言葉を失っていると、横に座る川内が首を傾げた。黒く大きな瞳で提督を見つめながら尋ねる。
「迷惑、だった?」
「──いや」
提督はかろうじて答え、首を振った。
正直なところを言えば、突然のことに脳の処理が追いついていないというだけのことだった。笑うべきか、抱きしめるべきか──思考だけが空転している。
首を傾げたまま、川内が目を細めて微笑んだ。片手を伸ばし、提督の頬に触れる。
ふたたび、唇を重ねてきた。柔らかい唇のたしかな感触が、提督の無意味な思考を遮断する。
顔を離した川内は、屈託なく笑った。
「……ね?」
発した言葉はそれだけだったが、その意味するところを提督はなんとなく了解し、頷いた。
川内が満足そうな表情を浮かべ、躰をすり寄せてくる。
「じゃあ、くっついていいよね?」
「──ああ」
提督は苦笑を噛み殺して頷いた。
川内がさらにすり寄り、ノースリーブから覗く肩を胸もとに密着させてきた。目を閉じ、甘える猫のような仕草で肩へと頬ずりする。
提督は迷ったすえに、腕を背中からまわして軽く肩を抱いた。むき出しの肩はすべすべとした手触りがした。
川内が目を開け、少し照れたような表情で見上げてくる。
「ヤバいね、これ……すっごい緊張する」
「……おまえでも、緊張することあるのか?」
「そりゃ、あるよ。失礼だなあ」
「悪いが、心臓に毛が生えてそうなイメージがある」
「いやいや、生えてないから。今でもドキドキしてるし──ほら、手貸して」
そう言うと、肩を抱いていないほうの提督の手を取り、服の上から自分の左胸に押し当てた。
服の生地と下着の手触りのむこうには意外と充実した感触があり、提督は軽い目眩を覚えた。
「ね?」
「いや……よくわからん」
服の布地ごしには、はっきりとした鼓動は感じられなかった。川内が小さく首を傾げる。
「……んじゃ、ちょっと待って」
そう言って素早く腰帯を外すと、服の裾から手を突っ込み、中でごそごそとまさぐりだす。
肩口に手を差し入れてするりと下着を取り出すと、ソファーの脇に雑に放った。
「──ほら、直接」
提督の手を掴みなおし、服の裾から中へと導く。
されるがままに手を取られた提督は、触れた脇腹のなめらかさに思わず息を詰めた。
温かく柔らかいふくらみに指が触れた。手のひらを乳房の下──胸の肋骨付近に当てると、小さなポンプがたしかにせわしなく拍動しているのがわかる。
「本当だ──速い」
「……でしょ。夜戦の前でも、こんなじゃないよ」
上気した顔を向けながら、川内が言う。どこか、相手を試しているような表情に思えた。
衝動に逆らえず、提督はふくらみに沿って指を伸ばし先端の突起に触れた。
「んっ……」
川内は目を伏せ、喉の奥で小さく声を上げた。拒絶する気配はない。
先端を転がすように、ゆっくりと人差し指だけで触れる。同時に、手のひらで包むようにふくらみを揉んだ。
川内は目を閉じ、呼吸のテンポを速めて、その感覚に集中しているようだった。ときおり、切なげな吐息まじりの声を漏らす。
「んっ……ふぅ……」
「ここ、気持ちいいか」
提督が指の腹で乳首を押さえながら訊くと、川内は目を閉じたままこくこくと頷いた。
「ぞくぞくする。──触り方、上手なんだね、提督」
「いや……適当だ」
川内が目を開けて提督を見た。揺らめく黒い瞳が、熱っぽく煌めいていた。
「神通が言ってたよ。触ったり舐めたりするの、提督はすっごい上手だって」
提督は指の動きを止めた。
「ずいぶん、あけすけだな。おまえたち、そんなことまで話してるのか」
「あ、神通がぺらぺら話したわけじゃないよ。提督の部屋から戻ってきたときに、私がしつこく質問攻めにしたから」
「一晩中、神通の部屋で待ってたのか?」
そんなことを聞くために──というニュアンスを感じ取ったのか、川内が口を尖らせる。
「フラれたら慰めてやろうと思ってたの。すっきりした顔で朝帰りなんてするから、ちょっと腹立ってさ」
川内が悪戯っぽく微笑む。
「めちゃくちゃ気持ちよかったって、言ってたよ」
「神通なんだから、そんな言い方はしてないだろ……まあ、満足してくれたならよかった」
「でも驚いたってさ。いつもは優しくて紳士な提督が、別人みたいに荒っぽかったから」
