏を捨て置き、新たな獲物に向き直る。
自分の情報が大国にもれたらマズイことを考え、楯無に国の所属を聞く。
しかし楯無はそれを一蹴した。
まあそれも当然で、敵対者にペラペラと情報を漏らす者を代表操縦者に選ぶわけがない。
楯無は対暗部用暗部・更識家の当主である。
なので彼女は国が知らない
その中の一つに、オータムの情報もあった。
彼女の情報は非常に短気なことと、同じく構成員であるスコールという者に恋情を抱いているというものだった。
「なんだと、この餓鬼!ぶっ殺してやる!」
「(いやー、でもこんな小学生みたいな挑発に引っ掛かってくれるとはねー)」
いくらなんでもダメなんじゃないかと、敵対組織を思わず心配してしまう楯無。
オータムはすでに一夏のことは目に入っておらず、楯無だけを睨んでいる。
「(こういうタイプには、普通ストッパーにもう一人つけて組ませるものだけど……)」
楯無と生徒会メンバーで調べたところ、今回侵入しているのはオータムだけだった。
何故彼女だけでこんな強行に及んだのか。
「(オータムがとてつもなく強いのか……のどちらかね)」
自分が負けるとは思わないが、気合を入れなおす楯無。
ここには無力化された一夏もおり、彼も守らなければならない。
「(あまり強い兵器は使えないし、ここじゃ機動も限られている)」
狭い更衣室の中では、移動して一夏からオータムを遠ざけることもできない。
それに一般装備である銃だって、うまく使わないと流れ弾が一夏に当たってしまうかもしれない。
ここでの戦闘は、楯無にとって非常にやりづらい場所だった。
「ま、それは
「なにブツブツ言ってんだぁ!」
オータムはそう怒鳴り、楯無に襲い掛かる。
蜘蛛を連想させる八つの装甲脚が、それぞれ独立した動きで楯無を狙う。
「おっと、危ない」
楯無は大きなランスで、それを迎撃する。
蒼流旋と呼ばれるそのランスは、特殊なナノマシンで構成された水を纏っている。
その水は超高周波振動しており、強固なアラクネの装甲脚にも負けない。
「ちっ!硬ぇな!いいIS持ってんじゃねえか!もう一つ
「あら、あげないわよ。お姉さん、これ結構頑張って作ったんだから」
オータムは一度距離をとり、楯無を睨みつける。
楯無は彼女の強い眼光にもひるまず、ニコニコと笑っている。
「その顔が気にいらねえなぁ!ぐちゃぐちゃにしてやるよ!」
「嫌よ。クロウに嫌われたらどうしてくれるのよ」
振り下ろされた装甲脚を受け止めると、金属同士がぶつかり合うような耳障りな音が起きる。
楯無はランスの水の螺旋を加速させて鋭い切れ味を持たせる。
そして切れ味の増したランスは、オータムの装甲脚を切り飛ばした。
「うぉっ!?こ、この―――――っ!!」
即座に反撃しようとするオータムだが、続けざまに装甲脚をもう一本切り飛ばされる。
まだ装甲脚は6本あるとはいえ、楯無の実力を目の当たりするオータム。
自分が良いようにやられていることに、彼女は怒りを覚えずにはいられない。
「ふざけんな!さっさと私にぶち殺されろ!」
オータムはまたも装甲脚を楯無に叩き付ける。
当然楯無はランスでそれを受け止めた。
「はっ!馬鹿が!引っ掛かったな!」
オータムは楯無を見下し、大きく笑う。
すると装甲脚の砲門が開き、楯無に向かって銃弾が発射された。
「た、楯無さん!」
それを見ていた一夏は、悲鳴のように楯無の名を叫ぶ。
楯無のIS・
しかし楯無は、あの大国・ロシアの代表操縦者。この程度の相手では話にならなかった。
「大丈夫よ、一夏くん。安心して見ていてちょうだい」
「なっ!?」
勝利を確信していたオータムが見たのは、傷一つ負っていない楯無の姿。
それと水のヴェールに阻まれた銃弾だった。
普通の水なら、これくらいの薄い層なら銃弾はそれを突破して楯無を襲っていただろう。
だがこの水はれっきとした『兵器』だった。
「お返しよ♪」
「ぐぁぁぁぁぁぁっ!!」
オータムに蒼流旋を向け、ニッコリと微笑む楯無。
蒼流旋に搭載されている四門のガトリングガンが火を噴いた。
それは近距離で防ぐ術を持っていないオータムに次々に当たり、シールドエネルギーを大きく減らした。
「くそっ!」
