※この作品はR-18です。

P3Pin女番長 ~if~   作:甲斐太郎

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P3Pin女番長 時間軸 8月最終週~9月初め 



優「実のところ兄さんはゲスい」

私たちは日曜日の影時間に悠々と行けるところまで昇ったタルタロスにペルソナのレベル上げとアイテム収集を兼ねて来ているのだが、先日と違い大苦戦を強いられている。光や闇属性による気絶を狙ってくるシャドウもいれば、純粋にパラメーターが高くて倒しきれないシャドウなど、一昨日とは比べ物にならない強さだ。

 

「もー、何なの……アレ」

 

「一昨日と何が違います?え……、兄さんの料理を食べていないだけでこんなに酷いの?」

 

「こ、ここに来て選択を間違ったんじゃないですか、桐条先輩、真田サン?」

 

息も絶え絶えに上の階へあがるための階段に腰掛けて会話をする面々。順平からの質問を受けた美鶴先輩と真田先輩は並んで眉間に皺を寄せている。だけど、質問をした順平の方も申し訳なさそうな表情を浮かべている。事の発端は今朝まで遡る。

 

 

◇◇◇

 

 

いつも通り総司くんと天田くんが共同で作った朝ごはんを味わってまったり過ごそうとした時、私の隣にいる優ちゃんと台所で食器を洗っていた総司くんの携帯が同時に鳴った。同じ動作で携帯電話を開いてディスプレイを見た2人は驚きの声を上げた。

 

「ええっ!千里さんが事故にっ!?」

 

「命に別条はないけど、一緒にいた菜々子ちゃんがショックを受けている、か」

 

『千里さん』というのは総司くんらのお母さんの弟さんのお嫁さん。つまり彼らからすれば叔母に当る人の事だ。私もテニスの合宿で八十稲羽市を訪れた際に会った。とてもおしとやかでほんわかした感じの優しい大人の女性だった。その人が事故にあった。そして、彼女の娘さんが傍にいてショックを受けている。

 

「兄さん、どうしよう!?」

 

「落ちつけ、優。けど、母さんたちは海外だし、爺ちゃんたちは足がない。優は……ここから動くにはリスクが大きい。となると……」

 

総司くんはそこまで言うとエントランスにいた美鶴先輩に視線を向ける。彼女は何も言わずに大きく頷く。それを見た総司くんは着けていたエプロンを荒々しく脱ぎ捨てて、階段を駆け上がって行った。そして、すぐに戻ってきた。紺色のジーパンに真っ白なシャツ。背中にはリュックサックがからわれてある。しかし、リュックサックの口部分には着替え用なのか、あの日のジャックフロストの絵柄が描かれたトランクスがはみ出ている。それに気付いた優ちゃんが無理やりリュックの中に押し込んだ。ちなみに私の脳裏には総司くんの立派な象さんが浮かび上がっている。

 

「乾くん、一応これを渡しとくね」

 

「これは?」

 

総司くんから天田くんに手に渡される大学ノートが3冊。それぞれの表紙には朝・昼・夜と書かれている。その中の1冊を開いた天田くんがそのノートの内容を食い入るように見る。

 

「す、すごいっ!これってレシピ本ですよね?あ、でも日付が6年前ってことは……」

 

「うん。これは僕が小学生の頃に作っていた料理の作り方をまとめたものだよ。乾くんが僕から学んだことを記しているものと一緒のもさ。思考錯誤を重ねていたから、ごちゃごちゃしているけれど、乾くんなら大丈夫だよね?僕がいない間はこれを参考にして作ってみるといいよ。では、みなさん。いってきます!」

 

そう言った総司くんは巌戸台学生寮の玄関の扉を大きく開け放ち、叔父家族のピンチを救うために八十稲羽市に向けて出掛けて行ったのだった。

 

 

◆◆◆

 

 

家族思いの総司くんなら長期休暇のたびにお世話になっていた叔父家族のピンチを助けに行くのは当たり前だと寮に住む皆が思っていた。タルタロスに挑む人員も総司くんが出掛けた翌日には幾月理事長の紹介で天田くんが加わることになり、その日の夜には真田先輩の紹介という形で荒垣さんの2人が加わることになって辛さは軽減したと思っていた。

 

しかし総司くんが叔父家族の住む八十稲羽市へ出かけて行って1週間が経った。今日は9月1日、新学期のはじまり、始業式の日だけど巌戸台学生寮に総司くん姿はない。優ちゃんの話では、千里さんの怪我自体は軽いものだったらしいが目の前で母親が轢かれるという瞬間を見てしまった従妹の精神状態が芳しくないようで、もうしばらくの間あちらに残るらしいのだ。優ちゃんは総司くんとの会話の中で何度かこっちに戻ってくるように話を切り出そうとしたけれど、結局できなかった。

