※この作品はR-18です。

艦娘抱けるかな   作:狂猫病

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忠誠と、秘する重巡の仕える口 *

 抱いていただけませんか──とつとめて平静をよそおいながら、妙高は言った。

 ベッドの端に腰掛けていた提督が、黙って見上げてくる。制服の上着を脱いだワイシャツ姿で、ネクタイも外した比較的くつろいだ格好だった。

 勧められた椅子に妙高は座らず、提督の前に立ちつくしていた。

 心臓は早鐘を打っていたが、そこまで強い緊張を感じているわけではない。ただ、すべてを見透かすような提督の視線に、なんとも言えない気まずさだけを強く意識していた。

 

「それは、今しがた思いついたことか?」

 

 尋ねてきた提督に、いえ──と首を振る。

 

「昨夜より、心を決めておりました」

 

 昨夜──出張の出発前日に羽黒と話をしたあと、自分ひとりで考えて決めたことだった。それまでは、あの気弱な妹から手痛い反撃を受けるまでは、自分からこのような申し出をすることになるとは思いもしないことだった。

 提督は短く、そうか──とだけ言って黙り込んだ。

 しばらく黙考したあとに、顔を上げる。

 

「理由を、訊いてもいいか」

「理由、ですか」

「そうだ。わざわざ今夜、抱いてくれと頼みに来た理由だ」

 

 妙高は言葉に詰まり、わずかにうつむいた。

 

「お慕い申し上げている──というだけでは、不足なのでしょうか」

「十分な理由だが、あまり妙高らしくないという気もする。ふたりきりになったから今、というムードでもないしな」

 

 ムード──。たしかに、そうした要素はまったく考慮の外にあった。かといって、どのようにしてそういう男女の雰囲気をつくればよいものか、経験のない自分にはさっぱり見当もつかない。

 仕方なく、妙高は顔を上げた。

 

「では申し上げますが、私は忠誠を全うしたいと考えております」

「忠誠──それは俺個人に対する忠誠、という意味か」

「はい。今日一日をご一緒させていただきまして、提督は私のすべてを捧げてお仕えするべき方だという確信を深めました。今夜のこのお願いは、私の忠誠の証であると、そのように受けとっていただければ」

 

 まっすぐに言ってしまうと、緊張がやわらいだ気がした。

 提督はまじまじと、少しばかり呆れたような眼で妙高を眺めていた。やがて、小さく息をついた。

 

「俺に対する忠誠というのは、かなり筋違いである気もするな」

「おっしゃることはわかりますが、私の心持ちの問題ということでございます。ご不快でしたら、今後一切口にはいたしません」

「不快ってわけでもないが──」

 

 提督は困惑したように眉を寄せていたが、やがて失笑して首を振った。

 

「まあ、そういうのもありか。あくまでも俺とおまえは上司と部下、そういうことなんだろう?」

「──はい」

「これからセックスするということも、その上下関係の再確認というわけだ」

「はい。それで結構でございます」

 

 妙高が頭を下げると、提督は自嘲気味の笑みを浮かべた。

 

「逆に、割り切りやすくていいかもしれないな。今さらここで小さい倫理観にこだわるのも、馬鹿馬鹿しい気がする」

「提督の軍人としての倫理に反することでしたら、ご無理にとは申しません」

「いいさ。おまえはいい女だし、最近の俺はどうも、倫理とかいうものの正体が怪しく思えてきていたところだったからな」

 

 どこか投げやりな調子で、提督は言った。

 あまり見慣れない微妙に荒れた雰囲気の提督に、妙高の胸へ不安がせり上がってきた。しかし、今さら引くことはできなかった。

 

「それでは──」

 

 いかがいたしましょう、と伺いをたてようとした妙高の言葉を待たず、提督は雑に顎をしゃくった。

 

「脱げ」

 

 鋭さを含んだ提督の短い口ぶりに、妙高は思わず身を硬くする。

 

 

 ◇

 

