私たち特別課外活動部のペルソナ使いとは違う別グループのストレガのメンバーの1人と見られるチドリという少女の尋問が思っていたよりも難航しているらしく、美鶴先輩たちが寮に帰ってこない日々が続いている。
それに伴ってか分からないけれど、桐条グループの警備部門というところに所属しているという葛城さんという女性が寮に私たちの“護衛”として滞在することになった。彼女もまた美鶴先輩のお父さんや幾月理事長と同じように影時間への適性はあるが、ペルソナを召喚することはできないらしい。
突然現れた大人の女性に私たちは警戒したのだが、すぐに打ち解けた。理由は簡単、総司くんと天田くんの手作り料理を食べて、泣きながら壁を殴りつけていた葛城さんが悪い人でないことは分かったから。というか痛いくらい気持ちが分かる。台所へ視線を向けると今まさに総司くんと天田くんの晩ご飯作りが佳境に差し掛かっている。
総司くんは魚をソテーしているフライパンに目を光らせつつ、包丁を使って盛り付け用の野菜を切っている風花と大きな寸銅と小さな鍋を使ってスープとソースを作っている天田くんに細かな指示を出している。ハーブや香辛料の芳しい香りがエントランスにいる私やゆかり、葛城さんの嗅覚や胃袋にガゼルパンチやコークスクリューを問答無用に放ってくる。まだ口にしてもいないのに香りだけで客を腰砕け状態させるってどれだけ凄いのだろうか。
そして、出されたのは白身魚のソテーの茸ソース掛け。表面はパリッとしていながら、身は舌の上でホロホロ崩れていく。繊細な味わいの中にある白身魚特有の甘みを引き立たせるのはハーブと岩塩だ。スープは様々な野菜をじっくりことこと、丁寧に煮込んだことで深いコクと香りと味わいを持っている。付け合せの野菜のサラダも素材そのものの味を際立たせる処理が行われており、私たちは為す術なく白旗を揚げた。
ディナーを終えた私たちはエントランスでテレビを見ながらまったりしている。すると、葛城さんがぽつりと小言を漏らした。
「貴女たち、こんな食事を続けて大丈夫なの?」
「えっと、ウエストの話ならタルタロスで動いているので大丈夫ですけど……」
「いえ、味覚の話よ。こんな料理が普通になってしまったら、外食なんて本当に高級店くらいしか満足できなくなるわ」
「「「…………」」」
正直、すでにその兆しはある。総司くんは和食・中華・洋食全てに精通しており、下手なお店で食べるよりも美味しい料理を作ってくれる。私たちが考え付くくらいのメニューでも色んな創意工夫を持って、新たな味覚を解放してくれている。うん、普通のお店じゃ、もう満足できなくなってきている。さすがにファーストフードとか『はがくれ』のラーメンとか、こだわりの料理に関しては手が届かないけれども、ファミリーレストランはもう無理だろう。
「総帥が是非とも彼をグループに入れたいという気持ちを理解することが出来たわ。それに彼の料理を食べればきっと“奥様”も元気になられる」
「奥様って、もしかして美鶴先輩のお母さんですか?」
「ええ。生まれつき身体が弱いため療養地で静養されておられるのです」
美鶴先輩は恵まれていると私は思った。家族の形はどうあれ、両親が健在している時点で羨ましい以外の何者でもない。葛城さんはそんな意味に取られるとは思っていないのだろうけれど。
「結城先輩、ちょっといいですか?」
「ほえっ?」
葛城さんの話を聞いて、少し俯きがちになっていた私だったが、大好きな総司くんに声を掛けられたので顔を上げるとエプロンを外した彼がそこにいた。台所を見れば、すでに使われた食器や調理器具は綺麗に洗われ片付けられている。
「数学の問題で、すこし分からないところがあるので教えてもらいたいんですけれど、もしかして重要な話の途中でしたか?」
「ううん!いいよ、バンバン教えちゃうよ!」
「驚いた……。総司くんでも分からない問題ってあるんだ」
「山岸先輩は僕を買いかぶり過ぎです。僕だって普通の中学生ですよ。問題を見ただけで分かる天才じゃないので、出来るだけ多くの問題を解いて頭に刷り込むんです。僕は優の兄ですから、優に『私の兄は凄いんだぞ』って思われたいじゃないですか」
