三葉さんたちが我が家に転がり込んできてから一ヶ月ほどが経った。
そのキッカケは――何しろ、あのタイミングである。それが天体衝突でもなければ、何か厄介な事件の関係者では? と勘繰っていたことだろう。
しかし、実際のところ――
最もショックを受けていたのは、他でもない彼女たち自身だった。
あのような形で帰る家を失った女の子たちを、捨て置くことなど、俺はしたくない。
とはいえ。
最初は、家族の無事が判った時点で、出ていってしまうのかな、とも思っていた。
が、彼女たちは今でもうちにいる。
炊事も洗濯も卒なくこなしてくれるので、こちらとしては何気にありがたい。
そして何より――暗く沈んでいた彼女たちが、少しずつ笑顔を見せてくれるようになったのが一番嬉しい。
こんな生活がいつまで続くのかは判らないけれど、彼女らが出ていきたいと言い出すまでは、ここにいてもらいたい――と、俺は思っている。
だが。
どうやら三葉さんの行動力には、妙な
時々異様に張り切るのだけど、その翌日は打って変わって干からびてしまう。
昨日は俺の試験勉強に付き合ってくれた上、食事当番まで代わって引き受けてくれた。
が、その反動か……今朝の三葉さんはコレである。
「…………」
寝起きはぼんやりしていることが多い。が、今日はことさら頬にも朱が差している。夜が暑かったり涼しかったりで、寝苦しかったのだろうか。
とはいえ……呆けてはいるものの機嫌が悪そうでもない。
「おはよう……瀧君……❤」
ニコリと微笑む彼女に、思わずドキリとしてしまう。
いつもよりも色っぽいというか何というか。
何とも不思議な三葉さんではあるが……そんな彼女も、俺は嫌いじゃない。
***
ずっとこうだったかはわからない。ただ、記録に残っている範囲では、ずっとこんな調子のようだ。
目を開けば、今日の私の身体が
どうやら、こちらの自分は、入れ替わりについてはある程度受け入れてくれているらしい。どこまで本気にしているか分からないけど……。
お陰で話が通じやすく、助かる一面はある。
だが……むしろ、負の側面の方が大きすぎるのは否めない。
ゆえに、私は慎重に身体を起こす。<私>に私だと悟られないように。
隣の<私>を寝かせたまま、私は静かに布団から這い出した。
そして、本棚から引き抜くのは一冊のノート。瀧君との記憶を共有するための交換日記である。彼女が目を覚ます前に、昨日までのことを確認しておかなくてはならない。
馴染み深い瀧君からの殴り書きによると、今日は朝からデートらしい。へー……家具を見に、あんなところまで。電車で一時間以上は掛かりそう。
だけど……まあ、うん、もしそこにあのブランドのお店ができたのなら、行ってみたい、って言うだろうなぁ……私なら。これは、三年後が楽しみね。いや、今日行ってしまうのだけど。
それと、文末には丸印の中に『食』の一文字。これは、食事当番のマーク。今日は私が作る日みたい。
となると、先ずは確認すべきは炊飯器ね。ご飯が炊いてあるかどうかでおかずも変わってくるから。
と、ここで……
「あー……瀧君、おはよー……」
どうやら<私>が起きてきたらしい。読んでいたノートはさっと元に戻して、私は瀧君のように振る舞う。
「おはよう。今日はデートだし、朝食は軽めでいいよな」
ちゃんと昨日立てた予定を覚えていたことで、<私>は嬉しそうに顔を綻ばせた。
が――
その微笑みは、ニコリ、から、ニタリ、へ。
え……? 私、何かやらかした!?
そして……ぶわっと<私>が布団から飛び出してくる!
「ハイざんね~ん! 今日の朝は外で食べようって言いました~!!」
しまった! あの丸食マークは
彼女は案の定のスッポンポン! ……って、それは、まあ、うん。私も裸だから……昨晩致した後、そのまま寝ちゃった、ってことなんでしょうけど……薄着(?)で暖房つけっぱなしとか、電気代もったいないなぁ。
いや、今はそれどころじゃない!
