一般的に男は彼女の方から自分の半身のフェラをしたいと言われたとき嬉しい気持ちになるとネットか何かで見たことがある。しかし、浴槽の縁に座る僕の息子を両手で握って上下に擦っている湊先輩の手つきは妙にたどたどしい上に、『あれぇ?』とか『確かこうじゃ?』とか戸惑いの声も聞こえてくる。
恐らく僕と過ごした夏祭りの夜の後、彼女なりに“勉強”したのだろうとは思うけれど知識と技能が伴っていないと思われる。湊先輩の『したい』っていう気持ちは嬉しいけれど、ないとは思うがもしも噛まれたりすると今後の性活に影響が出ることこの上ない。眉を寄せて悩み顔であった湊先輩は上下に動かしていた両手を息子の根元に固定し、口を開けて躊躇いがちに舌を出した。埒が明かないから、まずは舐めることにしたらしい。
「湊、ちょっと」
「ふぁい?」
僕は息子のみに視線を傾けていた湊先輩に声を掛ける。僕に名前を呼ばれた彼女はちろちろと出していた小さな舌を引っ込めて、上目遣いで僕を見上げてくる。僕はそんな彼女の両頬に手を添える。キョトンとしている湊先輩の熱い果実のような唇を奪う。
僕が浴槽の縁に座り、湊先輩が膝立ちする体勢は非情にやり辛いので、左手で彼女の後頭部を支えつつ、右手で立たせるように動かす。ディープなキスをされて頭がぼーっとなっている湊先輩の腰を僕の身体に密着させるように引き寄せて、そのまま下降させる。そして、僕の半身の先っぽが湊先輩の膣穴に触れたところで彼女に向かって語りかける。
「湊、このまま腰を下ろして。そうすれば挿入るよ」
「やぁ……んっ。わ、たしが……するの?」
途中で腰を下ろさせるのを止めた意味を理解したのか顔を真っ赤にしながら尋ねてくる湊先輩の潤んだ瞳を見つめながら、僕は肯定し続きをするように“お願い”した。
「僕は湊にしてもらいたいな」
「……わかった。……ぅんっ、はぁんっ」
湊先輩のつややかで丸いお尻に手を回し、腰を下ろす彼女を支えつつその時を待つ。湊先輩は右手で僕の半身を握ると、自分にとって都合のよいポジションを探し固定する。その直後、僕の半身を自分の中に導いた。まるで真空に吸い込まれるように、何の抵抗もなく湊先輩の中に埋没した半身。ちょっと頑張ってくれた彼女にお礼をしようとした僕に力なく抱きついてくる湊先輩。その顔は完全に蕩け切っていて、だらだらと唾液が流れっぱなしになっている。
「もしかして、挿入しただけで……イッた?」
僕は餅のように柔らかく、いつまでも揉んでいたくなる湊先輩のお尻を堪能しながら尋ねる。右肩に顎を乗せて僕に凭れ掛かるように脱力している湊先輩は僕の問いに返事はせずに膣をビクビクと収縮させるだけ。どうやら完全に意識がトンでしまっているらしい。
僕は先ほどまで立てていたプランを変更することに決めた。挿入したら抱き合ってキスしながら長く愛し合う予定だったが、僕は湊先輩の足の下に手を回してそのまま彼女の背中でがっちりホールドする。すると結合部が一番下になり、それ以外の部位は全部僕に抱えられる形になる。
「よいしょっ……と」
「ふあぁぁああっ!?」
僕は風呂場のタイルにしっかりと立つ。対面座位状態から“駅弁”の体勢へと移行したことによって、今まで以上の深さまで埋没することになった半身の先っちょにコリコリとしたものが当たる感触があった。もしかしてと思って少し腰を動かし、そのコリコリとしたものを刺激すると抱えている湊先輩が予想外の発言をする。
「やぁああん。総司くんのおちんぽがわたしの赤ちゃんのお部屋にキスしてるぅうううう」
「いや、ちょっと待て」
「はひっ……ふか、深いぃいい。おっ……おおぉっ……やぁん、こわれりゅぅううううう」
僕は一歩も動いていないし、腰もピストン運動をしていない。駅弁という未知の体勢に移行したことでプチパニックになった湊先輩が自分で動いて自滅しているのである。というか今、湊先輩は何て言った?僕の半身のことをかなり下品な言葉で表さなかったか?
