幼女を愛でつつ敵をくっころしてエロい事をするだけの話 作:ちびっこロリ将軍
戦に敗れ、敵軍の将である劉表を目の前にして、周瑜はある言葉が浮かんだ。
慰み者
戦場ではごくごく当たり前に起こる事で、周瑜はその現場を何度も目撃している。しかし、それが自分の身に降りかかるものだとは思っていなかった。そんな未来を想像する事すらも嫌なほど悲惨な将来であるからだ。
賊に襲われた郷里の女は犯される。当たり前の事。そして日常においてもそんな時は当たり前のように来る。凶作で食料が無ければ、仕事が無くなれば、嫁ぎ遅れれば、夫を亡くせば……好きでもない男に抱かれるなんて事は日常に溢れている事だ。
それでも周瑜にとっては遠い世界の事だった。
彼女は大豪族の一族で荘園も経営している。城と見間違えるかのような私宅に、軍隊のような私兵が何十人も居て自分の身を護り、緊急時には農奴もそれに加わった。軍の指揮をしている時も傍らには武力に優れた友と精鋭が居て、自分を守っていた。
だが、もう居ない。周瑜を守るものは何もない。
「あっ……」
小さな悲鳴が漏れ、肩は震え、目には涙があふれ出しそうになる。
周瑜はかつて聞いた事があった。捕虜となり、飽きられるまで嬲られ、その後、客を選ばず、高価なものも欲しがらなくなるという理由で両目を潰され、「盲妹」と呼ばれる娼婦にされた話。何人もの男に犯され、心が壊れてしまった女など、多くの非道な行為の犠牲になった女性の話を。
自分がその一つに加わると想像をした瞬間、感情を抑えられなくなったのだ。
(私は何をやっているんだ。平静を装え、弱みなど見せても何もならない。相手を喜ばせるだけだ。だから止まれ。震えも涙も、何もかも)
先の戦いで周瑜の心は折れていた。
長年培った自信も誇りも全てを壊され、自慢であった智謀は目の前の男に簡単に破られ、勝てる気どころか、戦おうという気力すらも起きないほどに叩きのめされた。
かつての周瑜の姿はない。劉表の目の前にいる女の姿は、親に怒られそうになっている子供を思わせるほど弱弱しい。
劉表が少しずつ、近づいてくる。体を竦ませ、手を胸の前に置き、身を守ろうとすると、己の心臓がドクンドクンと大きな音をたてるのが分かる。咄嗟に逃げようとすると、片足が動かず、なぜ立てないのかという事も忘れて悪戦苦闘していた。
周瑜は、劉表が目の前に立つ事を感じると、迫りくる恐怖に耐えきれなくなり、目を閉ざした。
永遠にも感じられる時が過ぎたかと思うと、手に温かみがあるのを感じた。
「すまない。怖がらせてしまったか」
目を開けた先には劉表がおり、自分の手を握っている。よく見ると、顔には申し訳なさが滲み出ており、困っているようにも感じられた。
「本当に、君を害す気はないんだ。もし、私の仲間が捕まり、捕虜の交換をしたいという申し出があるようなら、君を返すつもりだ。ただ、今は出すことはできない。必要なものがあるなら言ってくれればなるべく用意する」
だから、泣かないでくれ。と懇願するような声を聞いて、周瑜はこの時、ようやく我にかえった。
「ほ、本当か……」
「ああ、本当だ」
「……拷問はしないのか?」
「するつもりはないよ」
「犯されないのか?」
「ああ、無理矢理女性を犯すなんて事はしない」
「嬲り者にされたりは?」
「もちろんしない。約束する」
そんな問答をなんどか繰り返した。中には眼球を抉らないか? や、足の腱を切ったりしないのか? などの劉表が心中で引くような質問をしていた周瑜だったが、全て否定された事で安堵したのか、劉表の胸元で涙を流し、そのまま眠りについた。
▽▲▽▲
「過去最低最悪の醜態を晒した……」
一人、部屋で目を覚ました周瑜は手で目を覆いながら呟いた。
そう、部屋だ。
扉は鉄製で、覗き穴と下に人が出られないような食事を渡す穴がある。しかし、それ以外は普通のものだった。寝台や椅子も机もあるような部屋だ。
(どうにか逃げられないか……)
先ほどの醜態を思い出したが、それを直ぐに頭から離し、脱獄ができないか検討する。
しかし、それはある問題がある事からムダだと悟った。
(この足では無理か……)
周瑜は包帯を巻いた足を見る。矢が貫通した時、膝から下に力がまったく入らなくなった事を思い出す。そして、今もなお、変わらない。そして体にも幾つもの深い傷があった。
(あの状況からよく生きていたものだ)
己の悪運に辟易としつつも、安堵のため息をつく。予測していた拷問の類は無い……とは言い切れなかったが、心の平静を保つことができた。
(雪蓮は逃げ切ったはずだ。その後、呉の軍はどうなった? 軍の再編をし、袁術からの増援と長沙からの挟み撃ちにすれば、まだ立て直せる。しかし、出来ているのか? 感情のままに動いていないだろうか?)
