おー、萃香以外の客がいねー
これもしかしなくても営業妨害なんじゃ……
「萃香ー、終わったぞー」
「おー、早かったねー。紋はやっぱり家紋にしたのー?」
え?紋ってみんな一緒じゃないの?
「紋は聞かれなかったから知らないな。一本貰うよ」
「ありゃりゃ、紋を書かなかったから早かったのかー。今からでも書いてきなよ」
紋ねぇ……家紋なんてうろ覚えで正確には書けないんだけどなぁ
「聞かなかったってことは何か用意があるってことなんじゃないの?」
「んー、まぁその可能性はあるけど、この後別の仕立て屋に三紋袴仕立ててもらうんだし、紋を統一するために書いとくべきだと思うよ?」
あぁ、もう一組は別のところで仕立てるのね
「そっか、なら書いとかないとだね」
あ、そういえば博麗の巫女の夫って立場なら家紋より博麗神社の紋とかつけた方がいいのかな……
「ねえ萃香、博麗神社の紋ってわかる?」
「あー……たぶんそれは止めた方がいいと思うよ?」
ん?何か拙いのか?
「博麗の紋は幻想郷の存続の証なわけだから、その紋を背負うってことは幻想郷の存続のためにすべてを捧げるってことになるんだよ」
ああ、そういうことか
「霊夢と紫を足したような存在でなきゃならないってことね」
2で割らないあたりがもうやばいよな
「まあそんなとこだねー。強いて言えばそれぞれの悪いとこだけ引けば完璧かな?」
それこそまさに無理難題ってやつだろ
そんな完璧超人居るわけねー
「何にせよ紋は考えなきゃならないわけだな」
「家紋にしないの?」
「家紋はうろ覚えでな」
大まかな形は覚えてるけど、いざ書いてみると明らかに別物じゃん……ってなるのが目に見えてるんだよなぁ
「向こうは家紋なんて書き慣れてるだろうし、意匠と大まかな形がわかってればそれっぽく修正してくれるんじゃない?」
それはそうかもしれんが、それはうちの家紋っぽい何かであってうちの家紋ではないだろ
「うーん。名前も向こうとは違うんだし、紋もこっちでしか使わないこっち用のでいいかな?」
藤原清衡の紋は流石に使えないけど
「ああ、そういうのもアリだねー。どんな紋にするの?」
どうしようかね?
「竿とアケビでも入れようか」
「そんな直球な紋でいいのかい?博麗の巫女の夫だよ?」
ですよねー
「どうせそういうのにするんだったら握りずしとかにすれば?」
あれ?隠語を紋にするなって話じゃないのか?
「握りずしって隠語なのか?」
「上と下で別のものが重なってるでしょ?」
それだけ?
「……どちらにせよ紋にするには形が悪いな」
四角くするにせよ丸くするにせよ、うまく紋っぽさを出せる気がしない
「まぁ、アケビはともかく竿と握りずしは難しいねー」
アケビはともかく、か
「アケビを真ん中にして周りをバナナ一本とキウイ二玉で囲むか」
美味しい果物つながりってことで
「バナナとキウイは守矢の連中の話でしか知らないねー。外ではよく知られてるらしいけど、ここじゃほとんど誰も知らないと思うよ?」
ああ、海外原産の作物ってだいたいないんだな
「甘くて美味しい果物だよ。ま、竿と玉だね」
「そりゃまぁ、話の流れでわかるけどさ、そんなの紋にしたら逸物にしか見られないんじゃないの?」
はたしてそうかね?
「そこは配置次第だと思うなぁ」
顔みたいな形にすればユニークな紋としてスルーされるんじゃないか?
「全部果物んだし、それぞれの葉っぱを組み合わせるとかは?」
葉っぱねぇ……バナナが邪魔過ぎるな
「バナナの葉っぱがうまく使えないなぁ」
「あたしもちょっと考えてみるから、とりあえず実と葉っぱをそれぞれ書いてみてよ」
「おー、頼むわ」
こういう時足元が土だと助かるな
団子のくしでいくらでも書ける
朝っぱらから団子屋であからさまに下の意味でアケビとか竿とか言いまくる幼女とおっさん
終いにゃ店先の地面に落書きを始める
……どう見てもやばいぞこれ