羽黒は明らかに、身を固くしていた。
背後から抱えるように抱きしめ、提督は耳もとで尋ねる。
「緊張しているか」
顔を強張らせたまま、羽黒はこくこくと頷く。揺れた髪から爽やかに甘い香りが漂った。
提督は指で、羽黒の首筋から鎖骨の狭間までを撫でてみる。
陶磁のような肌のなめらかさと、冷たさだった。
胸もとまで指を下ろし、作務衣に似た患者衣の前合わせを割る。
羽黒は、下着を身に着けていない。海上で気絶した際に潮まみれになっていて、処置するついでに脱がせてしまったと明石と妙高から聞いていた。
「あっ、あのっ──あの」
羽黒が声を上げて、提督を振り仰ぐ。いかにも不安げな眼をしていた。
「どうした」
「あの、胸には……やっぱり、触るものなのでしょうか」
「──嫌なら、触らないようにしてもいい」
「いっ、いえ、そうじゃないんですけど、その──そういうものなのかな、って思ったので……」
「いきなり
「りょ、了解しました……!」
恥じ入った様子で、羽黒はうつむく。
提督は少し笑って、手をとった。ひんやりとした手だった。
胸もとに導いてやる。
「胸にも、自分で触れてみるか?」
「あ……」
「そのほうが、
練習──と羽黒は口の中で繰り返し、そして頷く。
「はい、やって、みます……私、
◆
自分は欲求不満なのだと思う──と羽黒は、提督にしがみついたまま言った。
あまりにも
「足柄姉さんにも、言われたんです──『きっと欲求不満なのよ』って。だから、どうにか自分で解消したほうがいいって」
「足柄……そういえば昨日は、ふたりで買い物に出かけたそうだな」
「はい、姉さんが私を誘ってくれたんです。それであの、いろいろ、アドバイスしてくれて……自分で触れて、すっきりさせればいいじゃないかって」
見上げてくる羽黒の瞳には、羞じらいの気配はほとんど感じられない。
提督は、いぶかしく思いつつ尋ねる。
「それで、足柄はその……『触れる』とかいうことの、具体的なやり方は教えてくれたのか?」
「いえ、それが、訊いてもはぐらかされてしまったんです。どこか、マッサージするみたいに、という感じだそうですけれど」
「その会話をおまえたちは、どこで?」
「えっと、その……レストランでした。ファミリーレストラン、っていうんですか? 家族連れが多く来るような」
提督は首を振った。それはさすがに、はぐらかした足柄の気持ちも理解できる。
「あのな……それはたしかにマッサージみたいなものではあるだろうが、触れる場所が、少々デリケートなところだ。──あまり人前でする行為じゃない」
羽黒はぽかんとした表情で、小首を傾げている。
ふと、唐突に思い当たった様子で目を見開いた。
息を呑んで赤面し、うつむく。
それまでベッド脇に座る提督の服の裾にしがみついていたのが、急に意識してしまったようで、手を離して微妙に距離をとる。
「それがどういう行為かということは、知ってるか?」
「い、いえ……その、あまり、知りません」
「自分で触れてみたことは?」
羽黒はうつむいたまま首を振る。
「あの……お風呂場で躰を洗うときには、ちゃんと、洗うように、してますけど」
ひどく言いにくそうに言った。
「……そうか」
気まずいのは提督も同様だった。
沈黙が降りる。
やがて羽黒が、意を決したように顔を上げた。
「あっ、あの、司令官は──」
「うん?」
羽黒は一度、生唾を呑むようにしてから続けて言った。
「──触り方を、ご存じなのでしょうか」
「触り方……?」
「はい。あの……博識でいらっしゃいますから」
博識──提督は何とも言えない心持ちになった。
首を振り、気を取り直して答える。
