完全依存系ヒロインエミリアたんの退廃的で幸せな一日 作:カリフォルニア饅頭
※特にエミリアに関して決定的なキャラクター崩壊があります。ご注意ください。
※直接的な行為の描写は殆ど無いですが、それを匂わせまくっているのでR-18にしてます。
ふと、目が覚める。いつものようにもやもやとはっきりしない思考。意識がだんだんはっきりするにしたがって、自分を見つめる瞳が有ることに気がつく。すこしつり目で、赤ちゃんがみたらそれだけで泣いちゃうかもしれない目。でも、自分にとって離れがたい親しみを感じる目。寝顔を、ずっと見られていた……? は、恥ずかしい。
「おはよう、エミリアたん」
愛しい人の低い声が、耳をそして脳を犯す。たったそれだけの一言なのに、昨晩耳元で囁かれた数々の言葉を思い出して、躯が熱くなる。
「おはよう、スバル」
右手には、彼の温かい手を感じる。一晩中、繋ぎっぱなしだったのだろうか? 頭には、温かくも少し固い感触。彼の腕だ。昨日の夜、眠りについてからずっとそうだったのだろうか。慌てて頭を上げる。
「ご、ごめんなさい。私ったらまた」
「いいって。エミリアたんの可愛い寝顔が見れたから、俺ってば朝から幸せで胸がいっぱいだぜ」
「……ま、またそんな事言うんだから」
まともに顔を合わせられず、さりとてこの幸せな場所から離れるのも難しくて。結果彼の懐に入り込む。鼻腔をくすぐるのは、彼の匂い。少し汗くさいそれは、しかし私の躯の熱を上げるだけで。
引き締まった彼の肉体が目の前にある。所々に見える、癒しきれなかった傷の跡も。それらの全てが愛おしくって、指や舌で傷跡をなぞる。これらを知っているのは自分だけだ。ペトラさんだって、レムさんだって、知らないだろう。そのことに、何故だか嬉しさを感じてしまう。
「え、エミリアたん? その、嬉しいんだけど、それ以上は。ほ、ほら、こう、男の子的な事情で」
スバルの、少しうろたえた声。なるほど、確かに先ほどから太ももの辺りに、熱いものを感じる。――すごーく苦しそうだ。
「ん、そうね。――なら、楽にしてあげる」
スバルの目を見て、笑って。そしてそれから、顔を彼の熱をたたえた部位に近づけていってーー
家の、少し大きめのお風呂釜の中。長方形の風呂釜は、優に人間二人が入ることのできる大きさだ。エリオールの森で暮らすならば、このお風呂釜は必要不可欠。なにせ、一年の大半が雪で覆われる場所である。火のマナを使えて、温度を調節できる私はともかく、一般人のスバルなんて暖房設備が無ければ3日やそこらで凍え死んでしまうかもしれない。そういう意味で、暖を簡単に取れる道具を用意してくれたロズワールには感謝しなければ。――彼を失うなんて、考えられない。
「いやしかし、いい湯だねエミリアたん」
同じ風呂釜の中。長方形の長い辺の向かいに座るスバルから、いつもの調子の言葉が聞こえる。ここに来てしばらくは、ずっと彼とは別々に風呂に入っていた。こうして彼と同じ湯船につかるようになったのも、ごく最近のことだ。――そう、彼とこのような関係になってから。
それは、ある日突然、唐突に訪れた。ペトラさんが、『それでは失礼します、お二方。どうか、お幸せに』と言う言葉を残して去っていってから、しばらくしてのある日。いつものようになんとも無いことで少し拗ねた振りをした私に、いつも通り彼は抱きついてきて。いつもは、その温もりと間近に感じる彼の存在だけでとっても幸せで、だからそれで十分だった。でも、そのときはいつものようには終わらなかった。
いつもより長い抱擁に、顔を上げて彼のほうを見る。彼も、こちらを見ていた。そのまま、交錯する瞳と瞳。視線と視線がかち合ったまま、私たちはお互いをずっと見つめていて。彼の吐息や温もりを、いつもよりも多く感じて。彼の匂いを、いつもより長く堪能して。そして気付けば、どちらからともなく唇を合わせていた。そこからは、あっという間だった。幾ばくもないうちに、私は彼を迎え入れて。そして、女の悦びを知った。