私はその話を聞いて、優ちゃんのコンプレックスの話を思い出した。双子という環境において、優ちゃんは何でも出来る兄に対してコンプレックスを抱いていた。頼るだけでなく、頼られたいという優ちゃんの願いを。でもそうか、総司くんもまた、優ちゃんに格好いいところを見せ続ける努力をしていたのは、単に彼女にとって凄い兄であり続けるためだったのかと。
「という訳で、結城先輩を借りていきますね。平方根の有理数と無理数の違いが分からないのですが……」
「うわっ……。思っていたよりもリアルな悩みだった」
「ああー、あれって理解するまでが大変なのよね。風花は説明できる?」
「私も自分でする分には大丈夫だけれど、分かりやすく教えるって言うのはちょっと……」
私と総司くんはエントランスにいたゆかりと風花、葛城さんに見送られて階段を上がり、2階フロアの奥にある総司くんの部屋に入った。勉強机に広げられた数学の教科書とノートを見て、本当に勉強の相談だったかと肩を落としていると耳元で囁かれる。
「湊はエッチだなぁ。僕は数学を教えてって言ったのに。あっちのことを期待したの?」
「あうあう……」
正にその通りなので私は総司くんに言い返すことが出来ない。
総司くんは勉強机の上に置かれているジャックフロスト型の時計を見る。時刻はまだ20時にもなっていない。アイギスは早めに部屋に戻って設置されているメンテナンス台に乗って自身の身体の調整をしている。天田くんはコロマルと一緒にお風呂の真っ最中。優ちゃんは3階の部屋にいるだろう。ゆかりたちはエントランスで談笑中。やるなら今しかないって思うじゃない。ぐすん……。
「ま、意地悪するのも時間が勿体無いから切り上げるね」
「え?んむっ……ちゅぱ……んんっ……」
私の背中に腕を回した総司くんはおもむろに唇を重ねてくる。気配に敏感な先輩方やアイギスの監視の目がない今しかチャンスはないと思っていたけれど、まさか総司くんがこんな手を使ってくるとは思ってもいなかった。
総司くんと交わす熱い口付けで膝ががくがくと震えてきたのを見計らうように、総司くんが私を横抱きに抱えてベッドに座らせる。その直後、背中側に回った彼は私の首元に顔を埋めつつ、身体のあちこちを触る。膝から太ももを触って内股に手をやって揉んだり、わき腹やお腹を撫でた後で胸に軽くタッチしたり。
久々な愛の逢瀬に感覚を尖らせる私の身体を少しずつ解き解すように。私は総司くんに身体中を揉まれて上気し始めているのに彼は未だに素面。だから、私は総司くんの肉棒を触ってやろうと思って、背中の方に手を回した。
が、
「兄さん、ちょっと勉強を教えてっ!」
「「……っ!?」」
総司くんの肉棒に触れようとしていた両手で私は咄嗟に自分自身の口を塞いだ。総司くんも優ちゃんの声にびっくりして、私の胸とクリトリスをぎゅっと握ったのである。よく声を漏らさなかった私!下手すれば、ゲームセットだった。
「湊、そこの丸椅子に座って」
総司くんは私の身体を優しく愛撫していた両手で自分の頬をぱちんと叩くと、入り口に向かっていく。私も急いで衣服を整えて、総司くんに言われた通り入り口に背を向ける形で丸椅子に座った。ショーツがじんわりと愛液で濡れてしまっているのが分かる。背後で部屋を密室にしていた鍵が開けられた音が聞こえてくる。
「この英文の訳についてなんだけれど……あれ、湊先輩?」
「あはは、優ちゃんも勉強熱心だね」
優ちゃんは総司くんに英語のノートを渡すと私がいる方へ寄って来た。そして、勉強机に広げられている数学の内容を見て、苦々しい表情を浮かべた。総司くんも優ちゃんも同じ中学3年生。悩みは一緒っていうことなのか。
「これって有理数と無理数ですよね。これも難しいんだよね……。湊先輩、兄さんへ教え終わったら私もお願いします」
そう言った優ちゃんは入り口の所にいる総司くんのところへ戻り、英文の訳し方を聞いて納得したのか、私たちに手を振って戻っていった。
「危なかった……」
「ホントだよ」
私は机の上に顔を乗せてヘタレる。総司くんも部屋の鍵をしっかりするとベッドに座り込んだ。