ガパーっと抱きついてきた<私>はそのまま問答無用で私をベッドへ投げ飛ばし、そのまま上から仰向けになった私の両腕を拘束。
そして、血走った両目で狙いを定め、ジリジリと顔を近づけてくる。
「ね、今日の瀧君は、
話が通じるだけに厄介だ。が、いまさら否定もできない。
こちらがドン引きしてるのも構わず、彼女は更に顔を寄せてくる。
「聞いて。ねぇ、どうしても聞いて欲しいことがあるの!」
「聞いたでしょ!? 前回も! その前も!!」
もう聞き飽きたっていうのに、この女はまだ言い足りないらしい。
「でも聞いて! 私ね――」
瀧君のこと、大好き!!!
「好きっ! 好きなのっ! 瀧君大好き! 好きっ! 好きぃっ!! 瀧君瀧君好き好き好きーーー!!!」
「ひっ、ひぃっ! やめっ、落ち着いてってば!」
好き好き叫びながらキスの雨を振らせてくる未来の私。ひゃぁっ、ベロベロ舐めないでぇっ!
「昨日の帰り道、困ってたお爺ちゃんにさりげな~く道案内してあげたところなんて……もう! ドキっとして……また惚れ直しちゃったよ❤ ホントはその場で押し倒してチューしてエッチしたかったくらい❤❤❤」
「そういうことは“瀧君”に言ってよ!」
と、諌めれば一度は止まってくれる。
一度だけだけど。
「……嫌よ……本人に直接なんて、その……照れくさいし」
ちょっとだけ目を伏せるけど、すぐに視線は戻ってくる。
「だから、昨日は上になってあげたじゃない。騎乗位って全部見られちゃうから、ホントは超恥ずかしいんだよ!? でも、瀧君ってば私の裸見たがるから❤❤❤」
「見えてる! 今も見えてるって!!」
まあ、見ているのも自分なので、恥ずかしがる余地もないのだけど。
とにかく……瀧君が私だと知られるといつもこんな調子だ。
日頃どれだけ欲求不満を溜め込んでいるのかわからない。
だが、この身体に瀧君の意識が入っていないと判ってからというものの……痴女同然で私に惚気けてくる。
これが……私?
こんな変態女が、私なの?
私、こんなになっちゃうの……!?
それなのに……嫌というより“羨ましい”と感じてしまうのが、我ながら終わってる。
勿論、相手が瀧君だから……というのはあるけど。
瀧君のことなら、惚気けたい想いは、今の私にも……ある、し。
ここまで厭らしくはないけど。
だって、まだ付き合ってないし。
でも、一緒に暮らして、ずっと見てて、
喋りたいこと、いっぱいある。
四葉は――いい加減面倒になってきたのか、露骨に聞き流している節がある。
うぅ……今なら妹が如何に迷惑してたかよく分かるよ。
だって……熱量が違いすぎるもの!
「ねぇ……クンニしてよぉ……ずっと言えなかったけど、実は瀧君の舌使い、すっごく大好きなんだよ~♪ 私もこっそりバイブをペロペロして練習してるしぃ……。私も舐めてあげるから、瀧君も舐めて! シックスナインしようよ!」
勢いのままに体勢を入れ替えようとした隙に、私はこの変態痴女をベッドの下へと放り落とす!
「そんなの無理だってば! もうデート行こうよ、デート!」
身体は
てか、そんな下らない練習してるんだ……未来の自分……。
なかなか痴女が起き上がってこないので、軽く床を覗き込んでみると――天井を睨みながら至極ご不満な様子。
「いいもんいいも~ん……そんな乱暴な瀧君には、『とびっきり』のものを用意してあるんだからねー♪」
『とびっきり』って……何なのか想像もできないけれど、<私>が言うのだから、ロクなモンじゃないわよね、間違いなく。
今日のデートって……家具を見に行くんじゃなかったっけ……?
田舎暮らしだった頃は車が必須だけど、こっちはどこへ行くにも線路が走っている。
朝晩の混雑には閉口させられるけど……運良く座れれば、これほど楽なものはない。
だけどヒマを持て余した未来の私とこうして肩を並べるのは……まるで、ライオンを前にしたウサギの気分。
さっきまで、見たい収納なんかの話とかしてたクセに、油断するとすぐに――
ヴヴヴヴヴヴヴヴ……
「――っと、く……ん……❤」
私の身体にないハズの
これは、受信機につながっていて、発信機は、彼女の手の内に握られている。
「……ねぇ、瀧君。こういう時は……どうするんだっけ?」
出かける間際、私の身体に巻きつけた後に、彼女自身も見せてくれた。
短いスカートをベロリと捲って。
パンツ――と呼ぶには、少なからず卑猥な雰囲気。
その原因は、お股のところの膨らみの所為だと思う。
ローターを、固定するための。
そして、私もまた手渡された。
私のアソコが震えたら、同じようにこのスイッチを押すんだよ、って。
だから、渋々私も――
「あ……はっ♪」
繋いだままの指先が、ギュっと強くなった。
ガタンゴトンという振動と騒音で、私たちの異常には気づかれていない。
だけど、その熱っぽい表情で……しっかり動いちゃってるんだなぁ、ってのは判ってしまう。
この……変態女め!