 

幼少期のトラウマは厄介だ。特に大好きな母親が下手すればいなくなっていたかもしれないというのは、心に深い傷を負ってしまっただろう。だが、それは現在の私たちも同じ状況だった。

 

「……テメエら、飯が出来たぞ」

 

臙脂色のコートを脱いだ代わりにエプロンをつけた荒垣さんと総司くんからもらったレシピ本を手に一生懸命に料理をする天田くんが用意した晩ご飯をたべるために台所へ移動し席に着く私たち。しかし、ゆかりが席につこうとして椅子を引いた瞬間にぎゅっと左手を右手で包み込んだ。

 

「いたっ……」

 

「ゆかりちゃん!……大丈夫?」

 

自分の身体を抱きしめながら蹲ったゆかりに寄りそう風花。前線で戦うゆかりにナビゲーターをするしかない風花はどういった言葉を掛ければいいのか、悩んでいるように見える。テーブルの中央で夕食を無言で食べていた順平に向かって真田先輩が話しかける。

 

「順平、頬の傷を隠せ」

 

「すいません。って、そういう真田サンこそ、痛々しいっすよ。その左手の薬指と小指」

 

順平の左頬には硬い物で殴られたような青痣が残り、真田先輩の左手の指は蒼紫色に変色してしまっている。現在の巌戸台学生分寮で怪我を負っていない人間はいない。アイギスも戦闘用の装甲はボロボロだし、コロマルの身体も毛が薄くなっている箇所がいくつもある。美鶴先輩も例外ではない。女の命ともいえるあの長い紅い髪が火炎系スキルによって焼けてしまったため、焼かれた部分を切り落として残りをアップにしている。おかげで今日の始業式では壇上に立った瞬間、教師や生徒たちから驚きの声があがったくらいだ。

 

「今まで蓄積されていた総司の料理の効力が完全に消えたっすね、この1週間で」

 

「そうだな。ペルソナの攻撃力にはそれほど影響はないところを見ると、『無事に帰ってきて欲しい』という総司の願いが防御力や体力の強化という形で表れていたんだろう。でなければ、5月の皇帝と女帝との戦いで壁に弾き飛ばされた鳴上はその時点で壁の染みになっていたはずだし、先日の戦車と正義との戦いで機関銃に撃たれまくった俺たちは物言わぬ肉片になっていたはずだ……悪い。食事中にする話ではなかった。すまん」

 

真田先輩と順平が気まずそうに俯く。彼らの言うことは尤もだ。今までずっと私たちは総司くんに護られてきたのだ。

 

「このまま、総司さんが戻ってこないまま、次の満月を迎えるのはとても危険だと思われます」

 

壁側の席に座っていたアイギスがぽつりと呟くように告げる。そうだ、あと4日後にはアルカナを持つ大型シャドウとの戦いがある。今までは総司くんの料理による能力の向上や道具作成によって有利に進めて来たシャドウとの戦い。だが、その重要な後方支援をしてくれる頼れる彼がここにいない。そう考えた瞬間、腹部に激痛が走った。私は思わずお腹を抱えて蹲る。

 

能力の低下を感じとったのは総司くんのご飯を食べずに挑んだ先週の火曜日。天田くんと荒垣さんが加入した翌日の木曜日は掠ったシャドウの物理攻撃で腕の肉を削がれたゆかりが絶叫。泣き喚くゆかりをアイギスに抱えさせてエントランスに戻るためのポータルを探している途中、私たちの前に現れたシャドウによる火炎スキルで私たちは全員が重度の火傷を負った。喉を焼かれながらも鬼の様な表情を浮かべ、敵を駆逐する真田先輩や荒垣先輩、美鶴先輩の後ろ姿がもの凄く格好よかった。

 

金曜日と土曜日と日曜日は怪我をしっかりと直しつつ、休養して、地力を確認するつもりでタルタロスを始めから昇りなおした。その結果、分かったのは私たちがきちんと立ち回って圧倒しながらシャドウに勝つことができるのは昇り切った110階層ではなく、30階層も下の70階層だということだった。

 

「大丈夫ですか、湊先輩?押さえているのはお腹ですよね。もしかして、凱旋の騎士に突かれた傷が?」

 

「傷は治っているよ。まだ総司くんの料理の効果が残っていたから、“貫かれず”、“突かれる”だけにとどまった」

 

あれがもしも総司くんの料理の効果が消えた昨日に起きていたら、私は凱旋の騎士の槍の先で百舌鳥の早贄のようになってしまっていただろう。

 

