「はぁ~、アイスとエスプレッソっていいな」
エスプレッソは溶け残るくらい砂糖を入れて飲むものだけど、そんな飲み方するくらいなら普通の珈琲飲んだ方がいいし、敬遠してたんだよなぁ
楽しみ方を知らないってのは罪なことだね、全く
「いつもならお昼過ぎは眠くなるけど、これは目が覚めるわね」
アイスと混ざってるとはいってもエスプレッソはエスプレッソだからな
濃すぎるくらいの苦味はいい眠気覚ましになるだろうな
「あたしはお酒かけた方がいいかなぁ」
日本酒は合いそうな気がしないけど、洋酒なら合うのがあるかもな
「お前らは大人だなー。子供の私にはわかんないなー」
煽ってるのか僻んでるのかよくわからん声音だな
好みなんて人それぞれなんだからどうでもいいじゃないか
「気に入ってもらえてよかったわ」
微妙な反応が半数だった気がするんだが
「美味しいご飯のお礼だと思って少し話を聞いてくれないかしら?」
え?何そのトラップ
面倒事はお断りなんだけど
「何?」
「パチュリーが頼み事なんて珍しいな」
やっぱりそうなのね
「悪いのだけど、あなた達は少し席を外してほしいの」
内緒話ですかそうですか
「パチュリーあんた熱でもあるの?」
「男と密会なんてらしくないぜ?」
凄ぇ言われようだな
まあ、わからんでもないが
「まあまあいいじゃないか。ちょっとくらい貸してあげようよ」
できればお腐れ様と二人きりにはなりたくないんだけどなぁ
「話のわかる貴女には後でお気に入りのグラッパを渡すわ」
グラッパ?
「ぐらっぱ?」
やっぱ聞いたことないよな
「イタリアでは広く飲まれている蒸留酒よ。食後酒として出してもよかったのだけれど、日本では食後酒なんて習慣はないでしょう?」
晩酌は食後酒とはちょっと違うし、確かに日本にはない風習かもね
「そんなの気にせず出してくれればよかったのに」
「そうだぜ、酒が出て困るわけでもないんだしな」
お前ら……
「そう?なら、次があればそうするわね」
引き込みりだもんね
そりゃ、次があるかはわからんよね
「楽しみにしてるからねー」
「わっ!ちょっ、押すなって」
「そんなに急かさなくてもちゃんと歩くわよ」
酒がもらえることになってテンション上がっちゃってるね
飲んだことない酒ならまあ、楽しみになるのも仕方ないけど
「それで話って何?」
誰かとBLして見せてとかは絶対お断りだぞ
「貴方、同性愛ってどう思う?」
絶対にお断りだよ!
「俺に関係ないところでやる分にはどうこう言うつもりはないけど、俺とか俺の周りとかに布教するやつは排除するね」
元々好きな奴と盛り上がるだけならとやかく言わんが、好きじゃないやつに布教するのは悪と断定するぜ
「布教って、別に宗教的な話じゃないわよ?」
「外では特殊な趣味・性癖や、特定の個人を贔屓する感情を他人に伝播する活動のことを布教っていうんだよ」
この表現が宗教色の強い国でもしばしば使われてるのは驚きだけどさ
「つまり同性愛には否定的なのね?」
「そうだな。同性愛に限らず、異常性癖を持ってる奴らは自分はおかしくないと思ってて、自分たちを認めない他者に文句を言うことが多いだろ?」
最近は同性愛を認めるべきとか変な活動してる団体もいるみたいだけど、そういうのの主張って基本的に自分たちは異常じゃないって内容なんだよな
「それは悪いことなのかしら?」
「そうだな……例えば、これが小児性愛なら初潮・精通を迎えた者は生物的に大人であるという主張に一理あるから、問題は倫理観のみになる」
その倫理観にしたってここ100年かそこらの極々最近のものだしな
安全な出産のために体の成長を待つべきって言っても、12歳時点ですでに子供がいるって女の子は今よりはるかに医療技術が未発達な時代でも普通に居たわけだし
「同性愛はそうではない?」
「そうだ。同性愛では子供ができることはないだろう?」
これは倫理観以前に、生物として間違ってるんだよね
「子供ができないことって問題なのかしら?」
大問題だよ!
「あー、パチュリーは生まれつき魔法使いだったっけ?」
「そうよ。それが何か関係あるのかしら?」
たぶん価値観が違う原因はそこにあるよ
「寿命がない立場からしたら子供ができないのは問題にならないのかもしれないけど、子供を作って次の世代に命を繋ぐっていうのはさ、生物としての根源的な活動なんだよ」
それが満たされない以上は排斥されて当然なんだよな
「生物である以上は子供ができないのは倫理観以前の問題だってこと?」
「そういうこと。自分たちが生物的に間違っていることをしっかり認めたうえで、それでも貫き通すっていうなら俺も応援してやるけどね」
例え石を投げられようともこの気持ちに嘘はつけないって宣言できるならよし、できないなら諦めろってことだ
「私みたいに寿命に囚われない生物はどうなの?」
「同じく寿命に囚われないもの同士ならいいんじゃないかな。でも、パチュリーが興味あるのは男同士の絡み合いでしょ?」
これはパチュリーの寿命とか関係ないからな
「まあ、そうなのだけれど……日本には昔から男色文化があったわよね?」
それにはちゃんと理由があるんだよ
「日本に男色文化は大きく分けて二つ、坊さんのものと武人のものがあったね」
見るべきところはその環境なんだよな
「まず、坊さんは女人禁制って戒律があったから、性欲処理するには寺の下っ端である小僧たちを使うしかなかったってことを忘れちゃいけないね」
性欲に囚われてはならないって教えらしいけど、そんなの無理に決まってるんだよね
「次に武人だけど、彼らの仕事場である戦場には女がいないんだよね。で、戦闘後には体が興奮しているんだけど、そのままだと次の戦闘に支障があるから静めなければならないわけよ」
興奮したままだとなかなか休息できないし、判断ミスもでやすくなるからな
「後はさっきと同じで、女がいないから男同士でするしかないってことになる」
「日本の男色文化は止むを得ない事情から生まれたということ?」
「そういうこと。その後、坊さんは結婚が認められるようになったし、武人が帝国軍人になると軍事予算で娼婦を雇って処理してもらうようになったから、男色の必要はなくなり、今に至るってね」
だから、日本に昔からあった男色は趣味じゃないんだよ
「貴方の主張はわかったわ。同好の士じゃないのは残念だけれど、気持ち悪いから嫌だとしか言わない人じゃなくてよかったわ」
そういうのはあれだろ、BLはダメだけどGLはイケるとかいうやつだろ
BLもGLも同じだってのにな
パチュリーが腐ってるせいで無駄に長くなったじゃないか
何でうちのパチュリーは腐ってるんだ……