大きく後退して距離を取ろうとするオータム。
しかし楯無の勝利はもう決まっていた。
「な、何だこれは!?」
地面に着地すると同時に、オータムの周りに水の壁が発生した。
四方から囲まれたオータムは、身動きが取れない。
「ごめんね。もうおねーさん、飽きちゃったわ」
「がぁぁぁぁぁぁっ!?」
楯無は誰をも魅了する美しい笑みを浮かべて、指を鳴らす。
すると水の壁の内側で大爆発が起きて、オータムを熱波と衝撃が襲った。
この一撃でアラクネのシールドエネルギーはほぼなくなった。
「すげぇ……」
一夏は楯無の戦いに感嘆する。
自分が手も足も出なかった敵を、まったく苦戦することなく倒した。
IS学園の生徒会長が最強ということに、一夏は納得した。
「さて、と。一夏くん」
「は、はい!おっ、と……」
楯無に声をかけられて顔を上げると、ひし形のクリスタルを投げられる。
一夏は驚きながらも、しっかりと受け止めた。
「これは……」
それはオータムに奪われていた白式のコアだった。
一夏は自分の専用機が帰ってきたことに、ほっとする。
「くそったれ……!」
「さーて、あなたにはいろいろと話してもらうわよ」
うめき声を上げながら、敗者であるオータムは悔しそうに顔を歪める。
しかし楯無が拘束しようとすると、顔をニヤリと嘲笑に歪めた。
「はっ……バーカ」
「っ!一夏くん!」
「うわっ!?」
楯無はオータムが何をしようとしたのか察して、一夏を守るように胸に抱きいれた。
そしてそのすぐ後、オータムに対して決定打を与えた
楯無はその時、アクア・クリスタルから発生する水のヴェールを最大展開し、その爆発から自分と一夏を守った。
「あちゃー。逃げられちゃった」
楯無の言う通り、オータムは爆発に紛れて姿を消していた。
楯無も逃げようと何かするとは予想していたが、まさか自分の危険を顧みない自爆をするとは考えられなかった。
だが、
「(うーん……最低条件の一夏くんを守るということは達成したけど、できたら捕まえたかったなぁ)」
更識家の当主なら、それも求められている。
今回は楯無の勝ちだが、完全勝利とはいかなかった。
「た、楯無さん……」
「ん……?」
楯無は自分の胸から聞こえた声に反応する。
特別な感情を抱いていない相手なので、別に胸が当たっていても何とも思わない。
しかし一夏は当然反応してしまう。
「(ぎゃぁぁぁぁっ!楯無さんのスタイルやべえ!お、落ち着け俺!守ってもらったのに欲情するとか最低だぞ!!)」
完璧なスタイルの楯無と密着しているのは、性欲旺盛な思春期男子にはあまりにもきつかった。
さらに今は二人ともISスーツという薄い生地で抱き合っているので、感触もまたよく伝わる。
一夏の顔は、ISスーツの胸部を大きく盛り上げている豊かな胸に挟まれている。
しかも脚も密着していて、肉付きの良い太ももが危ない場所を擦りつけてくる。
「(うわぁぁぁぁっ!!早くどいてくれぇぇぇぇっ!!)」
普通の男なら襲い掛かっているような状況だ。
しかし一夏の良識ある性格は、そんな蛮行をしなかった。
まあ仮に襲い掛かっていたとしたら、一瞬のうちに気絶することになっていただろう。
「あらー?一夏くん、興奮しちゃった?」
ニヤニヤと新しい玩具を見つけたような笑顔を浮かべ、一夏を弄りだす。
ついでとばかりに、さらに身体を密着させた。
「し、してません!いいから早くどいてください!」
更衣室に、顔を真っ赤にした一夏の悲鳴が響き渡ったのだった。
◆
「はぁ……はぁ……。くそっ!」
楯無に敗北して何とか逃げ出すことに成功したオータムは、IS学園から脱出して寂れた公園にいた。
顔を憎々しげに歪めている。
「(あのガキ!簡単な仕事だとか嘘言いやがって……!あんな化け物がいるとか聞いてねえぞ!)」
確かに一夏を倒すことは容易だった。
それなりに
だがその護衛が異常なほど強かった。
彼女が護衛は更識家の当主だと知って納得するのは少し後のこと。
今はこの計画を持ってきたあの少女に怒りを爆発させていた。
「帰ったら真っ先にぶち殺してやる……!」
怒りと憎しみを込めて呪詛をぶちまける。
自分たちのアジトに戻ったらどうやってやろうかと妄想する。
