「秦こころって言ったな?俺は藤原清衡だ」
偽名を名乗るのもなんか慣れたな
「ええ、ええ、存じておりますとも。鬼を相手に耐久勝負じみた真似をする奇特な人間ですよね」
こいつは相手をイラつかせないといけない宿命でも背負ってるのかな?
こんなことなら名乗らずさっきの流れのまま始めときゃよかったかな
「おやおや?気を悪くさせてしまいましたか?余計なことは考えずにこの体を楽しめばいいんじゃないですか?」
何というか、気の強い女の子をレイプしようとした時の一幕みたいなセリフだな……
ほんとにほったらかして帰ったほうがいいような気がする
「こころさんよ、あんたが喋る度に気が削がれていくんだが、もうちょっと雰囲気を大事にできないかい?」
雰囲気云々ってのは我ながら女々しいと思うけどさぁ……
「雰囲気ですか?残念ながら今の私には難しいですね。今後の成長を補佐してもらえるととてもありがたいですね」
俺はこの娘とは相性が悪いのかな?
「帰っていいかな?」
よく考えてみれば今夜はサニーたちの予約が入ってたし、ここで無駄撃ちするのは下策だよな
「据え膳食わぬはおt待ってください帰らないでください」
このまま引きずって出たら悪い意味で注目の的だよなぁ……
はぁ、まあこの娘だって抜群の美少女だし据え膳自体は大歓迎なんだよな
「わかった、わかったから一旦離れて」
「ほんとですね?帰りませんね?信用しますよ?」
上目遣いにこのセリフなのに全然心に響かない不思議
無表情キャラって結構好きだったんだけど、あれは要所要所で感情が見えるからこそのものだったってことかな
「ほら、萃香下したからもう帰れないって」
置いて行っても大丈夫だろうけど流石にちょっと、ね
「ありがとうございます。放置されていたら白昼堂々男を襲ってしまうところでしたよ」
人里で人間を襲ったら恐ろしい制裁があるっていうけど、そっちの意味で襲った場合ってどうなんだろう?
「とりあえずそのクルクルしてるお面たちをしまってくれる?」
雰囲気がアレな原因の半分くらいはそのお面たちにあると思うんだよね
「ダメです。お面がないと感情がなくなっちゃいます」
そりゃまた大変そうな……
「全然?これっぽっちもなくなっちゃうの?」
「いやいや、お面に依存しない感情制御の特訓はしていますのでいくらかは」
ふむ……反応は薄いけど一応反応する程度かな?
それはそれでおいしいよな?
「ならその特訓だと思ってしまっちゃってよ。お面の付喪神じゃなくて、一人の女の子としてお相手願いたいからね」
「……これがキュンとくるってやつでしょうか。今の一言で猛烈に貴方の子供がほしくなってしまいました」
これアレだ、あの、お姫様が無礼なだけの男の子に〝普通の女の子として接してくれる!”とか言って惚れるやつだ
まあ、お姫様と違って問題がある相手じゃないし大丈夫だろ
「ふふっ、女は恋をすると大人になると言いましたか。なるほど確かにこれは劇的な変化ですね」
なんか一人で納得してるけど、お面しまったのに今まで通りじゃないか
感情がほとんどなくなるって話はどうしたんだ?
「清衡さん……いえ、旦那様、女として目覚めたこころを、どうか母にしてください」
お、おぉ、凄ぇ艶めかしい表情だな……あれ?
「こころ、お前、その表情どうしたんだ?」
「え?表情?……ふふっ、旦那様は凄いお人ですね。感情ばかりか表情まで私に与えてくださるなんて、ますます愛おしくなってしまいます」
何て言うか、おっさんついていけないなー
まあいいや、自分の顔ぺたぺた触ってるのもかわいいし、この娘のペースは無視して自分なりにやればいいよな
こころ節炸裂?
マイペース過ぎるぞこころん……