ぼんやりとした表情の瑞鶴が、ベッドの脇に立ちつくしている。
「どうした」
提督は見上げると、静かな口調で訊いた。事前の打ち合わせにない予想外の出来事ではあったが、自分でも不思議なほど落ち着いていた。
翔鶴は布団で躰を隠し、妹を黙って見つめている。
問われた瑞鶴は身じろぎせず、眉をひそめた。何かに苛立っているようにも、困惑しているようにも見えた。
「わかんない……」
ゆっくりと首を振って、瑞鶴が言う。絞り出すような、か細い声だった。
翔鶴を見やってわずかに首を傾げ、泣き出しそうに表情を歪ませる。
「わかんないの……自分で、自分が」
提督は手を伸ばしていた。震える瑞鶴の手を掴み、有無を言わさぬ力で引き寄せる。
「あっ」
強張った瑞鶴の躰を、裸の胸で受けとめた。頭を両腕で包むように抱き、髪の上から撫でる。
瑞鶴の全身から力が抜けていく。消え入りそうな声でつぶやくのが聞こえた。
「ごめん……」
小さな背中が震えていた。
横から差し出された翔鶴の手が、その背に触れる。幼子をあやすように、繰り返し撫で続けた。
瑞鶴は、声を上げずに泣いていた。
◇
「みっともないとこ見せちゃって、ごめん」
申し訳なさそうに言って、瑞鶴は小さく頭を下げた。ベッドの上に尻をついた割座で座り、手には翔鶴から渡されたグラスを握っている。中身の気つけ代わりの酒は、提督が持参した日本酒だった。
「気にするな」
提督はベッドの上で、ズボンに脚を通しながら言った。
きちんと畳まれたシャツが傍らに置かれている。いつの間に畳んだものか、おそらくは翔鶴の手によるものだろう。
取り上げようと手を伸ばしかけたところで、瑞鶴が提督を遮った。
「ちょっ──ちょっと、待って」
妙に焦った様子で、瑞鶴が言った。提督の手首を掴んでいる。
「なんだ?」
「服……着なくていいよ。私、すぐ出てくから」
「──出ていくって、どうして? もう夜も遅いわ」
瑞鶴の斜め後ろに立った翔鶴が、声をかけた。足首近くまでの丈の長い肌襦袢に、濃紺色の薄手の丹前を羽織っている。
振り返った瑞鶴に微笑むと、ベッドの端へと横座りに腰掛けた。
「翔鶴姉、どうしてもなにも……」
瑞鶴は、提督と翔鶴の間で落ち着かなげに視線を往復させた。
「──私は、ふたりの邪魔をしに来たわけじゃないから」
気まずそうに言った瑞鶴を、翔鶴が探るような視線で見つめる。
瑞鶴は下を向いた。
提督はふたりの会話を黙って聞いていた。
控えめで、瑞鶴に比べれば気弱な印象もあった翔鶴だが、こうして目の前での姉妹のやり取りを見るかぎり、その印象が誤りであることを提督は悟った。
翔鶴の眼は、妹の内面を見透かしているようだった。
「ねえ瑞鶴──お酒は苦手だったわよね」
訊かれて、瑞鶴は手の中のグラスと翔鶴を交互に眺める。
「あ、うん──まあ、あまり」
「もう、酔いがまわっちゃったのかしら。顔が赤いわ」
翔鶴が瑞鶴の頬にそっと指先で触れた。提督の位置からも、確かに紅潮しているように見える。
触れながら、翔鶴は小首を傾げて言った。
「困ったわ」
「困ったって……なんで?」
「あなたが戻ったら、三人でお酒を飲みましょうって、提督と約束したの。──そう、でしたよね? 提督」
翔鶴が顔を向け、意味ありげな視線を投げかけてくる。
提督は頷いた。
いぶかしげな表情で、瑞鶴が姉を見つめている。
「なら、ふたりで飲みなよ。私はもう行くから」
「駄目よ。三人で、って約束だもの」
言いながら翔鶴は、中身の入ったままのグラスを瑞鶴から取り上げ、ベッド脇のローテーブルに置いた。ふたたび提督を、含みのある眼で見つめてくる。
「ごめんなさい、提督。どうやら瑞鶴は、これ以上飲めそうにありません」
瑞鶴が言葉を発しかけるが、翔鶴は片手を上げ、さりげなくそれを制した。
提督にも、翔鶴の意図するところがなんとなく掴めてきた。
腕を組み、わざとらしく顔をしかめて言ってやる。
「なら、どうする。楽しみにしていた飲み会はお流れか」
「──せっかくですから、べつのことを」
「べつのこと」
「はい」
「それは、三人でできることか」
「はい、三人で。提督と瑞鶴と、それに、私の三人です」
翔鶴は言って、にっこりと笑う。
瑞鶴が呆れた顔で、笑顔の姉を見つめていた。
「翔鶴姉、本気?」
「ええ、本気よ」
「瑞鶴が断らないと思うの?」
「断らないわ。絶対に」