「―――――いや、お前にはここでつかまってもらうぞ」
「っ!?」
突然声をかけられ、オータムは目を見開く。
数々の修羅場を潜り抜けてきた彼女は、自分の近くに接近してくる気配などを察知することができる。
しかし今回はまったく気配を感じなかったのだ。
「なっ!?う、動けねぇっ!?」
慌てて声をかけられた後ろを振り向こうとしたが、まるで隙間のない壁に押し込まれたように、自分の身体がピクリとも動かない。
いや、目や口は動いているので、完全に拘束されたわけではないようだ。
「な、何者だ、てめぇ!?」
「貴様が知る必要はない。お前は拘束部隊が来るまで、ここで固まっていればいい」
自分を拘束する主は、ぞっとするほど冷たい声で告げた。
声からして、拘束しているのは女。それもまだ若い女だった。
「(それに見た限り拘束具はつけられてねえ……
ドイツ連邦共和国が生み出した特殊兵器。
一対一なら強力な効果を発揮する。
おそらく自分を拘束しているのはドイツ人のIS操縦者と見当をつける。
「お、おいおい。生身の人間にISの武装は使ったらダメなんじゃねえのか?」
「ふん、貴様がそれを言うか。
どうやらろくに会話をするつもりもないらしい。
自分を拘束している相手は、任務に忠実なのだろう。
「……あら?」
オータムが拘束されている場所から数百メートル離れた場所で、セシリア・オルコットは声を漏らす。
現在ラウラ・ボーデヴィッヒがオータムを拘束しているが、
なので保険としてセシリアが狙撃手として展開しているのだが、彼女のISがどんどんと接近してくる他のISを捉えたのだ。
セシリアはチャネルでそのISに警告する。
「とまりなさい。あなたはどこの所属ISですか?」
ここはIS学園の敷地内を出た、れっきとした日本国領土である。
現在はIS学園側が日本国政府にISの使用を通達しているから問題にはならないが、しかしそれはラウラとセシリアの二機だけだったはず。
つまり今接近してきているのは、拘束された仲間を助けに来た敵機の可能性が高い。
「…………」
セシリアのチャネルに応えることをせず、ただ接近を続けるIS操縦者。
このままでは数十秒もすれば、オータムとラウラの場所に到達してしまうだろう。
「ラウラさん。識別不明機が一機、こちらに接近してきていますわ」
『なに?』
プライベート・チャネルでラウラに情報を伝える。
『ふむ、おそらくこいつの仲間だろうな』
「ええ、どうしますか?」
ラウラはオータムを拘束しているので、実際戦えるのはセシリア一人。
勿論セシリアも凄腕の代表候補生なので負けることはないが、日本の法律が適用される日本国領土で派手に戦闘を行うことはできない。
万が一死者でも出てしまったら、イギリスの評価を下げてしまうばかりか、日本とイギリスの関係悪化もしてしまうだろう。
『日本の領土と国民に被害のない戦闘で、拘束部隊が来るのを待つしかないな。できるか?』
「それはあちらの実力次第ですわね」
セシリアはそう言いながらも不敵な笑みを浮かべる。
それは自分に対する絶対的な自信からくるものなのだろうか……。
「さあ、いきますわよ!」
セシリアは
そして蒼い極太のレーザーが、不明機に向かって発射された。
「っ!」
オータムを拘束している者の他にもう一人いることを当然知っていた操縦者は、飛来するレーザーもすぐに察知する。
試験搭載されているシールド・ビットを展開し、レーザーから身を守る。
しかしレーザーはそのシールドを破壊し、操縦者に襲い掛かろうとする。
「ふっ!」
だがその一瞬できた時間で不明機は射線から外れ、反撃とばかりにビットを五基射出する。
そのうち四つがセシリアに向かい、一つはラウラに襲い掛かる。
「ビット?……ということは、あれは我が国のISですわね。お恥ずかしいですわ」
セシリアはため息をつきながら、三基のビットを射出した。
不明機はイギリスで開発されているBT兵器搭載の二号機、サイレント・ゼフィルスだった。
まだまだ完成は遠いと言われていたが、一号機で試験機であるセシリアの
セシリアの有能さがここで裏目にでるとは、まさか彼女は思いもしなかっただろう。