「その……なんだ、女が自分をどう触るかについては、あまり詳しくはない。あくまで個人的な経験にもとづく知識というだけなら……まあ、少しは」
「やっぱり、ご存じでいらっしゃるんですね」
「いや、まあ……」
「教えていただけませんか」
羽黒は耳朶まで
「教えるとは──その、触り方を、か」
「私……本当は、一度だけ、触ってみようとしたこと、あるんです。でも変な気分がして怖かったから……すぐにやめちゃって、だから──」
羽黒は身を乗り出すようにして言う。
「だから──教えていただきたいんです。私ひとりだと、きっと、しっかりできないと思うから……」
黒々とした大きな瞳が、提督を捉えていた。
◆
ふたりは、手を重ねるようにして胸を揉む。
重巡としての羽黒からは幼げな印象を受けることもあるが、肉体の手触りは完全に大人の女のものだ。
均整のとれた乳房は少女のような張りを残しながら、手に柔らかで心地いい。
指の腹で乳頭を転がして刺激する仕草を、提督は囁いて教え込む。
羽黒は素直に従った。
声を上げて悶えることはないが、こそばゆさに小さく身をよじり、うっすらと顔を紅潮させて羞じらう。
背徳的な欲望が、提督の中で湧きあがる。
無垢なものを
空いた手を伸ばし、羽黒の下穿きの紐をほどいた。
「司令官……」
提督を振り仰いだ羽黒が、
もの言いたげに、唇が薄く開いている。
呼吸が乱れていた。
提督は黙って、羽黒の
眼で尋ねてみると、羽黒はぼんやりと頷きを返してきた。
提督は無言のまま手を滑り込ませ、その場所に触れる。
「は、う……ん……」
羽黒の唇の間から、か細い声が漏れた。
秘所は小づくりで、他の部分の肌よりほんのわずかだけ温かく、裂け目は湿っていた。
かすかに粘るものが分泌されつつあるようだが、溢れるほどではない。
提督が思案していると、羽黒が不安げに見上げてきた。
微笑んで、接吻する。
小さく、舌を遣う。
羽黒の唇が控えめに反応を返してきたところで、離れた。
「司令官……?」
どこか物足りなそうに開いた唇へむかって、下穿きから引き抜いた指を提督は差し出してみせた。
羽黒は不思議そうに、可愛らしく小首を傾げていた。
しばらく提督の眼を見つめていたが、やがて意図を呑み込んだようだった。
ためらいがちに、口へと含む。
目を閉じ、口内でぎこちなく舌を遣ってくる。
ぎこちなくあっても丁寧で、丹念だった。
とろとろと指を舐められ、提督は激しく
「お前の指も──」
囁いて促す。
おずおずと差し出された手をとって、提督はその細い人差し指を咥えた。
しゃぶる。
吸いつくようにして、しゃぶりあげた。
女の肌の味と匂いが、鼻腔にまで満ちる。まぎれもない羽黒の味だ。
一心不乱に、指を舐め合った。
提督の股間には否応なく熱いものがみなぎり、はち切れんばかりになってしまう。
頃合いを見て羽黒を止めた。
唾液にまみれたお互いの指を絡めるようにして、秘所へと下ろした。
先ほどよりも潤いを増した秘裂に提督は触れ、羽黒にも触れさせるようにいざなった。
「はっ……んっ……」
甘く切なそうに羽黒は喘ぎ、身を縮こまらせる。
指の動きを教える必要は、なかった。
羽黒はみずから秘裂にそって、ゆっくりと指を動かすようになっていた。
提督もその動きに便乗し、薄い陰唇の片側をなぞり上げる。
分泌液が粘膜とこすれ合うかすかな音が、下穿きの中にとどまることなく漏れ出てくる。
羽黒は恥ずかしそうに身をよじり、顔を提督からそむけるようにした。それでも指を休めようとはしない。
提督は羽黒の耳もとに口を寄せる。
「どうだ? 気持ち、いいか」