 脱いだ衣服を、傍らの椅子に掛けていく。

 下着のみを残した姿になったところで、妙高はベッドに座ったままの提督を見やった。提督はとらえどころのない眼で、こちらを眺めてきていた。

 視線をそらし、ひそかに気合いを入れる。思いきって下着に手をかけ、ひと息に脱いだ。

 一糸まとわぬ姿になる。

 提督は変わらず、言葉を発しようとしない。

 羞恥に顔が熱くなる。躰を隠したくなる気持ちを、ぐっと抑えた。視線が、裸の肌に刺さるようだった。

 

「来い」

 

 提督がすぐ間近を、眼で示した。

 妙高は言われるがままに、提督の前に立つ。

 どこか、意地になる気持ちが湧きあがっていた。臍の下あたりで片手でもう片方の手をきつく抑え、背筋を伸ばし、あえて裸体を晒すようにした。

 提督が、吐息を漏らす。感嘆の吐息のようだった。

 

「たしかに──美しいな」

 

 つぶやくようにそう言うと、妙高の下腹へ手を差し伸べてくる。

 はっ──と、妙高は小さく息を漏らしてしまった。提督の指が、閉じられた両腿の間、秘所の入り口の部分に触れていた。

 

「もう、濡れているな」

 

 言われて初めて、妙高は自覚した。

 常にいくらかの湿り気を帯びている場所ではあるのだが、すでに、触れてきた提督の指を濡らしてしまうほどに過剰に潤っているのが、はっきりとわかった。

 

 ──服を脱いで、少し触れられただけで、こんな。

 

 妙高は狼狽する。より強く腿を閉じようとしても、提督の指は頓着なく、その狭い隙間で濡れた秘裂を弄(いら)ってきていた。

 自身の内部から、温かく粘るものがいっそう分泌されていく。

 ちゅく、ちゅ、ちゅく──と明白な水音が、提督の指の動きにあわせて奏(かな)でられた。

 

「んっ……」

 

 妙高は唇を噛んで、下腹(したはら)を灼(や)くような刺激に耐えようとする。

 毅然と背を伸ばしたままでいるつもりが、前かがみの、腰の引けた姿勢になってしまっていた。閉じられた腿の間で、提督の指が蠢いている。

 どうしようもなく、切なくなってしまっていた。

 

 ──立っているのも、つらい。

 

 目を閉じ、そのことを口にするべきか逡巡していると、内腿をつたう感触があった。膣から溢れた分泌液が一筋、ゆっくりと垂れていく。

 妙高はカーペットの床の上で両足の指をすり合わせるようにして、身悶えした。

 一筋が膝まで垂れ落ち、すぐにまた一筋が、新たにつたっていく。

 とめどなく、自分の意志とは無関係に溢れさせていた。これではきっと提督の手指までも、蜜に塗(まみ)れさせてしまっているに違いない。 

 水音はすでに、隠しようもないほどだった。ぴちゃぴちゃと、滴(しずく)が跳ねるかのような音が鳴っている。

 内側まで痺れるような熱い感覚が、下腹を中心に広がってきていた。

 

「は……あ」

 

 妙高は吐息を漏らし、快と羞恥の綯(な)い交ぜとなった眩暈(めまい)を覚えた。

 脚から、力が抜けた。

 前方に倒れかけ、反射的に突き出した手が提督の肩に置かれた。

 

「あっ……も、申し訳ございません……」

 

 慌てて謝罪の言葉を口にしたが、下半身に力が入らず、躰を戻すことができない。

 提督は応えない。

 いっさいの変化を表さず、指でくちゅくちゅと音をたてて、妙高の秘部を弄りつづけている。

 提督の顔が、妙高の鼠径部のあたりのすぐ間近にあった。過敏になった素肌に、提督の体温と息遣いを感じる。

 妙高はとろとろ、とろとろと、際限なく溢れさせ、躰の外へと零(こぼ)していく。

 快が、深まっていた。

 

 ──いっそもっと、中まで……強く。

 

 そんなことを願った。願うようになってしまっていた。

 指を挿れて、掻き混ぜてほしい。

 ひどく強張り熱をもっているような核心にも、触れてほしい。

 より強い快を求めて、妙高が誘うように腰を動かしたその瞬間、提督は手を引いていた。

 

「あ──」

 