「我が国の不始末はわたくしが処理しなければなりませんわね」
セシリアが射出したビットの二基は、向かってくる四基のビットを次々に撃墜していく。
ラウラを狙っていたビットも、セシリアが向けた一基のビットに撃墜された。
「っ!……ほう、イギリスの代表候補生というのは名前ばかりではないらしいな」
「あら、失礼しますわ」
セシリアは残っていたもう一基のビットを射出し、射線が空に向かう位置からレーザーを撃った。
ゼフィルスはそれを避け、彼女も残っていたビットを射出した。
「今度は正々堂々戦ってみたいものだな」
ゼフィルスはニヤリと笑うと、戦闘音に集まっていた野次馬たちに向かってレーザーを発射した。
「くっ……やはりそうきますわね」
セシリアはビットからレーザーを射出して、野次馬たちに迫っていたゼフィルスのレーザーに当てた。
こんな曲芸まがいな技術を持っているのは、世界でもセシリアだけだろう。
野次馬たちを素晴らしい技術で守ったセシリアだが、その間にゼフィルスはラウラに向けてライフルを撃つ。
「ちっ」
かなりの破壊力を秘めるライフル弾を無防備で喰らう訳にもいかず、ラウラは
他の行動をしながらも
「ドジを踏んだな、オータム。まあこれほどの操縦者がいるのだから、失敗するのも無理はない」
「うっせえ!私は失敗したんじゃねえ!戦略的撤退をしたんだ!」
「なんの戦略だ」
ゼフィルスは小型のレーザーガトリングを野次馬たちに向かって撃ち続けながら、
野次馬を銃弾の弾幕から守るには、元々狙撃手であるセシリアだけでは少々難しいので、ラウラもワイヤーブレードを使用してレーザーを迎撃する。
「ちっ……守りながら戦うというのはどうも好かん」
「わたくし、凄く戦いづらいですわ!」
ビットを駆使して何とかレーザーを相殺しているが、中々反撃に転じられないのが歯がゆい。
セシリアの戦闘技術ならミサイルビットを射出してゼフィルスを狙うこともできるのだが、ミサイルを日本の領土でぶっ放すことはできないので、防御に徹するしかなかった。
オータムを担いだゼフィルスは、ガトリングを撃ったまま二人に向き直る。
「イギリスの狙撃手にドイツの軍人。なるほど、国の代表にふさわしい強さだ」
「ふん、貴様の賛辞などいらん」
「あら、ラウラさん。こういうのは誰であろうといただいておくべきですわ」
余裕そうに会話している三人だが、この間にも無数のレーザーが撃ち続けられているし、それを相殺させている。
ISを駆る軍人どころか、代表候補生や代表操縦者でさえ難しいことだ。
「貴様らのことは覚えておこう。ではな」
「おい、てめえ!この担ぎ方はどうにかし―――――うぉぉぉっ!?急に飛ぶんじゃねえよ!!」
オータムの罵声がどんどんと遠くなっていった。
距離が三キロ以内ならラウラでも狙撃可能だし、セシリアに至っては五キロ離れていてもヘッドショットは可能だ。
しかし二人に与えられていた任務はあくまで捕縛であって、殺害ではない。
「……任務は失敗か」
「ですわね」
◆
「任務、成功しましたっ」
「…………」
大きな胸をバンッと張り、えっへんと誇らしげに言う楯無。
部屋に勝手に侵入されており、いきなりそんなことを言われたクロウは無言で返す。
まあいきなり部屋に入ってきてこんなことを言われたら何も返せないのも無理はない。
「任務……警護のことか?」
「そう!今日で襲撃の恐れが極端に低くなったから、もうお役御免ですって」
クロウがベッドの上に座ると、楯無はニコニコとしながら近寄ってくる。
普段は猫のような女なのに、今はご褒美を待つ犬のような雰囲気だ。
とりあえずクロウは頭を撫でてみる。
「むふぅ……中々のテクニシャン……」
少し癖のある水色の髪を撫でる。
そうしていると、いつかのゴロゴロと喉を鳴らしそうだ。
「あ……」
十分ほどそうしていると、不意に楯無が声を上げる。
クロウは片手を楯無の頭を撫でたまま、もう片方の手で大きな乳房を揉んでいた。
楯無がかなり密着してきていたので、柔らかな肢体が随分押し付けられていた。
欲望に忠実なクロウが我慢するはずもなく、こうなっているのだ。
「ふふ、えっちね」
「うむ、お前ほどの女なら仕方ない」
何が仕方ないのだろうか?
