ヒーローの卵 作:カンテラ
放課後、俺は彼女たちがこれからどうするのかを女子トイレから千里眼を使って見ていた。
HRが終わり先生が教室から出ていった後、生徒たちは帰る準備をしたり駄弁ってたりと普段通りの行動をとっていた。
「ごめん! 今日は二人とも先に帰っといてくれん?」
「どうしたの麗日さん?」
そんないつも通りの放課後、麗日さんは教室のドア付近で帰る準備を済ませているデク君、飯田君と話していた。
「やー、ちょっと大事な用があるというか」
「大事な用なら俺たちに構うことはないさ。な、緑谷君」
「うん、それじゃあまた明日、麗日さん!」
デク君と飯田君が二人で帰った後も続々帰宅していく1-A生徒たち。
そして教室には芦戸さん、麗日さん、葉隠さんの三人だけが残っていた。
「さっきは大丈夫だった?」
「危なかったよ~。もう少しで声出すとこだった!」
授業中に赤面を指摘された結果、上ずった声でごまかそうとした芦戸さん。
そんな彼女を見て麗日さんはようやく異変に気づいたようで、そのときのことを心配して言っている。
「お茶子ちゃんよく耐えられてるよねー」
「だんだん慣れてきたと言いますか。あはは……」
麗日さんは目線をそらしながら乾いた笑い声を出す。
「私、あの子とキスするよ」
芦戸さんは眉をひそめながら唐突に俺とキスすることを宣言した。
「いいの!?」
「うん、だってこんなの耐えられそうにないんだもーん!」
麗日さんとは違い、体が慣れるより先に解決方法を知ってしまったからだろうか。
芦戸さんは携帯から俺に連絡を入れてくる。そして俺の返信を確認すると立ちあがり教室を出ようとする。
「二人はどうする?」
「うー、私はー、乙女のプライドがー」
「私は平気かな。さっきから何も変わりないもん」
二人は体に変化がない葉隠さんを羨ましそうに見て、
(エッチじゃない……)
そんな考えを同時に浮かばせた。俺のついた嘘に頭を悩ませる芦戸さんに麗日さん。
それから三人は解散し、麗日さんと葉隠さんは二人で帰っていった。
俺は一旦女子トイレから廊下に出て芦戸さんを待つ。待っている間に芦戸さんの感度を上げておく。
帰りのHRから時間がたっているので廊下に人は少ない。夏になるまでまだ遠く、陽の傾きが早い時期。影がゆっくりと伸びていくなか、待っている時間が長く感じられる。
しばらく待っていると、緊張した面持ちで芦戸さんがようやくやってきた。
「よ、よろしくお願いします。おっす」
口調がおかしくなっているぞ芦戸さん。
俺はそんな芦戸さんに付いてくるよう促し、女子トイレに一緒に入る。
センサーが作動して照明で照らされるトイレ内。
「ここでするの?」
「はい、ここなら誰にも見られずにキスできます」
感度を上げているせいもあってかキスの単語に顔を赤らめていく芦戸さん。
(どうしよう、やっぱり止めた方が)
俺は引き返しそうな雰囲気になっている芦戸さんの右手を両手で包むように掴む。
「んっ……」
「大丈夫です。三分間キスすれば終わりです。女の子同士だからノーカンです」
「いやぁノーカンとかじゃなくてね……」
俺を見ないようそっぽを向く芦戸さん。俺はその耳元に息が届くぐらいまで近づいてそっと囁きかける。
「気持ちよく……なりたくないですか」
芦戸さんは少し肩を揺らす。顔は動かさない目線はこっちを向く。
「ノーカンのキスをして気持ちよくなるだけです。それで今日は終わり。しばらくは効果が出てきません。私を使って気持ち良くなってください」
俺は耳元で囁きながら芦戸さんの手をさすり続ける。
「うー、あー、えっと……。それじゃあ、よろしく……お願いします」
芦戸さんの了承が得られたので、早速個室に引っ張っろう。
便座の蓋を閉じてそこに芦戸さんを座らせる。
芦戸さんは不安そうな目で俺を見てくる。
俺はそんな彼女の脚に股がり対面座位の形で座る。俺の脚と芦戸さんの脚がこすり合わさり、それだけで彼女は声を漏らす。
「重くないですか?」
「え? うん、大丈夫だけど。んっ!」
俺は芦戸さんの顔に手を添えたり首に手を這わせてみたりする。彼女は俺に触られる度にビクビクと身体を小刻みに揺らした。
「んん……キスしないの?」
性感が高められている芦戸さんはさっき軽くイっていたこともあり敏感になってるようで、触られるだけで反応してしまう。
キスではなくボディタッチから始まったことを不思議がる芦戸さん。
「そんなにキスがしたいんですか?」
「そういうんじゃなくて、ひぅっ。やるならさっさとさぁ……んっ!」
「気持ちよくなるための準備ですよ」
俺は指で芦戸さんの唇を触る。プニプニとした感触が伝わってくる。
(ん、唇触られるのちょっといいかも。あ~このまま流されるままでいいのかなぁ)
「芦戸さん、普段の元気な時と違ってすごく可愛らしいですよ」
「そういうの、あっ……恥ずかしいからぁ、んんっ」
しばらく愛撫してから、俺は芦戸さんの顔に両手を添え顔を近づけていく。
(ドキドキするけど……んー、恥ずかしい!)