なぜ──とは瑞鶴は尋ねなかった。自分を見つめる姉の視線で、察しがついたようだ。
肩を落としてがっくりとうなだれる。
提督は、翔鶴を見て言った。
「ひとつ訊いておきたい」
「──はい」
「俺が瑞鶴と寝たことは、承知しているということだな」
「はい。その節は、本当に感謝しております。心からお礼を」
「いつ知った」
「日曜日、帰ってきた瑞鶴の顔を見たときに」
「なんとまあ……初めからか」
提督は呆れ半分に言った。
うなだれたままの瑞鶴を横目で見やりながら、翔鶴が言う。
「帰ってきたときの瑞鶴の顔を見て、私にはすぐにわかりました。ほかならぬ妹のことですし……この子は、隠しごとのできる性格ではありませんから」
「俺は、おまえが気づいていないと思っていた」
「小賢しいようですが、そのようにふるまいました。ふたりのことには、私が口を差し挟んではいけないと思いましたので」
「見事な演技だったな。脱帽ものだ」
翔鶴が、黙って頭を下げる。
不意に、うなだれていた瑞鶴が顔を上げ、思いがけない勢いで提督に躰を寄せてきた。両手を提督の膝に置き、懇願する眼で見つめてくる。
「提督さん、翔鶴姉のこと、誤解しないで。わたしが──瑞鶴が悪いの。翔鶴姉に嘘をつかせたのは、ぜんぶ、瑞鶴がこんなだから──」
目を見開いた翔鶴が腰を浮かせ、何かを言おうとしてか口を開いた。
提督はさりげなく手を掲げ、それをとどめた。瑞鶴を見て言う。
「いいんだ、瑞鶴」
「だけど──」
「いいんだ。嘘は、悪いことばかりでもないさ」
酔いのせいか興奮のためか、瑞鶴は顔を真っ赤にしている。わずかにへの字に曲げられた唇のかたちが、この上なく愛らしく思えた。
「人間、誰だって嘘をつく」
人間──と言ってしまってから、それが眼の前の女たちに適切な言葉であるのか、提督は一瞬だけ迷った。
すぐにその、くだらない思考を頭から追い出す。
どうでもいいことだ。
「……つかれて困る嘘もあるが、大事なのは、嘘をつかないことじゃない。本当に価値があるのは、おまえの言葉を借りさせてもらえば──誠実であろうとすることだ。自分が守るべき何かのために」
姉妹であるお互いのために、ふたりの艦娘は可能なかぎり誠実であろうとした。さまざまな行き違いがあったとしても、それだけは疑うべくもない。
瑞鶴は唇を噛んで眉根を寄せていたが、やがて、揺れる瞳で提督を見つめながら言った。
「……翔鶴姉は、誠実だよね?」
「おまえのためとなると、誰よりも。おまえが翔鶴に対してそうであるのと、同じくらいにな」
提督の膝に置かれた瑞鶴の手から、力が抜けていった。瑞鶴はうつむき、安堵したように大きく息をついた。
顔を上げると、ひときわ明るくなった声で提督に言う。
「ねえ、提督さん──ひとつ訊かせて」
見上げる瑞鶴の眼は、やわらかく煌めいていた。
「翔鶴姉のこと──好き?」
「好きさ。……おまえと同じで、ちょっと食えないところもあるが」
瑞鶴は、相好を崩して笑った。振り返って翔鶴を見る。
横座りに顔をそむけた翔鶴は、羞じらうように頬を染めていた。その表情は、まぶしいものから眼をそらしているかのように、提督には思えた。
瑞鶴が密着し、顔を寄せてくる。提督の耳朶に唇を触れさせ、からかうような小声で囁く。
「そういうカッコつけたこと言ってさ──なんだかんだで、ふたりとも食っちゃったくせに」
瑞鶴が小さく歯を立てて、提督の耳に噛みついた。
笑いながら、提督は顔をしかめた。
◇
翔鶴と向かい合って唇を重ね、舌を絡ませながら、提督は襟を割って胸もとに左手を差し込む。
襦袢の下に、翔鶴は下着を身に着けていなかった。
「んっ……はっ、ぁ……」
翔鶴が吐息を漏らした。
提督は豊かなふくらみを手のひらで包み込みながら、じっくりと揉み上げる。なめらかな
「んっ……あっ……」
すでに硬くなっている先端を親指で転がすと、翔鶴は敏感に反応して躰を震わせ、吐息のトーンを高くした。
硬度を得はじめていた提督の股間を、ズボン越しにそっと撫で上げる感触がある。
背後から提督の腰を抱くように、瑞鶴が手をまわしていた。提督の裸の背に、衣服を隔てて瑞鶴の胸が強く押しつけられている。
「やる気まんまんだね、提督さん。翔鶴姉、可愛いもんね」
提督の首筋に頬をすり寄せながら、瑞鶴が囁く。そよ吹くような息遣いが耳もとをくすぐっている。