まあこれまで一夏に付きっきりだった楯無もどうやら期待していたようで、一応合意の上なのだろうが……。
むにむにと服の上から楯無の胸を堪能していたクロウは、突然楯無の身体に顔を寄せ、匂いを嗅ぎだす。
「ちょっ、クロウ!?」
乳房を揉まれながら幸せそうに笑っていた楯無は、顔をカッと赤くする。
自分の好きな人とか関係なく、他人に体臭を嗅がれて良い思いをする者は少ないだろう。
普段から身の回りのことをしっかりとしている楯無なら、女性特有の良い匂いを醸し出しているから大丈夫に思える。
だが今はまだ夏の暑さが残る時期で、今日は密閉された更衣室で激しい戦闘を繰り広げている。
それから生徒会長としての後処理をし、そのままクロウに逢いに来ている。
つまり楯無はまだ汗の匂いとかが残っていて……。
「興奮する」
「ぎゃぁっ!変態!えっち!離れろ!」
人を喰ったような立ち居振る舞いをする楯無とは思えないほど乙女な反応。
彼女のファンである生徒が見れば、唖然とするだろう。
……いや、案外かわいいと受け入れられるかも。
きゃあきゃあと騒ぎながら逃げようとする楯無の身体をしっかりと抱きかかえ、絶対に逃がさないようにする。
「うひゃぁっ!?な、舐めるなぁ……」
染み一つない綺麗な頬を舌で舐め上げる。
ほんのりと汗の味がした。
「あっ!ふっ、あ、だ、ダメだって……あぁっ!」
顔を舐めていた舌をどんどんと下げていき、首筋をレルレルと舐めていく。
楯無は嫌がる声は上げているが、身体をビクビクと小刻みに震わせていた。
クロウは楯無が逃げないように括れた腰に鍛え上げられた強靭な腕を回し、自分の身体に引き寄せる。
Eカップの豊かな胸は、制服越しにクロウの身体に押しつぶされる。
首から舌を離すと、楯無の細い首は唾液まみれになっていた。
敏感な楯無は首を舐められる快感に口を開けてぼんやりとしていたので、その口に吸いつく。
「んふっ、んっ、ちゅっ、んんっ!ぢゅる、ぢゅる」
舌で楯無の小さな舌を舐め上げる。
楯無は眉尻を下げ、目から涙を零す。
勿論嫌がっていることはなく、久しぶりに快感に酔っているだけである。
「んんっ!はっ!あっ!」
二人とも自然に舌を出し合い、舌だけを絡め合う。
ヌルヌルと唾液を交換し合っていると、口から唾液が零れ落ちる。
「んんんんっ、ぢゅるるるるる、んんんんっ!」
今度は隙間もないほど唇を押し付け合い、唾液を啜ったり送り込んだりする。
楯無の身体はぞくぞくと弱い快楽を感じていて、それに耐えるためにクロウの武骨な手を取り、指を絡め合った恋人つなぎをする。
「楯無は本当に敏感だな。見ていても愉しいぞ」
「ぷはっ……う、うるさいわね」
クロウのからかい言葉に、楯無は息を弾ませながら恥ずかしそうに俯く。
口を離すと、両者の口からそれぞれの唾液がこぼれる。
もともとエアコンがかかっていなかったので、部屋はとても暑くなっていた。
「ねえ、暑いわ。エアコンをつけましょう?」
「いや、今は必要ない」
「ちょ、ちょっと!?」
自分の汗の匂いを気にする楯無は少しでも身体を冷やそうと提案するのだが、クロウはそれを一蹴する。
そして抵抗する楯無の服をまくり上げ、彼女の汗に濡れた肢体を露わにする。
「汗で濡れまくるというのもいいと思う」
「私はいやー!」
何だか少し危ない雰囲気のクロウに、楯無は悲鳴を上げる。
楯無はただでさえ汗をかいていたのに、先ほどの接吻でさらに汗を分泌していた。
服をまくり上げるとむわっとした熱気がクロウを襲う。
「ふむ、色気のないブラだな」
「こんなことに発展させるつもりなかったんだもの。仕方ないじゃない」
豊満な乳房を覆うスポーツブラを見て言った言葉に、楯無はプイッと顔を背けながら答える。
汗は豊満な乳房に垂れ、深い谷間に沈んでいく。
乳房の真ん中を通って、スポーツブラに吸収される汗もある。
鍛えられて引っ込んだ腹を通り、スカートの中へと消えていく。
「んんっ!」
