やってしまった…。
am2:00を回ろうとする深夜に、私は水圧の強いシャワーを浴びながら項垂れる。
大きな鏡に映った自らの身体を眺めながら、先程まで
「…っ。…ん」
芯から感じる絶頂感を思い出しながら、艶かしい声が漏れないように口を押さえつつも、私は指をーー。
……節操が無い。
後悔していたと思えば直ぐにコレだ。
未成年の男の子と身体を交えたことに対する後悔。
それも妹の同級生。
もっと言えば妹の想い人。
我ながら最低な姉だと思う。
最低だ……。
そう思いながら、尚も指で下部を刺激し続ける最低な姉は、一山の絶頂を迎えて息を荒げる。
「〜〜っん!…ん、はぁ、はぁ」
糸を引く指を舐めながら、シャワーで軽く身体を洗い流して浴室を出た。
部屋に備え付けられていたバスローブに腕を通し、タオルで髪を拭きながら大きなベットの置かれた部屋へと戻る。
そっと、私はベットに腰掛けた。
寝静まる
「気持ち良さそうに寝ちゃってさ…」
ふわりと柔らかい彼の髪を優しく撫でてみる。
意外と長いまつ毛や整った鼻先。
規則正しい寝息を溢す彼の頬は触り心地良く柔らかい。
「ん…」
唇と唇が触れるだけのキスをする。
舌を絡ませたら起きてしまうから、今は我慢。
…我慢。
…。
「ん…、ちゅ、…っ、んっ…」
枷が外れた女に理性などは無いのかもしれない。
寝ている彼の舌に何度も私の舌を絡ませたら唾液を吸い取ると、次第に収まりつつあった下半身の熱が再燃し始めた。
触らずとも分かる湿り気。
垂れてベットのシーツに染みを作る程。
「…ゅっ。…っ!…はぁはぁ」
口呼吸を止められた彼は寝苦しそうに瞑る目を強めた。
そんな彼の掛布をそっと捲り、私は乱れたバスローブから覗く白い肌を2度3度舐める。
「…ん、ちゅ…。ねぇ、起きて…」
「…んぅ」
寝ぼけているのか、彼は目を閉じたままに右手で掛布を探した。
「起きて…。もう収まらないの」
「んー…。…えっ、なんすかこの状況…」
目を薄く開けた彼はいつもの調子で口を開く。
この状況…、それは私とラブホテルに居る状況?
それとも、私が全裸で彼へ馬乗りになっている状況?
どちらにせよ、さほど慌ててる様子の無い彼に、私はもう1度キスをした。
「ん…。…ねえ、もう1度だけ…、その…、挿れて?」
「…。明日、ってか今日も学校なんで…、もう寝ませんか?」
「…むー」
ぷっくりと頬を膨らませてみせるも、彼は呆れたように溜息を吐くだけ。
こんな時にでも、キミはキミなんだね。
「…アソコが濡れて寝れないもん」
「淑女がアソコとか言わないでくださいよ」
馬乗りにのまま、私は切なさを誤魔化すように腰をゆっくりと彼のお腹の上で揺すり始めた。
それだけでなのに、どうしてこんなに気持ち良く、幸せな気持ちになるんだろう。
「…私はもう我慢しないよ。キミの全てを奪ってみせる。髪の毛の1本すら誰にも渡さない」
「……」
そっと彼の下半身に手を伸ばしソレを握る。
ピクンと動くソレを、私の濡れたアソコにゆっくりと誘導しようとすると、彼が途端に私の腕を掴んだ。
「…っ」
引き寄せられ、気が付けば馬乗りになっていた私の身体はベットに沈むように反転する。
「…もう、ずっと前から俺はあなたの物になってますよ」
そんな甘くて優しい事を言いながら、彼は私の唇にそっと触れると、私の腰を丁寧に上げた。
ぬるぬると、挿れる寸前でソレをアソコに擦り付けて私を焦らしながら、彼は柔和な表情を浮かべてゆるりと笑う。
「痛みはもうありませんか?」
「う、うん…。だから、もっと私を気持ち良く……して?」
膣内に入り込む彼の物。
思わず声が出てしまう。
「…っ!んっ!ぅぅ…。ん〜〜っ!!」
「陽乃さん…、声、我慢しなくて良いですよ?」
「だ、だってっ…、恥ずかし…」
彼の腰が動き出す。
膣内で擦れるソレが熱く熱く訴えかけるように。
私は腰をヨガらせながら声を上げた。
「んっ!あっあっ…!ぃや、あっ!ん!も、もっと…、もっと、もっとーっ!!…あっ!」
早くも込み上げる絶頂。
痙攣した腰を彼は優しく撫でてくれる。
「…大丈夫ですか?」
「ん、うん…、だ、大丈夫。…あの、だから…、もっと…ーーー
ーーね?比企谷くん」
……………
………
……
.…
…
.