きっと、それは必然だった。お互いに憎からず想いあう男女が、しかもお互いの存在意義をお互いにおいているほどに依存しあった二人が、同じ屋根の下で二人だけで暮らすなど、そんな状況になってくれと言わんばかりではないか。むしろ、このときまでよくこの類のことが起こらなかったものだ。きっと、スバルが自制していたのだろう。今にして思えば、すごーく迷惑をかけてしまった。
もちろん、知識としてその行為は頭の中にあった。近くの町で、たまに行商人が売りに来る小説。そのなかにはそういう描写のあるものもたくさんあって。始めは何の事だかさっぱりで、スバルに聞いてみてもお茶を濁すばかり。それでも、何冊も何冊も読んでいくうちに、だんだん解り始めてきて。そして、そういうことを教えてくれなかったパックに少し憤りを覚え始めたところで、スバルが寝室の本棚の後ろに隠したであろう数冊のそういう本を発見して、ようやく私は赤ちゃんがコウオトリさんによってキャベソ畑から運ばれてくるものでないと知った。あれほどびっくらこいたのは、本当に久しぶりだった。
だが、それでも小説の登場人物がそういう関係をもとめて、それによってのし上がったり破滅したりする、というのに実感がわかなかった。好きな人に抱きしめられるだけで十分に幸せではないか。現に、私とスバルは、そうするだけで満たされていて、そこから先に進もうだなんて考えは浮ばなかった。――今から思えば、それはすごーく浅い考えだった。
実際に、彼と夜を共にしてみれば、嫌でもわかった。解らざるを得なかった。愛する人と一つになることで、どれ程満たされるのか。耳元で彼に囁かれる愛が、どんなにか私を揺らして熱くさせるのか。彼の熱い迸りを注がれたとき、私の躯がどれほど喜びに震えるのか。彼の腕に抱かれたまま眠りに落ちるのが、どれほど幸せを感じるのか。
――もう、戻れない。この感覚を味わってしまったから、この幸福を知ってしまったから。あのころの、抱き合うだけで満足できた私には。
「エミリアたん?」
心配げな彼の声が聞こえる。――いけない。考えにふけりすぎていた。
「ん、大丈夫よ、スバル。ちょっと、考え事してただけ」
それはそれとして、躯が熱い。あんなことを思い出してしまったからだ。これは、もう仕方がない。向かい合わせに座る彼の隣に腰を下ろして、彼にしなだれかかる。お湯とは違う、人肌の温もりを感じる。ああ、どうしてこのぬくもりは私の躯をこんなにも燃え上がらせるのか。
「エミリアたん……」
彼のほうも、意図を汲んでくれたらしい。いくばくかの間、交じり合う視線。そのまま、合わさる唇と唇。やわらかい感触と彼の熱に、思考が麻痺してゆく。心地よい痺れに浸りながら、頭の片隅で、お風呂から上がるのは大分先ねと場違いに思った。
既に太陽がもっとも高い場所を幾分か過ぎて、ようやく二人でご飯にありつく。今日の朝兼お昼は、いつかと同じ鍋料理。彼が好きなものの一つだ。
「はい、スバル。たーんと召し上がれ」
よほどお腹がすいていたのか、祈りもそこそこに食べ始めるスバル。結構熱いはずなのに、そんなにかき込んで大丈夫なんだろうか?
「あ、あづい!」
言わんこっちゃない。熱い具を一気にかき込んだ彼は、水を求めてコップに手を伸ばし、それを一気にあおった。
「……ふう、死ぬかと思った。でも、このままじゃちいとばかし食うのに支障が出るな」
当然だ。煮込んですぐのものをろくに冷やさずにすぐ口の中に放り込んだのだ。きっと彼の口の中は今、なかなか悲惨なことになっているだろう。――仕方がない。こうするしかない。本当に仕方がない。無いったらない。これは彼が食事をできるようになるためにすることであって下心とかそういうものは一遍たりとも入ってないんだから!