脱がすね──と続けて囁き、瑞鶴の手がズボンのファスナーを下ろしていく。下着ごとズボンを引き下げ、屹立する提督の陰茎を露出させた。
「あは……出た出た、元気な子」
嬉しそうに言うと、瑞鶴は陰茎をこすりだす。
冷たく、繊細な瑞鶴の指先と手のひらが、充血器官の表面を這いまわる
提督は予想以上に巧みな瑞鶴の愛撫に息を荒くしつつ、丹念に翔鶴の乳房を揉み続けた。
吸いつくような肉感と、硬くなった先端の対照的な感触が、提督の脳を灼く。
唇を合わせたままの翔鶴は、すでに顔を蕩けさせていた。薄目を開けた虚ろな表情で、一心に提督の舌を求め続けている。
提督は空いている右手で、翔鶴の襦袢の裾を割った。
「はぁ……んっ……」
上と同様に、やはり下着を着けていない。
愛液が溢れていた。
粘つく液体をまとわりつかせ、提督は手のひら全体で陰唇をこねまわすように撫ではじめる。
くちゅくちゅと淫らな音をたてさせながら、快感の深いポイントはあえて外していた。
翔鶴が不満そうに顔を歪める。もどかしげな様子で、腰を前後に揺すりはじめた。
「翔鶴姉、自分で動いちゃってるね……そんなに気持ちいいの?」
提督の肩越しに覗き込むようにして、瑞鶴が問いかける。話しながら、提督の陰茎を握った手は休ませることなく、一定のペースで前後に動かし続けていた。
提督の背に押しつけられた胸が、激しく震えている。瑞鶴もまた、興奮しているのは明らかだった。
翔鶴が切なげに眉を寄せたまま顔を上げ、恨めしそうに提督を見つめて言った。
「ねえ、お願い──意地悪しないでぇ」
腰をしきりに揺すっている。提督の手に局部を押しつけ、指を内部へと導こうとする。提督はそれを拒否するように、わずかに手を引いた。
「よくないのか?」
言って、提督は指先で陰唇の表面を撫でる。表面だけをくすぐるような動きだ。
翔鶴が首を振った。
「いいけど、ちがうの……わたしのもっと気持ちいいとこ、触ってほしいの」
「どこなのか、言えよ」
「……なかのほう、なかの、手前のとこ」
先ほどまでの姉らしい穏やかな表情が一変していた。口調も舌足らずな、甘えたものに変わっている。
陰茎をこする瑞鶴の手の速度が上がってきている。呼吸も荒くなり、はっきりとその音が聞こえていた。
三人ともが、お互いの快楽と興奮を高めている。
提督は人差し指と中指を重ねるようにして、潤んだ膣内へと没入させた。
「はっあ……あぁ……そう、そこ……わたしのいいとこ、そこなのぉ……」
翔鶴が提督の肩にすがりつき、甘ったるい声を上げる。背後の瑞鶴が、唾を飲み込む気配が伝わってきた。
提督は内部で指を折り曲げ、かすかにざらついたその箇所を、内側から恥骨に押しつけるようにして圧迫しはじめた。
「あああぁ──そこ、だめ……だめぇ……!」
即座に翔鶴が甲高い声を上げ、提督に躰を預けてくる。
口を寄せて舌を差し出すと、待ちかねたようにしゃぶりついてきた。提督の舌をしきりに吸い、舐めまわす。
提督が指の動きを強めると、翔鶴は声にならない喘ぎを上げるのみになっていった。
「翔鶴姉、気持ちよさそう……提督さんの指で、翔鶴姉のあそこ、くちゅくちゅ、くちゅくちゅ、やらしい音たててるよ」
瑞鶴が言う。翔鶴は呼吸を乱しつつ、首を振った。瑞鶴の言葉に反応してか、膣が細かく収縮して指を締めつけてくるのがわかった。
「提督さんのおちんちんも、すっごい硬い。翔鶴姉がエッチな声ばっか出してるから、すっかり興奮しちゃって、かちかち」
瑞鶴の指が、雁首のあたりを締めつけるようにしてこすり上げる。絶妙な力加減による刺激だった。
提督は、思わず快感に呻いた。
「あらら、提督さんまで声出しちゃって、気持ちいいの、これ……?」
耳もとで瑞鶴が囁く。提督が頷くと、満足そうに含み笑いをして首筋に接吻してきた。
翔鶴がふたたび、もどかしげに腰を揺らした。
瑞鶴に気を取られ、指がおろそかになっていた。
翔鶴が提督の顔を両手で包むように挟み、強く唇を求めてくる。切なげな眼で見つめながら言った。
「ねえ、お願い……もっと、激しく……あなたの指で、わたしのなか、思いっきり掻きまわして……」
提督は翔鶴を見つめ返した。
「いきたいのか」
「うん……いきたい。あなたの指で、瑞鶴に見られながら、いきたいの」
提督は翔鶴の腰を抱えるようにして支えた。躰を固定しておいて、膣内の指を激しく上下させはじめた。
