抜けるような青空に浮かぶ入道雲。僅かに感じられるそよ風がその形を少しずつ変えていく。プールで遊ぶには絶好のコンディションと言えるのだが、湊先輩といちゃいちゃするぞと勢い込んできた僕の思いと裏腹に現実は厳しかった。
明彦先輩や順平さんたちと一緒にいると無尽蔵に寄ってくる女子大生や女子高生の群れ。大人しく黙っていればイケメンな明彦先輩と戯れていればいいものを、女たちは何をトチ狂ってか僕の方へ流れてくる。
『無駄にでかい脂肪を揺らして来るんじゃねぇよ。僕が好きなのは湊先輩の張りと弾力が絶妙な感触を生み出す美の至宝であり、手前らのじゃねぇんだよ』と寝不足気味な所為でいつもより塩対応なのだが、それでも寄ってくる女の群れに悪態を吐きながら対応している。
そんな僕を女の集団から助けてくれたのは小学生であり料理を教えている乾くんであり、湊先輩は遠い目をしながら現実逃避している始末。これではプールで湊先輩といちゃいちゃするのは不可能だなと考えた僕は、乾くんからの誘いもあったのでポロニアンロングビーチが一押しているウォータースライダーで遊ぶために歩き出した。
一通り遊んで乾くんと一緒にウォータースライダーを全種コンプリートした僕は一度先輩方のところに行くという乾くんと別れた後、貸し出しされていた大きな浮き輪を借りてプカプカと流れるプールを漂う。昨日は湊先輩のショーツをおかずにして一晩中息子の相手をしていたので丁度いいと、まどろむ視界の中で僕は意識を手放した。
◇◇◇
総司くんが同年代の女子高生や女子大生に囲まれているのを見たとき、私の胸中は嫉妬というか醜い独占欲で満たされていた。その男の子は、総司くんは私だけの物だ。お前たちが話しかけていいものではないと声を大にして言いたかった。しかし、そこで私は思いとどまる。私と総司くんの間には果たして「愛」があるのかどうかを。
私と総司くんの関係が始まったのは1週間前の夏祭りの夜。
出し物のひとつであった射的屋で手に取ったコルク銃を見た時、どうしようもない恐怖心が私を支配した。息がつまり、ひどい眩暈で視界がぐるぐる回ってそのまま境内の石畳に倒れ込みそうになった時、後ろからさっと支えてくれたのが総司くんだった。2歳年下の彼の身体は倒れ掛かった私の身体を容易く支えた。そして、優しく包んでくれた。元々総司くんに好意を持っていた私には効果抜群だった。自分が総司くんの腕の中にいるという事実だけで、心がポカポカと温かくなり『幸せ』という感情が後から後からポンポンと無尽蔵に生み出されていく。
不良に絡まれ、夏祭りの会場から抜け出す時にぎゅっと私の手を握ってくれた総司くんの大きい手が忘れられない。
鼻緒が切れたのを見て頬を掻いた後、無言でお姫さま抱っこして寮まで連れて帰ってくれた総司くんの顔が忘れられない。
気付けば私は浴衣を脱いで生まれたままの姿を総司くんに晒していた。最初は恥ずかしがっていた総司くんだったけれど、シャドウとの戦いで私の身体に刻まれた戦いの小さな傷跡を癒すように、傷ひとつひとつにキスしてくれた。一心不乱にキスしてくれる健気な総司くんを見ていて思う。
『純粋に嬉しいという気持ち』
10年前に両親を喪って、親戚中をたらいまわしにされ、住んでいた地に戻ってきたと思ったらシャドウとの戦いに巻き込まれ、リーダーとして仲間の命を預かることになって、死ぬ思いをして。
ずっとこのまま不幸なんだって、諦めかけていた私の心を総司くんが救ってくれた。
私が求めるままに抱いてくれた。
愛してくれた。
私がキスをせがめば、総司くんは全部応えてくれた。
朝、彼の腕の中で目が覚めた時、下腹部に繋がりを感じた時、私のこれからの人生に総司くんは必要不可欠だって思った。もう2度と離れたくない、離したくない、離さない。そう思った。
総司くんは辛くなったらいつでも自分の下に来ていいと私を撫でながら言ってくれる。その言葉に甘えて、翌日も抱かれに行ってしまったのは軽率だったかもしれないけれど、心が彼を求めていた。だから仕方ない。それに総司くんも私を一晩中愛してくれたし。新品のコンドームも1箱使い切るくらい、私の身体に溺れてくれたし、何も言うことはない。
しかし、現実は非情だ。寮には私や総司くんの他にも住人がいるし、男子が住むフロアの奥に部屋がある彼のところに入り浸ることは出来ない。かといって3階の奥に部屋がある私の部屋なんてもってのほかだ。アイギスの監視の目を誤魔化すことなんて不可能。むしろ夏祭りの夜とその翌日の行為がよくばれなかったと今更だが思う。その後も何とか総司くんに甘えようとしたのだが、中々機会に恵まれず。
ついに昨夜は“総司くんに胸を揉まれ続けて絶頂しまくる”という夢を見てしまった。部屋の前でドスンという大きな音がしてすぐに開錠しようとする音が鳴り響き、ドアが開くと同時に血相を変えたアイギスが部屋に飛び込んできた。
「大丈夫でありますかっ!!」
私を心配してくるアイギスは冷静に自分に搭載されている無駄に高価で高性能なセンサーを用いて色々と教えてくれた。しかし、美鶴先輩やゆかりたちが様子を見に来たタイミングで、『下腹部が洪水状態』って言わなくてもいいじゃない!