クロウはスポーツブラの上から、豊かな乳房に吸い付いた。
ザラザラとした生地の感触を感じながら舐めていると、汗がしみついているので塩っぽい味がした。
スポーツブラの上からでも分かるほど勃起した乳首を見つけると、舌を尖らせてそこをぐりぐりと押しつぶす。
「はっ、あぁ、クロウ……っ!」
乳首のある場所を、口内に含んで吸引する。
楯無は自分の胸に赤子のように吸い付いているクロウをドロリと熱にうなされたような目で見つめる。
息もだんだん荒くなっていき、はっはっと押し出されるようにして息を吐く。
クロウは乳首に吸い付きながらも、左手でスポーツブラをめくり上げる。
「相変わらず見事な乳だ。お前のスタイルは素晴らしい」
「は、恥ずかしいわよ。目を見て言うなぁ……」
ブラをまくり上げると、汗に濡れた大きな双丘がぶるっと飛び出すように出てきた。
量感のある乳房は勢いがあり過ぎて、ブラをまくり上げていた左腕にびたっと密着する。
クロウが目を直視して恥ずかしい褒め言葉を言ってくるので、楯無の体温はさらに上がる。
「うぁっ、あっ、あっ!」
豊満な乳房の片方を揉むと、むにっと指が沈んでいく。
しかし張りのある乳房は、途中でクロウの指を押し返していった。
片方の乳房には顔を寄せ、乳首にちゅっちゅっと唇が触れるだけのもどかしい愛撫を行う。
「んはぁぁぁぁぁっ!!」
充分焦らした後、人差し指と親指で桃色の乳首を摘まむ。
武骨な手の中で比較的柔らかい指の腹で、ぎゅっぎゅっと固くなっている乳首を潰す。
片方は赤子のように乳首にジュルルルルッと音がするほど吸い付く。
楯無の身体に、先ほど感じたときより強いゾクゾク感が走る。
「楯無の汗は美味いな」
「や、止めて、あっ、あっ!」
乳首を摘まみあげ、下乳を露出させる。
そこに溜まった汗を、レルレルと舐めとっていく。
より汗が溜まっている場所を舐められて恥ずかしそうにする楯無だが、すぐに嬌声を上げ始めた。
クロウは胸を一通り愛撫した後、ついに下腹部に手を出す。
「ここも汗で濡れているな。……いや、汗だけではないか?」
スカートを脱がして色気のないショーツも横にずらすと、ヌチャッと液体が糸を引く。
粘着性のあるのは愛液だろうが、おそらく尻穴に垂れて行こうとしているのは汗だろう。
「あ、汗よ汗!全部汗よ!」
楯無は恥ずかしさから、結構恥ずかしいことを口走ってしまう。
目がぐるぐるとまわっていて、まるで正気でない。
「ふむ……まあ舐めてみればわかることだ」
「え……やっ、あっ!あぁぁぁっ!ひんっ!あはぁぁっ!!」
むっちりとした太ももをしっかりと抱え込んで、じゅるじゅると音を立てて陰部に吸い付く。
楯無も一際大きな嬌声を上げて、強い快楽を愉しむ。
「あっ!だ、だめぇっ!あっ!あっ!あぁぁっ!!」
秘裂を親指で開けて、桃色の綺麗な陰部をさらけ出す。
膣口から溢れてくる愛液を、舌でレロレロと舐めとっていく。
それでも溢れる愛液は、重力に従って尻穴を伝ってシーツに染み込んでいった。
「あっ!あっ!あぁぁっ!ひぁぁぁぁぁっ!!」
ほぐれた膣内に指を突っ込んで、ズポズポと出し入れする。
その間に固くなった陰核を、舌で舐め上げる。
楯無の視界には閃光が発生し、快楽の強さを訴える。
「く、クロウっ!あっ!や、やだっ!いくっ!あっ!!」
陰部に隙間がないように吸い付いて、愛液を啜る。
うっすらと生えた陰毛が鼻をくすぐる。
楯無は絶頂が近づいてきており、嬌声がだんだんと切羽詰ったようになる。
「あぁぁぁぁっ!い、くぅぅっ!あぁぁぁぁぁっ!!」
なおも陰部に吸い付いているクロウの頭を手で掴み、陰部に押し付けるようにする。
腕を下腹部に持って行っているので、二の腕に寝ていても自己主張の激しい乳房が寄せられ、柔らかそうに形を変えた。
楯無はビクビクと身体を激しく震わせて、絶頂を迎えた。
トロトロと粘着力の強い愛液が、秘部から漏れ出す。
「気持ち良さそうだったな、楯無」