そろそろ止めてくれないと、目的の駅に着いちゃうんだけど……。
「あ、次だね。降りよっ」
と言って、容赦なく私の手を引く<私>。
でも……ちょっと待ってって!
コレ、止めてくれないと……アソコが……アソコが……!
「腰、どうしたの? ほら、ちゃんと背筋伸ばして」
脇腹を肘で突かれて、私は思わずエビ反ってしまった。
そうすると……うぅ……やっぱ、男のコのノーパンはありえないわ……。
だって、ココ、すぐ
パンツで押さえてないと……恥ずかしすぎる……!
というかさ、<私>は恥ずかしくないのかな。こんなズボンにテント張った彼氏と腕組みして歩いてて。
当然、気づいてないはずもないし。
パンツを穿くな、って命令したの……彼女自身なんだから。
それなのに、むしろしつこいくらいにベタベタしてくるし!
……チラチラと下を覗いながら。
はぁ……もーやだ、この痴女。
さて、改札を出た後は、目的のお店にはバスが通ってるって、瀧君のメモにはあったけど……
「ね、折角天気もいいからお散歩してこっ! 多分一時間もかからないだろうし」
バスで一〇分程度の道のりに、どうして一時間なのよ。
これはもう……
妙に静かなので、変なこと考えてるんだろうなー、ってのは判ってた。
その方向性としては、人前では口にできないようなこと。
駅から離れて、商業施設もなくなると……この辺りは再開発の最中なのかな、マンションどころか、何も建ってない更地すら残ってる。
そこで、ようやく彼女は話し始めた。
自分自身の、変態癖を。
「ねー……やっぱ私、勃起してる瀧君、好きだなぁ❤」
「はぁ!?」
チリチリとズボンのファスナーに手を掛けてくるけど……男のコの身体は不慣れで、つい反応が遅れてしまった。うっかりしてる間に、ビヨン、って飛び出す元気な瀧君。
慌てて私は肩をひねって顔だけ後ろを振り向いた。とりあえず、声の届く範囲には誰もいないみたい。
多分、<私>は判っててやってるのだと思うけど。
「コレって、私に欲情してるんだよね? 私を犯して……私を
発情女はグリグリと下の頭を撫で回す。
「……貴女ほどじゃないでしょうに……」
つい憎まれ口を叩いてしまった。
これは、自爆行為でしかないのに。
わざわざ股間の振動を止めた上で……彼女は厭らしい笑みを突き付けてくる。
「へぇ? それを
「ぎゃあっ!? まだ覚えてた!!」
というか、三年やそこらで忘れるわけないか!
あー……コイツ、やっぱ私だ。
こんなこと知ってるの、私しかいないもの。
少し前、学校から帰ってきたら居間のソファで瀧君がお昼寝してたのよね。声を掛けても起きないから……ホッペならいっかなー……って唇で触れようとして……スレスレで引き返した小心者の私。
なのに、そのままドキドキが収まらず、眠ってる瀧君のすぐ傍で……シちゃったんだよ……
自分と自分の対話とはいえ、別の自分から突き付けられると少なからず居た堪れない。
警察に捕まってしまった実行犯のように観念して、私はしおらしく<私>に連れられていく。
アソコも放り出したまま。
だけど――
「……アレ? こっち、道、違うんじゃ?」
右に曲がるのは、もう少し先だったハズ。
現に、この先は行き止まりなのがここからでも見えている。
道に沿って両側に工事現場の仮囲いが立っていて、その先の車両入り口はしっかりと閉鎖済み。日曜日は現場の人たちも休みたいだろうし。
こんなところに来たって誰もいないよ。
誰も――いない――!?