美鶴先輩と優ちゃんは首を傾げたけど、ゆかりは上気する私の表情と下腹部の洪水というワードを聞き、ボサボサの髪を手櫛で整えつつ、生温い視線を注いできた。自慰行為で絶頂した声に反応しちゃったアイギスの暴走ということで落ち着いた時、ゆかりは「くだらない」と言いたげに自分の部屋に去って行った。事情を察した優ちゃんもそうだし、美鶴先輩も「ほどほどにな」と謎のメッセージを残しつつ部屋に戻っていった。アイギスも申し訳なさそうにしながら自室に帰っていく。様子を見に来た真田先輩と順平も他愛ない会話をした後、眠そうに欠伸をしながら階段を降りていった。
明日はどんな顔をして皆の前に出ればいいんだと思っていると、総司くんに声を掛けられた。振り向くといつもの優しい笑みを浮かべていて、私の心はきゅんきゅんと高鳴ると同時に、先ほどの夢のことを思い出した。
「うぅ~……4日してないだけであんな夢を見るなんて……」
無意識に呟いた言葉は総司くんには聞こえなかったようだが、彼に呼ばれて近づいた私は正面からぎゅっと抱きしめられ、考えていたことはすべてふっとんだ。総司くんの胸板に両手を添える形になった私、こんなところじゃ皆にばれちゃうと焦りつつ、彼の顔を見上げようとした瞬間。着替えた短パンの中にするりと総司くんの手が入り込んだ。
部屋にアイギスがいて、ドアの外から美鶴先輩やゆかりたちが見ている状況だったため、着替えを入れているタンスからこれしか取り出せず、タオルケットの下で着替えることしか出来なかったデニム調の短パン。無論、下着を換える暇はなかったため、“穿いて”いない。総司くんの手がお尻を一撫でして前の方へ回る。そして、私の陰毛をくいっと引っ張る。
私は総司くんの寝巻きをぎゅっと握り締めながら、胸板におでこをこすり付けるように一歩分近づいた。直後、耳元で囁かれる「見えていたよ」発言で私の脳みそは沸騰してしまったように熱くなった気がした。
その後のことはあまり覚えていない。気付けば部屋に戻ってベッドに横になっていた。しかし、胸元には私が着るにしてはとても大きなシャツがあった。匂いを嗅げば、大好きな彼の匂い。私はそれに顔を埋めながら眠った。
おかげで、今日の私は絶好調!平静を装いながらプールで総司くんとイチャイチャするんだと思っていたのに。ああ、妬ましい。妬ましい。と、美鶴先輩が確保しているビーチパラソルの下でプールを楽しむ人々を眺めていたら、総司くんとウォータースライダーで遊ぶと張り切っていた天田くんが戻ってきた。
「僕と総司さんでウォータースライダーを全部制覇しました。おすすめは最後に大ジャンプをする一番右端の奴ですね」
「そうなんだ。ところで総司くんは?」
「流れるプールでのんびりするそうです」
私は手に入れた情報を元に総司くんの所に向かう。全長500mに及ぶ流れるプール。想像していたよりも幅広いプールを前に総司くんを探すのは無理じゃないかと思っていたら、普通に大きな浮き輪に寝こけつつ流れていく彼を発見した。プールの中に入って彼が乗る浮き輪に近づくと、すぅすぅと寝息を立てて完全に寝入っていることが分かる。日々、寮母としての仕事をしつつ、寮生の食事を3食用意してくれる総司くんが疲れているのは当たり前だ。それに加えて性欲盛んな私の相手まですることになってしまった総司くんに申し訳ない気持ちになる。
「あ……湊。やっと、……2人でいられるね」
