※この作品はR-18です。

良くあるVRMMOモノ   作:てんぞー

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ぱーとせぶん

 錬金デスレース開幕。栄養剤を口の中に3本分ほど一気に叩き込んで開幕を告げた。

 

 まずはクランメンバーには自分よりも早く錬金術を始めているメンバーがいたため、複雑な作業を一部分担して貰い、自分はまず最初に一番めんどくさいハーモナイザーの作成を始める。これは簡易式の結界装置であり、使用する事によって場所に関係なくエーテルの状態を平たんにすることが出来る―――つまりは街と同じ状態にすることが出来るのだ。長期の冒険や野外キャンプをするなら必須の道具でもある。これをどうやって作成するかというと、アルテナ大音叉を媒介に一旦分解しながら各属性の結晶に込められたエーテルを均一に分け与え、虹色の羽と銀糸を媒体に《付与術》を発動させ、分解した大音叉の内部に付与効果を与え、再び分解される前の状態にエーテルが一切漏れないように加工しながら密封し、修復する。

 

 ……これがクソが付く程面倒で。そもそも大音叉の機構を理解しておく必要があるので、拳よりも大きなサイズのその音叉の構造を調べ、その上でそれの分解、再生を行えなくてはならない。WIKIや複数の本を《キネシス》で操作しながら開き、確認しながら神経を削っているとハーモナイザーが完成する。言葉にして纏めてしまえば非常に簡単だ。

 

 ハーモナイザー ランク:B エーテル値:55 製作者:マスター

  エーテル属性値を均一化する事によって属性災害やモンスター発生を防ぐ道具。

  ダンジョン内での必須道具でもあり、これなしでの野営は考えられない。

  EX:戦闘で使えばエーテルの高まりを抑え込んでしまえる

  値段:5万ゴールド

  ・それは素早く効果を発揮する

  ・高品質で耐久力が高まっている

  ・エーテルへの干渉能力を高める

  ・それは美しい音色を響かせる

  ・芸術的な価値を持つ

 

 完成したハーモナイザーはこうなる。相場もアホみたいな値段ではあるが、これである程度の安全は買えるのでしょうがないとも言えるのかもしれない。ただ材料費の事を考えると今回に限っては完全な赤字なので何も言えない。

 

 ちなみにこれ、作成時間は3時間である。

 

 エーテルを操作、注入するだけで2時間半ほど時間を喰われてしまったと言えばどれだけ集中し、そして難しかったかが窺える。だがその間にクランメンバーがゼッテルとネクタル、聖水を完成させてくれていた。

 

 ゼッテル ランク:D エーテル値:12 製作者:ヒモノ

  様々な事に使えるシンプルな紙。メモにひとつ。

  EX:錬金術の素材として使う事でカードや本の作成が出来る。

  値段:15ゴールド

  ・高品質によって手触りが良い

  ・滑り辛い

  ・斬撃への耐性を保有する

 

 ネクタル ランク:D エーテル値:89 製作者:ゾンフェチ

  気付け薬。酒の一種であり、意識を無理やり呼び戻す。

  EX:死に瀕した者を呼び戻した事から神の酒とも呼ばれた事がある

  値段:1000ゴールド

  ・酒精がかなり強い

  ・傷を少し癒すことが出来る

  ・疲れを癒す事が出来る

  ・高品質によってコクのある味が出ている

 

 聖水 ランク:D エーテル値:77 製作者:ゾンフェチ

  聖別された水。祝福されている為、悪魔等の邪悪を遠ざける。

  EX:野生のモンスターにも通じる為非常に便利。

  値段:700ゴールド

  ・アンデッド特攻

  ・魔性特攻

  ・甘い味がする

  ・高品質化により効果が持続する

 

 ゾンビフェチが教会関係の品を作るのって絵面としてどうよ? とは思うが簡単な品であればこんな風に作成は出来るらしい。Cランクのアイテムなどとなってくると流石に辛いものがあるらしく、無理と言われてしまったが下準備程度だったらどうにかなりそうだと思える。ともあれ、手伝いに参加した以上は最後までこき使う予定なのでそのまま次の準備に入る。つまりはインゴットと食物繊維、活性剤の準備である。この三つはまだ難易度が低く、ギリギリDランクに収まる範囲なので、自分が次の作業を進めている間にとっとと作れと命令を出しておく。

 

 ナチュラルに他人を命令し始めているが便利だから気にしてはならない。

 

 第一栄養剤一気飲みで大体全員ハイに入っているので、気にする事も出来ない。

 

 時折気付けばFOO! と叫ぶ声がどこからともなく聞こえてくるが、それを無視して錬金釜を使って上級回復薬の作成を始める。レシピは中級のそれとは変わり、薬効を圧縮させた中級回復薬を複数用意して、それを原液にしながら蒸留水を錬金釜の中に満たして行く。生命力が強く、痩せた土地でのみ栽培できるゴロル芋を材料の筆頭に、甘味の成分の代表に果物を幾つか、そして回復成分を促進する力を持っているハーン花の花粉を投入し、手順は中級のときとは変わらず、作業工程を増やしながら回復効果を増幅させ、中級回復薬よりも効果の高い上級回復薬を作成する。

 

 作成自体は難しくはない―――ただ前提の材料で中級回復薬を消費する為、物凄く面倒なのだ。

 

 上級回復薬 ランク:C エーテル値:48 製作者:マスター

  高価ではあるがピンチを引っくり返すほどの効果があるポーション。

  高い中毒性があり、連続使用は体に毒である。

  EX:致命傷以外の外傷・内傷であれば何でも治すとさえ言われる。

  値段:一瓶辺り3万ゴールド

  ・最高品質によって効果がかなり高められている

  ・服用だけではなくかける事でも効能を発揮する

  ・このポーションはどろどろしている

 

 一回目はエーテル値の調整で失敗してしまったため、二回目で根性を込めて作成して成功させる。一回の作成で2時間近く消費するので精神を損耗するのを感じながら、出来立ての精神安定剤を口の中へと流し込んで次の作業へと移る。今度は上級魔力回復薬―――良くゲームではエーテルとか名づけられるマジックポーションの類いだ。

 

 此方も作業工程はほとんど変わらない。というよりも錬金釜を使った作業は基本的に統一されている、と表現しても良い。つまり基本にして奥義とも言える部分が成分の除去と選定、それの融合、エーテル値の調整なのである。錬金釜を使っての作業であればこれさえつかめればほぼ問題はない。とはいえ、細かい所で温度調整や温度の中で発生する成分の変質がある。それを管理しなきゃいけないのも辛い所ではあるが―――エーテルへの干渉、そして操作に関しては他人よりもずば抜けている自信はあった。上級回復薬を作成した経験を生かして、此方もサクっと作成してしまう。

 

 上級魔力回復薬 ランク:C エーテル値:21 製作者:マスター

  高級品であるが魔力を大幅に回復させる薬。

  短時間に2本飲む様な事があれば廃人になると言われている。

  EX:問題のない時にそのまま飲めば精神への攻撃になる。

  値段:一瓶辺り8万ゴールド

  ・最高品質によって効果がかなり高められている

  ・服用だけではなくかける事でも効能を発揮する

  ・このポーションはさらさらしている

  ・中毒性が弱くなっている

 

 気が付けばもはや深夜。ログアウトをするべきなのかもしれないが、そんな暇はなかった。馬鹿野郎俺は誰も逃がさないぞ、と叫ぶと悲鳴が漏れてくるのでそれをガン無視して作業を続行する。なんだかんだで既に頼んだ用は終わっているので完成された品を見る。