「それはな……正直、調子に乗りすぎた。あとになって後悔してる」
特に罰だの褒美だの言って顔面に射精したのは、我がことながら嫌になる。性交中の熱狂から醒めてしまうと、赤面ものの言動だ。
川内は口の端で笑った。
「嬉しそうだったし、いいんじゃない。提督には前からベタ惚れだったけど、今はもう、めろめろだから」
「……めろめろか」
「うん。重症だったのが、もう手遅れって感じ。──命令口調で、ちょっと乱暴にしてくださるのが本当に素敵でした、とか言ってた」
「そうか……」
提督は息をついた。
川内が笑み、服の上から提督の手に自分の手を重ねた。
「ねえ、もっとして」
「──ああ」
提督は手と指の動きを再開した。川内が心地よさそうに目を閉じ、唇を舐めた。
「こういうの、好きか」
提督が訊くと、川内は目を閉じたまま頷く。
「うん、気持ちいいし……提督とぴったりくっついてられるってのが、いいよね」
「……神通の話を聞いて、羨ましくなったんじゃないのか?」
提督はなかば冗談のつもりで言ったが、目を開けた川内が意外なほど真剣な表情で頷いた。
「うん……羨ましかったよ。私が知らない愉しみを神通が知ってるってのは、負けてるみたいでちょっと癪だよね」
「もしかして、それで俺に好きだって言ってみたのか」
「ん? それは違うでしょ……いや、そうなのかな……でも……」
胸を揉まれながら川内は考え込むようにうつむきかけたが、すぐに顔を上げた。
「ま、いっか。今、気持ちいいことしてもらってるわけだし」
「……おまえ、本当に悩まないタイプだな」
「うん!」
川内は嬉しそうに頷いた。
何も考えていないようでいて、実際の川内の内面には複雑な部分があるのかもしれない、と提督は思った。
特に神通に対してそこまで対抗意識を持っているのは意外な発見だ。ともに水雷戦隊の旗艦であるという事実も、関係している可能性がある。
考えながら、指の先で軽く乳首を転がした。
「んっ……ねえ、提督──」
呼吸をわずかに荒くしながら、川内が提督の下半身を見つめた。
「──こうしてると、提督も興奮……する?」
「そりゃ、するさ。もう、かなり育ってきてるぞ」
答えて、股間に視線を落とした。はっきりとわかるほどに、ズボンの布地が隆起していた。
川内は提督の顔に視線を戻し、しなをつくるように躰をすり寄せた。
「見たいんだけど……いい?」
提督は笑んで、鷹揚に頷いた。
「それじゃ、脱がせてくれるか」
「……うん!」
川内は頷き、提督のベルトに手を伸ばした。
◇
川内は上体を折るようにして提督側に乗り出し、そそり立つ陰茎を見つめていた。
「どうだ?」
下半身だけ裸の格好になった提督が訊くと、川内は陰茎から目をそらさずに答えた。
「……思ってたより全然おっきいし、硬そう。あと、血管浮いてる」
人差し指を伸ばし、茎部をちょんとつつく。陰茎が小さく震えた。
「……でも、なんか可愛い」
何がおかしかったのか、含み笑いをしながら繰り返し何度も指先で突く。そのたびに陰茎がゆらゆらと左右に揺れた。
「おい、人のもので遊ぶな」
「えへへ……ごめんごめん」
笑って答えると、川内は体勢を戻して提督の肩口に頭を乗せた。
提督を仰ぎ見て尋ねる。
「ね、握ってもいいかな?」
「構わんが……おまえは無茶苦茶をしそうで怖いな。できるだけデリケートにだぞ」
「よし、デリケートね。そういうの得意だから、任せて」
川内は意欲の溢れた表情で手を伸ばし、陰茎をそっと握り込んだ。細い指のやや冷たい感触が心地よく、提督は深く溜息をついた。
「握るのは、これぐらいの強さ?」
「ああ……それで、ゆっくりしごいてみろ」
「はい」
妙にかしこまった返事をして、川内は慎重な手つきで陰茎を愛撫しはじめた。手を上下させながら、横目でじっと提督の顔を窺う。
「こんな感じ?」
「ああ……上手だな。意外にというか……」
「器用さには、自信あるよ」
「そういや、料理とか書道も得意だったっけな」
「まあね……こうすると、どう?」
雁首の縁に沿って、川内が親指と人差し指を動かした。強弱をつけ、リズミカルにこする。
「う……はぁ……」
ほっそりとした手指に敏感な部分を刺激され、提督は喘いだ。川内がくすくすと笑う。
「ふふ……声出しちゃって、提督可愛い」