息を呑んだ羽黒は、無言でひとつ大きく頷く。
「──怖くはないだろう」
答えはない。
返事の代わりにか、秘所で隣り合っている提督の指へ、自分の指を絡めてきた。
絡ませたまま、濡れた秘裂をなぞりつづける。
言葉よりも雄弁な返答だった。
提督は空いた手で、胸への愛撫を再開させた。その手を、羽黒が愛おしげに撫でてくる。
「司令官の手……あったかくて……」
やりきれなさの込められた溜息まじりに、つぶやく。
紅潮した耳朶に提督は唇を寄せ、舌先を這わせた。羽黒は敏感に反応して、震える。
様子を観察しつつ、包皮の上から陰核に触れてみた。
はっ──と羽黒が息を詰める。
ひときわ大きく、身を震わせた。
「感じたか?」
尋ねると、羽黒は提督を見上げてきた。二度、頷きを返してくる。
「……感じ、ました」
揺れる黒い瞳が、何かを問うように提督を捉えている。
提督は、指の動きを止めていた。
落ち着かなげに息をついた羽黒が、唇を小さく噛む。
焦れた様子で、下半身を動かしてきた。
「──どうした?」
提督は表情を消して尋ねる。羽黒は泣き顔になった。
「もっと……」
「もっと、何だ?」
「もっと、触って……」
秘所で、羽黒の細指が提督の指を
提督は首を振ってみせる。
「自分で触る練習だったはずだ」
「でも……そこは、やっぱり、怖いんです」
「怖いのに、触ってもらいたいのか」
こくりと、羽黒は頷く。
矛盾した要求をする自分に戸惑っているような表情だった。
理不尽な快楽に腹をたてているようにも見えた。
提督は羽黒の指をとり、誘導した。
耳孔へ息を吹き込むようにして、囁く。
「──さあ、自分で」
羽黒が息を詰める。
指を重ねて、提督はそっと後押しした。
「あ──」
触れる。
「あっ……んっ、あ……」
陰核に触れたまま、羽黒が痙攣気味に悶える。
提督は指を緩やかに震わせて、刺激の方法を伝えてみせる。
すぐに、羽黒は手管を呑み込んだ。
後押しするまでもなく、自分の好ましい力加減で陰核をこすりはじめる。
「あっ──あ──あ──だめ、これ、すごく……きもちいい……」
羽黒は、誰にともなく言葉を発した。
提督の胸に頬を押しつけるようにして、顔を反らす。荒くなった呼気が、提督の喉もとをくすぐってきた。
提督は羽黒を見下ろしつつ、生唾を幾度も呑み込んだ。
みずからの快楽を無心に追いはじめた女の姿は凄みのある美しさで、神聖さすら感じられた。
提督は自身の内側で燃えあがる欲望を抑え込み、徹底的に奉仕することに専念した。
愛液を
柔らかな乳房を優しく揉みつつ、ときにその先端をきつく摘まんで責める。
耳の外縁の軟骨に沿って、舌を這わせる。
想像力を刺激するために、暗喩の意図を込めて各部位への刺激を連動させた。
羽黒は、完全に夢中になっていた。
「はっ──ん……!」
不意に羽黒が身を固くし、きゅっと躰を縮めた。
達している。
目を閉じて躰を痙攣させながら、快楽に
提督は秘所から手を引き抜き、震える羽黒を抱きしめていた。
長く痙攣を続けたあとで、羽黒がゆっくりと脱力していく。
目を開けて、うつろな視線で提督を見上げてきた。
唇は震えるばかりで、言葉にならない。
提督は
◇
「──男のひとにも、欲求って、あるものなのでしょうか」
提督の腕の中で脱力しきった羽黒が、尋ねてくる。
乱れていた呼吸はだいぶ落ち着いたが、額にはうっすらと小さな汗の粒が浮いていた。
患者衣の前を開いてやると、可憐な桜色をした胸の先端が露わになったが、羽黒が気にとめる様子はなかった。
初めての絶頂の余韻のせいで気にしている余裕がない──とも思えた。
「そりゃ、あるさ。現に俺も我慢の限界だ」