「ああああぁ……! そう、そういうの、いいの……! わたしのなか、めちゃくちゃになっちゃう……!」
指にこすられた膣壁が、ぐちょぐちょと濁った音をたてる。
溢れきった愛液が、腕をつたって滴り落ちるほどだ。
準備ができていなければただ苦痛なだけだろうが、今の翔鶴の躰には痛みすら快楽に変換してしまうスイッチが入っている。
すぐに、翔鶴は頂点に達してしまった。
腰をがくがくと痙攣させ、提督の胸に顔を押しつけるようにして倒れ込んだ。
「あーあ、翔鶴姉イッちゃった。提督さんは、まだなのに」
瑞鶴が囁く。耳に息を吹きかけるようにして、続けて言う。
「提督さんもイキたい? このまま、瑞鶴が手でイカせてあげよっか?」
「ああ……頼む。このまま、おまえの手でいきたい」
「んふふ……うん、いーよ、瑞鶴がしっかり気持ちよくしてあげるから、せーえき、ぴゅっぴゅしちゃおうね」
「ああ……」
「あ、でも、すぐ出しちゃダメだよ。イキそうになったら、できるだけ我慢して。ね?」
されるがままに、提督は頷いた。
瑞鶴が激しく陰茎をこすり上げる。
早くも、快楽がこみ上げてきた。
提督は口で息をしながら、目を閉じて限界まで耐えようとする。
瑞鶴がからかうように言う。
「ふふ、提督さんかわいー。ほら、翔鶴姉も見て。イキそうなのに、すっごい必死に我慢してる顔」
翔鶴が、提督の胸の上から顔を上げる気配があった。ついで、躰が離れる。
提督が目を開けると、ベッドに這うような姿勢で、翔鶴が陰茎の下から提督を見上げていた。
微笑んで、陰茎に顔を寄せてきた。
予想外の快感に提督は震えた。
瑞鶴の手の中の陰茎を、翔鶴が口に含んでいた。
「ナイス、翔鶴姉。ふたりで一緒に、提督さんをイカせちゃお」
手を休めずに、瑞鶴が嬉しそうな声を上げた。
瑞鶴の手によるリズムで、陰茎の先端が翔鶴の唇と舌にこすりつけられる。自らの意のままにならない快楽が、提督を挟み込んでいる。
翔鶴は巧みに舌を遣っていた。舌の裏側を亀頭の上部にこすりつけては、すぐに回転させて裏筋を小刻みに舐める。ときおり、唇できつく鈴口のあたりを締めつけてくる。
提督の内部で急速に快感が高まり、爆発した。
前触れを告げることもできず、提督は白濁した粘液を翔鶴の顔面にぶちまけていた。
今夜三度目の射精にもかかわらず、かなり濃く、大量の精液だ。
翔鶴の眉間から鼻筋、唇にかけてが、粘つく白い粘液にまみれた。
「すっごい……いっぱい出たね、提督さん……」
息を荒くしながら瑞鶴が言った。
端正な顔を白く汚した翔鶴は舌を出し、提督の陰茎の先端に垂れていた精液を舐め取る。
自分の顔についた白濁も指で集め、口に含む。
満足そうに微笑み、音を鳴らして指を吸った。
◇
部屋の内側にある洗面所へと翔鶴が姿を消した。
待っていたかのようにすぐに、瑞鶴が提督の正面にまわって抱きついてきた。
首にすがりつくようにして接吻してくる。
提督は勢いに押されつつ、瑞鶴を両手で抱きとめた。細く締まった躰つきは華奢さを感じさせる外見ではあるが、こうして触れ合うと服の上からでも十分にわかるほど、女としての柔軟さに満ちていた。
「ねえ……好き」
唇を離して瑞鶴が言った。
なぜ部屋に戻ってきたのか──と訊きかけて、提督は言葉を呑みこむ。
腕の中の瑞鶴が何を欲しているのかは、訊くまでもなく明らかだった。
瑞鶴がわずかに首を傾げ、申し訳なさそうに眉尻を下げた。
「ごめんね」
「──いいさ」
提督は笑みを返し、指の背で瑞鶴の顎を撫でた。
「ところで──さっきのは、よかった」
「ん……手でしたやつ? あれ、よかったの?」
「ああ。意外と、責めるのも上手いんだな」
「へへ……ホテルのときだと、瑞鶴が一方的に気持ちよくされちゃったから、ちょっと悔しかったんだ。提督さんが気持ちよくなってくれたんなら、嬉しい」
そう言うと瑞鶴は、提督の頬に接吻した。両側に縛ったまっすぐな髪が揺れ、提督の肩に当たる。翔鶴とは異なる種類のほのかな香りに、提督は放出しきったばかりの情欲が引き起こされるのを感じた。
「男のひとが……自分でするときって、ああいう感じなの? 手で握って、ごしごし、って」
「ん? ああ、まあそうかな。自分で握るわけだから、感覚はかなり違うが」
瑞鶴は少し逡巡するように眼を泳がせたあとで、思いきった様子で言った。
