ポロニアンロングビーチに隣接するリゾートホテルの割り当てられた部屋にあるベッドの上にて、私は膝を抱えて昼間のことを考えていた。耳に残る総司くんの優しい声で紡がれた『愛している』という言葉。それが頭の中で勝手にリピートされて、私の思考を蕩けさせる。
このままトリップしてしまいそうになるのだが、ひとつの事実が私に重く圧し掛かる。今回、このポロニアンロングビーチに遊びに行くことを総司くんに伝えたのは18日の火曜日の朝。彼はその提案を受けた直後にこのホテルにある家族風呂を予約して2人きりになれる場所を準備してくれていた。そして、5日ぶりの逢瀬は私の心を満たしてくれる幸せな時間だった。
そう、“私”の心は満たされた。
夏祭りの夜と翌日の夜、総司くんは箱に入った新品のコンドーム12個すべてを使い切るくらい私を感じてくれた。だが、今回は1回も射精していない。私は絶頂し過ぎて気絶までしたのに、総司くんは最後まで気持ちよくならなかったのだ。
これは私の経験不足や勉強不足だったのが原因しているのは間違いない。前者はこれから総司くんと身体を重ねることで積んでいくしかないが、後者は出来ることがあるはず。幸いなのか分からないけれど、練習道具であるバナナは果物の中で私の一番の好物であることは寮生であれば皆が知っているくらい知れ渡っている。だから寮でバナナを使って練習していたとしても不審には思われない……はず!
「……けど、あの体勢って何だったんだろう」
総司くんのあそこが深々と私の性器に突き刺さり、挙句子宮を突かれることになるなんて思いもよらなかった。総司くんのあそこが根元まで入りきってしまったことで私のクリトリスは快感を作り出す生産機なってしまい、総司くんの陰毛に擦れる度に体中に電撃が走るような感覚に見舞われた。私は恥ずかしいけれど、男女のセックスで用いられる体位をネットの画像で探していく。そして、見つけた。
「何なに……『駅弁』?男性が女性を抱えるため、男性側に相応な体力と筋力が求められる体位。普通にピストン運動して、女性の腰が大きく揺れて、股間が離れて戻ってくるタイミングで腰を突き出せば、激しい突き上げを繰り出せる。……こんなのされていたら壊れちゃってたかも」
私はネットの画像に映し出された女性たちが全員イキ顔を惜しげもなく晒しているのに戦慄した。いや、今日の私は完全に彼女たちと同じ表情をしていたかもしれないけれど!
実際、今回は私が自爆したようなものだ。総司くんの腕の中から逃げ出そうともがいてもがいて腰を浮かび上がらせ、途中で快感と疲れで身体の緊張を解いてしまって彼の肉棒に深く貫かれる。そこで意識がはっきりしてまた逃げ出そうとして貫かれるという不毛な行動を繰り返した。結果、潮をおしっこのように垂れ流しながら気絶することになってしまった。
その後、意識を完全に取り戻したのはアイギスにお姫さま抱っこされて移動している最中。私を快楽の海に沈めた総司くんは何事もなかったように振る舞い、順平や優ちゃんたちと談笑していた。私はそんな彼の姿を見て、慈しみを込めた笑みを向けかけたのだが、彼が結局一度も射精していなかった事実を思い出してしまった。
「じ、次回までには何らかの武器を身につけておかないと……」
総司くんは何も言わないだろうけれど、そこに慢心して何もしないでいると何かあった時にあっさり捨てられてしまうかもしれない。
私の総司くんはそんなことは絶対にしないと心の中で叫ぶ声があるのと同時に、足元掬われたらどうするの?と不安を煽るように囁いてくる声が聞こえる。
ポロニアンロングビーチのベンチで総司くんに膝枕されている時、寝返りをした直後に掛けられた『愛している』という言葉。あれは嘘偽り無い、総司くんの心の声だった。私のためだけに紡がれた言葉だった。
だから、大丈夫と自信を持って言う私がいる。
けれど、同時に総司くんのはじめての女だから好意が向いているだけであって未来はどうなるか分からないと不安を告げる私が居る。
そして、本当の総司くん好みの女性が現れたら自分だけ勝手に絶頂して満足してしまう女なんて簡単に捨ててしまうのではと。総司くんが私ではない別の女と仲睦まじく並んで歩いて行ってしまうという最悪な展開が脳裏をよぎる。
私はベッドから降りて顔を横に振る。