提督は眼で、自身の股間の膨らみを示した。羽黒が目を見開いてそれを見やる。
手をとり、盛り上がったズボンの生地の上から触らせてみた。
「すごい……硬くて、熱い……」
さわさわとためらいがちに撫でつつ、羽黒は呼吸を震わせる。
その部分に釘づけの眼は怯えからか、あるいは好奇心からか、奇妙に揺らめいているように見えた。
「──なんだか、苦しそう」
「苦しいな。実際かなり窮屈だ」
「……あの……司令官、その、もしよろしければ……ですけど……」
ためらいがちに、羽黒が申し出る。
提督はさも意外そうな顔をつくって、先を促した。
羽黒は羞ずかしそうにうつむいて言った。
「私なんかにご遠慮なさらず、どうぞ──ご自分でお触りになられても大丈夫ですから……」
驚いて、提督は羽黒を見る。
羽黒は頬を朱くして、股間の膨らみを見つめている。
何かを期待するようなその眼を見て、提督は思い至った。
「なるほど──羽黒、おまえは」
「え──?」
「どうやってこれを男が処理するのか、見たいだけだな?」
面白がって、意地悪く言ってみる。
羽黒は動揺して、顔を伏せる。
提督は笑った。
「──そういうことなら、抜かせてもらうか。いい
服を脱いで、全裸になった。
半裸のままの羽黒には、腹這いの上体を預けるように密着させた。
抱き寄せ、やわらかい乳房と弾力ある乳首を胸板に押しつけさせる。
髪の、甘い匂いを嗅ぐ。
しっとりとした背中の肌のなめらかさを、手のひらで確かめる。
脚をすり合わせ、触れ合わせる。
羽黒の肉体のあらゆる要素を愉しみながら、じっくりとこすり上げていた。すぐに果ててしまわないように、力は加減している。
提督の行為を見つめているうちに感化されたのか、羽黒がもどかしげに腰を動かしていた。
遠慮することはない──と勧めてやった。
ひどく恥ずかしそうにしながらも、羽黒は指を遣いはじめた。
下穿きを膝下まで下ろしているので、剥き出しになった小ぶりの尻が可愛らしく左右に動いているのが見える。
秘めやかな愛液の音がしていた。
羽黒は鼻をかすかに鳴らしながら、愛おしそうに提督の首もとへすりつけてくる。
「すっかり
「はい……嵌まってしまいました」
提督の肌に鼻先を触れさせたまま、羽黒はぼんやりと答える。
柔軟な細い躰を抱き寄せ、提督は囁く。
「クリトリスがお気に入りなんだろう?」
「くり……?」
「皮に包まれた小さな突起のところだ。いちばん感じやすい。いま、そこを指で
「……弄ってます」
「好きなのか?」
「はい……好き、です……だい、好き」
「気持ちいいから、好きなんだろう?」
「は、い……そうなん、です……指でクリトリスいじるの、きもちよくて……だいすき……」
言葉で、羽黒は快感を高める。快感に溺れている自身を認識し、それが五感をいっそう鋭敏にしていく。
その様子を観察することで、提督は劣情を掻きたてられる。
素材としての羽黒の肉体は最高なのだが、陰茎をひとりでこすり上げているだけなのはもどかしく、
握った陰茎を、羽黒の太腿にこすりつけてみた。
「あっ──」
羽黒が、躰をびくんと跳ね上げる。驚いて視線を下げ、見つめる。
見られていることを意識しながら、提督は亀頭部分をふたたび、ゆっくりとこすりつけた。
すべやかな太腿の質感を、もっとも敏感な部分で確かめる。
先走って尖端に滲んでいる透明な液を、わざとらしくなすりつけてやった。
幾度も幾度も繰り返し、これみよがしにこすりつける。
「ああ……すごい……熱いのが……」
何かに取り憑かれたように羽黒は言った。
「わたしも……そういうふうに、したい……」
「なら、遠慮するな」