.
.
やってしまった…。
また今日もやってしまった。
私は見慣れた天井を見上げながら恥部に当てていた手をティッシュで拭き取る。
倦怠感と後悔に襲われた脳内をゆっくりと整理しつつ、床に脱ぎ散らかしたショーツを拾い上げた。
「…もうだめよ。こんなのだめ。全然私らしくない」
誰よりも優れ、誰よりも慕われる。
誰にでも公平で、誰からの好意も受け取らない。
高嶺の花を具現化した人間とは私のこと。
…それは言い過ぎかもしれないけど。
私は溜息を吐きながら、発散の材料にしていたスマホをベットに投げ捨てる。
スマホに映った
「…妄想もここまできたら病気ね」
いつからだろう。
彼の事を考えると下腹部が熱くなるようになったのは。
いつからだろう。
彼の写真で性欲を満たすようになったのは。
いつからだろう。
妄想の中の彼が優しくなったのは。
現実に戻れば部屋で1人虚しくオナニーに更ける女子大生。
今頃、彼は何をやっているのだろうか。
受験を終え、卒業を待つだけの彼ならば、わざわざ学校に行く事もなく家でだらだらとしていそうだ。
「…会いに行く理由が無いじゃない…、バカ」
彼は妹の同級生。
姉の私が会う理由なんて無い。
「……」
ねぇ、比企谷くん。
キミはいつ、私の処女を奪ってくれるの?
…なんてね。
私は自虐的な笑みを浮かべながら服を着直した。
せっかくの休日なんだから有意義に過ごそう。
オナニーで潰れる1日なんて哀れすぎる。
そう思いながら、私はサイフを片手にコンビニへと出かけた。
ーーーーーー☆
ブルブルブル
日頃からアプリ専用と化している俺のスマホがポケットで震えた。
その震えに驚いて俺も震えた。
コンビニの店員にそれを見られたことが恥ずかしく、俺は立ち読みを止めて店内から出る。
憎きスマホを睨みつけながら、俺は震えの原因であるLINEを開いた。
由比ヶ浜ーーー
やっはろー\(^o^)/
今からゆきのん家行かない!?(・_・;?
ーーーーーーー
うむ、相変わらずアホっぽい。
こいつよく大学受かったな…。
比企谷ーーーー
行かない。
ーーーーーーー
由比ヶ浜ーーー
( ゚д゚)
怒ってるの?
ーーーーーーー
数秒と経たない内に返ってきたメッセージ。
怒ってる?
あぁ、前にも言われた事があったか。
確か文字だけだと怒ってるように思われるんだったな。
比企谷ーーーー
行かない!!