 不意に支えを失い、妙高はカーペットの上にへたり込むように腰を落とした。

 提督がベッドから立ち上がる。

 呆然と見上げる妙高の眼前に、提督が立ちふさがるようなかたちになった。

 提督の股間が、制服のズボン越しにでもはっきりとわかるほどに盛り上がっていた。

 後頭部を掴まれてぐいと引き寄せられ、膝立ちになった妙高の頬に、その強張りが押しつけられる。

 

「ああ……」

 

 妙高は身震いしながら、息を吐いた。

 布地越しに、狂おしい熱と硬度が伝わってくる。

 さりげなく頬ずりしてその感触を確かめ、無言の上目遣いで提督に問いかける。

 頷きが、返ってきた。

 

「──失礼、いたします」

 

 震える手で、妙高はベルトを外していった。

 解放された陰茎が、凶暴なまでの硬度で天を衝(つ)いた。

 ふたたび後頭部を掴まれ、今度は直に押しつけられる。

 血流、脈動、熱、雄の臭(にお)い──顔の素肌から、一度にさまざまな情報が妙高の脳裏にまで流れ込んでくる。

 男根の尖端に滲(にじ)んでいた透明な粘液が妙高の顔へと垂れ落ち、頬を濡らした。

 

「仕えろ」

 

 提督が命じた。

 妙高は従順に、舌を差し出す。

 根元から始めて尖端へと、懸命に奉仕する。こうした行為の具体的なやり方など知りようもないのだが、ただ本能が命じるままに舌を動かし、その剛直に余すところなく唾液を塗り込むことに夢中になった。

 

「もっとだ」

 

 提督の言葉が降ってくる。

 その声色に苛立ちに似た気配を感じて、妙高は畏(おそ)れを抱いた。

 

 ──申し訳ございません。

 

 心中で許しを乞いながら唇を開き、口内いっぱいに男根を招き入れた。

 顔を前後させ、愛撫する。

 必死の思いで奉仕をおこなう。

 心から、お仕えする。

 内部で舌先を動かし、零れ落ちるほどに唾液を絡ませ、唇で硬直を優しく揉む。

 前後の動きに合わせて、じゅぶじゅぶと、はしたない音がたってしまうのだが、構ってられなかった。

 奉仕を続けながらそっと様子を窺うと、提督は無表情に見下ろしていた。

 妙高の背に、怯えが走る。

 その瞬間だった。三度(みたび)、後頭部を掴まれた。容赦なく、喉奥にまで剛直を押し込んでくる。

 

「──うっ、ぐ……」

 

 呼吸の詰まる苦しさに思わず抵抗しそうになったが、なんとか堪(こら)えることができた。

 存分に押しつけられたあとで緩められ、ゆっくりと解放される。

 妙高は喉を引き攣(つ)らせながら男根から口を外し、提督を見上げた。

 提督の眼が、問うてきていた。

 涙で視界を滲(にじ)ませつつ、妙高は頷いた。そっと、男根の尖端に下唇をつける。

 もう一度、はっきりと頷いてみせる。

 即座に、加減なしの力で硬直を押し込まれた。

 提督が吐息を漏らす。快の気配が濃い、長い吐息だ。

 妙高はきつく目を閉じ、堪(た)える。

 先ほどよりも長く奉仕させられたあとで、緩められる。

 その儀式を数度、繰り返した。

 目尻からは涙が零れ、口内には粘った唾が湧いた。だが嘔吐を堪えるのも、鼻だけで呼吸をするのにも、どうにか馴(な)れてきていた。

 そう、思った矢先だった。

 両手で鷲掴みされるかたちで妙高の頭が固定され、提督が前後に激しく動作しはじめた。

 

「──!」

 

 声を発しようとしたが、完全に喉が塞がれていて叶わない。

 提督の剛直が、妙高の喉を思うがままに蹂躙してくる。

 抵抗しようにもその術(すべ)すらなく、妙高は全身を強張らせたまま、凶暴な行為を受け容れるしかなかった。

 呼吸もできない。

 意識が遠のき、脳内が黒く塗りつぶされていく。

 

 ──死ぬ。

 