「そんにゃ、そこばかり刺激しにゃいでぇええ!イクッ!イクイクッ!イッてるの!もうイッてるのっ!いっぱいイッてるのっ!」
はらはらと涙を流し、もうイキたくないと顔を全力で振る湊先輩。僕の首に腕を回し縋り付いて腰を浮かし、耐えられなくなり腰を落とすという行為を繰り返す。絶頂したくないと言う割りに、自身を絶頂に導くために自らそのように動くなんて、女性って凄いんだなって僕の思考が上の空になりかけたころ、『ぷしゃー』という音が聞こえてきた。湊先輩は僕の身体を使った自慰行為で絶頂を繰り返し、潮を噴きながら気絶したようだ。
「はひっ……はひっ……」
「え、えぇー……」
普段の湊先輩からは絶対に考えられない痴態に僕は確かに興奮したのだが、残念ながら射精には至っていない。これではただ単に湊先輩のオナニーショーを特等席で観覧しただけで、僕が満足できる訳がない。
かといって気絶までしてしまった湊先輩を犯しても反応がないので楽しさとか快感が半減してしまう。僕はとりあえず、気絶してしまった湊先輩を駅弁状態で抱えたまま、浴槽に移動し暖かい湯船に肩まで浸かる。そして、考える。この状況を利用できる最善手を。
「うん。やっぱり、今日はこれで終わりにした方が後々に利用できるかな。結果的に湊先輩は気絶するくらい何度も絶頂できて欲求不満は解消されただろうし、家族風呂を予約してまでお膳立した僕は一度も射精できていないことを後々理解したら、次回に向けて色々と自分から“勉強”してくれそうだ。……うん、そうしよう」
僕は湊先輩と家族風呂で過ごした時間のことを思い返し、『フェラチオをしたい』と言ってきたり、性器のことを下品な言葉で表した湊先輩の勉強に期待することにして、脱ぎ捨てた水着を軽く洗って絞るとまた穿き直す。湊先輩の白いビキニも軽く水で洗って絞った後、彼女の身体に着せなおす。その後僕のラッシュパーカーを彼女の身体を隠すように掛けると家族風呂を後にするのだった。
◇◇◇
ホテルに隣接するポロニアンロングビーチに移動してきた僕は空いていたベンチに湊先輩を下ろすと寝かせ、頭をそっと僕の太ももに乗せる。僕のラッシュパーカーは湊先輩のお腹からパンツが隠れるように掛けなおす。そして、すやすやと満足するように眠る湊先輩の頭を撫でる。そうやって過ごしていると、駆け足で寄ってくる影がひとつ。
「兄さん、やっと見つけた。って、湊先輩も一緒なの?」
「しぃー。静かにしなよ。結城先輩、寝ちゃっているんだから」
「ホントだ。って、普通は逆じゃないの?」
優はニヤニヤとしながら僕と湊先輩を交互に指差す。僕はちらりと湊先輩を見た後、優の方へ向き直り頬を掻く仕草をしながら呟く。
「何を言っているんだよ、役得じゃないか。ビキニで隠れているとはいえ、結城先輩の胸が見放題だぞ」
「……。兄さんのスケベ」
「仕方ないだろっ!」
「むぅ……。うる……さ……い」
優と冗談を交わしつつ戯れていると湊先輩が寝返りを打ちつつ寝言を呟く。その間、僕と優はしゃべらずにいたので、湊先輩はそのまま寝続ける。
「見ての通りなんだ。パシるようで悪いけれど、桐条先輩と一緒にいるであろうアイギスさんを連れてきてくれるか?」
「うん。これはこのまま寝かせておいた方がいいね」
そう言って、優は踵を返して走っていった。その背を見送った僕は僕の膝枕で眠る湊先輩を見る。彼女は幸せそうな表情を浮かべながら寝入っている。僕は耳元に口を近づけると未だに面と向かって言えていない言葉を告げる。
「……愛しているよ、湊」
僕の言葉が聞こえたのか、湊先輩は小さく身じろぎするのであった。