 

 食物繊維 ランク:D エーテル値:67 製作者:ヒモノ

  植物から抽出された繊維。結合の材料に使う。

  EX:これを材料に更に強力な繊維を作成できる。

  値段:500ゴールド

  ・高品質により強度が上がっている

  ・素材とした場合エーテル値の変動を防ぐ

 

 鋼鉄のインゴット ランク:D エーテル値:98 製作者:ヒモノ

  鍛冶用に精製された鋼鉄のインゴット。

  ここから様々な武器防具、道具へと変形させられる。

  EX:錬金術の素材として使う事で更に異質な金属を作成できる。

  値段:4000ゴールド

  ・この金属は暖かい

  ・エーテルへの干渉力が増す

  ・光を吸い込む様な色をしている

 

 活性剤 ランク:D エーテル値:1 製作者:ゾンフェチ

  薬品などの効果を一時的に活性化させる事の出来る薬

  EX:そのまま服用する事で一時的に体力を活性化出来る。

  値段:2500ゴールド

  ・飲むと逆に疲れて来る

  ・エーテルを落ち着かせる

  ・品質の高まりによって効果が倍増する

 

 サンキュウ、そしてグッバイフォーエバー。これで初期の作成に必要な素材は全て揃った。貴様らは用無しだ、と高笑いを挙げてからありがとうございますと普通に頭を下げ、就寝する姿を見送った。本当に助かった。ヘルプなしだったら更に時間が伸びただろうなぁ、なんて事を考えながら錬成と調合の終わった素材を全て用意し、本格的な作業に入る事にした。現状、ハーモナイザーだけは完成させたのだから、後はそれ以外を完成させればいいのだ。という事でここから神経を使う本番が始まる。ノーミスで進めるしかない地獄の時間である。

 

 一番簡単なエイン高級紙の作成を開始する。なぜならこれは錬金釜が使用できるからだ。ゼッテル、上級回復薬、そして購入した素材の魔輝石を蒸留水で満たした錬金釜の中に放り込む。すべての素材が熔ける様に超高温で熱しながら《エーテル干渉》で余計な要素のみを排除しつつ、エーテル値が極めて50に近い状態へと変化する様に調節する。そうしながらも最終的な完成品の形を見据える為に成形にもって行く。此方は《キネシス》を使って内部に干渉し、結合して行く成分に合わせてゼッテル分離、変質、そして再結合を繰り返してその物質をエイン高級紙のものへと置換して行く。それが安定するように逃げないようエーテルを密封しつつ、落ち着くまで温度を維持し、ひたすら錬金釜を稼働させ続ける。

 

 そうやってエイン高級紙は完成する。

 

 エイン高級紙 ランク:B エーテル値:55 製作者:マスター

  数百年朽ちる事はないと言われる高級紙。

  貴重な資料などに関してはこの高級紙を使う事を推奨されている。

  EX:魔法的な力が込められており、素材としても非常に優秀。

  値段:3万7000ゴールド

  ・それは斬撃に強い

  ・それは水分に強い

  ・それは防火性を備えている

  ・エーテルへの干渉能力がかなり高まっている

  ・肌触りがかなり良い

  ・それは汗をかいても滑らない

  ・それは高品質である

 

 ガッツポーズと共に、完成した品を錬金釜から回収する。美しいと表現していい、仄かに光る高級紙の完成であった。完成されたカード、そして本の本体とも言える部分である為、ここはなるべく多くの付与能力と価値が欲しかったが、ほぼ理想通り事を進めることが出来た。集中力が切れそうなのを栄養剤を口の中に放り込む事で無視し、精神安定剤を投与、錬金術師の戦いはまだまだ続く。

 

 次はアストラルクロスである。此方も錬金釜を使って作成する。材料は霊界の布、流体金属、精霊の残滓。これら全て採取可能な素材である為、この中では作成で一番難易度が低いアイテムだと明言してもいいのかもしれない。ただネックなのは霊界の布はスピリット系エネミーから《狩猟》スキルが必要なドロップで、流体金属は上位ダンジョンでの採取品、精霊の残滓は精霊が出現する程属性力が狂っている場所へと行かないと出現しない為、素材の入手難易度が高く、スピーディーに入手しようとすると非常に金がかかるという点だった。ただこれらを利用して作成するアストラルクロスはエーテルに対する耐性を持った布である。その為、高位防具の作成には必須の物であり、価値も需要も高い。

 

 今回は錬金釜に蒸留水を流し込み、液体金属を2:1の配分で投入し、錬金釜の温度を一気に200℃まで高める。作業をしている此方が絶望的に暑く感じているなか、エーテルを操作して液体金属内部のエーテルが蒸留水へと滲み出す様に操作すれば、液体金属と蒸留水が混じり合い始める。その中に精霊の残滓を投げ込み、溶かす。精霊の残滓に閉じ込められている性質を損なわないようにしながら液体金属から鉄分と、硬度の原因となる成分や特性をエーテルによる相殺で排除しつつ、純粋にエーテルへの耐性と特性を付与する為の液体を完成させる。ここで温度を一気に50℃まで落とし、そこに霊界の布を放り込む。そのまま解けない様に気を使いながらエーテルをフィルタリングし、一気に染まらない様に少しずつ、少しずつ―――針の穴を通すようにエーテルの操作を行い、布の存在を端からゆっくりと変化させて行く。これを一気に行うと拒否反応で錬金釜が爆発するらしいので割とシャレにならない。故に細心の注意を払いつつ作業を進めれば、

 

 安堵のため息と共に完成する。

 

 アストラルクロス ランク:B+ エーテル値:90 製作者:マスター

  虹色に輝く美しい布。それは持ち主の心の色を反映して輝くとされる。

  その軽さの割に凄まじい耐性を保有している為、鎧の内側にも使用されたりする。

  EX:加工せずそのままマントとしても使えるレベルで優秀な布。

  値段:12万8000ゴールド

  ・それは見るものを魅了する美しさがある

  ・それはエーテルを吸収する性質を持つ

  ・まるで生きているかのような光沢を放つ

  ・属性への干渉能力を高める力を秘めている

  ・高品質によって価値が高められている

 

 これで素材の三つ目が完成された。そろそろ時間の感覚が消え去って来た。気付けば笑い声が口から零れ、ナイトが手で顔を覆い始めていた。そしてアトリエの外では未だに付き合いで栄養剤と眠気覚ましを飲んでいるクランメンバー達が暗黒盆踊りを開始していた―――。一体何がおかしいのだろうか?そんな事を考えながらも冷静に次の素材の作成に入る。次のアイテムは魔流布だ。

 

 これはアストラルクロスとは違い、エーテルではなく魔力に反応する布だ。つまりアストラルクロスが環境やモンスターからの防衛を考えた素材なら魔流布は対人戦、魔力を使う相手に対する防具としての活躍を見出された布だ。その性質は魔力の流動。魔力を受け流すという性質を持っている。その為、防具としての側面だけではなく補助具として組み込むことで品物の魔力の流れを良くする、という効果も得られる。錬金術で使えばその性質や特性のみを抜き出す事だって可能だ。これも作成は錬金釜を利用する。ただやや手順は異なる。

 