 そう思った瞬間に突然、動作が止まった。

 凄まじい勢いで、硬直の内部から何かがほとばしる。

 提督が獣めいた吐息を漏らし、脱力した。

 口中に溢れた生臭い精に噎(む)せかけ、妙高は男根から口を外して喘いだ。

 どろりとしたものが、口の端からこぼれ落ちていった。

 呼吸する。

 さらに深呼吸を繰り返して、自分を取り戻すことができた。

 口中に残った精を、思いきって嚥下する。手のひらと太腿の上に零してしまった分もすくい上げ、余さず口に含み、呑みほした。

 ひどく生臭いが、なんとも愛おしい、苦みの強い味だった。

 見上げると、提督と眼が合った。満足そうに数度、頷いてくれた。

 妙高の胸の中に、喜びが湧きあがった。

 硬度を失い、白く濡れそぼった男根が、眼の前にあった。

 

「──お浄めいたします」

 

 尖端にひとつ口づけをして、舌と唇でその汚れを拭(ぬぐ)っていく。ちゅるちゅると音をたて、精液と唾液の混じった残滓を吸い取る。

 尽くすことが、妙高の悦びになっていた。

 丹念に浄めているうちに、すぐにまた提督が育ちきってしまう。

 その生命力の旺盛さに妙高が圧倒されていると、提督が無言で二の腕を掴んできた。

 立ち上がらされ、ベッドの上に放るように投げ出される。

 倒れ込んだ妙高の足もとに、提督がひざまづいた。

 

「提督──」

 

 かけられた声を無視して、提督が妙高の両足首を掴む。

 加減なく、押し広げられた。

 即座にむしゃぶりついてくる。

 

「あっ……やっ、そんな──」

 

 躰に力が入らず、逆らうことはできなかった。

 音をたてて、啜(すす)られる。

 唇で陰唇を、愛撫される。

 秘裂に舌を、挿し入れられる。

 核心に甘く、歯を立てられる。

 息つく間もない快と痛みと苦悶の交錯に、妙高はのけ反り喘いだ。

 軽く達してしまった次の瞬間、硬直が強引に秘裂を割って押し入ってきた。

 

「はっ──ああっ──」

 

 躰の内部を圧迫される初めての感覚に、妙高は喉の奥から声を上げた。

 硬直が、妙高を完全に満たしている。

 きつく結合したその部分から、菊座にまで粘液が溢れ落ちている。

 妙高に覆いかぶさる体勢で、提督が動作を開始した。

 ぐっちゅ、ぐっちゅ、ぐっちゅ──力強い律動に合わせて、露骨な水音と、濡れた肌の擦れ合う音と、隙間に入り込んだ気泡の爆ぜる音が綯い交ぜになって、響いている。

 

「はっ──はっ──はっ──」

 

 妙高はただ口を開け、息を吐き出す。

 ぼんやりとした視界が、明滅しているように感じられた。

 苦しい。

 ただ、苦しい。

 それでも躰の奥に、燻(くすぶ)っている何かが間違いなく存在している。

 燻りは、提督の律動に煽られるように火勢を強め、妙高を内側から灼(や)きはじめていた。

 いたたまれなくなって、腰をくねらせる。その拍子に、提督の下腹へと核心をこすりつけてしまった。

 

「あ──あああっ──!」

 

 下半身から電撃のような快感が、一気に脳髄まで奔(はし)り抜けた。妙高は極め、震えながら躰を目一杯にのけ反らせた。

 提督は一顧だにせず、淡々と律動を続けている。

 喘ぎながら、妙高は提督の躰にすがりついた。汗で濡れたシャツの上から、提督の背を抱きしめる。

 翻弄されていた。

 提督の腰が波打っている。

 快感は外部からでなく、妙高の最奥から湧き出るようにもたらされていた。

 内側から、壊されてしまいそうだった。

 提督の腰に、両脚を絡みつける。

 

 ──わたしは、小舟だ。

 

