ヒーローの卵 作:カンテラ
深夜二時を過ぎた頃、麗日お茶子はゆっくりとまぶたを開ける。部屋は薄暗く、薄いカーテンから透ける月の光りが中をうっすら照らしていた。
横向いていた体を仰向けに動かし、ぼんやりと天井を眺める。しばらくして今が何時なのか気になり、時計を見ようとするが暗くてよく見えない。
しかたなく彼女はゆっくりと体を起こす。
疲れから泥のように眠ったおかげで頭も体も軽くなり体力も取り戻している。
それでも意識はまだ覚醒しきっておらず、麗日は体を起こしてからもぼーっとしていた。
徐々に意識を覚醒させながらベッドに腰掛ける姿勢になり、息を吐きながら体を伸ばす。
麗日は手元に携帯があったことを思いだし、それで時刻を確認しながら今日あったことを振り返る。
ヴィランに手も足も出せないで負けた。戦闘らしい戦闘もできず、あまつさえ体を好きにされてしまった事実に、麗日は悔しさから顔を歪ませる。
携帯カメラで撮影されたことに対する不安もわき上がり、彼女は両手を膝の上で握りしめながら顔を俯かせる。
しかし、それらの思いよりも彼女を苛ませているものがあった。
ヴィランに体をいやらしくまさぐられていたときのこと。好きでもない異性に触られるなど嫌悪でしかないはずなのに反応してしまった身体。
先に自分で慰めていたとは言え、絶頂させられてしまった。そのときの男の手の動きやゴツゴツした指の感触が今でも頭から離れない。
初めて見た男性器や精液をかけられて恐怖していたはずなのに、次第に興奮していった事実に気分が悪くなっていく。
ヴィランに言われた変態という言葉が頭に浮かび、否定するように頭を振った。
自分は見も知らない人間に触られて悦ぶような女ではない。きっとマスコミが雄英高校に侵入した時に会ったあの少女の個性のせいだ。そうやって否定しながらも意識が覚醒しきったとき、麗日は自身の身体がまだ火照っていることに気が付いた。
あの少女の個性が原因であろうとなかろうと、敏感になったままの身体に困惑してしまう。タンクトップが胸の先端に擦れる度に、そこからジンジンと熱を帯びていくのを感じ、嫌でも快楽を感じるしかない。
なぜ未だに身体が熱をもっているのか、敏感になっているのか。麗日は疑問に思いながらも答えは出せず、ゆっくりと子宮辺りが疼いていくのを感じて軽く自己嫌悪に陥る。
一度イカされて精液を飲まされてからされたことと言えば、肩と首筋、胸を少しだけ撫でられただけ。それだけの刺激でも、クラスメイトと合流してから体の疼きが治まらなかった。
ただ、その時は疲れで睡眠欲が貯まっていたため、帰宅途中からは気にする余裕がなくなっていた。
それが今再びぶり返してきている。長時間発散されずに放置されたままの状態で。
「んん……。はぁ……ぅぅ……」
麗日は身体を抱き止めながら全身の疼きが治まることを祈った。しかし、耐えたところで治まるはずもなく、むしろ欲情していく自分を余計に意識するだけだった。
「私は変じゃない、私は変じゃない、私は……」
ベッドに腰掛けた姿勢のまま、麗日は何度も繰り返し自分に言い聞かせた。
もしこのまま自慰をしてしまえば昼間ヴィランに言われたように、自分が変態だと認めてしまうようで許せない。
だがそんな抵抗も時間とともに弱まってしまう。自慰を覚える前なら、あるいは自慰をしても絶頂を迎えられていなければ耐えられたかもしれない。
しかし、一度覚えてしまった激しい快楽の波は脳に深く刻み込まれ、二度と消すことができない。体が刺激を渇望していて、それを満たす方法を知っている限り、耐えられなくなるのは時間の問題だった。
触らないという決意から少しだけなら大丈夫、自分なら耐えられるはずと麗日の思考は移ろいでいく。