 まず最初に錬金釜の中に上級魔力回復薬を投入し、それで錬金釜を満たす。その中に活性剤を投入すると人間には有害なレベルへと魔力回復薬の効力と濃度が上昇する。つまりこの状態だと凄まじく魔力に対する干渉力が発生しているのだ。その中に豊穣と生命、そして流転を司る黄金のリンゴを投入する。活性剤によって活性化された魔力回復薬は即座に黄金のリンゴに喰いついてそれを溶かし始める。錬金釜の中に生命と魔力のエキスが生まれる。それを一旦落ち着かせるために180℃で熱しながら掻き混ぜていると色が濃いブルーから金色へと移り変わり始める。それが合図となる為、そこで漆黒の羽を投入する。

 

 生命のエキスに投入された漆黒の羽は瞬く間にエキスを吸い上げ、膨張し、そして変質し始める。それが一旦暴走を始めたら《エーテル干渉》による操作を行い、暴走の方向性を定める。そうして羽だった存在は解けて再構成が行われ、布へと変質し始める。その形を固めながらエーテルによる性質と特性の整理を成分を潰して行く事で管理し、最終的に薬効を凝縮して完成しつつある布の中へと染め上げる様に流し込み、最後に発生する暴走を抑え込めば―――完成だ。

 

 魔流布 ランク:B+ エーテル値:18 製作者:マスター

  漆黒に染め上げられた瘴気を纏う布。

  見た目に反し非常に安全で優秀な魔力の流動の性質を持つ布。

  EX:品質をわざと落とす事によって魔力の流動を0にして遮断する事にも使える。

  値段:11万5000ゴールド

  ・それは一切の光を吸い上げる

  ・消えそうな程存在感がない

  ・まるで闇そのものを掴むように軽い

  ・高品質を保有している

  ・魔力の伝導率が極限まで高められている

  ・命の息吹を感じる

 

 これで残りの材料は二つ、フェウガ聖銀とメタルファイバーである。先に簡単なメタルファイバーから終わらせる事にする。何せこのメタルファイバー、そこまで難しい物ではないのだ。作成手順も非常に簡単で、まず最初に鋼鉄のインゴットを錬金釜の中へと放り込み、蒸留水で満たす。その後温度を300℃まで上昇させる―――正直安物の錬金釜ならここら辺で破裂する温度だ。だがそれを気にする事無く、《エーテル干渉》を使って錬金釜内の鋼鉄インゴットを融解、分解し、金属という性質を保護する。蒸留水と混ざらない様に金属部分をエーテルでコーティングしつつ保護し、食物繊維を溶け出したインゴット部分に投げ込む。そこで食物繊維を構成する植物性の繊維性質と鋼鉄インゴットの金属の性質をエーテルを交換する様に抽出、置換する。そうすることによって植物繊維の格子型物質が金属へと変換され、メタルファイバーが完成する。

 

 メタルファイバー ランク:C エーテル値:68 製作者:マスター

  金属によって構成された繊維。自然的にはありえない存在。

  金属としてはありえない繊維質の特性から防具の補強に利用される。

  EX:非常に需要が高く、普通に販売するよりも鍛冶屋へ持ち込む方が高額で売れる

  値段:3万ゴールド

  ・それは美しい程にしなやかな性質をしている

  ・伝導率が非常に高い

  ・品質の向上によって強度が高められている

  ・素材として利用した場合エーテル値を50へと±10近づける

  ・素材として利用した場合強度を高める

 

 これはランクはCと低いが、その役割は素材として利用する事だ。その為錬金術で作成に成功するとやはり素材として利用した場合の付与効果が発生している。そりゃあ鍛冶屋も欲しがるってもんだ、と納得するしかなかった。ともあれ、これは繋ぎの素材だ。素材と素材を繋いで生み出すパーツになる。そして最後に残されたのが、

 

 フェウガ聖銀だ。材料はミスリル、ネクタル、聖水、黄金火薬だ。ぶっちゃけた話、ミスリルだけで100万持っていかれた。それだけでこのフェウガ聖銀という金属の作成が困難なのかが解ってくる。いや、工程自体は難しくないのだ。アタノールの使用もやや難易度は高いが、失敗する要素は見えない。ただアホみたいに素材の値段がやばいのだ。ネクタルも聖水もいいが、黄金火薬は特定のモンスターからのみ採取可能で、これもまたアホみたいに高価なのだ。

 

 つまり材料に金がかかりすぎる。

 

 とはいえ、そろそろこの大金を溶かす感覚に絶頂を覚え始めていた。ヤバイ道に踏み込んでいる自覚があったが、錬金術が楽しすぎて言葉ももはや出ない。故に錬金術を続行する。アタノールを今回は使用する。アタノールとは錬金炉。つまりはインゴットだけではなく装備などを作成する為の装置なのだ。より純度が高く、希少で、能力の高い金属はアタノールを使うことが必須だと言われている。というのも、アタノールが生み出す数千℃にも登る温度がないと金属を完全に熔かすことが出来ないと言われているからだ。

 

 ともあれ―――フェウガ聖銀の錬金である。

 

 ネクタルと聖水を調合して作成した薬液に黄金火薬を投入する。これを掻き混ぜて、この時点でエーテルの干渉と調整を行い、最終的に弾き出す成分を今の内に消去する。そうやって薬液が完成した所でミスリルを融解させるためにそれをアタノールの中へと入れる。数千℃を超える事でミスリルやアダマンタイト等の現実には存在しない、しかしありえない強度を保有したその金属を熔かす事が出来る。注意しなくてならないのはアタノールにいれている間は凄まじい熱量が発生する為、エーテルが火属性に染められやすくなってしまう事だ。ここでそれをしてしまうと結果がまるで変わってしまうし、違う金属に変質してしまう。

 

 故に細心の注意を払い、融解だけに留め、ミスリルが完全に熔けた所でミスリルをアタノールから引っ張り出す―――ここは《キネシス》を使って引き出す。それ以外の手段だと持つ道具が炎上したり熔けてしまうからだ。引き出した所で完成している薬液を溶けたミスリルと混ぜ、蒸発しない様に発生した蒸気を無理やり抑え込み、再びアタノールの中へと、今度はインゴット形成用の型の中へと流し込みながら戻す。ミスリルが外へ出している間に固まってしまうと手遅れなので、その前に素早く作業を終わらせてアタノールの中へと戻せば、ミスリルと薬液を馴染ませる様に混ぜ合わせ、そしてその薬効と成分を結合させる。

 

 金属に聖なる祝福がその性質として混ぜ込まれていく。ただのエンチャントではなく、金属という物質の根本的な性質に上書きする様に、形作っていくのだ。必死にエーテルを操作し、魔力を吐き出しながら力を籠めていき、数千℃の熱量によってエーテルの属性が上書きされない様に干渉を遮断しつつ不純物の排除、そして成形を行う。完全に定着するまでアタノールで作業を続け、それが終わったところでアタノールの温度を徐々に下げ、フェウガ聖銀のインゴットが完成する。

 

 フェウガ聖銀 ランク:A- エーテル値:32 製作者:マスター

  今は亡き神フェウガにより授けられた祝福を編みこんだ金属。

  基本属性とは別の聖なる浄化の力を保有している銀。

  EX:強度、価値が非常に高く、高度な錬金術や鍛冶の素材として知られる。

  値段:58万ゴールド

  ・エーテルを浄化する

  ・魔なるものを退ける力を持つ

  ・凄まじい柔軟性を保有し、素材として利用しやすい

  ・高品質により美しく輝いている

  ・神の祝福を感じられる

  ・まるで重さを感じない

 