気配に気付いたのか総司くんが寝ぼけ眼で私を視界に収めつつ、そう言ってくれた。名前を呼び捨てし、2人でいられるということを彼から望んでくれている事実に私の顔は真っ赤に染まる。すると、総司くんは大きな浮き輪から降りて私の手を引っ張る。大きな浮き輪は借り物だったらしく、店員さんに渡すと私に振り返って笑みを向けてくる。
「お昼はそれぞれで食べることになっているので帰ってこなくても怪しまれません。では行きましょうか」
「えっと……どこに?」
「先輩に誘われた後、予約しておいたんです。このポロニアンロングビーチに隣接するホテルにある、……貸しきりの『家族風呂』を」
貸し切りの家族風呂を予約済み。
その一文が何を意味するのかを私が頭で理解した瞬間、もう心臓が口から飛び出るかと思った。このポロニアンロングビーチは広い。端っこから反対側の端っこまでは直線で1kmあり、幅も割りとある。ばらばらで動いていたら、延々と出会えないという事態もありえるのである。
それを逆手にとって、ホテルのロビーに集合する時間になるまで私の身体を堪能する気なのだろう。『十二分に堪能してください!』と、喉のそこまで言いかけた私の心境など知らないだろう総司くんは、フロントで手続きすると迷わず家族風呂のコーナーに向かって私の手を引いていく。プールに隣接しているということでホテル内も割りと水着姿で移動する客がちらほらいて私たちが浮くという事態にはならなかった。そして割り当てられた家族風呂の場所についた。総司くんは『スパーンッ』と引き戸を開けると私を先に中に入れて自分も入り、引き戸を閉めると鍵をかけた。当然だが、私も総司くんも水着姿。どうするんだろうと思っていたら、総司くんはそのまま風呂場に入っていく。私もそのまま彼の後をついて中に入る、すると視界に映ったのは綺麗なオーシャンビュー。さすが海に面しているだけあって、太陽の光を反射してまるで宝石箱のようにキラキラと水面が輝いている。
「湊」
総司くんに名前で呼ばれるだけで胸が高鳴る。総司くんの水着は淡い水色を基調として黒い水玉模様が入っているハーフパンツスタイルで、上半身は濃い青色のラッシュパーカーを着ている。ジッパーは留めているだけなので前開きになっており鍛えられて引き締まった腹筋と胸筋のラインが見えていた。それの所為で他の女が彼に近寄ることになったのだけれど。
「脱がすよ」
いつの間にかラッシュパーカーを脱ぎ捨てて上半身を晒していた総司くんの手が私に伸びる。私は抵抗せず、総司くんの好きにさせる。パサリと足元に落ちる白いビキニ。私の前で屈む総司くんの目の前に晒されたおっぱい。その先端にある私の乳首は期待と興奮ですでにビンビンに立っている。総司くんの吐息が肌に当たるたび、私の女の子のところが熱を帯びていく。
私の前でじっくりと身体を嘗め回すように見ている総司くんにはすでに準備が出来上がっていることがばれているかもしれないと思うと余計に感じてしまう。それと同時に総司くんの手が再度、私に向かって伸びてくる。私の身体を守る最後の防壁に総司くんの手がっ……いや、だめぇえ……。
『ちょろろろ……』
目を点にする総司くんの前で私はお漏らししてしまった。総司くんの手は私のビキニのパンツ部分を掴んで、あとは下ろすだけという状態であったので自然と視線はそこに注がれていた。つまり、水着越しに私がおしっこするところをこんな明るいところで見られてしまったのだ。
顔から火が出るってことわざってこういうことかっ!!