「ひゃっ……んん。ちょっとだけやのに、すっごい……」
麗日は服越しに胸を触り、ゆっくりと手を動かす。少しでも治まればと最小限の動きで最小限の刺激を与えるためだ。
しかし、長時間お預けをくらっていた麗日の脳はそれだけの刺激では満たされない。
胸を触る手つきは刺激を求めてより激しさを増していく。
まだ大丈夫、まだ大丈夫と心の中で言い訳をしながら指が先端に伸び、硬くなった乳首をこする。布越しにこすれるたびに身体に電流のような刺激が走り、我慢できずに声を漏らしてしまう。
「はぁっ……ぁぁっ……! くっ、あぁぁんっ!」
絶頂しないように注意して弄るだけの理性は残っていた。しかし、刺激を与えながらもイカせないようにするという行為が自分で自分をより苦しめていることに麗日は気付かない。
彼女は胸から伝わる刺激だけで脳を蕩けさせてしまっている。イカないようにはしているが、徐々に快楽に蝕まれ、手の動きに遠慮が無くなっていく。
外から何も聞こえてこない時間帯、少女の甘い声と衣擦れの音だけが部屋に浸透していく。そのあまりの静けさに時間の感覚が狂い、麗日はその数分が数十分に感じてしまうほど快楽に嵌まっていった。
刺激を与えれば与えるほど、麗日の思考力はどんどん正常から遠ざかっていく。イクまではやらないと決心していた心は、胸から伝わる甘美な刺激でもう崩壊寸前だった。
心拍数が上昇し身体も汗を吹き出しながら熱を持つ。それでも下部の最も敏感な所に手を伸ばすのだけは我慢して、乳首から伝わるピリピリとした刺激だけを体に与え続ける。
そうしてさんざん自分で焦らした結果、彼女の頭はイキたいという欲求でほぼ埋めつくされようとしていた。
「あっ、あぁん! はぅ……あっ……あぁ!」
胸をさわっているだけで嬌声が口から漏れ、体をよじらせる。
これ以上はダメなのに体が言うことを聞かない感覚が背徳感や罪悪感となり、その感情すらも脳は興奮材料にしてしまう。
「う……ん……だ、め。もう、やめ……」
口に出して、なけなしの理性を働かせようとしているが、頭ではもう気持ちよくなることしか考えられていない。
そうなれば、手で加減をすることは難しくなる。
麗日は無意識に乳首を摘まむ力を強めていき、爪でかりかりと掻いたりしながらより強い刺激を求めていく。
そしてとうとう、
「あっっ、あぁぁああっ! ぁあっううぅんんっ! ひゃあアァぁあッ!!」
許容量を越えた刺激に耐えられず、官能に満たされた脳は頭のなかで盛大に火花を飛び散らせた。何時間も焦らされ続けた体は胸を弄っていただけで歓喜に震える。
今までにない快楽が頭の中だけでなく身体にまで走っていく。その過剰な感覚に包まれた麗日は声を抑えることを忘れ絶叫し、たまらずベッドに倒れてしまう。倒れてからもなお、痙攣は止まらずひくひくと動き、身体全体で快楽に屈した様を晒している。
それから麗日は虚ろな目に涙を浮かべながらだらしなく口を開け、息を荒らげて声にならない嬌声を上げる。
呼吸をするだけでも身体が感じてしまうような錯覚に陥り、麗日の頭の中はもう快楽でどろどろの状態になってしまった。
感度が上がっているだけの時とは違い、今は欲情して体が快楽を受け入れる準備が整っている。なので麗日は刺激による肉体的な快感だけでなく、精神的に満たされる快感も味わっている。
今日一日で溜まったストレスも発散されていき、麗日は性的な意味以外でも解放感に満たされていく。
「ハァ……ハァぁあん。うぅん……あっ、あっ……ふぁぁあぁ」
彼女は絶頂のなかで、悔しさや怒り、嫌悪感などを全て忘れ去り、頭の中が幸福感で満たされていた。
それから息を整えようとするが、感度も性欲も上がったままの身体はそれで満足するはずもなく。