「あ、あ……あ……」
クロウのからかった言葉にも反応できない楯無。
クロウが舌を出しながら顔を離すと、陰部と舌の間に愛液の糸が紡がれた。
陰部は快楽の余韻でひくひくと厭らしく蠢く。
「厭らしいな、楯無。ぐちょぐちょじゃないか」
クロウは自分の服を脱ぎながら言う。
冷房が効いていないので、彼も盛り上がった筋肉の上に汗を光らせていた。
「どうだ?汗に濡れたものも、中々良いものだろう?」
「あっ、んっ、っ」
いきり立った男根を、濡れそぼった秘裂にこすり付けながら問いかける。
楯無は答えることはせず、ただ期待に満ちた目でクロウを見つめた。
秘部はすでに慣らす必要がないほど濡れていて、こすり付けるとくちゅっと音がする。
「愛しているぞ、楯無」
「―――――っ!!」
耳元でボソリと囁く。
クロウの言葉に、楯無はだらしなく顔を緩ませて喜びをあらわにする。
ぞくぞくと気持ちの良い感覚が全身をめぐる。
「あぁぁっ!うぁっ!あっ!あぁぁぁぁっ!!」
ズプププッと、楯無の膣内の感触を確かめるように、ゆっくりと男根を埋没させていく。
楯無は瞼を固く閉じ、ビクンビクンと汗に濡れた豊満な肢体を揺らす。
とても具合の良い名器の膣は、早く射精に導こうと男根を締め付ける。
「あぁっ!あっ!あっ!あっ!あっ!!」
ぎゅうううっと強く引き締まる膣内。
挿入されただけで達したようで、高い嬌声を上げる。
「
口ではそう責めるクロウだが、腰を動かそうとはしなかった。
今日は楯無の反応を愉しむために、少し余裕を持たそうと考えている。
しかし楯無はクロウに抱き着き、蠱惑的に微笑む。
「はぁ、はぁ……ふふ、汗だくになるのもいいかもね」
「そうか」
「ええ……でもまだよ。もっと汗まみれにして?そうすれば私、もっと好きになれるわ」
快楽に身体を震わせながらのおねだりに、クロウは心をくすぐられた。
おねだりされたのだったら応えねばならない。
「いいだろう、激しく犯してやる」
そう言うとクロウは猛然と腰を動かし始めた。
楯無の太ももを抱え込み、覆いかぶさるようにしながら腰を振る。
「あっ!あぁっ!あっ!あっ!あっ!あぁぁぁぁっ!!」
ジュプッジュプッと卑猥な水音が部屋に響く。
男根が抜けそうになるほど腰を引き、子宮内に男根が入りそうになるほど腰を押し込む。
これを高速で行い、楯無に強い快感を与える。
楯無の膣内はクロウのそれにぴったりと形を合わせており、まさにクロウのためのものになっていた。
「あっ!あっ!あっ!あっ!あっ!あぁっ!!」
楯無の腕を掴んで引っ張り、男根がさらに奥へと入り込むようにする。
すると二の腕の上で、Eカップの豊満な乳房がたぷたぷと重たそうに揺れる。
膣内を固く大きな男根でかき混ぜられ、愛液が泡立って漏れ出してくる。
「んんっ!んっ!んっ!んっ!んんんっ!!」
腰を振ったまま、口を押し付け合う。
楯無の嬌声はクロウの口内に吸収され、口の端から漏れ出すくぐもった声だけが部屋に響く。
汗に濡れた柔らかな乳房を掴みながら、腰を振りたくる。
楯無も引き締まった美しい脚をクロウの身体に回し、離れないようにする。
「んっ!んんんんんっ!!く、クロウの汗の匂いっ!」
腕をクロウの首に回し、さらに密着する二人。
Eカップの乳房がクロウの胸板に潰され、さらに両者の汗が混ざり合う。
「はっ!はむっ、ぢゅぷ、ぢゅぷ、ちゅぷ!」
舌を絡ませ合い、身体中で混ざり合う。
汗だけでなく、唾液も口の端から漏れて身体にこぼれていく。
「はっ!あっ!ふふ、クロウの汗……おいし」
口を離すと、汗の滴るクロウの顔を舐めて淫靡に微笑む。
ぢゅくぢゅくと、色々な液体が両者の身体に付着する。
「汗まみれの行為はどうだ?」
「あっ!あっ!あっ!あっ!あぁっ!す、好きっ!気持ちいいっ!!」
とうとう楯無は声に出して肯定してしまう。
首を反らして天井を見上げ、気持ちよさそうに顔を崩している。
いつの間にか自分から肉付きの良い太ももを抱え込み、クロウを受け入れていた。