そんな思考を巡らせていると扉の方から物音がした。視線を向けると覗き穴から目が覗いていた。
「……食事です。食器は次の食事の時に回収します」
その声は幼さを感じさせた。覗き穴から見える顔も幼い事から少女と呼ばれるような年齢だろうと憶測をつける。それならば……と声をかける。
「ありがとう。すまない、ここは樊城か?」
(樊城か襄陽かわかれば、どんな策を取っているのか、状況が大体分かる)
孫策の現状は知りたいが、まず聞きやすい、答えやすい質問からしようと考えた周瑜だったが、少女のまるで路傍の石を見つめるかのように無関心な視線に気が付く。
「……そんな事を気にしてどうするのですか?」
「自分がどうなっているのか知りたいのは当然だと思うが」
「もう、どっちに居るにしろ貴方には全然関係ないのにですか?」
「……っ」
少女は心底不思議そうに答え、周瑜は言葉に詰まった。少女が自分の思惑に気が付いた上で発言している事に驚いたのもそうだが、お前が自軍の様子を探り、知ったところで関係ないのになぜ知りたがるのか? と言われ、その言葉に対して反論が出来なかったのだ。
言葉につまる様子を見て、少女は黙って去った。くだらない事に時間を使わされたとばかりに吐いた溜息が周瑜の心を抉った。
▽▲▽▲
それから三日が過ぎ、七日が過ぎ、十日が過ぎ、二十日、三十日と月日が過ぎた。
退屈と無関心は人を殺す
貴方が必要だ。と言われずに生きていく事ができる人間は居ない。なぜなら自尊心、承認欲求は食欲と同じくらい人が人として生きていくのに必要な事だからだ。食事が無ければ肉体が死に、承認欲求が満たされなければ心が死ぬ。
これまで周瑜は周りから必要とされていた。孫策や黄蓋は自分が居なければ駄目だった。だからいつも頼りにされていた。それが周瑜を満たしていた。
しかし、今、周瑜は誰からも必要とされていない。誰からも頼りにされていない。誰も周瑜に興味がない。存在そのものが認識されているのかが分からない。
一日三食、食べて寝るだけの生活は周瑜にとって苦痛でしかなかった。
食事が足りないわけではない。寝具の質が悪くて眠れないわけでもない。殴られたわけでも、罵倒を投げかけられたわけでもない。ただ、興味を持たれずに過ごしているというだけの現状が周瑜の心を蝕んだ。
ただ、生きているだけ。それがとてつもなく苦痛だった。なぜ生きているのか分からなくなるくらいに。
周瑜は毎日悪夢を見る。
それは孫策が「ごめん」と言い残して自分を見捨てる瞬間。
寝るたびにその事を思い出してしまう。それを、自分がそれを求めたはずなのに、そのことを思い出すだけで、動悸が激しくなり、息がまともに出来なくなるほどだった。
人生で最も苦しかった瞬間をずっと考えなければいけない日々は周瑜を蝕んだ。
苦しい。苦しい。苦しい。苦しい。
まるで海の中を藻掻くような苦しさの中、少しずつ、自分の心が死んでいくのを感じる。だが、それに手を差し伸べる者は居ない。なぜなら、手を離したのは自分の最愛の友なのだから。手を離せと言ったのは自分だから。
海の底へただ落ちていく。助けを呼ぶ事も出来ず、手を差し伸べる者も居ない周瑜はただ、落ちていく自分を感じる事しか出来なかった。
そんな風に日々を過ごしていた。
精神的な死が迫ってきた時だった。劉表が訪ねてきたのは。
▽▲▽▲
樊城から住民を逃がした後、樊城を棄て、襄陽の城への撤退を完了した劉表は周瑜の所を訪ねていた。
「久しぶり。なにか不自由はしていないか?」
そんな言葉を発した劉表の姿は、周瑜から見てかつてのものよりも痩せ細って見えたが、前よりも表情が明るく見える。