「……失礼、します」
躰の角度をやや横向きに変え、抱きつくように密着してくる。
提督の腰骨の張り出したあたりを股で挟んで、秘所をこすりつけてきた。
遠慮がちな動きが、徐々に大胆になっていく。
下半身を波うたせるようにして、提督の肌で陰核を刺激している。
パイプベッドが揺れて、
「ねえ、きもちいい……これ、すごく……きもちいいの……」
羽黒は眉根を寄せた切実な表情で、提督を見つめてきた。
見つめ返す。
愛液に濡れて光る二本の指を、羽黒が提督の前に示してきた。
口に含んでやった。
味わう。
舐めて、細指を味わう。
舐めまわしつつ、下半身では陰茎を太腿にこすりつけていた。
羽黒が眼に涙を溜めていた。
羽黒の指を挟んだまま、舌を絡ませ合う。
唾液が混じり合って、提督の口の端から
お互いの腰つきが、意図せず性交時の動きのようになっていた。
「──だめ、だめ──わたし、もう──」
唇を離して、羽黒が首を振りながら口走った。
きつく提督を抱きしめ、痙攣する。
提督も加減せず陰茎をこすり上げて、果てた。
羽黒の躰を大きく越えるほどに勢いよく、最初の
どろどろに粘った精液が吐き出され、羽黒の白い尻と太腿を汚していく。
最後の一滴まで絞り出した提督は息をつき、羽黒の腿にこすりつけて尖端を
「司令官、さん……」
羽黒が眼を潤ませたまま、提督を見ていた。
顔を寄せ、提督の頬に接吻してくる。
接吻したあとで自分のその行為に驚いたのか、口もとを慌てて押さえた。羞ずかしそうに両手で顔を隠してしまう。
提督は笑って言った。
「気持ちよかったか、羽黒」
「はい、すごく……でもちょっと、なんだか悔しい気も、して」
「悔しい?」
羽黒は頷く。
「もっと……ずっとしてたかったのに、すぐに私が──散っちゃったから」
散るとは、絶頂に達するという意味か──提督は羽黒の表現に新鮮な印象を受けた。
頷いて言う。
「やっぱり中で極めないと、だな」
「なか……?」
「ここで、だよ」
提督は羽黒の
羽黒が見つめてきた。
もはや明白になった期待と好奇心で、黒い瞳が震えている。
◇
提督は脚を伸ばした姿勢で座り、羽黒を跨がらせた。
小づくりな外観と同様に、羽黒は内部もまた
柔軟でよく湿った膣壁が、茎部をきつく包み込んでいた。
締めつけは絶妙で、挿入している側への快の度合いは強い。
「痛いか」
提督が尋ねると、羽黒は首を振って否定した。
しかし眉根をきつく寄せた表情は、いかにも苦しげなものだ。
提督は思案する。
このまま動作して闇雲に突けば、苦痛を与えるだけだろう。これまでの経験上、最奥それ自体は性感帯ではないだろうという予感もある。
提督は、自身の背後に両手をついた。
ゆっくりと上体を後傾させていく。
肩にしがみついている羽黒の様子を観察しながら、収まりのよさそうな角度を探っていた。
不意に羽黒が、あ──と小さな声を上げた。
「どうした」
「あ……あの、いま、その……クリトリスが、司令官さんの躰にこすれて……」
「気持ちよかったのか」
羽黒は含羞に満ちた表情を浮かべながら、頷く。
たしかに提督の恥骨のあたりに、陰核が触れていた。
「──本当に羽黒は、クリが好きだな」
「恥ずかしい……です。はしたなくて……」
「いいんだ。気持ちよくなってる羽黒は、可愛いからな」
提督が微笑んで言うと、羽黒は耳の先まで朱く染めた。
「可愛いだなんて……そんな、私なんか」
「可愛いさ。そうやって恥ずかしがりながらも、腰をしっかり動かしてクリをこすりつけてくるところが、なおも可愛い」
ほんのわずかだけ圧力を変化させる程度にすぎないが、羽黒の腰は密着したまま前後に振れていた。