「あのね……わたし、このあいだ、初めて自分でしちゃった」
提督は瑞鶴を見た。恥ずかしそうに、瑞鶴がうつむく。
「ここで、か」
「うん……ここで。隣りに翔鶴姉が寝てたけど、こっそり」
「ふーん……ネタはなんだ」
「ねた?」
「おかずだよ。何を想ってしたか、ってことだ」
瑞鶴は顔をしかめ、提督の胸を平手でぴしゃりと叩いた。叩いておいて、その胸にしなだれかかってくる。
「あのね……ホテルのときのこと。提督さん、ほら……瑞鶴の、舐めてくれたでしょ」
「ああ」
瑞鶴は、提督の胸に頬をつけたまま見上げている。提督と眼が合うと、照れたように笑った。
無意識にか、瑞鶴の両手がスカートの上から太腿の間を抑えつけている。もじもじ動かしながら、続けて言った。
「あのときの提督さん、すっごい一生懸命で、なんだか可愛かったなって思ったの。それで、可愛かったなって思ってたら、なんだか、あれ、すっごい気持ちよかったな……って思って」
無言で、瑞鶴を見つめた。
熱っぽい視線が返ってくる。
提督はのしかかるようにして、瑞鶴をベッドに倒していた。
「あっ……ちょっ、ちょっ、ちょっと待って、まだ準備が──」
「俺が、やってやる」
仰向けに転がしておいて、提督は瑞鶴の下半身に正対するように自らの躰をずらす。
短いスカートの中へと、顔を突っ込んだ。
瑞鶴は脚をばたつかせて抵抗しようとしたが、提督は両手で太腿をがっちりと押さえつけていた。
「ま、待ってってば……下、脱ぐから──」
「脱がなくていい」
瑞鶴が両手を伸ばして提督の頭を押さえようとするのに構わず、その部分へと顔を寄せた。
スカートの中は、女の濃厚な気配に満ちていた。
白い小さな下着の中心には、わずかな濡れあとがついている。その部分へと、強く唇を押し当てて接吻した。
瑞鶴が腰を震わせて悲鳴を上げる。
「ひゃっ──や、やだ、なんで、上から──」
提督は、布地の上から丹念に、舌と唇で瑞鶴の秘裂を探った。ときに唇を強く押しつけるようにしながら、圧迫を加えていく。
瑞鶴は敏感に反応する。布地のむこうの愛液のぬめりが増していくのが、提督にもわかった。
「やっ、ん……ちょっ……も、もう、変態なんだから……」
両手で提督の頭を抱えてはいたが、押しのけるのとは逆の方向、自らの秘部に押しつけるような力の入れ方に変化していた。
提督は硬くなった陰核を探りあて、下着の上から唇で挟みつけるように刺激を加えた。
「んんんっ──くっ、あ、んっ──」
瑞鶴が、苦痛と快楽の入り混じった嬌声を上げた。
すぐに力を緩めてやり、慰めるようにゆっくりと舐める。瑞鶴は深い溜息をつき、提督の舌の動きに合わせて腰を前後に動かした。
「んっ……きもち、いい、よ……そういうの、すき……」
吐息混じりの声で瑞鶴が言う。
提督は、クロッチ部分の脇の、布と素肌の境い目に舌を細かく這わせた。
瑞鶴がびくびくと震えながら声を上げる。
「あっあっあっ、そこ、すっごい感じちゃう……! だ、め……!」
提督は、下着の縁の部分を軽く咥えて持ち上げ、舌を挿し込んだ。湿った下着の内側に鼻面を突っ込み、秘裂にそって舌を往復させる。
瑞鶴が激しく躰をよじらせた。
「んんんんっ……! いっ、あ……!」
陰核を二度三度と舐めたてると、瑞鶴は高い声を上げて短く痙攣した。細身の躰が、弓なりに反り返っている。
提督は下着の前を掴むと陰部の脇へと押しのけ、露出した部分へ本格的な舌での愛撫を開始した。
ぴちゃぴちゃと、犬が水を飲むような唾液の音をたてて秘部を舐める。絶頂したあとしばらくは腰を引き加減にしていた瑞鶴も、すぐに快楽の深い箇所へと提督の顔を誘導した。
「はっ……あ……ん……きもち、いい……ていとくさんにぺろぺろしてもらうの、きもちいいの……」
顔を激しく左右に振りながら、うわ言のように瑞鶴がつぶやく。
ふと、傍らに気配を感じて提督は眼だけを上げて見た。
ベッドに膝をついた翔鶴が、微笑んでいた。提督と眼が合うと悪戯っぽい表情で人差し指を口に当て、瑞鶴のはだけた胸もとにかがみ込む。
そっとした手つきで、ブラジャーのフロントホックを外す。瑞鶴の控えめな、均整のとれた胸が露わになった。
首を反らしたまま、後頭部を枕に押しつけるようにして喘いでいる瑞鶴は、翔鶴の行動に気がついていなかった。
翔鶴が乳首を口に含んだところで、ようやく瑞鶴は頭を跳ね上げた。