ヴヴヴヴヴ……
「あっ❤」
それに釣られて、私も握ったままだった電源を入れてしまった。
ここは静かだからか、あっちのモーター音も聞こえてしまう。
「あ……はぁぁぁ……❤」
怪しい喘ぎ声を漏らしながら、<私>はスカートを上げていく。
入ってきた通りから丸見えなのだけど、距離があるから何をしてるかは分からない。
予想はできるだろうけれど。
「ソレね、そのまま
彼女のパンツはただのパンツじゃなかった!
ローターホルダー付き、って時点で普通じゃないのだけど……その上、股布がパックリ開いてる!?
「震わせながら
それは凄そうではあるのだけど……でも、ゴムとか持ってきてたっけ?
なんてのんびり考えていたら……!
<私>の方はそんなの全然気にしてない。壁に両手で寄りかかり、突き出したお尻の上までスカート捲り上げてしまっている。通りから離れているとはいえ、目のいい人なら判っちゃうかも。
「お願い……
うぅ……非常にマズイとは思うのだけど、断ったらどうなるか判らないし……!
「ぜ……絶対動かさないからね!?」
下手に
と、自戒しながらも……この感触は、男のコがナマでシたがるのも頷けてしまう。
だって……とんでもなく気持ちいいもの!
まあ、セックスなら<私>と(!)何度かしたことあるけど、避妊はちゃんとしてる。
だけど、これは……ビクビク締め付けてくるのが生々しいほどに気持ちいい……!
そしてそれは、女のコの方も同じみたいね。
「く……ぁ……いい……っ、おちんちんがブルブル震えて……私の
その上、ローターも動いてるから、まさに二点攻め。激しく
外側でずっと
「くっ、ぅぅん……ん~……❤❤❤」
ビクビクっ、ビクンっ、ビクぅっ……!
女の子が
ただ、この脱力感は……よく解る。
「はぁ……あぁ……すっごく……良かったぁ……❤」
うわぁ……なんか、ズルイくらいの幸福感。とはいえ、瀧君に
<私>は少しだけしゃがみ込んでたけど、すぐに立ち上がってくれた。なお、私はその間に仕舞わせてもらっている。
「ほら、こんな袋小路でイチャイチャしてたら目立っちゃうよ」
「うん……ここからは……普通にイチャイチャしよ❤」
ああ、これが普通じゃない、って判ってたんだなぁ……。そこまで壊れてなくて、我がことながら一安心。
わ、私だって、気持ちいいことはしたいけど……普通のこともしたいのよ!
と、いうことで、ここからはごくごく一般的なカップルデート。
さすが自分だけあって、デザインの好みとかは完全一致。
……当たり前なのだけど。
ここは大きな建物で、レストランや喫茶店も一緒に入っていたので、品物を見て、ご飯食べて、また見て、お茶して、また見て――という感じで、私たちは丸一日ここで過ごしていた。勿論、変なスイッチは押すことなく。
あー……今度は瀧君と一緒に来たいなー。自分が瀧君、ではなく。
そして、閉店時刻ちょっと前。
バス乗り場の方には軽く列ができているけど……やっぱり帰りも徒歩なのね。
しかも、暗くなっちゃってるから、昼間よりヤバイ気がする。
私の不安を逆撫でするように……<私>が向かおうとしているのは駅とは真逆。
これはもう、帰る気ないわね。間違いなく、ホテル直行コース。
高校生がそんなとこ泊まっていいかは怪しいところだけど。
<私>の家にほぼ同棲同然で入り浸ってるから、もう手遅れって気もするし。
だから、ただの外泊くらいだったら覚悟の上だったんだけど……
いや、まあ、この近辺のマンションは駅から離れているとはいえ、軒並み新築だからね。それなりの人たちが入っているんでしょう。
そんな方々が、付近のお店が閉まる時間帯に出歩くはずもなく――車はいくらか通ってるけど、ともあれ、少なくともこんな公園で何かしようとする人はいない。
深い闇と緑に囲まれて――抱き合った私たちは二つの怪しげな振動音を響かせている。
一つは女のコのスカートの中から。
もう一つは――男のコの股間からニョッキリ飛び出した先の、女のコに握られている手の内から。
「ん……んふぅ……ふぅ……ちゅ❤」
アソコがブルブル刺激されると、自分の身体が男のコだって自覚させられてしまう。
そうすると……こんなに深くまで交わるキスも気にならなくなってくるのが不思議だ。
こんなこと繰り返してたら、心まで男のコになってしまうんじゃないか、って不安になるくらい。
少し顔を離したところで、<私>は蕩けた笑顔でこんなこと告白する。
「ね……ねぇ……瀧君……私……漏れちゃいそう……❤」
それも、こんな何もない広場の真ん中で。
彼女のアソコもスイッチ入れっぱなしで、ずーっとブルブルしてたからね。そろそろ
だけど。
場所を移したいとは言わない。
ましてや、トイレに行きたい、とも。
彼女は私の腕をしっかりと掴んだまま、震えながらこみ上げてくるものに耐えている。
でも、私だって――
「こっちも……
まさに、漏れちゃいそう! って危機感が、私の
だけど、私は知ってしまった。
ここで理性が負けて、漏らしてしまった先に――
とんでもない開放感が待っているってことを。
女のコの身体もそうなのかな?