かつての周瑜ならば表情から、孫策が上手くいっていないであろうことを予測しただろうが、それすらも考えられなくなる。ただ思ったままの事を伝えた。
「……特に不自由はしていない」
嘘は言っていない。差し入れられた本はまったくと言っていいほど頭に入らず、幾らあっても意味がなく。食事は与えられた分で十分過ぎる。どんなものを与えられても今の周瑜にとって意味はない。欲しいものは無い。故にものに不自由はしていない。
「そうか、病気などはしていないか?」
「……別になんともないな」
肉体的には問題は無い。ただ、精神的に弱っている為、なにかをやろうという気が湧かないだけだ。現代であれば、精神の病気と診察されるだろうがこの時代にはない。
「……」
「……」
両者に沈黙が流れ、劉表は沈黙に耐えきれなくなったのか、「じゃあ、また来る」と言い残して去ろうとした。
「ま、待ってくれ!」
劉表が去ろうと背中を見せると、周瑜はまるで懇願するように必死で叫んだ。先ほどの無表情が嘘のように、感情を露わにした。それは周瑜本人が一番驚くほどに。
「なにかあるのか?」
劉表に聞かれるも、勝手に口が開き叫んだ事で、特に用事があったわけではない。周瑜は「やはり、なんでもない」と言って話を切る事を考えるが、それをするとなにかが壊れるような予感がして、言い出せない。
話題に困った周瑜は、劉表の腕の包帯を指差した。
「ぁ……そ、その右腕だ。どうしたのだ? 防衛戦ならつかない傷だろう。それが気になったのだ」
「ああ、これか?」
劉表は周瑜に聞かれた事を話す。
兵士を統率する経験の乏しさを補う為、劉表は、司馬穰苴の司馬法を参考に行動をしていた。
兵とともに行動し、兵士と同じ宿舎で寝起きし、兵士と同じ食事を取り、井戸や竈の管理に自ら見回り、怪我をした兵士や病気に罹った兵士を見舞って薬と励ましの言葉を与え、強兵のみではなく弱い兵士にも優しく接する。
それによって城内の士気が上がったのは良かったのだが、暗殺されそうになったというものだ。
周瑜は呆れた。
隠密の達人である周泰が敵側に居る最中にそんなことをしていては、相手に対して、暗殺してください、とばかりに隙を晒しているも同然だ。
周瑜からすれば、周泰はそんな事をしている人物に対して暗殺をしろと命じても、首を縦に振らないだろう事は分かる。それはあくまでも身内だからであり、劉表側からは分からない。
周瑜は本来の世話焼き癖が出たのか。君主の身になにかあればどうなるのかなどについて、説教をするかのように次々と危険性について話をしていく。本来であれば、そういった隙は正すべきではないのにもかかわらず。
かつて、孫策が常に最前線で戦っていた時を思い出しながら
「……とも、司馬穰苴は言っている。大将がむやみやたらに出て、その身を危険に晒して、もし死ぬような事があれば士気どころではない」
その言葉には重みがあった。先の戦いで、ある程度の危機ならば孫策は踏みつぶすだけの武力を持つという過信によって敗北した経験故の重みが。
その言葉に対して劉表は頭を下げた。
「その通りだな。大将自らの行いが利となる場合もあるが、その利と同じかそれ以上に害もある。このまま行けば、上手くいった事は次も上手くいくからと同じ事を繰り返して、いつか手痛い失敗をしただろう。ありがとう。忠告感謝する」
頭を下げる劉表。その姿を見て、周瑜は自分が喜んでいると感じた。先ほどまで、何もかもが心に響かなかったのに、「ありがとう」という言葉を聞いた瞬間、心が温かくなっていった。
「しかし、防衛戦は士気こそが命と聞く。士気を上げるにはどうしたものか……」