激しく絶頂したはずなのに未だ身体の熱は冷めることがない。
彼女はなぜこんなにも体が疼くのかなど考えるのを放棄した。
左手をタンクトップの中に入れ、汗ばんでいる胸を直接触る。乳輪を指でさすったり摘まんだり、ピンと立っている乳首を爪でかいたりする。
一度達したことで情欲は少し落ち着き、おかげですぐにイクことはない。しかし、それでも敏感になっている乳首を刺激していればその度に体が反応し腰を浮かせてしまう。
腰を浮かす度に自分が興奮している事実を認めることになってしまうが、今はそれすらも情欲の糧にしてしまっている。
歯止めが利かなくなった脳はさらなる快楽を求めて右手をお腹に這わせ下半身に移動させていく。
そして服の上からなんてことはせず、一気にパンツの中に手を突っ込む。
「んんんっ! あぁ、あ゛ぁあっっ……!」
割れ目の中をなぞるだけで脳にピリピリとした電流が走る。既に膣口から流れていた愛液で麗日の秘処はヌルヌルと湿っているため摩擦による痛みがなく、すじを指の腹で上下に撫で続けるだけで体は熱を高める。体はあっという間にイク準備が整い、麗日は一気に刺激を与えていく。
「やぁ……ここっ、気持ち……いい。んひゃぁあ! あっ……あぁぁぁあっ! んんんんっっ!」
乳首を指で挟みこすりあげ、すじをなぞっていた指をクリトリスに触れさせる。クリトリスは充血していつもよりぷっくりと肥大しており、そこを指で優しく撫でていく。撫でれば撫でるほど快感は増大し、乳首以上の刺激を味わった麗日は一心不乱にそこを責め続ける。
胸とクリトリスの同時責めは爪先から頭の先まで電流を走らせ、全身ににぞわりとした感覚が這い回る。
そんななか麗日は無意識に今日会ったヴィランのことを思い出していた。もし彼に時間が残されていたとしたら、自分はそのとき今のような刺激を与えられていたのだろうか。
ヴィランに容赦なく責められている自分を想像した麗日。悔しかったはずなのに、そのイメージの中でも自分はみっともなく声をあげており、そんな自分に興奮してしまっている。
今の麗日はもうイクことしか頭になく、声を淫らに散らせながらただひたすらに愛撫をし続ける。
「やっ……またっ! ふぁぁああぁぁっっ! ンぁあアぁぁッ! ぁあっ! あっ……あぁぁっ」
二度目の絶頂で再び声を上げる。身体をびくんびくんと震わせる度に秘処から愛液が吹き出し、乱れたシーツを染みだらけにする。
それからも、快楽に身を委ねた麗日は疲れて眠るまでひたすら愛撫を続け、はしたなく声を上げながら何度も絶頂した。
そのなかで、彼女はあのヴィランに好きなようにされてしまう妄想も何度かしてしまった。
彼女が次に目を覚ましたのは朝9時を回ったころ。雄英高校がヴィラン襲撃で臨時休校になっていなければ遅刻が確定している時間帯だった。
「あかん、寝過ぎた……ん? んんっ!?」
麗日が目を覚ましてまず驚いたのは、自分がほぼ裸同然の姿になっていたことだった。上半身はタンクトップをずり上げ胸を晒し、下半身はホットパンツとパンツを床に脱ぎ散らかして秘処を丸出しにしていた。
「なっ……ひゃぁぁあっ!!」
麗日は思わず声を上げ服を着なおしながら、なぜこうなっているのかを思い出す。
性欲も感度もいつの間にか元に戻っており、冷静になって考える。そして彼女の顔がみるみる赤くなっていく。なぜあんなことをしてしまったのかという後悔と、これではあの男が言っていたように変態ではないかという羞恥に悶えた。
麗日はひとしきりベッドで呻いていたが、空腹には勝てなかったので取り敢えず何か食べようとベッドから起き上がる。
自慰行為の一部始終を誰にも見られていなかったのは彼女にとって不幸中の幸いだろう。