「私って男として歴史に残ってるでしょう?」
「そうだな」
小学校で習う範囲だし肖像画がお札にもなってるし、男だと思ってない人の方が少ないだろうな
「やっぱり政治的には男じゃないと都合が悪いじゃない?だから私は当時人に直接姿を見せないように気を付けながら男として生活してたのよ」
「なるほど」
まあ女の為政者って現代でも殆どいないし、歴史上の人物にしろ現代の人間にしろだいたい変なところがあってイメージよくないからなぁ
まともな奴と変な奴の割合は男と変わらんのかもしれんけど、絶対数が少ない分目立つんだよな
「で、姿を見せないための一手としてかなり早い時期からお嫁さんを貰って縁談がこないようにしてたのよ」
「ああ、お見合いも政治だもんな」
早々に結婚相手決めとかないと利権欲しさに娘押し付けられるのはその後の藤原氏が証明してるし、お見合いで姿を見せないわけにはいかないもんな
「そうなのよ。普段は御簾に隠れていればいいけど、お見合いとなるとそうはいかない。かといって断るにも相手を納得させるだけの理由がいるのよね」
だから縁談がこないうちに嫁さん貰ってシャットアウトか
「その嫁さんはどこから引っ張ってきたんだ?」
史実の聖徳太子の家族情報とか全く覚えてねえ
「それが屠自古よ」
「それ、嫁と心中したみたいになことにならないか?」
宮中の人間は後始末が大変だったんじゃないかね
「政治は私がいなくてもなんとかなるようにしておいたから大丈夫よ。私が居なくなったことそのものへの混乱なんて知ったことではないわね」
酷え……
「そんなことは置いといて、大事なのは私は女として生まれながら子を産む喜びも夫と過ごす安らぎも知らずに死ぬことになったということよ」
ラノベとかでたまに男として生きるってのを完遂したってことか
で、本人的には主人公登場からの女として生きるルートに入りたかった感じなのね
「生き返って女であることを隠さなくなった今、子供産んだり縁側に並んでお茶飲むような時間を過ごしたい、と」
「そう!そうなのよ!」
ふむ、結婚生活に憧れてるけど実際結婚すると現実に打ちのめされて離婚するタイプっぽいかな?
「でもね、生き返ってから得た人の欲を聞く能力のせいで男性から距離を置くようになっちゃったの」
ああ、結婚する前から理想がブレイクしちゃったのね
「香霖堂の店主はそういう感じじゃないけど、別の意味でダメね」
蒐集に欲望全振りしてそうだもんな
「しかしよ、俺も欲望自体はその辺の男と変わらんのじゃないか?」
「何と説明した物か……こう、いやらしさと汚らわしさの違い、みたいな?」
みたいな?とか言われても困る
「まあ男にはわからないかもね」
そういうもんかね?
「とにかく、君は私の引いた境界線を越えた初めての人なのよ」
「それで子供がほしい、と。まあ俺としては子供産んでくれるなら万々歳だけど」
「ならよろしく!改めまして、豊聡耳神子です」
「ん。藤原清衡です」
何か改まって挨拶するのって気恥ずかしいよな
収まったのか?
何か違くない?