経験の少なさからか、兵士の掌握に苦労している劉表。これに対して忠告すべきではない。なぜなら劉表が強くなればなるほど、指示が的確であればあるほど、友が苦戦することになるし、友が負ければ自分は囚われの身のままだからだ。
しかし、周瑜はそんな事を考えるほどの余裕がなかった。今、あるのは、先ほどの暖かさが欲しいという思いだけだった。
「いくつか例を挙げるとだな……」
周瑜は、自然と劉表の相談事に対して助言をするようになっていった。
▽▲▽▲
助言を行うようになってから、ひと月が経った。
劉表が訪ねると周瑜は相談に乗るようになり、いつしか雑談を交えるようになった。かつての敵という関係が無かったように自然と。
「はやく、劉表は来ないだろうか?」
いつしか周瑜は劉表が来る事を求める様になっていく。
劉表は三日ほどの間隔で周瑜を訪ねてくる。その時が唯一、周瑜が苦痛から解放される日だった。外界から隔離された空間に居て、ただ退屈な時間を過ごす周瑜にとって、ただ、話す事が楽しかった。劉表の話を聞き、頼りにされていると自覚できると嬉しさが体中を駆け巡る。
劉表が来る日になると、髪を櫛で梳かし、身なりを整え、そわそわと来る瞬間を待ちわびる。
まるで恋人を待つ乙女のように。
「周瑜、開けるが良いか?」
その声を聞くとともに周瑜はすぐさま了解の返事をした。この三日待ちわびたのだ。断る理由がない。
「ああ、構わない」
返事とともに扉を開き、入ってくる劉表の姿を見て頬が緩むのを感じる。
「今日は、どうしたのだ? 政務についての相談事があるのか?」
自分より遥か上の智謀を持つ人物に頼りにされている。それが周瑜にとって最も嬉しい事。雑談も楽しかったが、相談に答える事が最も楽しく、嬉しかった。
周瑜は何でも相談してくれと話題をふる。
もっと褒められたい。もっと頼りにされたい。もっと一緒に居たい。
敵に塩を送るような行為すらも疑問に思えないほど、周瑜の思いは強くなっていく。
早く相談事をしてくれと待っていた周瑜だったが、劉表の表情がいつもと違うと気が付く。そして、言い難そうにしながらも劉表は言葉を発した。
「孫策が樊城から撤退した」
その言葉を聞いた周瑜は、夢から覚めたかのように現実へと引き戻された。
▽▲▽▲
孫策の撤退の知らせを聞いた周瑜は「一人にしてくれ」と言って劉表を遠ざけ、一人、寝台の上で涙を流していた。交渉も無く、ただ撤退していったという話を聞くと、先ほどまでの高揚が嘘のように醒めていった。
なにも考える気になれず、なにもする気にもなれなかった周瑜は、死んだように眠った。
夢の中で周瑜は久しぶりに自分に話しかける誰かの影を見た。その影の声はなぜか心に沁み込んでいく。否定しても否定しても無駄で、目覚めると最悪の気分になる夢。
『これでわかっただろう? 孫策はお前を棄てたんだ』
「違う! 私が自分で言ったからだ!」
孫策が自分を棄てたという事を認めさせようとする影と否定する自分を延々と続けさせられる。最低最悪の夢だった。
『自分で言い出したとしても棄てた事には変わらないだろう? 孫策はお前よりも自分の栄達を選んだんだ』
「王は大局的な見地からものを考えなければならない。だから、一見、非情とも思える決断をすることもある。……だから仕方のない事だ」
『話題を変えるな。つまり、孫策はお前よりもそっちを優先したんだろう? 10年以上も付き合ってきて、散々尽くして来たお前を棄てたんだ』
「違う! あれはしょうがないことなんだ」