芦戸さんは恥ずかしがって目を閉じた。そして互いの唇がそっと触れ合う。
始めは唇をくっつけたり離したりして感触を確かめあうだけの軽めのキスで、顔を動かして唇同士を擦りあわせる。
(キスしちゃったよ~)
芦戸さんからのアクションは何もなく、俺のキスを目をつむりながら受け入れているだけだった。
俺は芦戸さんの腰に左手を回しぐいっと引き寄せ右手をそえる。少ししか空いていなかったお互いの空間がゼロになり、芦戸さんの胸が俺の平らな胸に押し付けられる。
そこから芦戸さんの下唇と上唇をついばみながら時々舌で舐めると、唇が離れる度に芦戸さんから甘い吐息が 漏れ始める。
(う……ん、初めてのキス。キスって……こんなに気持ちいいんだ)
雰囲気に流され始めてしだいに芦戸さんもついばみ返し、舌を這わせてくる。
感度調節していない俺の体でもそれだけで体が火照ってくるのだから、芦戸さんの体も相当刺激され感じているんだろう。彼女の身体から熱気が伝わってる。
このまま軽いキスだけで何時間も楽しんでいられそうな空気が漂い始めるなか、俺は芦戸さんが俺の唇に触れようと伸ばしてきた舌に、自分の舌を触れさせる。
芦戸さんはさっと舌を引っ込めてしまい口を閉じる。けど俺は彼女の唇をこじ開けずに、割れ目を舌で何度も突っつく。
舌でこじ開けないよう注意しながら押し付けたり離したりを繰り返していくと、芦戸さんはとうとう自分から舌をちろっと出してきた。
俺はそれでも深追いせず、警戒を解くように芦戸さんの舌先をゆっくり丁寧になめ続ける。互いに触れあう舌のざらついた感触が俺の脳を震わせる。
しばらくそうしていると、芦戸さんの唇はだんだん抵抗を弱めていき、隙間が空いてくる。俺はすかさず舌を滑り込ませて彼女の口内に侵入した。
「んん!? まっ、あっ……ん、ちゅ。はぁ……んんっ」
舌先だけで触れあっていたのも、徐々に奥へと舌を滑らしていき吸い付くように絡ませる。歯の外側に舌を這わせると、口の隙間から唾液のぴちゃぴちゃ鳴る音が耳に伝わってくる。
(ぴちゃぴちゃって音、すっごくエッチな感じ。なんだかふわふわしてきちゃった……)
閉じていたはずの目は半分開かれ、芦戸さんの特徴的な黒い眼差しが俺を捉える。その目は嫌がっているというより期待しているような目をしていた。
俺は一度舌を抜きキスを中断、体も離す。芦戸は「あっ」と残念そうな声をだしながら、無意識にだと思うが体を近づけさせようとする。
「芦戸さん、今自分がどんな顔してるかわかりますか? すっごくエッチな顔をしてますよ」
「やだ……言わないで」
そう恥ずかしがりながら俺の胸に顔をうずめて見られないように隠す。すごくエロ可愛いぞ芦戸さん。
「気持ち良かったですか?」
俺がそう問いかけると芦戸さんは俺の胸のなかでゆっくりとうなずく。
その状態のまま少しの間芦戸さんの背中をさすったりうなじに手を当てたりして、しばらくゆったりとした時間を楽しむ。芦戸さんは顔を上げないが首筋を触るとくぐもった声を出して反応してくれる。
しばらくじゃれついてこのゆるりとした時間を大切にしたいところだが、俺は次の行動に移らせてもらう。
「体の準備が出来たようなので、今から三分計りますよ?」
「え~? もう終わったんじゃないの?」
芦戸さんはキスしたことで吹っ切れたのか元の調子に戻ってきている。口調も軽くなって、怒ってたり不安がってたりする様子はない。
「さっきのはキスしやすくするための準備運動ですよ。さ、顔を上げてください」
俺が携帯でタイマーをセットしながらそう言うと、芦戸さんはぐずりながらも顔を上げ微笑みかけてくる。可愛い、緊張が解れたようでなによりだ。
そして再びお互いキスを始める。今度は一気に舌で唇をこじ開ける。芦戸さんは少し抵抗しながらもすぐに俺の舌を受け入れ、舌を絡ませてきた。
「う……ちゅっ、んんっ! ぷはぁ、あん……うぅ」
(さっきより激しい! すごく舌がうねってて……口の中気持ちよすぎる!)