 妙高は、嵐の中にあった。逆巻く波に持ち上げられ、中空を墜落し、海面へと叩きつけられる。

 幾度も幾度も、上下動を繰り返し、揺さぶられる。

 ただ懸命に、提督にしがみつくしかなかった。

 白いシーツの海の中で、頭の中までもが白くなっていく。

 嵐は、唐突にやんだ。

 遠のいた意識の中で妙高は、胎内で提督がひときわ大きくなり、突き破らんばかりの勢いで爆ぜたのを、うっすらと感覚した。

 

 

 ◇

 

 妙高の傍らで、仰向けの提督が寝息をたてている。

 繰り返し交わり、お互いに幾度も極め、爆ぜさせたあとだった。シーツの下では、ふたりともが一糸まとわぬ姿だ。

 妙高はうっとりと、提督の寝顔に見入る。

 愛おしかった。

 どうしようもなく、愛おしくなっていた。

 以前から抱いていた憧憬や敬意が、愛おしさとしか言いようのないものに変化していることを自覚していた。

 わずかに開いた唇に、指で触れてみたかった。うっすらと髭の浮きはじめている頬を、手のひらで撫でてみたかった。

 まんじりともせず自制していると、股間に疼くものを感じた。静かに指で触れてみると、少し前に浄めたばかりだというのに、もう滲ませてしまっていた。

 

 ──なんて、はしたない。

 

 自分自身を諫めたものの、触れてしまったことでその部分がより熱をもち、かえって欲求が強くなってしまったのを感じた。

 制御できないほどに、つらくなっていた。

 

 ──提督、申し訳ありません。

 

 胸の内で詫び、裸の肩口にそっと唇を寄せる。

 軽く口づけし、こっそりと差し出した舌先で舐め、味わう。鼻の頭をこすりつけるようにして、提督の肌の匂いを嗅ぎながら、指を動かす。

 眠っている提督を気づかいながら、ささやかな指の運びで、みずからを慰める。

 焦れったく、実際に体験してしまった交接に比べればあまりにも物足りない行為ではあったが、それでも薄く甘い快楽に包まれて、妙高はそれなりに幸福を感じていた。

 すぐに達してしまおうとはせず、加減して、できるだけ長い時間揺蕩(たゆた)っていたかった。

 いつの間にか夢中になって、目を閉じてしまっていた。

 開けたその瞬間、提督と眼が合った。

 とたんに頬や耳朶へと血流が集中し、周辺が熱くなっていくのを感じた。

 顔を伏せた妙高に提督が腕をまわし、抱き寄せてくる。

 

「どうした」

「あの──申し訳、ございません。不調法で、お起こししてしまいました」

「いいさ」

 

 腕の中に顔を埋めている妙高の背を、提督は静かに撫でて言う。

 

「足りなかったか」

「いえ、その──」

「言ってくれれば、応えてやれる。遠慮をするな」

 

 提督が顔を寄せ、唇を重ねてきた。

 幸せだった。

 自分が本当に幸せであることを、直感した。涙が零れそうになった。

 唇を離し、提督の胸に寄り添う。この世でもっとも安心できる居場所のように思えた。

 

「意地を張っておりました」

 

 あたたかい胸板に頬をすりつけながら、妙高は言う。

 

「忠誠の証などと、生意気を申しました。私はいつでも格好をつけてばかりで……妹にも、叱られたのです」

「いや──俺も図に乗っていた。どうしてもっと優しくしてやれなかったのか、自分でもわからない」

「提督は、お優しくしてくださいました」

「そんなことはない」

「いいえ、私が望んでいたことなのです。それに──お情けも、たくさんいただきました」

 

 そう言って上目づかいに様子を窺うと、提督が気まずそうに唇を尖らせた。妙高は微笑んだ。

 

「避妊のことは、どうかご心配なさらず。私のほうで備えておりましたので」

「おまえも……服(の)んでいるのか」

「はい。ここ最近では、多くの艦娘が明石さんに処方してもらっています。実はひそかな評判になっておりまして。もちろん体調管理に関する利点からですが」

「周到なことだ」

 

 提督が唇を歪めるようにして笑った。そのどこか太い笑みに、妙高はまたも疼くものを感じた。たまらなくなってしまい、躰をすりつける。

 

「提督、あの──」

「ああ──勿体をつけてすまなかったな。もう、準備はできている」

 