『いい加減素直になれ。孫策はお前よりも天下を取ったんだ。お前は天下と天秤にかけられてそれよりも軽かったんだ。いや、違うな。天秤にすらかけられてない』
「えっ?」
『だってそうだろう? でなければ、捕虜の交換だったり、死体の返却だったりするはずだ。その手間すらも惜しんだって事だろ? 袁術に頼ればそれくらいだったら出来るはずだ。違うか?』
「そ、それは……」
『袁術に頭を下げる事と天秤にかけても軽い程度の存在だったってことだよ。お前は』
「違う! 違う! 違う!」
『違わないさ。正確にはお前の価値が下がったから、天秤の傾きが変わっただけに過ぎない。周家の当主で名声高い軍師を欲していただけで、名声は地に落ちて共にあるだけで悪名になるような存在は要らないって判断されたってことだ。お前もそう思っているんじゃないか?』
「そんな事思ってなどいない!」
『嘘だな』
「……なぜ貴様に確信できる」
睨み付ける周瑜に影はため息をつき、少しずつ影が露わになっていく。
「えっ?」
そこには自分が居た。自分の姿があった。
『私はお前だ。今までの問答は自問自答に過ぎない。私が言っている事はお前が思っている事だ。お前は心の底では孫策が棄てたと思っている。ただ認める事が出来なかっただけだ』
「あっ……」
『認めろ。もうお前は必要とされていないと』
目を覚ました周瑜は大粒の涙を流していた。
▽▲▽▲
孫策の撤退の報告を聞いてから周瑜がまともに食事を取る事もしなくなったと聞いて、劉表は見舞いに訪れていた。
「大丈夫か? ……周瑜」
「……別になんともない。ただ食欲が無いだけだ」
目の下には隈が出来ており、さらに散々泣いたせいか目は充血しきっていた。
「なんともない。という顔をしていないぞ」
「なんともないさ。なにも状況は変わっていない」
「無理をするな。自分で言うのもなんだが、君は自分の策が原因で孫策を窮地に追いやってしまった事をずっと悔やんでいた。そして昨日、撤退することになった事を聞き、後悔の気持ちが大きくなり過ぎて溢れてしまったのではないか?」
(ああ、劉表からは私はこう見えていたのか……)
劉表の語る周瑜はまさに忠臣の鏡だった。孫策の為なら身をうって投げ出し、今なお、主君に敗北の策を献上した事のみを気に病むような忠臣。それを聞いて周瑜は自分がとても汚い人間に見えた。
(綺麗だな……)
周瑜は話していてなんとなくわかった。
劉表は政戦に揉まれてきて、散々、人の汚い部分に触れ、酷い目にあってきているのにもかかわらず、素朴な、純粋ともいえる考えのまま生きている。利害よりも感情で動いてしまう愚か者の考えだと見下していた考えだったが、今はそれが眩しかった。
(おそらく、この人が自分の立場に居たら、ずっと主君に敗北を齎した事を気に病むのだろうな)
この人なら、もし同じことがあったら必死になって利害を無視し、感情のままに自分を助ける為に奔走してしまうだろう。と周瑜は思った。智謀うんぬんではなく、そういう人間だから。
君主として相応しくないと否定していた考えだったが、自分がこうして捕虜の身になるとそちらの方が良いと感じてしまう。
この人なら……
と、周瑜の劉表への気持ちが大きく膨らんでいく。
周瑜は精神的支柱であった孫策への信頼が折れてしまっていた。それに代わる柱を精神が求めている。その代わりに劉表の存在が入り込もうとしていた。
本来なら、そこには仲間が入るのだろう。しかし、この場において周瑜が出会えるのは劉表だけだった。
周瑜はまともな判断が出来なくなっていた。なにか事情があったのでは? と考えて期待し、裏切られるのが怖くて目を背けた。そしてその原因は自分にあると自分を追い詰めていく。結果として、自分は十年来の友からも棄てられるほどの塵のような人間だと思うようになった。