羽黒は唇を尖らせる。
「……司令官さんの、いじわる」
「嫌われたな」
「ううん……好き……好きだったんです──ずっと、ずっと前から」
「──キスしてくれないか、羽黒」
「はい」
羽黒が嬉しそうに、柔らかな唇を重ねてくる。
小さな音をたてつつ、優しげな感触の接吻が繰り返される。
押しつけまいとする気遣いが、健気だった。
提督は胸を痺れさせていた。
「羽黒」
「はい」
「おまえは本当に──可愛い」
「やだ……司令官さん、だからそんな……」
自分の頬を両手で押さえて、羽黒ははにかむ。
顔では照れながらも、下半身は細かく動作を続けている。無意識の動作だ。
内側も貪欲に、蠢いている。
どうやら羽黒は、最適な角度を見つけたようだった。
動作の意識が陰核から膣内へと移っているのは、提督にもはっきりとわかるようになっていた。
「ああ……これは……」
提督は予感し、呻く。
思いがけず強度を増してきた羽黒の責めに、早くも
きつく複雑に絡んでこようとする膣壁の快に、抗うことができない。
余裕を失った提督とは対照的に、羽黒は息を乱しながらも不思議そうに首を傾げている。
提督は心細くなり、再度、接吻をせがんで唇をつき出した。
そのわずかな仕草だけで、羽黒は意図を理解する。
寄せてきた唇を、提督は乱暴に貪った。
舌を押し込み、絡める。
零れ落ちてくる唾液を吸って、呑み下す。
甘美な味に提督がうっとりとしたその瞬間、下腹部の奥から激しく衝き上げてくるものがあった。
「うっ……!」
抑えきれず、精液をほとばしらせてしまっていた。
「んっ──あ……あぁ……」
唇を合わせたまま、羽黒が切なげに息を吐く。膣で精を受ける初めての感覚に、驚いていた。
提督は口の端から唾液を零しながら、精液で無垢な内側を
◇
数週間前から羽黒も低用量ピルを
しかし、自身をまったく制御できなかったことに対しては
幸いにして、ふたたび兆すのにはそう長くかからなかった。
羽黒は陰茎のめまぐるしい変化に無邪気に驚き、愛おしげな視線を向ける。
絶頂に達することはできなくても、繋がることへの興味は膨れあがっているようだった。
もう一度──と同じ姿勢をとろうとする羽黒を、提督は押しとどめた。
「せっかくだから、別のを試してみよう」
戸惑う羽黒を後ろ向きにさせた。
お互い膝立ちのまま密着し、後背位と背面座位を
羽黒は不安げに提督を振り返った。
「あの──司令官さん」
「どうした」
「これって……お顔が見えないから、その」
「寂しいか」
こくりと、羽黒は頷いた。
提督は羽黒に覆いかぶさるように顔を近づけ、顎を手で持ち上げてやった。
「でも、こうやってキスすることはできる」
重ねた。
「んっ……ん……うん……」
羽黒は少し苦しげではあったが、積極的に唇を開いてくる。
すっかり慣れた様子で、舌を絡ませ合った。
提督が唾を送り込むと、羽黒は確かに喉を鳴らして呑んだ。
羽黒の肩から力が抜けていく。
脱力しきったところを見計らって、提督は陰茎の角度を手で調え、侵入した。
「はっ……んん……!」
羽黒が全身を緊張させる。
そこはよく濡れていて、押し込むのは最初よりもずっと容易だった。
提督は前方の膣壁へ裏筋を押しつけるようにして、ぐいと突き上げる。柔軟な粘膜を陰茎で割って進む感触が、例えようもないほどの快感だ。
眉根を寄せた羽黒が、甘く切なげな声を上げる。
「ん……! あっ、あ……これ……い、い……」
「こっち側からのも、悪くないだろう?」
「う、ん……ちがうとこ……あたって……」
語尾は曖昧に消え入り、言葉のかたちをとらない。