 提督が腰を押しつけてきた。猛りきったものを太腿のあたりに感じ、妙高は息を呑んだ。

 組み敷かれた。

 シーツを剥ぎ、体勢を調えようとしている提督を妙高は見つめる。

 はしたなく、淫らな欲望がせり上がってきた。

 以前からの、誰にも告げたことのない欲望だった。

 普段ならば絶対に口にすることはできないのだが、すでに提督と幾度も交わったことからくる甘えが、妙高を大胆にさせた。

 

「提督、その、ひとつだけ、お願いが」

「お願い?」

「はい……その、体勢のこと、なのですが」

「体勢」

「……はい。あの、今度は、できたら、後ろから……」

「──ほう」

 

 提督が片眉を上げた。妙高は、羞恥で真っ赤になってしまう。

 

「──いいだろう」

 

 提督は笑みを浮かべながら頷き、顎をしゃくった。

 ぎこちなく背を向け、妙高は四つん這いになる。恥ずかしさで顔を上げられなかったが、期待と悦びのほうがまさっていた。

 上体を重ねて、耳もとで提督が囁いてくる。

 

「前からこうやって繋がることに興味があった──そうなんだな、妙高?」

「──はい」

 

 一糸まとわぬ姿で尻を掲げた、この上なくあられもない格好だ。取り繕うことなどできるはずもなく、妙高は正直に頷いた。

 欲望の炎が、躰の芯──下腹の奥で燃えさかっている。

 

「つまり、おまえは犯されたかったわけだ。獣のように、後ろから」

「はい──ずっと私は、提督に犯していただきたかったのです。獣のように──乱暴に、荒々しく……」

 

 ずいぶん前、ふとした瞬間に頭の中に浮かんでしまった妄想だった。

 全裸で四つん這いにされ、お尻の側から犯してもらう。卑猥な言葉を提督からかけられながら、熱くて硬いものを強引に挿し込まれる──。

 以来、自慰をするときには必ず、この妄想を想い浮かべていた。

 言葉ではっきりと肯定してしまうと、興奮がいや増していた。膣からいやらしい汁が──愛液が零れ出て、糸を引いて落ちていくのを知覚した。

 提督が男根の尖端をあてがい、くちゅくちゅと、わざとらしく音をたてて前庭を掻き混ぜてきた。

 

「聞こえるだろう」

「……はい」

「挿れもしないうちからこんなに濡らしてしまって……いやらしい女だ、おまえは」

「いやらしい女なのです、私は。ずっとずっと……このようにされることを望んでまいりました」

「いつも澄ました顔をしているくせに、芯から淫乱な女だ。──めちゃくちゃに犯して、犯しつくしてやりたくなる」

「ああ、提督……どうか、貴方の僕(しもべ)を、思うままに突いて、犯してくださいませ」

 

 陶然となって妙高は口走り、手を秘部へと差し伸べた。愛液にまみれた男根の尖端をさすり、みずからの入り口を指で押し広げて、誘(いざな)う。

 提督が一気に、最奥まで男根を押し込んできた。

 

「あああああっ!」

 

 突き抜けた悦楽に、思わず絶叫してしまった。自分でも驚くほどの声が出てしまっていた。

 小刻みに動作しながら、提督が口を寄せてくる。

 

「いい声で啼(な)くじゃないか。廊下にまで聞こえてるぞ」

 

 妙高は慌てて口を片手で覆おうとしたが、提督に遮られてしまい、叶わなかった。手綱のように両腕をとられ、強制的に躰を反りかえらされて突かれる。

 ひと突きされるごとに、ああっ、ああっ──と声が漏れた。向かい合って愛されていたときとは異なる箇所を異なる角度で、男根でごりごりと削るようにこすられていた。

 だらしなく開いてしまう口から、唾液が零れていくのを感じる。

 いいように突かれまくっているうちにバランスが崩れ、妙高はベッドの上にくずおれた。

 すっかりほつれてしまったシニヨンの編み込みを、提督が掴む。加減しない力で、妙高は枕に横顔を押しつけられた。

 提督のもう片方の手が、尻を鷲掴みにしている。

 愛液を飛び散らせながら、男根が激しく膣に出入りしている。

 幸せだ。

 力強い雄に犯されるという、女としての究極の幸福だ。

 長い時間、犯されていた。

 やがて提督が何言かを叫び、膣内で盛大に放出させた。

 みずからの子宮が粘つく精液で満たされていく様を妙高は夢想しながら、喜悦に満ちた溜息をゆっくりと吐き出す。

 