そして、そんな自分を唯一、救ってくれるのが目の前の劉表だけと思い込むようになっていく。
(こんな塵のような私に、気を使ってくれるこの男に私は何ができるのだろう? 自慢だった智謀は目の前の男にとって児戯のようなものだし、実戦経験の差で助言こそ出来たが、それもこのひと月で経験不足ゆえの思い込みは無くなっていった。私になにができるのだろう? 私は……ああ、一つだけあったな。私に差し出せるものが)
周瑜は思い立つと、必死に励まそうと言葉をかけていた劉表の手を己の胸に押し当てた。
「周瑜? なにを……」
驚く劉表に周瑜は顔を赤く染めながら、しかし、淡々と告げる。
「抱いてくれ」
「えっ?」
「私を抱いて欲しい。もう耐えられないんだ。もう一人は嫌だ。もう期待して裏切られるのは嫌だ! 都合の良い女でいい! だから貴方の傍に置いてくれ。何も望まないから棄てないでくれ!」
必死だった。全てを差し出してでも一人でいたくない。棄てられたくないと叫ぶ。犯される事に涙していた頃が嘘のように周瑜は必死になって劉表に懇願する。
「周瑜、今の君は冷静じゃない。だから……」
「そんな事は分っている! だけど、もう私には貴方に差し出せるものがないんだ。周家という家柄も、軍師としての名声もない。自慢だった智謀も貴方と比べれば児戯のようなものだろう。それとも婚期を逃した女など抱けないというのか? 私はそれすらも価値がないのか?」
ぽろぽろと涙を流す周瑜は小さな声で、呟くように言葉を紡ぐ。
「頼む。もう無理なんだ。貴方とのつながりが欲しい」
自分の胸元で涙を流す周瑜はとても小さく見えた。劉表は泣き終わるまで待ち、目を真っ赤に染めた周瑜に唇を触れ合わせるだけの口づけをして、寝台に押し倒した。
▽▲▽▲
劉表は周瑜に覆い被さり、唇で首筋に触れる。絹のようにきめ細かな、そして吸い付くように柔らかい肌を舌で味わい、臭いを嗅ぐ事を隠しもせずに香りを楽んでいた。
その様子に周瑜は羞恥の表情を見せる。
「あっ、りゅ、劉表、私は昨日、体を清めていない。だから臭うと……あっ!」
首元で舌を這うように動かすと、周瑜は小さく喘ぎ声をあげる。
「大丈夫、臭わない。良い匂いだ」
「いや、私が大丈夫では……ん!」
周瑜が抗議の声をあげようとした瞬間、先ほどまで自らの首元を這っていた舌が周瑜の口の中を蹂躙する。
「んっーーーーーっ」
劉表は舌を周瑜の口内に差し入れ、周瑜の舌に自らの舌で触れ、ゆっくりと絡ませていく。マーキングをするかのように、しつこく何度も絡ませていく。
「ちゅぷっ……ちゅるっ……ぢゅっ……」
口内の液体が掬い上げられ、二人の唾液が混ざりあう音だけが部屋の中に響く。
「ちゅぷっ……ちゅるっ……」
周瑜の喉が小さく動き、混ざった液体が周瑜の体の中に消えた。
「はぁ……はぁ……ふぅ、はぁ……ん!」
乱れた息を整えようと息を吸うと劉表は再度、口づけを再開し、周瑜の舌を縦横無尽に舐め、絡ませる。呼吸の為に、口を離すと唾液が糸を伸ばし、切れたと思うと再開される。
適度に空気を吸わせ、それ以外の時間、劉表が口の中を犯していくと自然と抵抗が消えていく。劉表の思いのままに動かされ、呼吸すらも完全に委ねるような屈服状態に周瑜は自然と快楽を覚えていった。
「はぁー……はぁー……はぁー……」
どれくらいの間、口づけを繰り返したのかもわからなくなるほど、絡ませ合う。周瑜は、口づけしかしていないのにもかかわらず、長い呼吸を繰り返していた。