陰茎と恥骨で内外から挟むように、膣壁の敏感な部分をこすり上げる。裏筋を遣っているので陰茎に伝わる快感は強いが、射精を繰り返した今でなら長持ちさせられる。
提督は羽黒の首筋から耳もとまでを、じっくりと舐め上げた。かすかな汗の塩味に、激しく興奮を掻きたてられる。
「この体勢のほうが、自由に手も遣えるしな。ほら──」
左手の指で、乳首をくすぐるように刺激する。羽黒はあっさりと乱れて、悶えた。
「あ……あっあっ……そ、れ……かんじちゃう、から……」
右手は脚へと下げていき、内腿から鼠径部にかけてをゆっくりとさする。これは当然、焦らしの意図を込めたものだ。
狙ったとおり、羽黒はもどかしげに躰を揺すった。
「や、だ……ちゃんと、さわって……」
「触ってるだろう」
「ちがうの……そうじゃなくて」
「どこを触ってほしいのか、教えてくれないとな」
提督は笑い含みに言った。
羽黒は腕を後方に上げて、提督の後頭部に手をまわしてきた。
引き寄せられた耳もとで、羽黒がうったえてくる。
「クリトリス……」
「クリトリスを、どうしてほしい」
「……さわって……司令官さんに、クリトリス……いっぱい、さわってほしいの……」
「ほんとうに──好きなんだな」
「うん……すき……司令官さんに、クリトリスさわられるの……すき……だから、おねがい……もっと……きもちよく、して」
その声色と息遣いの妖艶さに、提督は激しく昂ぶる。
興奮で息を荒らげながら、羽黒の核心へと指を這わせた。
「はっ……あっ、あっあっあ……!」
敏感な反応を示して、羽黒が声を上げて喘ぐ。
律動に合わせ、提督はその部分に集中して指を遣う。
押しつけてこすり上げ、ときに
羽黒が手を重ねてきた。
繋がったまま、腰をくねらせる。
もっと──と仕草だけで要求してくる。
提督は懸命に応えた。
応えつつ、陰茎を秘裂の奥へと思いっきり打ちつける。
鼠径部とぶつかる尻の柔らかさがたまらない。
不意に羽黒が振り向く。困惑の眼差しを向けてきた。
「司令官、さん……わたし……なんだか……」
羽黒の躰に、変化が見られはじめていた。
ほんのうっすらとではあるが、紅潮が全身に拡がっている。
気がついてみると、ずっとひんやりとしていた肌までもが、ほんのりと温かくなっているように感じられた。
自身の変化を自覚して戸惑っているのか、羽黒は泣き出しそうに顔を歪めていた。
「おかしいの……司令官さん……わたしの、からだ」
「どこが、どうおかしい」
「なかも、そとも……ぜんぶ……」
腰を自分で動かしながらも、羽黒は上体を崩しかけている。提督は左手で抱えるようにして、胴を支えてやった。
「……きもちいいのに、くるしくて……あったかくて……おかしく、なりそう」
「散りそうか」
提督は突き上げながら、問う。
羽黒は首を振って、髪を乱した。
「わかんない……わかんないの……なにかが、わたしのなかから、きちゃいそうで──」
「咲くんだ、羽黒」
確信をもって、提督は告げる。自身の限界の近さも、感じていた。
羽黒は必死に振り向いて、提督を見る。
眼から涙が、零れ落ちていた。
はっきりと頷く。
「咲く──咲きます──司令官さん、わたしを咲かせて──」
羽黒が震える。
全身を震わせている。
震えながら、腰を動かしている。
膣内までもが、震えていた。
すべてが震えつづけている。
提督は、
「羽黒──」
果てる直前に、かろうじて名前を呼んだ。
すぐに脳裏が白くなって、何も考えられなくなっていった。
◇
一夜明けて、気持ちよく晴れていた。
医務室から出て、戦況に異常がないことを司令室に寄って確認し、私室に戻ってから