 58万とかいう阿呆みたいな値段だがこれを売却しても赤字なのだ―――赤字なのだ。もう泣きたいレベルでお金を使い込んでいるが、集中して錬金術に没頭すれば返済できるからセーフ、とか言いつつも心の中は割と死んでいた。残った栄養剤と眠気覚ましを全部口の中に叩き込んで意識を覚醒させ、最終作業に入る。

 

 即ちエイン高級紙、アストラルクロス、フェウガ聖銀、ハーモナイザー、メタルファイバー、そして魔流布。この素材を使って漸く目的の装備を作る事だった。

 

 こんなにお金を使って、時間を使って、それでもまだ終わりじゃない―――終わりじゃないという事実に心が折れそうだった。アタノールの中を何時間覗いていたのだろうか? 錬金釜の中を何時間覗いていたのだろうか? 一体どれだけ長くかき混ぜていたのだろうか。誰か教えてくれ、時間の感覚が狂ってしまっていたのだ。

 

 そんな事はどうでもいい。錬金術の時間だ。

 

 エイン高級紙を本体部分に、ハーモナイザーをその中に錬金術的に埋め込み、アストラルクロスと魔流布を結合させてカバーにし、全体の骨格をフェウガ聖銀にし、メタルファイバーを使って全てを繋げて完成させる。先ずは一番最初にフェウガ聖銀を成形する。基本的な骨格の形へとその姿を変形させた所で次はアストラルクロスと魔流布を重ね合わせ、それでフェウガ聖銀の骨格を覆う。その後でエイン高級紙を挟み込み、最低限の本の形を作る。

 

 そしてそれを錬金釜の中にシュートする。

 

 錬金釜に満たされた蒸留水が錬金釜に刻まれたその役割を果たす為に起動を始め、形作られていない本がその姿を生み出そうと徐々にレシピに反応し、エーテルが融合を始める。錬金術とは科学と魔法の学問だ。成分、性質、組み合わせ、それを理解しておかなきゃいけないくせに肝心の反応に関しては魔法めいているだけではなく、物理法則を完全に無視している。だから純粋な科学者でも、純粋なロマンチストも駄目だ。リアリストであり、ロマンチストである者こそがこの学問を修めるのにふさわしいと自分は思っている。

 

 故にその魔法的な科学反応を通して、レシピという科学的な魔法術式を通して。決められた反応を素材は引き起こして行く。バラバラだった素材は結合し始めて行く。それに合わせてメタルファイバーを投入し、それを全て一つの形へと繋げて行き、それが混ざり合い始めた所で錬金釜からそれを引き上げ、そしてアタノールへと投入する。錬金釜と同じ役割、しかしもっと武具などの作成に特化した設備は熱を燃え上げながら未完成の作品に魂を注ぎ込んで行く。

 

 錬金釜からアタノールへ。その劇的な変化に壊れてしまいそうなのを外側から干渉する事で抑え込み、必要な性質と特性だけを残す様に調整しながらエーテル値の操作に入る。作成難易度が凄まじく高い事から今やらなければ良かったと半分反省しながらも、それでもこの心を止める事は出来なかった。

 

 ―――半日、アタノールの前で格闘を続ける。

 

 精神が死んで行く感覚ってこうなんだなぁ、はははぁ―――などという半分トリップしている様な状態の中、正気を失わなかったのは間違いなく定期的に会話を向けたり、意識を呼び戻してくれたりしてくれるナイトの存在があったからだろう。後は暗黒盆踊りを続けているクランメンバー達がひたすら煩かったこと。が、良い余興だった。これでまだ中級なのだ、まだまだこの学問には先がある。目の前で形成されて行く装備に目を奪われつつも、既に心は先の事を考え始めていた。

 

 そして永い格闘の末―――漸くそれは完成した。

 

 イデア・エーテリアス ランク:A エーテル値:71 製作者:マスター

  錬金術師が環境にダイレクトな干渉を行う為の戦闘武装。基本形でありながら完成形。

  美しさを備えたカードと、それを生成・格納する本でワンセット。

  上級、超級と呼ばれる錬金術師はこれを使って世界すらも錬成する。

  EX:凄まじい程にエーテルへの干渉特化で生み出されている。

  EX:常人では扱い切ることの出来ない化け物とも表現できる怪作。

  値段:580万ゴールド

  ・エーテルの脈動を感じられる

  ・高い防火・防水性を誇っている

  ・材料を消費する事によって消失部位・破損を修復できる

  ・それは生きた芸術品の様だ

  ・折れず、曲がらず、斬られずその姿を通す

  ・それは心を冷静に保たせる

 

 ―――まさに傑作、否、怪作だった。興味と好奇心で作成した事を正直に言えば恥ずかしむべきだし、反省したくなるレベル。そういうレベルでの完成度だった。完成してしまったそれを見た瞬間に感じたのは達成感、そして同時に後悔だった。こ(・)れ(・)は(・)自(・)分(・)で(・)は(・)ま(・)だ(・)使(・)い(・)き(・)れ(・)な(・)い(・)という明らかな事実だった。この装備を十全に使うなら《エーテル干渉》の更に先のスキルが必要だろうし、自分の様なへなちょこの腕前では十全に使える気がしなかった。おそらく今使っても、本来の四割程度しか力を発揮させることが出来ないだろう。それが作成者として悔しかった。

 

 芸術的とも表現できる白い本は赤い装飾を施されており、見る角度を変えると別の色によって装飾されている様に見えるが、その色合いに一切の不自然さはなく、見るものを魅了する。それをグローブに包まれた手で持ち上げ、感じるのは異常なほどの軽さだった。まるで羽を掴んでいる様な軽さであり。片手で持ち上げ、本を広げて出現するのは光によって構成された白紙のページたちであり。軽く指を滑らせるとカードがそれに従って出現した。

 

 光で編まれたカードは本から離れると実体を得て、本の様に白い体面を持ちながら変わりゆく色の装飾を施されており、驚く程に手に馴染む。二日ぶっ続けの作業で疲労し、汗だらけの手でカードを握っても、本を握っても。まるで優しく支えられているかのようにそれらは滑らず、収まっていた。まさに魔法と表現すべき現象だった―――これを、自分が造ったのだ。

 

 しかもこれにはまだ先がある。

 

 反省すべきだし、後悔はしている。

 

 ―――だが楽しい。楽しかった。ただただ楽しかった。

 

 それに尽きた。だからこれでいい。それに完成したのなら完成したのだ。使いこなせるように自分がなればいいのだ。そんな風に考えた後、腰のベルトに装着されているブックバインダーにイデア・エーテリアスを装着させ、徹夜明けの状態でそのまま銀の蹄亭へ突撃した。

 

 その結果は、

 

「―――また明日きたまえ。まずは寝るのだ。話はその後だ」

 

 ペルソナの表情が割と面白かったのをここに記憶する。

 

 

◆

 

 アロマポットをパっと調合してたっぷり8時間快眠し、その上でログアウトを挟んでリアルでの後始末を色々とつけて、そして再びログインし直して美味しいメシを食べ文化的な人間へと戻り、ついでに軽く錬金術を通して金策を行っていると、あっさりと一日が経過し、改めてペルソナに、銀の蹄亭へと向かった。依頼の為にペルソナの前へと移動すると、此方を観察する様な視線を送られ、笑みを零した、