堪えていたものを、何の躊躇もなく解き放つ――
羞恥心さえ、克服できれば――
ビュクンっ、ビュッ、ビュルッ、ビュルッ、ビュルッ!
男のコの
だとしても――
そもそも、コレは――精液は、他の人に向けて
女の人に向けて――
とにかく。
私にとって、<私>の前で射精することに、そこまでの恥ずかしさはない。
でも――
「あ、あ……あ・あ・あ……あぁ……❤」
<私>がじーっと私を見ている。
それ以外を目に映さないように。
大好きな、瀧君だけを眺めながら、
他のすべてを忘れようとしている。
それは、その
ぴちゃっ……びちゃびちゃびちゃびちゃ……
彼女は、ついに負けてしまった。
軽く足を開いて、ずっと溜め込んできたものを足下へと垂れ流している。
我ながら情けないところを見せられているのに――
私にはどうしても、それに不快感も憐憫さも抱けない。
だって、その表情は、あきらかに――
「あはぁ……瀧君……見てくれた……? 私、お漏らししちゃったぁ……❤」
快楽。
恍惚。
そこに、後悔なんて微塵もない。
でも、恥じらいはある。
私に――瀧君に見せるために、
見てもらいたいから、
彼女はあえて恥を掻いた。
昨晩も、きっとそうだったのだろう。
胸の先から股の間まで晒しながら、
自ら求めるのは、きっととても恥ずかしかったはず。
でも、瀧君が悦んでくれるのなら……
私は何だってしてしまうだろう。
そして、彼女が今、とても嬉しそうなのは――
私も、笑顔になってる、ってことなのかもしれない。
「あー、瀧君、私の服汚したー♪」
「わわっ……あー……スイマセン」
女のコに
でも、<私>にとっては予定調和だったようだ。
彼女自身が、濡らしてしまうところまで含めて。
でなければ、そんな大きなゴミ袋を用意してくる必要なんてない。
勿論、外に捨てていったりはしないだろうけど。
「これじゃあ、このままウロウロできないよ?」
男のコの白濁液だけでなく、自分でも濡らしてしまっているから。
早くどうにかした方が良いことは解ってる。
だけど――
その視線の意味は――自分のことだからか、すぐに解ってしまった。
彼女が求めているのは、許可。
責任転嫁のための。
いや、この場合は――共犯関係、かもしれない。
もし私が瀧君だったら……こう言って欲しいんだろうな。
「そうだね、早く着替えないと」
私が喉を震わせると、男のコの低い声が聞こえてくる。
普段聞いている瀧君の声とも少し違う気がするけど、
それは瀧君の声だってことは判る。
瀧君が、<私>に着替えるように言っている。
瀧君が言うのなら……私でも、それに従うだろうな。
そこが、どこであっても。
「もう❤ ……なら、ちゃんと見張っててね♪」
私はここで、とは言っていないのだけど、どこで、と言わなければ同じことか。
背中でモソモソやってる物音を聞きながら、私は言われたとおりに外の通りを注視している。
でも……何に着替える気なのだろう?
何を用意してきたのだろう?
少なくとも――
まさか……全裸?