夜の間には多少の雨風があったようだが、起き出したあとで榛名からそのことを聞くまで、提督はまったく気づいていなかった。
眠気の残る眼をこすっていると、妙高がくすくすと抑えた笑いを漏らした。
「──お疲れさまでございました」
口もとを押さえつつ、含みのある視線で見つめてくる。
提督はばつが悪くなって、頭を掻いた。
意味もなく周囲を見渡してみる。
駆逐寮の一角、昨日神風と面会した生活相談室だ。
相変わらず龍驤は不在だが、今日は代理として妙高が任務の合間に詰めることになっていた。
提督がわざわざ足を運んだのには、表向きは状況の伝達のため、実際は別の理由があった。
「──で、どうだ」
尋ねると、妙高は目礼するように目を閉じて頷く。
「久しぶりに、晴れやかな顔つきでした。まるで今日の陽気のような」
「それは、なによりだが──」
提督は口ごもり、咳払いをして続ける。
「──その、なんだ。おまえと羽黒との間に
「あろうはずもございません。どうかされたのですか?」
「いや……この鎮守府の事情については、おまえから羽黒に話したか」
妙高は微笑し、首を振った。
「事情など説明されずとも、羽黒は察する子です。鎮守府の事情も、提督のお心遣いも。それに私の──」
口をつぐんで、妙高は提督を見つめる。
「私の、何だ?」
「いえ。──とにかく、この件に関しましては、那智と足柄、それにほかの艦娘たちにも当面は秘密にしておこうと、そういうことになりました。羽黒も納得しております」
「──姉妹の秘密、か」
「姉妹の秘密、でございますね。私も少しうきうきしております」
「うきうき……ねえ」
「あの子と姉妹らしい会話ができたのは、久しぶりのことでございましたので」
そう言って、妙高は丁寧に一礼してくる。
提督には答えようもなく、黙って首を振った。
顔を上げた妙高が微笑む。
「もしよろしければ、こちらに来られたついでに羽黒の顔をご覧になっていかれては? 久しぶりの『授業』の指導で『教室』におりますが、もうすぐ終わるところです」
「そういえば、ずっと休んでいたらしいな」
「ここ数ヶ月、海の仕事にばかりこだわっておりました。それが今朝、あの子のほうから『授業』に戻りたいと。──どうかぜひ、あの晴れやかな顔をご覧になっていってくださいませ」
提督は、駆逐寮の廊下を歩く。
『授業』がおこなわれている『教室』は、生活相談室からは逆側の廊下の先にある。
『授業』とは一般常識や義務教育レベルの学力が身についていない艦娘のためにおこなわれている勉強会であり、その会場が『教室』である。
対象は主に駆逐艦や海防艦で、指導役は待機中で手の空いている重巡や軽巡が主体となっていた。
明確な時間割はないが、任務の空いた艦娘たちの予定を責任者の妙高が調整することで成立している。
どうやら、ちょうど終了のタイミングだったようだ。
『教室』からぱらぱらと出てきた小型艦たちの一団が、提督の方向に向かって歩いてくる。
それぞれと適当な挨拶を交わして、提督はすれ違う。
一団の最後尾に、今朝がた
歩みを止めず、すれ違いざま額に右手をつけて敬礼してくる。
礼を言うように小さく頷いたのが、提督にはわかった。
無帽ゆえに軍紀からは外れているが、提督も小さく右手を挙げて敬礼を返した。
羽黒は『教室』で、ひとり黒板を消していた。
廊下の窓から、提督はその後ろ姿を眺める。
入って声をかけるべきか、迷った。
ふと、黒板消しを手に持ったままの羽黒が動きを止めた。
振り向く。
提督と眼が合って、驚いた表情を見せる。
一瞬ののち、笑った。
花の咲いたような、温かな笑顔だった。