 

「どうやらよく眠れたようだな。何やら依頼人が倒れそうな姿を見せていた時は驚いたが、やはり探究者の性というものなのであろうか」

 

「すみませんねぇ。凝り性なもので、やるなら徹底的にやらないと納得がいかないクチでして」

 

「その気持ちは解らなくもない。しかし関係はビジネスだ。なるべくなら無関係な私事を仕事に持ち込まないで貰いたい」

 

「おっしゃる通りで」

 

 ぐうの音も出ない正論だったので甘んじてその言葉は受け入れる事にする。それ以上ペルソナは警告するつもりはないのか、そこで話を切り上げ、早速本題の方に入る。それでは、と言葉を置き、早速此方の提示した依頼と条件の説明を始める。此方が求めたのは《使役術》を鍛える為のダンジョンの情報、そして此方の指示に従って動いてくれる冒険者の存在だった。レベルは出来れば80以上で、特化型ビルドのコンビ。割と注文を多くしているようだが、ペルソナはその要望にしっかりと応えてくれたらしく、ご希望の冒険者を待たせている、と近くのテーブルを示してくれた。

 

 ペルソナが示したテーブルに座っていたのは男女の二人組だった。男の方は黒髪短髪、東洋人風の男で良く鍛えられた肉体をしており、素肌の上からチョッキ、という解りやすいグラップラーな格好をしていた。それに対して女の方も解りやすい格好をしており、セミロングの金髪の中から伸びているのは少しだけピンと伸びた尖った所謂エルフ耳であり、鍔の広い緑色の魔女帽を被っている、解りやすいウィッチだった。まぁ、なんであれ解りやすい方がいいよな、というのは共通して言える事だ。仲介料をペルソナへと先に支払ってから、既に集められて待機しているテーブルの方へと向かうことにした。

 

 此方が近づく姿を見て彼方側も気づいたように視線を持ち上げていた。

 

「お」

 

 そうやって声を零す男の方へと視線を向け、そして女の方へと視線を戻した。始めまして、と声を発し、テーブルの前に立って二人へと自己紹介をする。

 

「今回二人を雇わせて貰うマスターと言います。気軽にマスター、とお呼びください」

 

 それに対応しおう、と男が頷いた。

 

「お前が俺達を雇いたいって数奇な奴か!」

 

「ちょっと、タク。依頼人に対して失礼よ」

 

「いや、別にそういうのは必要ありませんからお気にせずに。重要なのは仕事をちゃんと達成できるかどうか、という事ですから」

 

 そう告げながら同じテーブルに座り、飲み物とつまみを幾つか注文する―――と言っても自分が飲むのはミルクだけなのだが。酒は思考を鈍らせるからあまり飲みたくはないのだ。そうしながら同席した所で自己紹介をされる。グラップラーの方がタクローで、そしてエルフ耳の方がリムルという名前だった。そして、

 

 二人とも異邦人(プレイヤー)だった。タクローの方は解りやすくその名前が日本人である事を主張し、そしてリムルの方は、性転換ポーションを使って後天的に女体化したプレイヤーだった。確かにキャラビルドの時に何も言われなかったし、そういう制限は一切見なかった。そもそも妖精が何も言っていない。だから他のゲーム同様性転換は不可能かと思っていたのだが―――そんな事はなかったらしく、普通にこんな風に性別を切り替えることが出来るらしい。

 

 ……そういう意味を含めて18禁ゲーム、という事なのだろう。

 

 長(・)期(・)間(・)の(・)電(・)脳(・)空(・)間(・)に(・)お(・)け(・)る(・)異(・)性(・)ア(・)バ(・)タ(・)ー(・)の(・)利(・)用(・)は(・)人(・)体(・)へ(・)の(・)悪(・)影(・)響(・)を(・)及(・)ぼ(・)す(・)というのは既に医学的に証明されている事実なのだ。故に現在存在するほぼすべての電脳コミュニティにおいて異性アバターの利用は禁止されている。だが法(・)律(・)で(・)は(・)禁(・)止(・)さ(・)れ(・)て(・)い(・)な(・)い(・)というのがポイントだ。つまり違法ではない。健康に悪いから推奨されないだけだ。だからその制限がこのEX:Worldにはないのだろう。18歳、つまりは自己判断が出来る年齢。なにがどうなろうとも自己責任、という事で。

 

 まぁ、今はどうでもいい話だ。

 

「―――それで俺達を雇いたいというか使いたいという話だったよな」

 

 えぇ、そうですね、と言葉を置く。

 

「えぇ。《使役術》のスキルランクを上げるには従僕ばかりではなくパーティーを組んで他人を指揮する必要があるらしいので、その経験を満たす為に適正レベルのダンジョンで一つやってみようかと。野良で募集するのは信用できませんし、ペルソナさんの紹介で金銭の関わる契約であれば信用できます。紹介されてるという事は多(・)少(・)私(・)が(・)失(・)敗(・)し(・)て(・)も(・)リ(・)カ(・)バ(・)ー(・)が(・)出(・)来(・)る(・)レベルの実力はあるという事ですよね?」

 

「まぁ、こう見えてレベル100だしな」

 

「特化型で100レベにするのは地獄を見たわよー」

 

 あ、そうなんですか? と聞くとおう、と心強い言葉が返って来た。タクローが言う。

 

「俺は筋力特化型だ。つまり滅茶苦茶殴ると痛い。だけど逆に言うと滅茶苦茶体力がないし、動きも遅いし、MPだってクソ低い。それでいて筋力だけが強いから生半可な武器や防具は自(・)分(・)で(・)ぶ(・)っ(・)壊(・)し(・)ち(・)ま(・)う(・)からな。必然的に超高級品を用意するかグラップラーの二択しかないんだよ。という訳でマジで辛い。武器なし、長期探索は薬が無きゃ無理って状況で戦い続けなきゃいけないからな!」

 

 なんでこいつ遊び続けていられるんだろう。そう思ってしまった。そしてその次に続いたのが、

 

「そして私が魔力特化型よ。豊富なMPと高火力の魔法で広範囲を焼き散らかすのよ」

 

「詠唱速度」

 

「遅いわ」

 

「持続時間」

 

「体力1だから直ぐに倒れるわね」

 

「触媒」

 

「筋力1だからなるべく触媒の必要がない魔法しか使わないわね。まぁ、必要な時はタクに持たせてるわ」

 

「貴方達は本当に良くレベル100まで上がれましたね」

 

 特化型ビルド―――それはMMOだけではなく、どんなゲームでも基本と見える構築だ。特化させる事によって戦場で一撃必殺の威力を発揮することが出来る。それは少ないリソースで最大の火力を発揮できる、という事でもある。旧式のMMOでは一点特化型のビルド以外は見ないとも言えるレベルでそれがセオリーとなっている。ただ、EX:Worldではその常識は通じない。体力や筋力、敏捷が密接に戦闘に関わってくる為、バランスよくする必要はないが、一定値を分け与えるのは必須とも言える事なのだ。

 

 自分も長期間の作業用、奇襲への対応の為に体力と敏捷をそれぞれ優先的にあげて、攻撃魔法とかを完全に諦めているので魔力を二の次にして上げている。そもそも魔力ももうほとんどMPの確保手段程度にしか見ていない。数値ではなく割合でMP上限がナイトの維持リソースに割かれているのだから、魔力を増やすだけ無駄なのだ。

 