「しょ、翔鶴姉……! なんで……!?」
翔鶴が含み笑いをするように、わずかに肩を震わせる。もう片方の乳首にも、手を這わせていた。
瑞鶴が息を詰める。
機を逃さず、提督も瑞鶴の陰核を優しく吸った。吸いながら、舌先を蠢かせて転がすように刺激してやる。
「はっ、ああぁぁ……だめ、また、イッちゃう、イッちゃうよお……」
甲高く叫びながら、瑞鶴が躰を痙攣させる。
提督は舌での愛撫を緩めない。瑞鶴がふたたび弓なりに躰を反らした。
翔鶴が、音をたてて瑞鶴の胸を吸った。顔を上げ、切なげな溜息をついて言う。
「可愛いわ……瑞鶴」
その言葉に答えるかのように、瑞鶴の下腹がびくんと大きく脈打った。
◇
「このようなものを、お持ちになっていたんですね」
袋から取り出したコンドームを両手でつまむように持って、翔鶴が言った。
きまりが悪くなった提督は眼をそらし、顎を掻いた。
傍らで、全裸に剥かれて横たわった瑞鶴が両腕で顔を覆い、呼吸を整えようとしている。幾度となく繰り返し達した余韻が強く残っているせいか、ふたりの会話を聞いている様子はない。
「お着けします」
翔鶴は言って、コンドームの精液溜まりの部分を唇に咥えた。
屹立している提督の陰茎に顔を寄せ、リング部分を被せながらすっぽりと口に含んでしまう。
翔鶴は唇をすぼめるようにして数度ばかり顔を前後させ、口だけで器用にコンドームを装着させていった。
どのようにして仕入れた知識なのか。提督は淫猥な行為を見下ろしながら、異常な昂ぶりを覚えていた。
翔鶴が顔を離し、自らの仕事を検分するように眺めた。
「──うまく、できましたでしょうか?」
「ああ……上出来だ。ありがとう」
提督が言うと、翔鶴が顔を傾けて笑った。その前の自分との性交で避妊具を着けようとしなかったことについて、尋ねもせず、責めもしない。
性欲と勢いまかせだった内心を見抜かれたようで、提督はひどく気恥ずかしい思いがした。
翔鶴がくすくすと笑いを噛み殺し、膝立ちになって提督の耳に顔を寄せた。むき出しの柔らかい胸が、提督の躰に直接触れる。
小声で翔鶴が囁いた。
「今日はたぶん、大丈夫だから。……わたし毎日、体温、測ってるんです」
提督は苦笑した。翔鶴も明るく笑う。
やんわりと腰を押されるように誘導され、提督は瑞鶴の前に膝を進めた。
翔鶴が瑞鶴の枕もとに手をついてかがみ込み、尋ねる。
「大丈夫、瑞鶴? 準備ができたけど、もう挿れられる?」
「あ……うん」
顔を覆っていた腕をのけて、瑞鶴が言った。
「いつでも、いいよ。私も……挿れてほしい、から」
膝を立て、大きく脚を広げた。
愛液とも唾液ともつかない液体で、潤んでいた。裂け目からこぼれそうな
提督がラテックスに覆われた陰茎の先を秘裂にあてがうと、瑞鶴が言った。
「提督さん──翔鶴姉と、キスして」
挿入を寸前で止めた提督は、瑞鶴の表情を確かめる。なぜだか妙に、切羽詰まった顔をしている気がした。
「お願い、ふたりがキスしてるところ見ながら、挿れられたいの」
瑞鶴の口もとが、落ち着きなく震えている。すがりつくような眼で、提督を見ていた。
視線をたち切り、提督は傍らの翔鶴の腰を抱いて引き寄せる。
「あっ……」
短い声を上げ、翔鶴が提督に躰を寄せる。
すぐに、唇を重ねた。
提督は目を閉じ、舌を挿し出した。柔らかい唇を強引に割って侵入する。
わずかばかりの抵抗をしていた翔鶴も、やがて諦めたように提督を受け入れ、口内で遠慮がちに応じてくる。
提督が唇を離すと、翔鶴は瑞鶴に顔を向けた。
「瑞鶴……いいの? ほんとうに」
低い声で問う。
瑞鶴は、こくりと頷いた。
その瞬間だった。
翔鶴が、強い力で提督の首にすがりついてきた。唇を重ね、舌を妖しく動かして提督を求めてくる。
乳房が形を歪めるほど、提督の躰にきつく押しつけられていた。
提督は圧倒されていた。
翔鶴の口内から、全身の肌から、むせかえるような女の熱と匂いが発散している。
勢いに押されて、わずかに腰を引いた。瑞鶴の秘所に先端を埋没させるようにあてがわれていた陰茎が、滑るように外れてしまう。
「あら……」
翔鶴が目ざとく見咎めて、くすりと笑う。手を伸ばして掴み、ふたたび入り口にあてがった。
提督の耳に唇を触れさせ、囁く。
「挿れてあげて」
瑞鶴と、提督の視線が絡んだ。
複雑な感情が瞳に浮かんでいる。
瑞鶴が頷く。