いやいやいや、それならとっととホテルに行きそうなものだし。
別に、わざわざ外で裸になることはない。
彼女には、三年の長がある。
それも、瀧君と濃密な時間を過ごし、その――エッチなことも色々してきた時間が。
彼と身体を交える度に、次はアレを、今度はコレを、と少しずつ欲望を膨らませてきたでしょうから……きっと今の私には思いもよらないことを思いついているはず。
それが何なのか……恐ろしいような、楽しみなような。
なるべく考えないようにしながら通りを眺めていたけれど、人がひとり過ぎていった以外に、別段変わった様子もなく。
変態行為を止める糸口もなく。
そうしているうちに、済んでしまったらしい。
「お・ま・た・せ♪」
振り向いた時……彼女の着替えは、まだ終わってなかった。
ううん、これで終わり……なのね……。
地面に蹲る<私>は、背中からお尻まで何も着けてない。
だけど、突き上げられた割れ目の間からは――クルンと上を向いた可愛らしい薄茶色の尻尾が生えている。
その下の唇は丸見えなので……
そして、腰を捻ってこちらを向く頭にかぶっている三角耳が、ネコではなく犬であろうことは、その尻尾と……肩口に見える真っ赤な首輪で判る。
アレは、オシャレなチョーカーなんかじゃない。
ただ……飼われるためだけの……
瀧君に、飼われるためだけの……!
「ねぇ……私、チンチンもできるんだよ?」
おもむろに身体を起こし、彼女はこちらに向き直る。
もちろん、お腹側にも何も着けていないし、隠そうともしない。
両手は胸の外側で軽く握り、股の間を見せつけるように両膝を開いて……!
「チンチン……チンチンだよぉ……瀧君、チンチン……ご褒美は……チンチンの……ご褒美は……?」
とんでもなく卑猥で下劣。
ご褒美とはほど遠い醜態。
でも。
そんなことは解ってる。
私だって恥ずかしいもの、そんなことさせられたら。
だから、やっている。
何故かって?
瀧君が悦んでくれるから。
瀧君が欲情してくれるから。
このまま彼女が何もしてもらえなかったら……それは可哀想なことだと思う。
だから――
犯されて欲しい。
犯されている――私の姿が見たい!
「きゃぁん❤」
土の上に転がされても、<私>は決して足を閉じない。
もちろん、胸も隠さない。
さっきの全開姿勢のまま、仰向けで彼を待っている。
大好きな、彼を。
抱いてくれると信じて、
私の顔をじーっと見つめてる。
下から襲い来るであろう快楽を心待ちにしながら……!
これは……まるで、動画を観てるみたい。
瀧君が私に向けて回しているカメラを覗き込んでいるような……!
だから、こんな都合のいい台詞を口にしてしまう。
「三葉……今夜はこのまま……ナマで
ホントは自分だってそうして欲しいクセに。
だからきっと、<私>はこんなことを言うんだ。困った顔も見せずに。
「いゃぁん……でも……避妊しなきゃ……赤ちゃん
この顔は絶対誘ってる。欲しがってる。その快感を知ってしまっている顔だ! そんな私を――瀧君に満たして欲しい!
「そうだ、産むんだ……俺の子供を、三葉が!」
ズブズブズブ――と埋め込んでいくと、<私>の顔から幸せが溢れてくる。危険なことをしているのに、恐怖なんて微塵も感じさせない。
その上で、こんなことを訊いてきた。
「ダメだよ……責任取れるの……?」
答えは分かりきってる。だって、私が言って欲しいことだもの。
細かな台本なんていらない。私が欲しい言葉を誘導しているだけだから。
瀧君に、言って欲しいことなのだから……!
「当たり前だ……愛してるよ、三葉」
ずっと、聞きたかったこと。
ずっと、聞かせたかったこと。
聞かせたかったけれど、照れくさくて言えなかったこと。
こんな時でなきゃ……言えないこと……!
「嬉しいっ! 私も……愛してるよ、瀧君❤」
「三葉っ、愛してるよ、三葉はぁっ!!」
嬉しそう……本当に<私>、嬉しそう……!
私だって、瀧君にそんなに言われたら、何でもしちゃうもの。
それこそ……妊娠、だって……!
「あぁん、はぁんっ、いいっ、いいよぉ!」
「俺も……っ、三葉の
「やぁん……そんなこと言わないでぇ……っ」
犬の耳と尻尾を生やし、首輪でつながれた私が喘いでいる。
瀧君の――飼い主の下で……!