 第一錬金術の作業ではあんまり魔力を使わない。エーテルへの干渉に使う量は微小だ。それも数時間と続行すれば凄い勢いで削れるのだが、間に休憩をはさめば問題ではないし―――やはり体力、後敏捷が重要だろうと思っている。

 

「まぁ、そういう訳で俺達は色々工夫しながらレベル100目指したんだよ。ネトゲするなら特化型以外認めないしな」

 

「特化型の火力は世界一。目指せ、最高理論値」

 

「あぁ……なるほど、そういう……」

 

 うん、まぁ、ゲーマーだよね! という感想だった。ただ相手が異邦人だというのなら話は早いし、此方の行動の意味も理解してくれるだろう。実際、タクローもリムルもやる気は十分だ。故に出発する前に先に契約内容を互いに確認する。忘れてはならない―――これは遊びではあるが、痛みを伴う事でもあるのだから、真剣にやらなくては痛い目を見る。だからビジネスの一環として契約内容を確認する。

 

「契約は移動の間はカウントせずダンジョンに潜った回数で計算する。1回のレイドで給金として2万ゴールドを支払う。その代わりにポーションと寝床、食費は此方で負担する。それに加えてダンジョン内でレアアイテムやドロップの発見があった場合は優先権を其方へと委譲する」

 

「その代わりにこっちは死ぬ気で其方を守り、勝手な判断で動いたりはしない。キッチリ生かして帰す」

 

 この契約内容を見ると此方が負担する部分が多いし、若干譲り過ぎの様にも思えるのだが、実際レアアイテムの発見率というのはそんなに高くはないし、その代わりに1回のレイド辺りの金額を安くしてもらっているのだから割とこれで妥当だと思える。まぁ、少なくとも自分は素材の類いにしか興味はない。それに本当に欲しかった場合は《審美眼》で適正金額を確認してから買い取り交渉を行えばいいのだ。

 

 それは自由なのだから。

 

「契約成立で」

 

「あぁ、契約成立だ」

 

 握手を交わし、お互いの利害の一致を確認する―――冒険の開始である。

 

 

◆

 

 

 ルーゼンから馬車に乗って一日程の距離に遺跡が存在する。

 

 いや、正確には近未来的なビ(・)ル(・)と表現すべきかもしれない。SFチックな建造物を想像すれば、大体その通りの姿をしているだろう。明らかなオーバーテクノロジーだ。だが忘れてはならないのがこのEX:World、世界を生み出してから何度か文明をループさせる様に破壊する事によって現在の文明を、そして歴史を構築しているのだ。その為、どこか、何千年か前に高度な文明が築かれたのであれば、その名残が遺跡として残っていても不思議ではない。

 

 今回レイドするダンジョンはそういう残された建造物の一つであり、内部が歪んでいるのを例の門を使って安定させつつ、侵入ルートを作成しているのだかなんとか。詳しい設定は図書館で確認すればいい。重要なのはレベル100までは利用できる新しい深度がそこで確認された、という事実である。新しいダンジョン深度が発見されるという事は何(・)か(・)が(・)あ(・)る(・)という証拠でもある。ダンジョンの深度の発生はただのイベント処理ではなく、ダンジョン内部で何らかの変化が発生したという事の証なのだ。

 

 今回の場合、このダンジョンを利用していた冒険者の一団が発見されていた深度の中から更に奥へと続く道を発見し、今まで隠されていた区画を発見したという形になる。

 

 ダンジョンの名前は特になく、機械化遺跡としか呼ばれていない。その名前の通り、浅い深度であってもダンジョンはやや崩れているが機械化されており、出現してくるモンスターの類いも機械兵―――つまりはロボットとなっている。そう、ロボットが存在するのだ、この世界。割と普通に。しかも結構強い。生体ではないから薬品の類は通じないし、精神攻撃の類も通じない。その為、機械系のエネミーは非常に面倒と記録されている。

 

 とはいえ、今までは深度3までしかなかった遺跡に深度4が出現した。現在存在しているダンジョンの最高難度は深度5で、これは出現するエネミーレベルが120まで上がる。深度4だと上限で100となっている。つまり今の自分のレベルを上げるには丁度良い強さであり、同時に新しく解放された区域という事もあってまだ未着手―――つまりはまだ見つかっていない機械類やアイテム、素材の類が発見できるという状況にある。

 

 これは実に美味しい。

 

 一日かけて到着した現地は既にやや活気のある状態だった。

 

 複数のハーモナイザーを利用して安全区域を形成しつつ、新たな深度の発見に人が集まる事を予想した隊商やキャラバンの類が一時的なキャンプを形成している。それを利用する為の冒険者や探索者たちの姿があり、俄に活気づいているのが見えた。宿場町とはいかないが、それでも大規模なキャンプ地と言える程度には賑わっている。ここまで来る間、道中でタクローとリムルと情報交換や相談をして色々と準備を進めたりもしたし、ペルソナの話を聞いて色々と想像はしていたが、実際に見る現地のお祭り騒ぎっぷりは予想を超えていた。

 

 途中で何度か馬車を降りて休みを挟む事はあったが、それでも馬車での移動なんてリアルを含めて初めての経験であったため、予想外にケツが痛くなったのは事実だった。逆にタクローとリムルのコンビは利用回数がそこそこ多かったらしく、事前にクッションを持ち込んでいる事が印象深かった。今度は自分もクッション、ちゃんと用意しよう、錬金術で作って用意しよう。そう心に誓いながら機械化遺跡前へと到着した。

 

 馬車が次の客を乗せる為に動き出すのを見送らず、三人揃った所でとりあえずは、

 

「まずは宿を取りましょうか」

 

「普通ならテント使って野営地を作るんだけどな。やっぱ発見直後は大きく盛り上がるから簡易的な宿が出来上がってるもんだわ」

 

「まぁ、風呂とかはないのが、弱点よね」

 

 宿があるだけ文句は言えない、というのが冒険者たちの認識だった。探せばログハウスの様に木組みの宿を発見できた。簡易的な建築であれば魔法を使って構築できる為、建設費用は大幅にカットできるらしく、そこまで難しい事ではないらしい。割としっかりとした作りで、魔法を解除すればあっさりと解体する事も出来るからこういうダンジョンを前に宿を設置するという商売もこのファンタジーならではの商売として存在しているらしい。

 

 そんな事はともあれ、個人部屋を三つ一週間契約で借りた。

 

 装備や所持品の確認に関しては既に何回も馬車で行っている為、それ以上確認作業をする必要も準備をする必要もなかった―――臆病なのはいいが、臆病すぎるのは足を引っ張るだけだと戒め、そのまま三人でダンジョンに挑むことにした。

 

 遺跡の外観は近未来的なビルである。鋼によって形成されたプレートの様な鈍色の光沢を放っていて、その威容は半(・)分(・)埋(・)ま(・)っ(・)て(・)い(・)る(・)状態で、本来は窓が存在していたであろう場所を入口の代わりにしている。そのため、入り口はやや狭く感じられる。

 

 そんな入口から侵入し到着するのはやや斜めに傾いている大部屋であり、ダンジョンへと侵入しようとする冒険者たちの姿がいくつか散見される。20人ぐらいなら余裕で入れそうなメタリックな足場のフロアの奥にはエレベーターが三つ並んでいるのが見える。そのうちの一つ、空いているエレベーターのボタンを押せば扉がゆっくりと開く。どうやらこのダンジョンではこれがゲート代わりになっているらしい。