なかば無意識のうちに、提督は腰を進めていた。
「んっ……く」
瑞鶴の顔が歪む。
腰を止めず、提督はひと息に貫いていた。
濡れ方の著しい膣口とは違って、内部の潤いは十分ではない。瑞鶴の膣内のその
提督は思わず、呻き声を上げた。
「こっちを向いて──提督」
躰の持つ熱とは対照的な、ひんやりとした翔鶴の手が頬に添えられ、提督の顔を横向かせる。
淫蕩な微笑みを口もとに浮かべた翔鶴が目を閉じ、小さく舌先を差し出した。
濡れた光で、煌めいていた。
提督は反射的にむしゃぶりついた。柔らかく、甘い。
片腕で、翔鶴の腰を強く抱き寄せる。同時にもう片方の手で瑞鶴の腰を掴み、動作を開始した。
「んっ……くっ……あ、はっ……」
顔を歪めたまま、瑞鶴が苦悶の声を漏らす。
膝を瑞鶴の腿の下に差し入れるようにして腰を上げさせながら、提督は細かく動作する。
ラテックスを隔てた先の、ぎちぎちとしたきつい感触が、しだいになめらかなものに変化していく。
「はぁ、んっ……あっ……やっ、ん……い、あっ……」
瑞鶴の声に、隠しようもない快楽の気配が混じりはじめていた。
唇を合わせたまま、翔鶴が横目で瑞鶴の様子を窺っている。
提督は翔鶴の腰を抱いた手を下げ、豊かな尻を鷲掴みにした。
「きゃっ──や、もう……」
さすがに驚いて背筋を伸ばした翔鶴が、悪戯な子供をたしなめるような眼で提督を睨む。睨みながらも、いっそう躰をすり寄せてきた。
媚びの含まれた動きで、自分の胸の先端を提督の胸にこすりつけてくる。
提督は顔を下げ、乳首を口に含んだ。固くなったその部分を舌で優しく転がし、吸った。翔鶴の甘い匂いが、口腔内に満ちる。
「ん……ふふ……」
翔鶴が小さく笑って、提督の頭を髪の上から撫でた。愛しげな手つきだった。
繋がったままの瑞鶴が、不意に腰を揺すって身悶えした。
「んん……ねぇ、もっとぉ……」
わずかに提督の腰の動きがおろそかになっただけで、ひどく焦らされた気分になっているようだ。
提督は翔鶴の胸から口を外した。
瑞鶴を抱えなおし、動作を大きく、激しいものに変える。
背を反らすようにして、瑞鶴の内側の天井を突き上げる。これまでに、瑞鶴の内部では刺激したことのない部分だった。
「ひ、あっ……! そ、そこ……すご、い……すごい、きちゃ、う……!」
瑞鶴が首を振った。無意識になのか、提督のリズムに合わせるように腰を動かしている。
提督は瑞鶴の下腹に、片手で触れた。強くなりすぎないように注意しつつ、外側から、内側の陰茎とで挟み込むように圧迫を加える。
さらに激しく、瑞鶴は乱れた。
部屋の外にまで聞こえるのではないかというほどに激しい息遣いで、喘いでいる。
横から、翔鶴が手を差し伸べてきた。
愛液に指を濡らし、繊細な手つきで陰核を刺激しはじめる。
瑞鶴は、わけがわからなくなりはじめていた。ときおり、下肢をびくびくと痙攣させるように動かしている。
「ほんとうに、可愛いわ……瑞鶴」
魅入られたように瑞鶴を見つめながら、翔鶴が言った。
提督に、兆しが這いのぼってきた。
瑞鶴はすでに、幾度も絶頂を繰り返している。
提督は、爆発させた。
動きを止め、陰茎を包む被膜の中に精を放っていく。
息を整えていると、翔鶴が密着してきた。
「提督……今度は、わたしのなかに……なかにまた、ください」
提督は息をつき、翔鶴の光る眼を見つめた。
◇
ふたつの尻が、眼前に並んでいる。
提督が抱えているのは、より肉づきの豊かな、翔鶴の尻のほうだった。
秘部に挿し込まれた陰茎が、ぬらぬらと白く濁った愛液にまみれながら前後に出入りしている。
避妊具を着けていない、剥きだしの状態だ。
膣の内壁の絡みつく感触の心地よさに、提督は下半身が溶けていくような満足感を覚える。どれほど薄く、密着する素材であったとしても、やはりこの粘膜と粘膜がこすれ合う感覚に勝るものはない。
挿入直後にすでに一度達してしまった翔鶴は、今は拳を噛むようにして声を押し殺し、必死に耐えている。
横に並んで膝をついた瑞鶴が、じっと翔鶴のその顔を見つめながら尋ねた。
「翔鶴姉、気持ちいい?」
翔鶴はきつく目を閉じたまま、無言で繰り返し頷く。
瑞鶴が、熱っぽい吐息を深々とついた。翔鶴に比べると小ぶりの、それでも丸みのある可愛らしい尻が、提督の眼前で揺れている。
提督は手を下げ、瑞鶴の濡れた秘裂に中指を挿し込んだ。