「ずっと……ずっと、こうしていたいよ……瀧君❤」
肩に腕を回して、顔を引き寄せようとしている。
キスが欲しいのね。うん、わかってる。
だけどその前に――地べたに転げ回って快楽に耐えている彼女に褒美の一言。
「なら……絶対に放さないからなっ!」
そして、チュゥゥゥゥ、と深く交わらせる。
見えないところでは本当に貪欲で、むしろこっちの舌が翻弄されているようだ。
アソコも動かす度にズルズルと蝕まれて、腰も止められないし。
こんなに激しくしても大丈夫なんだ、私の
そのクセ感度だけは上がっていて、息継ぎのための呼吸音すら色っぽい。
「はぁぁぁんっ、好きぃぃぃぃ❤」
そんなに気持ちよさげな顔をされたら、こっちまで興奮してきちゃう!
「三葉っ、
ゴムも着けずに
それどころか、とっても嬉しそうに――
「
彼の身体を離すことなく、そんな甘えたことを言ってくる。
だから……瀧君に<私>と私が求めているのは――
「ダメだ!
ドクっ、ドクン、ドクン、ドクン、ドクン……
「いやぁぁぁぁん♪
……多分、大丈夫だよね……? 今さっき
とはいえ、もし
でも……ウン、瀧君は責任感強いから、きっと大切にしてくれるよね? 私も……私の子供も……❤
なんて、都合いいこと考えてる場合じゃない!
実際問題……うーん……うーん……
でも、今更ジタバタしても遅いし、<私>も嬉しそうだし……明日以降の彼女たちに任せるしかないかな、コレは。
そして、実際問題といえば……これからどうするんだろ。このまま一晩お外で……なんてありえないし。
「それじゃ……続きは、ホテルにしよっか♪」
やっぱりそうなるのね……。
<私>は白濁汁を内股に垂れ流しながら、ゆったりと立ち上がる。
けど、そこから何かを羽織ることもなく――
「……って、服はっ!?」
まさか、そのまま公園を出る気!?
いや……全然
だから……<私>は絆を渡す。
それを、“瀧君”は今度も受け取ってくれた。
「誰かに見られたら……これは愛犬の調教ですー、って顔してね……ご主人様❤」
これは……ズルイ。
どうして私がご主人様役なの。
私だって命令される側がいいのに。
瀧君に言われるがままに、
瀧君が求めるがままに、
瀧君のために……気持ち良くなりたいのに……!
でも、ま、仕方ないか。今は私が瀧君だから。
そして何より、
お散歩プレイのために、わざわざこんな危なっかしいところで脱いだのだから。
これで連れ回さなかったら……台無しだもんね!
***
あー……最近のラブホは凄いわー……
誰とも顔を合わさず、自動精算できる設備があるなんて知らなかった。
それは、今もあるのか、
これから普及していくのか、
高校生の私には知る由もないのだけど。
にしても、
帰りは、どうしたんでしょうねー……<私>。
まあ、どうにかしたんでしょうけど。
そして、お部屋のベッドで三回ほど致したところで――私は一人の布団で目を覚ました。
ここは、瀧君の家のリビング。
早起きの四葉はとっくに起きて、既に布団を畳み終えている。
少し起き遅れたけど、食事当番でもないから若干の寝坊は見逃してもらえたみたい。
ただ……
まだ夢の中にいるようで――食卓でのんびりとテレビを眺めている横顔を見ているだけでドキドキしてしまう。
三年後のキミは、私とあんな凄いことしてるんだよ……?
あんなに……私に愛されて。
「おはよう……瀧君……❤」
ただの挨拶なのに、彼はちょっと驚き顔。
どうしたのかな? <私>みたいに……襲ってくるんじゃ、って心配してる?
だから、かな。
つい、変なことを口走ってしまったのは。
「ねぇ……ご主人様、って呼んでみても、いい?」
「ハァ!? 寝呆けてないで顔洗ってこい!」
だよねー……ウン。
今のは彼の言うとおり、寝呆けてた、ってことにしておいてもらおう。
もし、どんな夢を見てたのか訊かれても……それは、言えないけれど。
とてもじゃないけど、言えないけれど。
あーあ、何だか、私からの瀧君への欲望がどんどん大きくなってる気がする。
このままだと……どうなっちゃうんだろうね、私。
……ああなっちゃうのか……私。