『ぽたっぽたっ』と涙がこぼれ落ちる。見ればゆかりも風花に抱きついて嗚咽を漏らし、真田先輩と順平はギリギリと歯を噛みしめている。今なら弱音をこぼしてもいいだろうか。私は溢れ出る涙を振り払うように首を横に振ると、小さく口を開く。

 

「……死にたく……ない」

 

 

◆◆◆

 

 

とても食事が出来る雰囲気ではなくなってしまったため、せっかく荒垣先輩たちが作ってくれた料理だったが私はほとんどを残して自室に戻った。しっかりと鍵を掛けて窓のカーテンも閉めてしまう。

 

そしてすぐにクローゼットを開いて衣装ダンスから大きなシャツを取り出す。それを持ってベッドに寝転がり鼻に当てて大きく深呼吸をする。しかし、これを借りてもう10日近くなるため大好きな総司くんの匂いがあんまり嗅ぎ取れなくなってしまっている。

 

今すぐにでも総司くんに会いたい。

 

会って抱きしめてもらいたい。

 

キスして、舌を絡め取って。

 

そう考えていると、視界が涙でゆがんでしまう。私は総司くんのシャツを胸元に抱え、ぎゅっと目を瞑った。

 

 

 

どのくらい眠っていただろう。身体の至る所が誰かに触れられている感覚があり、私は薄く瞼を開けて状況を確認しようと思ったが、自分の意思とは裏腹に瞼どころか手も足もまったく動かせない状態に置かれていた。金縛りにあったようにまったく自分の身体を動かせない恐怖に私の心がぽっきり折れそうになる。だが、

 

「湊のここ可愛いよ」

 

大好きな総司くんの声が聞こえた。

 

幻聴にしてはすごくしっかりと聞こえた。どういう状況なのかを確かめたい衝動に駆られるが、先ほどと同じように身体はまったく動かせない。私はとりあえず、自分が置かれている状況を把握するために触れられている場所がどこなのかを把握するように努めた。結果、全身をキスされていることが分かった。これは総司くんと初めて交わったあの夜に私の傷を労わる様に彼が自らしてくれた愛撫だ。新しく出来た臍の上にある傷は入念にキスされ舐められる。

 

『どうして、私の身体は指一本も動かせないのか』

 

キスされている。

 

耳を舐められている。

 

身体を余すところなく撫でられている。

 

そういった感覚はあるのに、快感が伴わない。伴わないってことは私の身体に悪戯しているのは総司くんじゃないっていうことになるのではないかと思ったら、大声で泣きたくなってきた。

 

私は、私の身体も心も総司くんだけのものなのに。他の男に弄ばれちゃったら、総司くんに嫌われてしまうのではないかと不安で心が軋む。

 

どうして、どうして、どうして。

 

不安や絶望が私の心を蝕んでいく。

 

いやだ!怖い!

 

総司くん!総司くん!総司くん!総司くん!総司くん!

 

タ…ス…ケ…テ……。

 

「はふぅ……。10日振りだったから、すごく張りきっちゃった。どうしよう、湊は大丈夫かな?」

 

とてつもない不安で心が押しつぶされそうになった時、降り注いだのは愛する総司くんの声だった。しかも私を心配してくれている。そのことを知れて私の心は満たされて……

 

「前回、胸を揉んだ時は体感で10分くらいだっけ。それで仰け反りつつ潮噴いての絶頂だったからなぁ。やべぇ、今まで湊にしてきた前戯フルコースだったから、このまま時間停止を解いたらどうなるか予想がつかない」

 

ちょっと落ちつこうか私。

 

私の身体に悪戯している犯人は愛しい総司くんで間違いない。間違いないのだが、『時間停止』とはなんぞや?しかも2回目で、前回は胸を揉んで絶頂させたって?

 

「しかも、湊の絶頂した時の大きな喘ぎ声を聞いてアイギスさんが即座に近寄ってきていたし、今日はその轍は踏まないぞっと」

 

私の口が無理やり開けられて何かを咥え込まされる。感触的に何か布みたいな感じだけど。

 

「湊のここには介護用のおむつを当ててっと」

 

い、いやぁあああああああ!!

 

うら若き娘になんてものをつけてんの、この変態っ!変態っ!変態っ!そこまでして私の痴態が見たいかっ!

 

「テープもしっかりと留めて装着完了。前掛けがあったら、完全に幼児プレイだったんだけれど、さすがにそれはまだ難易度が高いか」

 

華の女子高生にオムツ装着させるだけでは飽き足らんのかい!