椅子を立ち上がって、向かいに座る彼のもとへ。
「エミリアたん?」
「スバル。くち、空けて?」
怪訝げな彼は、それでも一応口を空けてくれる。それを、――唇でふさぐ。
「!? ふごー、ふごー」
何が起こったのか良く解っていないまま困惑する彼をよそに、舌で彼の患部を確認。上の唇、裏側の上の歯茎、そして彼の舌。結構ひどい有様だ。確認した患部に、治癒魔法をかける。剥けた皮が再生したのを舌で確認したところで、さて、これからどうしようという問題に行き着く。
近くに見えるスバルの目は完全に据わっていて、両手はまさに私をかき抱かんと迫っている。ああ、鍋が冷めてしまう。――でも、それでもいいか。また温めればいいのだから。とっくに彼を受け入れる準備を始めている、私より物わかりのいい躯が、少し憎らしかった。
食後の運動ならぬ食前の運動をこなした所で、再び鍋を温めなおして食事に戻る。既に日は傾いていて、今日一日をどれだけ非生産的――ある意味では生産的だけど――に過ごしたのかと考えると愕然とするしかない。先ほど朝兼お昼を食べたというのに、もうおゆはんの準備をしなければならない。
今日もまた、やってしまった。ここしばらくはこんな感じの生活ばかりで、まともに集落の皆を綺麗にできていない。彼らに、申し訳ない思いが積もる。だけど、彼との交わりがあまりにも幸福だから、ついついそちらに浸ってしまう。
(ごめんなさい、集落の皆。でも、今だけ。今だけはこの幸せに浸らせてください。明日は、明日こそはちゃんと二人で綺麗にしにいきますから)
その約束を何度交わして、何度反故にしてきたのか。自分でももう、解らなかった。スバルがおゆはんの準備にかかる後ろ姿を見ながら、それでも今だけは、今だけは、とこの幸せを堪能することにした。
おゆはんを食べ終え、お風呂を何事も無く済ませた後。夜の帳がすっかり下りて、あたりを照らすのは月の光だけ。それも、少し弱い。今日は新月の日なのだろう。
「うお、エミリアたん! 湯上りの姿もE・M・T! うなじがすっごく色っぽい!」
「もう、いっつもからかうんだから」
先に風呂から上がり寝室でくつろいでいたスバルが、声をかけてくる。なんだか、言い回しがかつての屋敷のころのようで懐かしい。あの頃も、とても楽しかった。――今に比べれば、霞んでしまうけれど。
そうだ、スバルに抱かれる幸せに比べれば、どんなものでも霞んで色褪せてしまう。それが歪だと思う心は、もうとっくにどこかに置いてきてしまった。だから、ベッドに腰掛けるスバルのすぐ傍に座って、彼に躯を預ける。また首の半ばまでに短くなった髪が、少しだけ揺れた。彼の体温が、罪悪感や申し訳なさで少し冷たくなった心を、彼への熱で上書きしてゆく。
「ね、スバル。明日こそは、集落の皆、綺麗にしましょうね」
「……そうだな。明日こそは」
そんな、守る気のあるのか解らないような約束を結んで、それでも、彼と何度も唇を重ね合わせる。それがどれだけ矛盾しているのか知りながら。唇を少し離すたびに顔にかかる彼の熱い吐息に、理性がゆっくりと溶かされていく。ああ、やっぱり約束を守るのは無理かもしれない。この幸せに、何時まででも浸っていたい。
彼に脱がされるためだけに着た、薄いネグリジェと上下そろいの純白の下着。もう、こんな純白が似合う私など何処にも居ないのに。それでも、彼の興奮を煽るためだけに私はこれを身につける。幾度と無く唇を重ね舌を絡ませながら、彼はそれらの上から私の躯をやさしくやさしく嬲るのだ。
もてあましながらも天井知らずにだんだんと高ぶっていく躯は、きっともう彼の色にすっかり染められているのだろう。それでも、それに歪んだ悦びしか感じない私は、もうとっくに彼なしでは生きていけない。やがて、ベッドに優しく押し倒されて、彼の身体が迫ってくる。それに、いやがおうにも期待を煽られながら、頭の片隅で強く願う。
――どうか、どうかこの幸せが、明日も明後日もずっと続きますように。
このシリーズを見てくださった方、評価してくださった方々、ありがとうございました。
しかし、本編のIFの妄想のさらにIFってもうこれわけわかんねえな(白目)