「そこが感じるって、よくわかったな……」
「適当適当」
そう言って顔を寄せ、提督の頬に口づけする。
提督は川内に顔を向け、唇を重ねた。舌を挿し込もうとすると、すぐに川内も自分から舌を出して応じる。唇と唇の間で、お互いの舌を舐め合うように動かした。
川内はわずかに目尻を下げ、蕩けた表情で舌を使っていたが、それでも陰茎への愛撫は絶やさない。
ふと顔を離し、陰茎へと視線を落とした。
「あっ……先っぽから、なんか出てる」
手を止め、顔をわずかに提督の股間へと寄せる。
鈴口に浮かんだ透明な液体の玉に、人差し指で軽く触れた。指を離し、糸を引く様を面白そうに見つめている。
「いわゆる、先走り液ってやつだ。カウパー氏腺液ともいう」
「へえ……変なの」
川内は指先に液体をつけてしばらく遊んでいたが、やがて提督に顔を向けた。
「ねえ……舐めてもいい?」
アイスクリームでも欲しがるかのような声の調子で言った。提督は、苦笑混じりに頷いた。
「──歯を立てないように気をつけてな」
「りょーかい」
楽しげにそう言うと姿勢を変え、ソファーの上に正座するように両脚を乗せた。提督の股間に向けてうずくまるように頭を下げる。
両手で優しく陰茎を支えながら、先端を口先に軽く含んだ。キスをするように吸い、わずかな音をたてて離す。二度三度とその接吻を繰り返したあとで亀頭全体を口に収め、鈴口に沿って舌先をちろちろと動かした。
「ん……あぁ……それ、いいな……」
感嘆する提督の様子を、川内は横目で窺いながら微笑んだ。柔らかな舌先が、徹底的に先端部分を責めたてる。
ときおり快感の吐息を漏らす提督の様子を、川内は常に横目で観察しているようだった。
息を乱しながら提督は手を伸ばし、ノースリーブの肩口から川内の胸もとへ侵入させた。形のいい胸のふくらみが、ぴったりと手のひらに収まる。
川内は陰茎から口を外し、からかうような視線で提督を見た。
「胸、触りたいの?」
「ああ……駄目か?」
「ううん、大歓迎。いっぱい、触って」
そう言って川内は、ふたたび亀頭を口に含んだ。
舌先での愛撫を受けながら、提督は川内の乳房の感触を愉しむ。適度な重量感と柔軟さが好ましかった。乳首をしつこく指先で撫でまわすと、川内は呼吸を荒くした。
やがて亀頭から口が外され、奉仕の対象が茎部に移った。川内は丹念にその部分を舐めながら、変わらず提督を見つめていた。
「ねえ提督」
茎部に這わせる舌の動きを止めて、川内が言った。
「……なんだ?」
「胸だけじゃなくて、
挑むような目つきだった。提督は少し息を吸い込んで言う。
「なら、下を脱いで、こっちに躰を向けろ」
「へへ……やった」
川内は陰茎に口を寄せたまま、器用に躰を捻って片手で下着を脱いだ。黒のスポーティなショーツをぽいと放る。
「スカートも脱ぐ?」
「いや……まあいいだろう。もう少し躰を横に向けて──」
川内はソファの上に躰を横たえ、片脚を立てるようにして小さく脚を開いた。
提督は秘所に手を伸ばし、湿ったその中心に指を這わせた。
「はっ……あ、ん……」
提督が秘裂を撫で上げると、陰茎に唇を当てたままの川内が甘い声を漏らした。
愛液で十分に指を湿らせ、陰核をゆっくりと刺激する。
「あっ……そこ、いい……」
うっとりとつぶやく川内に、提督は訊いた。
「自分で触ったり、しないのか?」
「ん……たまに、するよ。生理前とか、ちょっとムラムラするし……でも、それとこれじゃ、全然違うね」
言って川内は陰茎を口に含み、奥まで呑み込んだ。一定のペースで前後に顔を動かし、唇で茎部をしごく。口内の絶妙な圧力がもたらす快感に、提督は呻いた。神通といい、口技はとても初めてのものとは思えないほどだ。
ひとしきりその体勢で、お互いへの愛撫を続けていたが、やがて川内が顔をのけぞらせて陰茎を口から外した。
「……ねえ提督、もう我慢できないよ……」
そう言って、川内は秘所に伸びた提督の腕をさすった。提督も、射精の欲求をこれ以上抑えてはいられなかった。
「挿れるか」
「うん、挿れちゃお挿れちゃお」
川内が躰を起こし、提督の両腿の上に跨った。ふと、動きを止めて言う。
「えーと……どうすればいいの?」
提督は笑いをこらえながら、川内のスカートを指で示した。