「ひゃ、んっ……も、もう、提督さん、いきなりは、ダメだってばぁ」
びくりと瑞鶴が躰を震わせ、振り返って提督を見ながら抗議の声を上げる。
言いながらも、提督が内部を探るように掻きまわすと、甘えた声を出しつつ尻を持ち上げ加減にしてくる。脚の間に手を差し伸べ、提督の手に重ねるようにして自ら陰唇を刺激しはじめた。
提督は予告なく、翔鶴から陰茎を引き抜いた。
「ん、うぅん……!」
背を反らした翔鶴が、突然の中断にむずかるような声を上げた。
提督は躰を横にずらし、白濁した愛液に濡れた剛直を、瑞鶴の秘部に突き立てる。
「んっ! あっ、ちょ……ダメ、だよぉ……翔鶴姉と、してたんじゃん……」
「おまえはこの体勢でしたこと、なかっただろ。後ろからも試してみたくなってたんじゃないのか」
「んっ、んっ、んっ……それは、そう、だけどぉ……」
背後から提督に突かれながら、瑞鶴は翔鶴に顔を向ける。
「ごめんね、翔鶴姉……また、じゃま、しちゃって……」
翔鶴は笑って首を振った。提督を横目でちらりと見やると、瑞鶴に唇を寄せる。
軽い音をたてて、接吻した。
瑞鶴は目を丸くしていた。
ややあって、瑞鶴は自分から唇を寄せた。
ふたりが、ちゅ、ちゅ──と、繰り返し唇を合わせている。
粘つくような性愛の雰囲気とは違う、どこか微笑ましさすら感じられる光景だ。
提督はしばらく、ふたりの妨げにならないよう、律動を控えめなものにしていた。
頃合いを見て瑞鶴の腰を抱えなおし、ペースを速めた本格的な抽送を開始した。
きつく締め上げる瑞鶴の膣内の、その最奥を徹底的に突き立てる。
瑞鶴が、激しく乱れていく。
「あっ……あっあっ……! ていとくさんのかたいの、すごく、あたる……おくに、あたるの……!」
勢いあまって達してしまわないように注意をはらいつつ、提督は腰を押しつけるように動作させる。
瑞鶴が、短く震えだす気配が伝わった。
すかさず陰茎を引き抜いた。
引き抜いた刺激で、瑞鶴は達したようだった。尻を掲げたままベッドに突っ伏すと、びくびくと全身を震えさせた。
そのまま、翔鶴へと提督は矛先を向ける。
待ちわびていたように提督を迎え入れてきた。
挿入する際に、愛液と空気が混じりあって卑猥な音をたて、翔鶴の内部が温かく提督に絡みつく。
加減せず、激しい動作を開始した。
たちまち、予感が這いのぼってきた。
すでに今夜は幾度も放出しているというのに、もう長くはもちそうにない。
背を重ねるようにして提督がそれを告げると、翔鶴は顔を上げて必死に振り向こうとした。
「出して……出して、わたしのなかに、いっぱい、あなたを……」
切羽詰まった口調で言って、促すように腰をくねらせる。
提督は誘われるままに爆ぜた。
強烈な快感に、意識が遠のきかける。
◇
夜が白みかける時刻になっていた。
提督の肩口に顔を乗せて、翔鶴が静かな寝息をたてている。
反対側の肩に、瑞鶴がぴったりと寄り添っている。
瑞鶴はまだ起きていた。じっと、大きな目で提督を見つめていた。
「私ね──」
唐突に、瑞鶴が口を開いた。
提督が顔を向けると、まっすぐに眼を合わせてきた。
「──私、翔鶴姉に提督さんを獲られちゃうじゃないかって、怖くなった。それで、戻ってきたの」
そう言って、提督の肩に口づけする。自嘲するような笑みを浮かべ、続けた。
「馬鹿だよね。瑞鶴が自分で、翔鶴姉が提督さんとくっつくように仕向けたのに。笑っちゃうよね」
「──俺は、おまえたちのことを似てない姉妹だと思っていた」
脈絡のない提督の返答に、瑞鶴が眉をひそめる。構わず、提督は続けた。
「おまえたちは、そっくりだ」
「……そう? そんなふうに言われたこと、ないよ」
「そっくりだよ」
提督は翔鶴を見た。
胸の上で、翔鶴は規則的な呼吸音をたてている。不自然なほどに、規則的な。
「鶴が狸寝入りか、翔鶴」
言って、提督は翔鶴の剥きだしの尻を軽く叩く。
翔鶴が目を閉じたまま、口もとをほころばせた。寝たふりを続けながら、提督の胸の上へ手を差し伸べる。
瑞鶴の手が、応じて差し伸べられた。
提督の躰の上でふたつの手が重なり、強く、握り合う。
提督は目を閉じた。
空母たちが夜通しの任務から帰投するまで、まだ数時間ほどある。帰還の報告は、執務室に戻って受けなければならない。少しでも寝ておいたほうがいいだろう。
女たちの柔らかい唇が、提督の躰に触れていた。