 

 エレベーターに乗り込んでコンソールパネルへと視線を向ければそこに半透明のホロウィンドウが出現し、向かうフロア―――つまりは深度の設定を要求してくる。迷うことなく深度4を選択する。それに反応してホロウィンドウが消え、そしてエレベーターの扉が閉じられる。

 

「おぉ―――揺れますね」

 

 ガコン、と外れるような音を響かせると、一気にエレベーターが下へと向かって加速してゆく。その外側の風景を眺めることはできないが、エレベーターはIDへとちゃんと向かっているのだと思いたい。タクローとリムルが落ち着いた様子を見せているので、これはこれで仕様らしい。そんなことを考えているうちにエレベーターが徐々に減速するのを感じる。やがて停止し、そしてエレベーターの扉が開いた。

 

 扉の向こう側に広がっていたのは広い空間だった。地表に見える部分と比べてすさまじく広く、そして壊れている場所の見えない、完全にSFな施設内部だった。光沢のある鋼鉄プレートの床、壁には露出されたパイプが見え、そして配線が奥へと向かって伸びているのも見える。時折壁の隙間から蒸気が漏れだし今でも施設が稼働しているというのを証明して見せていた。

 

 その構造に興味がわいてきた。確認しようと前へと踏み出そうとする前に、

 

「おぉっと、悪いが先に安全確認をさせてくれ」

 

「そうでしたね、すいません」

 

 踏み出す足を止めさせて、先にタクローが前に出る。それに続くようにリムルが前に出て、二人で安全を確認してからこちらが出る余裕を作ってくれる。その動きをみると護衛の仕事はこれが初めてではないように見える―――まぁ、リアルで数か月前、ゲーム内で3倍速だから大体1年ぐらいの余裕が先行プレイヤーにはあるはずだ。それを考えるとこの二人が先行プレイヤーだった場合、割と濃密な経験をしていてもおかしくはないのかもしれない。そんなことを考えながらエレベーターから踏み出せば、背後で扉が閉まる音がして。入口がそうやって消え去った。それを特に意に介すこともなく壁へと近づき、剥き出しの配線やパイプに触れる。

 

 ―――面白い。

 

 こういうのを調べるのもまたいいのかもしれない。ダンジョンレイドにまた新しい楽しみを見つけた気分だった。そこでさて、と声を零す。

 

「それでは集団戦闘経験はほぼ皆無なのでよろしくお願いします。最初は動きを覚える為に観察に徹しますので、2、3回ほど私抜きで戦闘のほうをお願いします。その間の自衛は行いますので――ナイト」

 

『ここに』

 

 言葉に反応してナイトがその姿を現す。その姿を見たタクローは口笛を軽く吹き、そしてリムルは興味深そうな視線を向けてくる。

 

「ふーん、それが英霊さん、ね。レベルは私たちよりも低そうね」

 

『未だ遠き忘却の果てにある身、本来の力を発揮できぬことに口惜しさを感じるばかりです』

 

「強すぎると逆に運用に困るのでこれぐらいが個人的にちょうどよく感じているんですけどねー。……では、タクローさん、リムルさん。護衛と先導の程をよろしくお願いします」

 

 任された、とタクローが元気よく返事をし、深度4機械化遺跡の異界を進み始める。やはりダンジョンの探索に慣れているだけではなくここは初めてではないらしく、慣れているがしっかりと警戒をしている足取りで先へと向かって進んでゆく。景色は装飾のない機械的な通路であり、戦闘をするには十分な広さがある―――少なくともあの森のダンジョンよりは広く、そして戦いやすい。

 

 そんなことを考えているうちに正面の床、そこにハッチが存在したらしく、アラート音が響くのと同時に空間が赤色の光で満たされ、そしてハッチが開いて敵の姿が出現し始める。下半身部分が存在せず、上半身部分だけで浮かび上がる、両腕が爪のように尖った、爬虫類とカカシが融合したようなフォルムを持っている。そんな青色のロボットだった。よく見れば腕には銃らしきものが設置されており、それで銃撃も行えるのだと気づく。――それが一気に五体ほど出現する。

 

「ではお手並み拝見としましょうか」

 

「おう!」

 

 敏捷1でどうやって対応するのか? それは実際に興味のあることだった。それを理解するためにも戦闘を数歩下がった後ろから見守ることにする。

 

 まず最初に動いたのはリムルだった。敵の出現の間に詠唱を必要としない魔法を発動し、衝撃波を放っていた。広く広がった衝撃は、相手を倒すことはできないが動きを止める程度の効果があり、それによってロボット達が堪えるように動きを止めた。その瞬間にタクローが拳を振り上げてぶん回した。轟音とともに放たれる拳が空間を打撃し、そのままやや減衰させつつも衝撃を空気に乗せて伝え、ロボット1体の全身を消し飛ばすようにスクラップにした。

 

 だがその間に動けるようになったロボットたちが腕の銃をタクローへと向けてくる―――破壊行動を行ったのがタクローだったから危険度でそちらのほうが上と判断されたのだろうか。一斉に放たれた銃撃に対してタクローは反応できずに一気に弾丸をその体に叩き込まれた。だが聞こえてくるのは金属質な、はじかれるような音であり、よく見れば弾丸はタクローの体を浅く削ってはいるものの、致命傷や大ダメージへと発展するような傷には届かない。まるで肉体そのものを鋼にしているような硬質さを見せており、集中砲火を耐えていた。

 

「足元に注意ってね!」

 

 タクローがそうやって耐えている間にチャージを完了させたリムルが魔法を発動させた。《魔眼》が空間の水属性のエーテルが高まるのを感じ取り、同時に温度の低下を確認する。次の瞬間にはロボットたちの真下が薄い霜に覆われはじめ、そこから伸びた氷の蔦が胴体に絡みついた。徐々に凍り始めるロボットたちはそれに抵抗しようとスパークし始めるが、その間にタクローが足を薙ぎ払うように振るった。

 

 その直接的な打撃と衝撃に巻き込まれて蔦に捕まっていたロボット達がスクラップになりながら吹き飛び、そして完全に粉砕された。そうやってエネミーの処理が終わった直後、奥のほうからおかわりとも言える追加で同じタイプのロボットが四体、そしてそれよりも小さい犬のタイプのロボットが2体出現した。

 

 その迎撃に入るタクローとリムルの姿を見て、戦闘スタイルを評価することにした。

 

 まず火力と壁を担当しているのがタクローだ。おそらくは何らかのスキルを複数同時に使って、肉体の強度を筋力と同じレベルまで上昇させているのだと思う。あるいは筋力を使って肉を締め、それで攻撃をガードしているのだ。重要なのは防御、そして攻撃の両方ができるという事実である。敏捷を捨てた代わりに生き残る方法が必要なのだから当然と言ってしまえば当然なのかもしれない。

 

 そしてリムルの方は動きの起点づくりだった。最初に打ち込んでいる衝撃波の魔法は知っている。《フォースブラスト》という基本的な無属性の魔法で、短いチャージで放つことができる相手を吹き飛ばすための魔法だ。それを使って距離を作りながら間を作り、その間にタクローが攻撃を踏み込みながら行い、ヘイトを集める。その背後で大技、あるいは妨害をしつつヘイトコントロールでターゲットをタクローへと集中させる。そういう戦い方をしていた。

 