ネガティブなことを考え始めると悪い方に悪いほうに考えてしまうのは私の悪い癖だ。今はそんなことを考える前に“勉強”をしないといけない。確か私が総司くんのあそこのことを「おちんぽ」って言った時、彼の表情は唖然としていたが身体は正直だった。私の中で固くなっていたし。
とりあえず、技能の方は追々総司くんとのセックスの中で練習させてもらって、今は知識を増やすことにしよう。そう思って携帯のディスプレイに四十八手に関するページを開く。目を通していたところで、背後に気配を感じて振り返る。
すると顔を真っ赤にして目をまん丸にしている風花がいた。彼女の目は確実に私の携帯のディスプレイを捉えている。
「ひにゃああっ!い、いつのまにお風呂あがったの。風花!」
「あうあう……。湊ちゃんも“やっぱり”興味があるんだ」
「やっぱりって、なにが!?」
「ゆかりちゃんに聞いたんだけど、潮を噴いて大きな喘ぎ声を上げつつ絶頂したんでしょ?……どんな内容を思い浮かべてしていたのかなぁって」
モジモジしながら告白する風花の言葉を聞いて、私は同士を得ることが出来たと諸手を挙げて喜ぶ。彼女の両手を包むようにして握る私。
「するのが普通だよね!」
「恥ずかしいけど、しない方がおかしいよね!」
私たちの脳裏にはこの手の話は全部NGな弓使いの女子生徒が浮かび上がっている。優ちゃんは健全な剣道娘だから、まだそういったことをしているという話は聞かない。桐条先輩は特にこういった話には疎いだろうし。
「それで湊ちゃんはどんなネタでするの?」
「結構がっついてくるね、風花」
「前回の満月の時、ストレガのペルソナ使いたちに気付けなかったでしょ?だから、影時間の間はずっと周囲の気配を探る訓練をしているんだけれど、湊ちゃんの喘ぎ声で中断することになっちゃって。タイミングを逃して出るに出れなくて。今朝、ゆかりちゃんに何があったのかを聞いたら、もの凄くどうでもよさそうに『湊がオナニーしてただけ』って言うから、桐条先輩にお願いして今日の部屋を湊ちゃんと一緒にしてもらったの」
「風花、ありがとう!」
「じゃあ、聞かせてくれるよね!」
そう言って風花は目をキラキラさせて詰め寄ってくる。
あれ?これってゆかりや優ちゃんたちと同室になるよりもヤバイ状況ではないのだろうか。けれど、風花は見かけによらずムッツリであることは分かった。きっと、初心者マークがついている私よりも男の子の悦ばせかたも知っているに違いない。そういった意味で風花とは親密になっていてもいいだろう。私と風花は夜遅くまでちょっとエッチな女子トークで盛り上がるのだった。
◇◇◇
翌日はホテルで朝食を摂った後、お昼前には巌戸台学生分寮に戻ってきた私たち。総司くんと天田くんの2人はいつも通りご飯の仕込みをするために冷蔵庫の中のものを整理し、足りない食材をピックアップする作業をしている。順平は帰って早々に自分の部屋に行き、真田先輩は仕込みをしている総司くんらに昼のメニューを尋ねている。
「湊、今夜はどうするんだ?」
「タルタロスですよね、皆の都合さえ良ければ行きたいんですけど?」
「珍しいね、湊が自分から行きたいって言うの。というか湊、アンタ。妙に艶々しているけど、なんかやった?」
「ふっふっふ。今日の私も絶好調なのだっ!今宵の私のペルソナをいつも通りと思わないでよ」
「……えぇー。湊って、こんなキャラだったっけ?」
ゆかりが米神を押さえて蹲る。昨日も絶好調だったけれど、今日は昨日のそれを上回る充実感で心が躍っている。今までと昨日と今日との違いってなんだろうと思って周囲を見渡していると、料理の仕込みをしていた総司くんと視線が合う。
すると総司くんは右手で銃の形を象ると狙いを定めた。そして、まっすぐ私のハートを撃ち抜くような仕草を見せる。しかも私に向けてウィンクまで。そんなことをされたら、はぅ~……。ぽてっ。
「うわぁっ、湊先輩!?いきなり、どうしたんですか?」
「もう……駄目。あとは任せたよ、優ちゃん。がくっ……」
「なぁに、これぇ……。美鶴先輩、ゆかり先輩。これどうすればって、いないしっ!!」
優ちゃんの慌てふためく声が聞こえる。
けど、ごめんね。私、総司くんに射止められたの。じゃなかった、狙撃されたの。だから、ちょっと幸福の泉に沈んでくる……。
あ、ちゃんと夕方には起きて総司くんの愛の篭もった晩ご飯を噛み締めた後、現在のタルタロスで行けるところまで昇りました!
いやぁ、番人シャドウも途中で出てきた一つ目でおっきな銃を2丁も持ったシャドウもあっけなかったですねぇ。