「まず、それを上げろ。よく見えない」
「あ、そっか」
川内が素直にスカートの端を両手でたくし上げる。愛液に濡れた秘所が露わになった。
「少し、腰を浮かせられるか」
「こう?」
川内は軽く膝立ちになった。提督は川内の腰を掴んで位置を調整し、陰茎の先端が入り口に触れるようにあてがった。
「えへへ……いよいよだね」
「よし。力を抜いて、ゆっくり腰を落とせ」
川内が顔を輝かせながら、腰を下げる。入口が狭く少し抵抗を感じたが、亀頭が収まったあとは、比較的すんなりと膣内に侵入できた。
「んっ……」
川内は目を閉じ、下唇を噛んでじっと快感に耐えているようだった。
「痛くないか」
「うん……痛くはないけど……これ、ヤバいね」
川内が片目を開け、息苦しそうに言った。
「ヤバいって、どんなふうに」
「中の、奥のほう……提督のが当たってるとこだけど……すっごいじんじんする」
川内の膣内は比較的狭く奥行きもそれほどないが、きつすぎるということもなく、動作に不都合はなさそうだった。
「動いて、いいか」
「うん……遠慮しなくていいよ。思いっきりやっちゃって」
提督は頷き、ソファーに座ったまま腰を軽く前後に振動させた。
「あっ……」
川内が声を上げ、提督の首にすがりついた。
小さいが弾力の豊かな尻を抱え、上下に揺さぶる。川内の陰核が、提督の恥骨付近に当ってこすれた。
「んあっ……ちょっ……それは、ヤバい……」
川内が快感に顔を歪め、肩をすくませるようにして全身に力を入れた。
不意に、陰茎を包んでいる膣壁が一斉に
提督は硬直した。
射精してしまわなかったのは、奇跡に近い。背筋を伸ばしたまま深く息を吸い、吐いた。
突然動きを止めた提督を、川内がいぶかしそうに見ていた。
「……どうしたの?」
「いや……ちょっとな」
心を落ち着け、あらためて動作を再開する。川内がふたたび呼吸を荒くし、甘い声を上げはじめた。
先ほどの蠕動は、偶然だろうか。陰茎に対する締めつけはきついが、特に波立つような動きは伝わってこない。
「あっ……ふっ……んあ……」
川内が間欠的な喘ぎ声を上げながら、切なげな眼で提督を見た。首の背後にまわした手を、きゅっと締めて言う。
「ね……キスしよ」
目を閉じた川内に顔を寄せ、唇を重ねる。
瞬間、ふたたび陰茎の周囲が蠕動する感覚が走った。
提督は慌てて顔を離し、川内をまじまじと見つめた。川内が不思議そうに首を傾げた。
「……なに?」
「おまえ、それ、意識しないでやってるのか」
「それ?」
川内が目を丸くして言った。提督は息を吐いて視線を落とし、スカートの布地に遮られた結合部のあたりを見た。
「おまえの
「へえー……」
川内が気の抜けたような声を上げながら、腰を揺すった。なにかを思い出そうとするような表情で、腰をかすかに動かしている。
「えーと……こう、かな?」
軽い蠕動が起こった。提督は思わず顔をしかめる。
「お、おい……」
「あ、わかった。こうだ」
川内は嬉しそうに言って、繰り返し膣壁を痙攣させた。陰茎を包む粘膜の連続した蠕動によって、得も言われぬ快感が突き上がってきた。
提督はのけぞって、ソファーの背もたれに上体を押しつけた。
「だ、だめだ川内……これは、まずい……!」
「へへ……面白いね、これ──」
川内が膣内を細かく動かしながら、腰を前後に揺さぶった。異なるリズムのふたつの波が干渉し、提督の脳髄に伝わる快楽が増幅される。
耐えることができない。
「ちょっと、まってくれ……このままだと、もうイきそうで──」
「いいよ、イッちゃえイッちゃえ」
蠱惑的な笑顔を浮かべた川内が、腰の動きを速めた。
かろうじて残った理性で腰を掴んで除けようとしたが、即座に反応した川内に両手首を掴まれて封じられた。
半眼の表情の川内が、小さく首を振った。
「だーめ」
「うっ──あっああぁ……」
提督はだらしなく口を開けて呻き、川内の内部へと勢いよく精を放出した。
「んっ──」
川内は眉根を寄せて、快楽に耐えた。
長い射精が終わったのちも膣を蠕動させ、最後の一滴まで容赦なく絞りあげた。
軽く息をつくと、快感の余韻で呆然としている提督の耳に唇を寄せ、満足げな声で囁く。
「はい──私の、勝ち」
顔を離し、誇るように艶然と笑った。