「優は短期集中型だから、もう聞きに来ないとは思いますけれど、……どうする?」
「無論、する」
私は丸椅子から立ち上がると、服の下でブラのホックを外してシャツの下から取り出した。シャツを着たままなのは、誰か様子を見に来そうな気がするためだ。しかし、なんだかこういった仕草が受けたようで、総司くんの視線が私のブラに向けられている。
「えっと……欲しい?」
私が尋ねると総司くんは即座に大きく頷いた。
私は手に持っていたブラを総司くんに投げて寄越す。受け取った総司くんはマジマジと私のブラの全容を見た後、畳んで小さくすると鼻に当てて大きく深呼吸する。ああ、嗅がれている。ブラを通して、私の匂いというか体臭を。けど、すぐに飽きたのか、総司くんは自分のポケットに私のブラを入れると手招きする。
私が一歩一歩床を踏みしめて、総司くんに近寄って視線を交わす。そのまま私は前かがみになり、総司くんとキスを交わしt、
「総司さん、アイギスであります。明日の作業について確認に来たであります」
総司くんは私を避けて立ち上がると入り口に向かう。私は勢いを殺せず、総司くんのベッドにダイブしてしまった。大好きな彼の匂いに包まれて、幸せ……に浸っている場合じゃない!と立ち上がって、勉強机の横に置かれた丸椅子に座る。衣服を急いで整えるのだが、ブラが無い!どこやったっけと考えた私は、総司くんのズボンの右ポケットの膨らみを注視する。やばい、あそこだっ!
「夜分に申し訳ないであります。明日はプチソウルトマトの収穫と、サラダ菜やモロヘイヤなどの葉野菜、生姜や里芋など根菜類の収穫でよかったでしょうか。はて、……湊さんがどうしてここにいるでありますか?」
「収穫に関してはそれで十分ですよ。み……結城先輩には数学で分からないところを教えてもらっているんです」
「なるほどなー。じー……。平方根の有理数と無理数でありますね、私も得意中の得意でありますが、コンピューターが勝手に弾き出すので教えるのは不可能であります。ここは湊さんにお任せするのであります」
そう言ってアイギスは去って行った。総司くんはへなへなと座り込みながら鍵を閉める。そして、振り返って尋ねてくる。
「そういえば、アイギスさんは寝る前くらいに明日の予定を聞きに来るんでした。……で、どうします?」
分かりきったことを……と私は丸椅子から立ち上がるとショーツを膝くらいまで下げて、スカートを持ち上げて総司くんに見せ付ける。こうすると私の大事なところは丸見えになるけれど、そんなのどうでもいい。
寸止めを2回も繰り返されて、期待値が振り切ってしまった私の性器は愛液を垂れ流す、後戻り不可能な状態に陥っているのだ。
「もう……こんな状態までされて、何もせずにおめおめと帰れないよ!」
「確かに前戯は必要ないみたいですね」
総司くんはそう言って勉強机の中からコンドームを取り出す。そして、ズボンを下ろすと肉棒に装着した。私はショーツを片足に引っ掛けたまま、ベッドの上でM字になるように足を抱える。総司くんが近寄り、肉棒の根元を握って私の性器に宛がうと腰を推し進めてくる。肉壁を押し広げながら、総司くんが入ってくるのを感じる。
正面から覆い被さってきた総司くんとようやく舌を絡ませるキスを行う。貪り合うような熱い口付け。初めてされた時から、してもらえないと何だか満足できなくなってしまった大人のキス。
「動くよ、湊」
「うん、来てぇ……」
総司くんが私と身体を重ねられなかった時間を埋めるように激しく腰を動かす。総司くんの肉棒が私の肉壁を擦り上げるたびに、脳天を突き抜ける快感がまるで電流のように体中を流れて手先足先まで痺れさせる。
総司くんの腰は信じられないくらいの早さで動く。まるで性器の入り口と子宮の入り口が同時に攻められているような感覚に私は身を委ねる。あと少しで絶頂を迎えるという瞬間、恐怖の時間が訪れた。
控えめにノックされる部屋の扉。錆び付いたブリキ人形のように動きを止める私と総司くん。
「ぐっ……ちょっ……。あんまり締め付けないで湊」
「む、無理だよっ。少しでも声を出したらばれちゃうと思うと……んっ!」