 

ま、まさか総司くんにこんな一面があったなんて。ここは起きたらビシッとお姉さんらしく文句のひとつやふたつ言って説教してやらないといけない。私がそう心の中で決意していると、再び総司くんの声が聞こえてくる。

 

「それじゃあ。『ストップ』解除っと」

 

私はその言葉を聞くと同時に瞼を開けて性質の悪い悪戯をしてきた総司くんを睨もうとした。のだが、

 

脳天を劈く快感で一瞬の内に頭が真っ白に染まる。

 

頭のてっぺんから足の先まで慈しみながらその大きな手で私の身体を撫でまわす感覚と同時に愛しそうにシャドウとの戦いで刻まれた傷の全部をひとつひとつ丁寧にキスして癒してくれ……くれていりゅのぉおおお!!

 

「むぐぅうううううっ!!」

 

口の中がいっぱいになるように詰め込まれた布のおかげで絶叫は上げずに済んだけれども快感が後から後から津波のように押し寄せてきて、頭の中を弄繰り回して行く。ひぎぃっ!おっぱいを揉まれて抓まれて舐められて乳首を甘噛みされてりゅぅううう。無理っ!もうむりぃいいいい!イクのがとまんにゃいぃいい!

 

「ああっ、なんて可愛いんだ。ラブラブエッチする時の湊も好きだけど、快感に踊り狂う湊の姿も僕は好きだなぁ」

 

総司くんはお気に入りの玩具で遊ぶ子供の様な笑みを浮かべながら私に近づいてきて、唾液に塗れた布を取り出すと唇を奪った。終わることなく押し寄せる快感によって脳みそが完全に考えるのを放棄してしまったようで、私の身体なのに自分では指一本満足に動かせない。私の口の中に入れられていたのは履いていたショーツだったみたい。総司くんはそのショーツを自分の衣服のポケットに入れると勝手知っている部屋のようにクローゼットにあるタンスから新しいショーツを取り……だし……て。

 

 

◇◇◇

 

 

朝、目覚めると憑き物が落ちたみたいに頭の中がすっきりとしていた。

 

ベッドから降りて伸びをすると体中に残っていた倦怠感もなくなっていて、身体が羽のように軽い。制服に着替えて1階に降りると荒垣先輩と天田くんの2人がすでに朝食の準備をしていた。

 

「おはようございますっ」

 

「ん?……ああ」

 

「おはようございます、湊さん。今日は何だか元気ハツラツですね」

 

「うん。何でか身体が軽くって」

 

ストレッチをするように身体を伸ばしていると他の面々も次々と降りてくる。昨日は皆、肩を落として上がって行ったのに今日は皆が前を向いていた。見れば昨日まであった痛々しい傷痕が皆の身体から無くなっている。指摘されて気付いた者も多かった。私も思わず凱旋の騎士に突かれて負った腹部の傷痕があったところを、制服を捲り上げてみる。すると、跡形もなく綺麗に無くなっていた。まるで最初から何もなかったかのように。

 

「これはいったいどういうことだ?」

 

美鶴先輩が腕を組んで傾げている。昨日までは確実に次回の満月に訪れる大型シャドウとの戦いに対して恐怖心を抱いて震えるしかなかったはずなのに、今ではどうにでも出来る気がしてならない。

 

「なぁ、アキ。この感覚はアレじゃないか?」

 

「ああ。だが、部屋には帰った形跡はなかったぞ?」

 

「あれ、先輩方は何か思い当ることがあるんスか?」

 

真田先輩と荒垣さんが話しているのを目ざとく見つけた順平が話しかける。2人とも核心はないと言ってはぐらかす。

 

「ところで、お前ら。学校には行かなくていいのか?」

 

と、荒垣さんに言われて時計を見た私たちは青褪めた。起きてから結構な時間が経っており、通学時間も含めるとヤバい状態になっていたのだ。私たちは急いでごはんを食べると食べ終わった順に寮を出て、それぞれ駅に向かう。荒垣さんは休学状態なので自分のペースで床にきちんとお座りしているコロマルと一緒にごはんを食べている。

 

私は玄関を出て空を見上げる。雲ひとつない青空だと思っていたら、上からナニカが降ってきた。私はそれを華麗にバックステップすることで避ける。すると私がいた所に赤い染みが出来ていた。匂いからしてトマトだが、どうして空から降ってくるんだ。私を狙っての攻撃だったのであれば、帰ってきたら犯人をギタギタにしてやると決意し走る。駅へ。

 

さすがに新学期早々に遅刻すると「夏休みボケ」とからかわれるに決まっている。それだけは何としても避けなければならない。

 

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