「脱がせるよ」
劉表は、口づけの余韻が残り、まどろみの中にいる周瑜の服を優しく脱がせる。なにをされているのか頭がついていかない周瑜の反応は鈍い。次々と周瑜の肌を隠していたものが剥ぎ取られていく。
服を脱がし、そして下着に手をかける。すると豊かに熟れた二つの果実が表れた。染み一つ無い瑞々しい褐色の肌に、淡い桜色の乳首がちょこんと置かれ、乳輪も乳首と同じく随分と小さく、経験の少なさを感じさせた。
十四歳で嫁に行く時代である。二十を超えた妙齢の女性、しかも名門の血統となれば婚約者も居り、結婚もしているだろう。少なくない性行為をしていただろうと予測していた劉表は少し驚くも、それ以上に美しい胸に夢中になっていた。
「はうっ!?」
吸い込まれる様に胸に触れ、感触を楽しむ。乳輪をなぞるように動かしていくと、周瑜の体がビクンと跳ねる。指の平で乳首を擦ると口から喘ぎ声が漏れる。
ようやくこの時、衣服を脱がされ生まれたままの姿を晒しており、さらに乳房を弄られていると気が付いた周瑜は、羞恥により、顔を真っ赤に染めた。
そんな周瑜に劉表は指の動きを大胆にし、掴み、摘み、撫で回す。普段、冷静な女性が顔を真っ赤にして羞恥の表情をみせるのを感じて、感情が高ぶる。
「あっ! ……うっ! …あぁ!」
少しずつ強まっていく快楽に耐えようとするも止められない。はぁ、はぁと息は乱れ、性器は愛液でびちょびちょに濡れている。
劉表は膣口から溢れている愛液を指で掬い、そのまま膣内にゆっくりと挿入した。
「はぁ……はぁ……ふぅ……ん!」
周瑜の表情は既に快楽に融け、膣口に入ってくる指を逃すまいとするようにきゅうきゅうと締め上げる。
指を動かす度に周瑜の頬は上気していき、身体の芯が男を求めて疼く。喘ぎ声を漏さないように快楽を我慢していた周瑜だったが、そんな意識も虚しく、時間が経つにつれていやらしい喘ぎ声が大きくなっていく。
どこが弱いのか調べる為、縦横無尽に動き回る指に翻弄され、弱い部分を何度も擦られると、一層大きな喘ぎ声が部屋中に響きわたった。
「もうそろそろ、大丈夫か?」
劉表がそんな言葉を吐くと共に指が離れる。周瑜は劉表の指先を名残り惜しそうにただ見つめていた。
「そろそろ挿入れるよ」
「ぁ……」
頭は惚け、度重なり与えられた快楽の虜となっていた周瑜だったが、その瞬間だけ現実に戻り、これ以上進めば後戻りが出来なくなる、と頭の中で警鐘が鳴る。
しかし、周瑜は目の前の快楽、相手に全てを委ねることを知ってしまった。もう何も考えなくていい。ただ目の前の男に尽くしていればいい。そんな甘い欲求に耐えられない。
「ああ、挿入れてくれ……」
売女のような言葉を吐いているのが自分だと思うと、全身が燃え盛ったような羞恥心を感じる、しかし、両足を広げ、男を迎え入れる準備をする姿はまさしく売女のようだった。
返事を聞くと劉表はゆっくりと亀頭を膣口に宛がい、腰に力を込める。
ぐちゅりという生々しい音が周瑜の頭の中に響くと同時に快楽の波が押し寄せてくる。
「あぁぁぁっ……!」
快楽の波に攫われている周瑜に向かって劉表はさらに腰を大きく動かし、奥へ向かって突いた。
「―――――――――――――――ッ!?」
ぶつりと処女膜を破り、そのまま子宮を押し上げる。すると周瑜の全身は痙攣を起こし、膣内を締め上げ……絶頂した。
喪失感と昇り来る快楽の波に翻弄され、明滅する視界。周瑜は意識すらも混濁する中で小さく呟く。
「ごめん」
誰に対して謝ったのかも分からない。ただ分かるのは、今日、この日、孫呉の軍師としての周瑜が死んだという事だけだった。