ーーーーーーー
我ながら意思の伝わる賢明な文面だと感心するぜ。
俺は青く澄み渡る冬の空を見上げ白い息を吐く。
マフラーに口元を埋めながら、読みかけの週刊誌に後ろ髪を引かれつつもコンビニの前から立ち去ろうとポケットに手を入れた。
ふと、少し離れた所に見知った顔を見つける。
「…雪ノ下さん?」
しばらく振りに見た雪ノ下さんの顔はどこか浮かない。
拗ねているような、ショボくれているような。
珍しく覇気の無い彼女は俺に気が付いている様子はない。
絡むと碌な事が無いし、気が付かれてないのなら僥倖だ。
どうやら姉のんと言えど、日常的に超人的な索敵スキルを発動させてるわけでないようだ。
「……」
雪ノ下さんは寂しそうな顔でコンビニに入っていった。
いつもの勝気な顔は何処へやら、今日の彼女は昔の雪ノ下を見ているようだ。
……面倒事は勘弁だ。
彼女は面倒の種。
それも酷く美しく華やかな花を咲かせてくれる。
出来ることなら関わらない方が良い…。
……。
「……ちっ。別に心配だから声を掛けるわけじゃないんだからな?」
誰に需要があるのか分からないツンデレを披露しながら、俺は偶然を装ってコンビニへと再度脚を踏み入れた。
何を買うのか決めていなかったのか、雪ノ下さんは飲み物売り場の前でうろうろと彷徨っている。
本当に変なの…。
「…あの、雪ノ下さん?」
「へ?え!?ひ、比企谷くん!?」
俺の声の掛け方が悪かったのか、雪ノ下さんは異常な驚きを見せながら、狼狽えたままに振り向いた。
ロングスカートにダッフルコートを羽織った彼女に違和感を覚えながら、俺は買う気もなかったペットボトルのお茶を手に取る。
「奇遇ですね。雪ノ下さんでもコンビニとか寄るんですか?」
「わ、私だってコンビニくらい来るよ」
「…?」
違和感の正体には直ぐに気が付いた。
冬にも関わらず蒸気したように赤らめた頬が、いつもの冷徹な印象とギャップを生んでいるんだ。
「…風邪ですか?」
「え?なんで…?」
「顔が赤いです」
「っ!…こ、これは…」
歯切れの悪い言葉。
本当に今日の雪ノ下さんはどうしたんだ?
自らの腕で身体を強く抱きしめながら、彼女は俺と目を合わせずにそっぽを向く。
「…本当に変ですよ?体調でも悪いんじゃないですか?」
遂には俯いてしまった雪ノ下さんのおでこに手を伸ばした。
「ぁぅ…」
熱い。
冷え性の俺の手が冷たい事を差し引いても、雪ノ下さんのおでこは熱かった。
頬の赤らみは増したかのようにさえ思える。
「…ヤバそうですね。氷雪系最強の冷酷女である雪ノ下さんがここまで熱いなんて」
「ちょ、それどういう意味?」
弱った状態の彼女になら普段の仕返しを…とも思ったが、流石にそこまで鬼畜にはなれない。
ならば俺が出来ること、それはたった一つだ。
「…移ったら嫌なんで。それじゃ」
「ちょっと待ちなよキミ」
「風邪薬ならあっちですよ?」
「熱でも風邪でもないから。…でもちょっと頭はクラクラするかな」
「それはそれは。…それじゃ」
「ちょっと待ちなよキミ」
「無限ループ!?」
その場を後にしようとした俺の腕を力強く掴まれる。
なんだ、元気じゃないですか。
それでも頬が少し赤いのは気のせいか?
「ほら、一応心配してくれたんでしょ?それならステップ2に移行しなくちゃ」
「は?ステップ2?」
「弱った女性を家まで送りなさい」
ぎゅっと握られた腕から伝わる雪ノ下さんの体温に、ほんの少しだけ緊張しながらも、俺はそれを引き剥がそうと力を加える。
…っ!
な、なんだコイツの力は!?
引き剥がせない…、だと?
「…あの、車の迎えを呼んだ方がいいのでは?」
「こんな近場のコンビニに迎えなんて呼んだら迷惑でしょ」
「俺も十分迷惑なんですが?」
「か弱い女性を家まで送れるなんてご褒美じゃない」
「か弱くないだろ」
腕が折れんばかりに握られる力をもってか弱いなどとどの口が言うのだろう。
だがしかし、コンビニに再入店してまで声を掛けたのは俺だ。
少なからず、彼女のことを心配したわけでもある。
「…はぁ、心配して損しましたよ」
「本当に心配してくれてたんだ…」
そんな彼女の問い掛けを聞き流し、俺達はコンビニから何も買わずに出た。
2度目の冷やかしに店員の目が少し怖かったが、それよりも怖い存在が俺の腕を掴んでいる。
彼女は熱や風邪では無いと言う。
それでも上気した顔に、いつもの彼女の強さを感じない。
凍えそうになる冬風に耐えながら、俺は自らのマフラーを脱ぎ、雪ノ下さんの首元に巻き直した。
「送りますよ。ほら、とっとと行きましょう」
「…っ。ふふ、ありがと」