「そうか、ならこれから暑い日はこうしようか」
「あっ!あはっ!あっ!う、うんっ!」
両手両足を使ってクロウに抱き着く。
クロウに誘われて、楯無は嬉しそうな笑顔を見せた。
「ふむ……そろそろ
「ふぁっ!あっ!あっ!あっ!あぁっ!!」
ドチュッドチュッと激しくなる腰の動き。
狭い膣内を男根が押し進み、深いところで射精しようとする。
「あぁぁぁぁぁぁっ!!」
ドクッと吐き出された白い欲望。
楯無も同時に達し、身体を快楽で震わせる。
あふれ出た大量の精液は、太ももや尻にまで飛び散った。
「あぁぁ……あぁ……っ」
ぎゅぎゅぎゅっと陰嚢を収縮させて、残った精液も吐き出そうとする。
膣内も少しでも精液を搾り取ろうと、男根を柔らかく刺激する。
汗だく性交渉という新たな世界を開拓した楯無は、それからよく熱い性交渉を求めるようになったのは言うまでもない。
◆
「はーい、皆学園祭お疲れ様ー。じゃあ早速だけど、織斑 一夏くんがどこの所属になるか、発表するよ」
学園祭が無事とは言えないが終わって数日後、全校集会が開かれた。
今回の話の目玉は、もちろんどこが一番投票数が多かったかである。
これで一夏がどこの所属になるのかが決まる。
来客数が多かった部は期待に満ちた目で発表する楯無を見つめ、客足がまばらだった部の者は残念そうにしている。
「一番投票数が多かったのは―――――」
楯無はそこまで言って少し待つ。
ゴクリ……と女子生徒たちの喉が鳴る。
こういった間の使い方の上手さは、流石と言ったところだ。
生徒たちの視線を一身に受ける楯無は、ニヤリと笑って口を開いた。
「優勝は劇場・シンデレラの生徒会!」
「「「えぇぇぇぇぇぇっ!?」」」
多くの生徒たちがブーイングを送る。
生徒会のシンデレラは、客も参加できるようなものであった。
王子に扮する一夏が付けていた王冠を取れば、彼と同室になれるということで、多くの生徒たちが参加した。
しかし参加するには生徒会に投票する必要があり、そういったからくりで生徒会が優勝したのだった。
……まあ嘘はついていないし、今回はまともで民主的な決定だった。
「まあまあ、落ち着きなさいって。別に生徒会が一夏くんを独占するとか言ってないでしょ?」
扇子を開けて口に当てながら言う楯無。
激しいブーイングを叩き付けていた生徒たちが、『え?』と話しを聞く態勢になる。
「一夏くんは申請があった部活に、一時的に派遣することにします」
これを聞いた生徒たちは、一応納得する。
それどころか、勝ち目のなかった部活の生徒は大喜びしている。
ちなみに当事者である一夏は、もうどうにでもなれと達観していた。
ここ数日続いた楯無との生活で、彼女が色々常識はずれなことを理解していたからだ。
「かいちょー!ミキストリくんは派遣されますか!?」
「だめよ。クロウは私のも―――――」
「もちろんです。彼の場合も申請書を提出してくださいね」
嫉妬心丸出しで所有宣言をしようとした楯無だったが、忠実な専属メイドの布仏 虚にマイクを奪われる。
頬を膨らませてぶーぶーと文句を垂れるが、虚が全面的に正しい。
クロウの貸し出しがあることを知った一部の生徒たちは、歓声を上げて喜ぶ。
そして始まったのは、一夏とクロウに対するアピール合戦だった。
「一夏くん!是非サッカー部に来てよ!」
「ミキストリくんは柔道部なんてどう!?寝技、あるよ!」
「ほう、寝技……」
「クロウ……いやらしい……」
眼鏡をきらりと光らせた更識 簪に批判され、大人しくなるクロウ。
……いや、無表情だが頭の中では柔道部員とくんずほぐれつをしている妄想をしていた。
こうして一夏は生徒会に入ることになり、クロウもまた色々な部活に派遣されることになるのだった。
ごめんなさい……としか言えない。
まさか艦これの悲しい絵にはまって鬱状態になっていたとも言えない……。
だから仕方がない……とは言えない……(ちらちら)。