できあがった体は刺激に順応し、俺が舌で口を蹂躙するだけで芦戸さんの脳は快楽に溺れていく。
「んんンっ! はぅ……ちゅぱ、ああァ……ふぅんっ!」
(あ、そこだめっ。気持ちよすぎ! そんなに舐められたら)
俺は授業中に芦戸さんが舐めていた弱い部分を重点的に刺激する。手持ち無沙汰な両手に指を絡ませると芦戸さんは指を絡み返してくれた。
(もう……頭……真っ白になって、何も……考え……)
「うッ、うぅぅ……! んふぅぅゥゥっっ! ……ムふぅぅ……ふぅぅぅ」
キスで口を塞がれていたためこもった嬌声をあげる芦戸さん。汗をにじませながら息が荒くなっている姿は非常に扇状的だ。
目を細め幸せそうに余韻に浸っているところ悪いけど俺はそのまま引き続き舌を這わせる。
「ふぁぁぁっ、待ってぇ……。ンん……、あふぅ……。ちゅっ……んちゅ……」
お互い手に力をいれ、舌を初めより扇情的に絡ませていると、バイブレーションで携帯が震えて終わりの時間を知らせてくる。
が、俺達二人はそれを無視してもう一度芦戸さんがイクまでねっとりとキスをし続けた。
つつがなく芦戸さんとのキスが終わってから、俺は足に力が入らなくなった芦戸さんを門の外まで肩を貸しながら連れ出していた。
「もう大丈夫だから」
芦戸さんは拗ねた様子でそう言うと俺から離れる。
「お疲れ様でした。これでしばらくは安心ですね」
「個性使った張本人が言うなー!」
怒った顔でほっぺたをつねってくる芦戸さん。可愛いけど頬が痛い。
「怒った顔もかわいいですよ」
俺の感想に芦戸さんは思案顔になる。
「調ちゃんってやっぱり、ソッチ系の人?」
「秘密です。ただ今日の芦戸さんはすごくエロ可愛いくてとても興奮しました!」
「秘密にする気ないじゃん! さっきもここまで来る途中ずっと胸さわってきてたし!」
こうして芦戸さんは疲れた顔をして帰っていった。
芦戸さんと別れてから空を見ると、太陽はビルに隠れるところまで落ちていた。徐々に暗くなっていくなか、俺は周りを確認してから借り部屋に瞬間移動する。
荷物や手紙の受け取りのためだけに借りている狭い部屋で、元の男の姿に変身し直す。
働き初めはろくに仕事がこなかったのでこの安くて埃っぽい部屋に住み、寝床はアパートやホテルの空き部屋を使っていた。
それが習慣付いてしまって今日まできてしまっているのだが、そろそろ引っ越しを考えようか。いつかは女の子を家に入れることになるかもしれないし。
荷物や手紙がないか確認してから、俺は千里眼でよく使う空き部屋をさっと確認する。何部屋かはもう人が住み使えなくなっていた。また新しいところを探さないと。
そうして俺は部屋に置いてあるティッシュ箱を持ち、まだ誰も住んでいない部屋に瞬間移動する。今日のことを思い出してオナニーするためだ。