私たちが下手に動くことが出来ない状態で再度、扉がノックされる。そして、ノックをした主が判明する。
「総司さん、すみません。『竜の依頼9』の戦闘達人って職種はどうやったら取れましたっけ」
今度の相手はどうやら天田くんのようだ。しかも、ゲームの攻略法を聞きに来たらしい。総司くんは米神をトントンと指先で叩くと、何かを思いついたように私を見てニヤリと笑う。彼のそんな様子に私は嫌な予感しかしない。
「ちょっと待ってね、乾くん」
総司くんはそう言うと、私の膝の下に手を通すと背中の方でしっかりと手を組んだ。何をするつもりなのと思ったら、私を正面から抱きかかえて件の駅弁スタイルになると何の遠慮も無しに入り口に向かって歩いていく。
総司くんが一歩一歩足で床を踏みしめる度に、ズンズンと私の体の奥に突き刺さる逞しい肉棒はコンドーム越しでも分かるくらい熱を帯びている。私は下唇を噛み締めながら総司くんの首に腕を回してしがみ付くしか方法が無い。
やがて、総司くんは入り口の扉の横の壁に凭れ掛かると、壁越しに天田くんと会話をしながら腰を突き上げる動作をする。変な声を上げれば、天田くんという第3者にバレる可能性がある距離という状況が否応なく私の頭を痺れさせる。
「乾くんは、今どこに、いるの?」
「えっと、転職する神殿にいるんですけれど……」
「なら、地下に行って、神父に、話しかけて、するとクエストが、出される、と思うから、受けてみて」
「はい。分かりました」
総司くんは天田くんにゲームの攻略情報を伝える。その間も彼は“読点”の度に腰を突き上げ続けるので、私は右手を彼の首に回し左手で自分の口元を押さえて喘ぎ声とか吐息とかが漏れないようにしているけれど、もういっぱいいっぱいだ。
「総司さん、戦闘達人の心得っていう依頼を受けました。えっと、あとはどうすればいいんですか?」
「テンションを、マックス、まで、上げて、○ライムを、縦一文字斬りで、5体倒せば、依頼完了、だよっ!」
「じゃあ、あとは作業ですね。あとは1人で出来ますので、ありがとうございました」
壁の向こう側からトタタタと駆け足で去っていく音が聞こえてきた。総司くんはドアの外に誰もいなくなったのを確認した後、私のおでこにキスを落としつつ問いかけてくる。
「湊、何回イッた?」
「わ……わかんにゃい……はぁん……くっ……ふあっ!」
総司くんは私を抱きかかえたまま、ベッドに戻る。無論、行きと同じように体の奥を突かれる形になった私は彼が一歩踏みしめる度に短く歓声を上げる。そして、ベッドに寝かされた私に覆い被さる総司くんはキスをして私の口を塞ぐと、腰を乱暴に動かし始めた。
今まで突かれる形なっていた子宮の入り口近くだけでなく、色んな角度で、強さで、肉棒を私の性器に擦り付ける。そして、一際腰の振りが速くなったと思ったら、深々と押し入ってくる総司くんの肉棒からマグマのように熱い迸りが発射される。
射精し終えるまで総司くんは私の中に居続け、終わったのを見計らって引きずり出した。コンドームにたっぷりと出された精液を見て私は物欲しそうに眺める。すると、総司くんは私の視線に気付いたようだが首を横に振った。コンドームの口は固く結ばれ、液体が漏れ出さないようにされたあげくティッシュに包められ、そのままダストボックスに『ぽいっ』である。
私がしょんぼりしていると総司くんが移動した。そして私の目の前に精液とコンドームのローションでテラテラと光っている彼の肉棒が現れる。
私は少し身体を起こして、肉棒の根元の方から先端に向かって舐める。亀頭部分にキスして、噛まないように注意しながら口で咥える。頬の内側や舌などを使って綺麗にお掃除する。
すると、少し萎えていた肉棒が徐々にそそり立っていく。
あと、もう1回できるかなと思っていると、突然総司くんの携帯電話が鳴る。彼が首を傾げながら電話に出ると相手は真田先輩のようだった。
内容は『今から寮に帰るから、簡単なものでいいので4人分の晩飯を用意してほしい』ということだった。私に向かって両手を合わせる総司くん。
こうして、私たちの逢瀬は強制終了するのだった。……ぐすん。