穴があったら埋まりたいという衝動に駆られる私であったが、総司くんは自分のおしっこで更にぐっしょりとなったビキニを無言で下ろした。ああ、見られている。こんな年齢になって人前でおしっこしてしまうような私を、総司くんが見ている。その事実だけで絶頂してしまいそうだ。
「大丈夫ですか?」
「うぅ……うん」
やっぱり綺麗にしないといけないよねと私はお風呂場の中を見渡しお湯を入れるための洗面器を探す。すると総司くんの後ろにある洗い場のところにシャンプーやリンスの容器の前に目的のものがあるのに気付く。それを総司くんに伝えようと私の前で屈んでいる彼に伝えようと視線を落とすと、彼は心底不思議そうな表情を浮かべていた。
「えっと、総司くん?」
「何をしているの、湊。早く綺麗にしないと君も気持ち悪いでしょ?」
総司くんの返事に私は首を傾げ返すことしかできない。彼の意図を汲み取れない私が悪いのだろうかと思い始めた頃合で、総司くんは私に言う。
「早く脚を開いてください。舐めやすいように、少し腰を突き出してもらえるとありがたいんですけど」
『脚を開け』『舐める』『腰を突き出せ』と総司くんの言葉を理解するために口の中で反芻するように呟く私。
えっと、総司くんに水着を脱がされる事実に絶頂してしまった私は彼の前でおしっこを漏らした。それにも関わらず、私のビキニを下ろした彼は脚を開いて腰を突き出せという。そして、舐めるという単語。
総司くんはどこを舐めると言っている。決まっているおしっこで汚れてしまった私の性器を舐めると言っているのだ。
「無理っ!無理無理無理無理!石鹸で洗うから、どいて総司くん!!」
事実を認識した私は総司くんを避けて洗い場に向かおうとしたが、鼻息を荒くして興奮している彼の手から逃げることは出来なかった。総司くんに背後から羽交い絞めにされた私は抵抗むなしく風呂場の冷たい床に仰向けに転がされる。そして総司くんは脚をそれぞれ肩に乗せると私の腰を掴んで引き寄せる。当然、私の性器は完全に総司くんの視界に納まっている。抵抗しようにもこの体勢だと私の手はギリギリ彼の頭を触れる程度で行為自体を停めることが出来ない。
「やめっ……やめて総司くん。おねがいだからっ」
私の懇願も空しく、『ぴちゃっ』という音と熱いナニカが私の性器を舐める感覚が快感と同時に襲ってきた。
◇◇◇
湊先輩が目の前で嬉ションするのを見て箍が外れた僕は嫌がる彼女を押し倒し、趣くまま貪るようにクンニした。最初は手で必死に抵抗してきていた湊先輩であったが、次第に喘ぎ声を上げるようになり、今ではとろんとした蕩けた表情で為すが儘になっている。
一通り舐めて満足した僕は水着を脱いで全裸になると湊先輩を抱えて湯船に浸かる。ちなみに湊先輩は僕が手を離すとぷかりと湯船に浮かんだ。完全に脱力状態にあるらしい。僕はその隙に水を洗い場で水を出すとうがいする。別に僕は湊先輩に汚いところはないと思っているが、さすがに自分の股を舐めたままの奴とキスするのはどうかと思うだろうし。そんなことを考えながら湯船の方を見ると湊先輩が頬をヒクヒク引き攣らせながら仁王立ちしていた。様子を見るにとてもご立腹らしい。
「私、汚いから止めてって言ったよね」
「そうですっけ?」
湯船に入りなおした僕は湊先輩の正面に座って彼女を下から見上げる。秘部は丁度、湯船に隠れて見えないので自然と視線は臍から上へと上がっていく。
「恍けても無駄!あんな……あんな風に舐めるなんて、ひどいよぉ……」
「気持ちよくなかったですか?」
浴槽の壁に凭れ掛かりながら湊先輩の裸体を窓から見える青空のコントラストと共に視覚で楽しんでいると、僕の質問に対して答えにくそうにしていた彼女がぼそぼそと呟く。聞こえなかったことを伝えると、湊先輩は消えそうなくらい小さな声で答えた。
「……よかった……です」
「舐められて、良かった?」
「……はい」
熟したリンゴのように顔を真っ赤に染めて恥ずかしがる湊先輩に対して手招きする僕。おずおずと湯を掻き分けて近づいてきた湊先輩の股座に右手を入れる。彼女の股はお湯とは違ったぬめりのある愛液でコーティングされている。僕は脱ぎ捨てたパーカーのポケットからコンドームを取り出す。ただ容積の関係上、持ってきたのは3発分のみ。
「ええっ!?それだけなの」
「いやいや、普通の男なら多くても3回が限度なんですよ。それに……」
可愛らしく首を傾げる湊先輩に気付かれないように僕は苦笑いする。何せ僕は湊先輩のショーツをおかずに一晩中息子の相手をしている。射精する分が残っているかも分からない。激しいのは今度にして挿入してイチャラブする方面に切り替えるかと考えつつ、僕はコンドームを装着する。
「じゃあ、しましょうか」
「その前にいい?」
「え?」
湊先輩はコンドームがつけられた僕の息子を指差して言う。
「その……フェラチオっていうのをしてみたいんだけど。っていうか、私のを舐めたんだから総司くんには拒否権ないんだからっ!!」
そう言って湊先輩は湯船から上がり、大股歩きで迫ってくる。そして僕を湯船の縁に座らせると、コンドームを装着した息子を両手で握ったのだった。