 中々危険なように思える戦い方だが、二人とも非常に慣れているのがよく分かる。瞬く間に援軍を全滅させると、最後に大型の四足歩行の戦車のようなロボットが出現するが、上へと投げ上げ、追撃するように放たれた魔法で一撃で粉砕した。集団戦、ボス戦、それらに関する戦闘経験も戦術もちゃんと構築されているようだった。

 

 説明に偽りなし、ちゃんとコンビで戦えるメンツだった―――ただ、一つ間違えればそのまま全滅しかねない危ないバランスのコンビであるのは事実だった。馬車のなかでは通常はスカウトかレンジャーを臨時で雇ったりすることでバランスをとっている、なんて説明を受けたが、確かにそういうメンバーが一人はほしい戦い方、戦力の偏りだった。ただ臨時で雇えることを考えてもこの二人でコンビを組んで戦えている、というのは割と大きな驚きだった。通常ドロップが表示される中で、若干呆れながら評価する。

 

「よく戦えますね」

 

「いや、ほんとな。忠実なテンプレMMOビルドしているだけなのにな!」

 

「体力や動きの速度とかの問題が出てくると大きく環境って変わるよね―――それでもぶっぱしたときはそれだけで絶頂できそうだから辞められないんだけど。それで依頼人さんは今の戦闘を見てどうだったかしら?」

 

「ものすごい扱いにくさを感じますが同時に刺激されるものを感じますね。やはり高難易度に燃えるのはサガというものでしょうか―――次の敵は指示のほうをお任せください。《キネシス》を使ったテレパシーで頭に直接指令を送り込むので戸惑わないでくれると助かります」

 

「あいよ」

 

「了解したわ」

 

 やはり金で雇って正解だな、と思った―――金が絡む以上、信用問題が発生するから自分の要望が通りやすい。ともあれ、ポーションに関してはこちらが負担する約束なので中級回復薬と中級魔力回復薬を配っておく。錬金釜の使用が解禁されると一度に大量生産が行えるから一回の作成コストが非常に安くなって助かる。

 

 それを受渡し、ナイトを戦線に加えて三人、疑似四人パーティーを形成する。

 

 目的は戦闘指揮、《使役術》の修練、そしてイデア・エーテリアスの習熟である。いつ戦闘に入ってもいいように先に武装を引き抜くことにする。《キネシス》はランクが成長することと、そして魔力のステータスが伸びることによって制限が解除される。ランクCである現在、テレキネシスに関する制限は魔力÷10までの物体を同時に操作することが可能で、トータルで魔力÷2の重量までなら許容できるということになっている。そのため、魔力84である現在は手を使わずに8個までなら操ることができる為、バインダーに格納してあるイデア・エーテリアス本体からテレキネシスでほのかに輝くカードを八枚抜き、それを束ねて右手で握り、左手で片眼鏡の位置を調整する。

 

「では進みましょうか」

 

 一番硬いナイトを先頭に、その横にタクローを付け、バックに自分とリムルが入る。そのまま十分ほど奥へと進んでゆけば、ナイトが誰よりも先に身構えた。その反応に敵の出現を理解する。直後、ナイトの正面、天井から落ちてくる姿が見えた。その姿が完全に落下するより早く、ナイトが槍を薙ぎ払うように振るい、衝撃を前へと押し出す。落ちてきたロボットの集団がそれに従って正面へとはじき出される―――破壊されてはいない。こちらのことを考えてちゃんと手加減してくれている。素早く強化されている動体視力で相手の姿、数を確認し、

 

 素早く指示を繰り出す。

 

 と言っても細かくお前はこうしろ、こう動けと言うわけではない。もっと感覚的な、ここへと移動しろ、こっちへ動け、そういうイメージを伝えることが自分の考える指揮だ―――何せ、自分は戦士ではない。細かい動きなんざ指定できるわけがないのだ。だからこっちへ動け、ここで守れ、そういうレベルでの具体的な指示を繰り出すほうが効率的なのだ。何せ、そういう細かい攻防を考えるのは前線の兵士の仕事なのだから。だからそうやってナイトやタクローを動かしてみる。

 

 言い換えてみればチェスのようなものだ。ナイトを押し出して隙を生み、そこにタクローを押し込んで殴り飛ばし、その間にリムルの時間を稼ぐ。防衛に関してはナイトの方が専門であるために相手の射線をナイトが前に、タクローが後ろへと並ぶように誘導し、ナイトに防御させながら再びタクローを前に出す。そしてチャージを完了させたリムルで一気に薙ぎ払う。火力に関してはもはや疑う必要もないし、ナイト自身魔力さえ供給すれば損傷は簡単に回復する。あっさりと天井から襲い掛かってきたエネミーを虐殺することができた。

 

 感想は一つ―――ナイトが便利すぎる。防御に特化できるのが一人いるだけでだいぶ戦闘が楽になる、というかなりすぎる。これじゃ修練にならないのでナイトを戻し、緊急時のみ戦線への復帰を言い渡す。

 

 ナイトを戻したところで登場してきた援軍を相手にする。腕を広げてカードを左から右へと飛ばすように束ねてからそれを後方から出現してくる敵の姿へと向かって投擲する。そのままカードを通して空間内へのエーテルを吸収し、エーテル濃度を瞬間的に低下させる。周りの空間からエーテルが注ぎ込まれるまでの間、一時的にエーテルが希薄になったことで、援軍として登場してきたロボットたちの運動能力が大幅に鈍くなる。それこそほぼ停止とも呼べる状態に。そこに縫い込ませるようにタクローを前へと押し込み、一気に乱撃を叩き込ませる。動きの停止したロボットたちはただの的でしかなく、面白いように殴り飛ばされてはスクラップになる。

 

「ふむふむ……なるほど、やはり空間のエーテルを燃料に半永久的に動いている形ですか」

 

 そこらへん《魔眼》で確認してしまえば一瞬で解るから割と楽ではある。と、そう思いながら。新たに巨大な敵の姿が出現する。先ほどタクローが投げてからリムルでフィニッシュしたエネミーだ。今度は二体同時に出現している。リムルの火力でなら十分に撃破可能なのは理解しているので、リムルに溜めた魔法を放たせる。射線からタクローが飛び退くのと同時にリムルが圧縮した冷気の波動を放った。直線的に突き進む冷気の波動が床に氷の道を形成しながら突き進んでゆく。そのアクションに割り込むようにカードを投擲し、カードの中に溜め込まれたエーテルを氷魔法の中へと注ぎ込む。

 

 その影響は爆発的なもので、一気に空間を飲み込むように膨張した魔法は敵を二体とも一瞬で飲み込み、そのすべてを凍らせて、道をふさぐような氷の彫像を完成させてしまった。完成された氷の彫像の前で動きを停止し、見上げるように視線を向けた。

 

 ―――これ、楽しいぞ……!




 Name:マスター
 Level:85
 Status:
 AP:410/410
 筋力:70 魔力:84 敏捷:130 体力:130
 Title:【錬金術師:中級】【Evil】【ネクロマンサー】【探究者】
 Skills:
 SP:279/320
 《死霊術:M》 《テイミング:M》 《超魔力:E》 《審美眼:C》
 《エーテル干渉:D》 《闇魔法:M》 《語学:S》 《光魔法:M》 《キネシス:C》
 《ポーションピッチャー:F》 《号令:S》 《薬学:A》 《付与術:B》 《魔眼:M》
 《深淵:F》 《外法:F》 《ミスディレクション:E》 《邪眼:E》 《使役術:S》
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