 

 ◇

 

 鏡を前に、提督が身支度をしていた。

 ホテルの1階にあるレストランで朝食を済ませたあと、妙高は自分の部屋の片付けを終え、荷物を持って提督の部屋にやってきたところだった。軍令部での会議に備えて提督が身支度をしている間、部屋の入り口近くの少し離れたところで、妙高は黙って控えていた。

 

「おまえにひとつ、訊いておきたいことがある」

 

 身支度をおおむね終えたあたりで、鏡を見つめたまま提督が言った。

 

「羽黒のことだが、実は例のリストの上位にいる。姉として何か気がついたことはあるか」

「──恋の病でございます」

 

 妙高が答えると、提督は目を閉じ、細かく数度頷いた。そうか──と、呟くように言って続けた。

 

「──戦績や行動記録からは、あまり大きな変化は窺えなかったが」

「ともに近くで暮らしている者には明白ではありましたが、かなりの重症です。早晩、艦娘としての務めも満足に果たせなくなってしまうのではないかと恐れ、この出張の前日に話をいたしました」

「……妹に叱られた、と言っていたな」

「はい。愚かにも説教めいたことを言ってしまい、羽黒に睨み返されたのです」

 

 貴女には、その恋を全うする覚悟があるのですか──妙高はそう、口走ってしまったのだった。それで羽黒が想いを振り払えるならそれでよし、本当に覚悟があるのならば、姉としてその恋の成就をどうにか手助けしてやることもできるかもしれない──そんな、都合のいいことを考えていた。

 

「眼に涙を溜めて、羽黒は言い返してきました。『姉さんこそ、覚悟はあるんですか。ずっと自分にすら嘘をついて生きてきて、これからも嘘をついて生きていくつもりなんですか』と。──正直、思いがけず手痛いところをつかれました」

 

 妙高は微笑み、目を閉じた。

 普段は大人しい妹の反撃に激しく動揺していたことが遠い過去のようで、今ならもう、微笑むことができるようになった。

 覚悟はできた。

 これから自分は、全うすることができるだろう。

 忠誠と──もうひとつの想いは、あえて口にする必要はない。かといって、自身にまで秘する気もない。

 ただ、行動するだけだ。自分の想いに忠実に──。

 目を開け、提督を見た。妙高が黙っている間、鏡に映った自身の姿を睨みつけていたようだった。

 

「──羽黒のことは、鎮守府に戻り次第、できるだけ早いうちに対処する」

「お願いいたします。もちろん協力は惜しみませんが、すべて、提督にお任せいたします」

 

 うん、と提督は鏡を向いたまま頷いた。何かひどく居心地の悪そうな、複雑そうな表情で頬を強張らせていた。

 昨夜はあれほど雄々しく交わっていたのに、まだまだ割りきれない思いがあるのだ──と妙高は思った。

 提督の懊悩に関しては、妙高自身にも小さからぬ責任の一端が生じている。

 励ましてあげたかった。

 提督に、歩み寄った。

 両手でその頬に触れて向きなおらせ、躰を伸ばして口づけする。

 長く、真心をこめて、唇を押しつけていた。

 そっと離れて、一礼する。

 

「──失礼いたしました」

 

 提督はしばらく、呆気にとられたような表情をしていた。やがて我に返った様子で苦笑し、首を振って言う。

 

「なあ、妙高」

「はい」

「おまえには、意外と可愛いところがある」

 

 提督は頬を掻いた。その顔がほんのわずか朱く色づいているのに、妙高は気づいた。

 嬉しさを押し隠しながら、とり澄ました顔をつくって背筋を伸ばす。

 

「お互いさま、でございます。それに、意外と──とは心外です」

 

 そう言って、心の中で微笑んでみせる。

 

 

 

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