※この作品はR-18です。

けいおん!LinkCorpse(リンクコープス)   作:レパード☆アブデカ

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メッセージや活動報告にてお話しましたとおり、新しい小説の執筆を開始したいと思います。
『中沢と見滝原中ガールズ』の完結と、その続編開始を待つつもりでしたが、そこをあえて前倒ししました。

かのアニメ『けいおん!』(原作:かきふらい先生)と、ゲーム&OVA『コープスパーティー』(原作:祁答院 慎先生)を“禁断クロス”させた、天神小学校冒険ストーリーです。

一見、“けいおん?コープス?なんの関係性があるの?”、“世界感違い過ぎじゃん?”と思われそうなんですが、『けいおん!』の原作コミックの連載開始と、現在に至る『コープスパーティー』の新体制開始が同じ2007年であり、その後アニメ化など徐々にメディアに進出していったこと(その間アニメ『けいおん!!』2期開始と『コープスパーティー ブラッドカバー』発売が同じ2010年である点も含みます)、主役キャラたちの在籍学年が同じの共通点があります。
これらの観点から、世界観以外はコラボするのに最適かなと思いました。

軽音楽部(放課後ティータイム)の5人を中心に据えた桜が丘高校のメンバー9人が、例のおまじない“幸せのサチコさん”を行い、天神小学校の多重閉鎖空間に飛ばされ、そこで同空間に送られた如月学園+白壇高校のメンバーたち(いずれも9人、計18人)と出会い、協力しサチコと子どもたち3人を成仏させ、元の世界へ戻るというストーリーです。
当初は上記の軽音楽部の愛称“放課後ティータイム”と天神小学校の“天神”を掛け合わせた『放課後天神タイム ~取り戻せ!スクールライフ~』のタイトルでしたが、『けいおん!』キャラたちが主役として活躍をする意味合いを高めるために、『けいおん!LinkCorpse(リンクコープス)』の新タイトルに変更しました。
(※詳しくは活動報告をごらんください。)

本家『コープスパーティー』では、例の七星(なほ)のホームページを見ていたおまじない&オカルト好きの委員長・あゆみが、後日転校予定のクラスメイト・繭(まゆ)の送別目的でとり行ったのですが、本作はドラムについて調べるために、自宅でネットを閲覧していた律が息抜きがてらにいろいろなページを開いていたところ、偶然にホームページを発見し、軽音部の命運と将来を握る部長として、メンバーの結束向上を図ろうとしたことから始まります。
アニメ本編での実際の律は、ネットはおろかパソコンも持っていないようでしたが、本作では澪の影響で始めたという設定にしています。

唯と紬(ムギ)が乗り気になる一方、澪と梓(あずにゃん)はそのホームページの情報の怪しさを感じ取り、偶然に部室に立ち寄った憂・純・和の3人のうち、純&和も同じように怪しみますが、唯&紬の進言で同意、顧問のさわ子も入れた9人で、“幸せのサチコさん”がとり行われました。

両作陣営のメンバー構成は、両作の設定に従い、次のようになります。


【けいおん!】

 《桜が丘高校》 ※()内は担当楽器。 学年・クラスは1期後半。
    平沢 唯:2年2組 軽音楽部(ギター)
    秋山 澪:2年1組 軽音楽部(ベース)
   田井中 律:2年2組 軽音楽部 部長(ドラム)
    琴吹 紬:2年2組 軽音楽部(キーボード)
    中野 梓:1年2組 軽音楽部(ギター) のちに部長 通称あずにゃん  
    平沢 憂:1年2組 無所属 のちに軽音楽部(ギター) 唯の妹 
    鈴木 純:1年2組 ジャズ研究会 のちに軽音楽部(ベース)
    真鍋 和:2年1組 無所属 生徒会役員 のちに会長 唯の幼なじみ
  山中 さわ子:軽音楽/吹奏楽部顧問 のちに3年2組担任 音楽教諭 学校・軽音楽部OG
   曽我部 恵:3年1組 無所属 生徒会長 サチコの気が変わり、なぜか天神小送りに


【コープスパーティー】

 《如月学園》
   持田 哲志:高等部2年9組 所属不明
   中嶋 直美:高等部2年9組 所属不明
  篠原 世以子:高等部2年9組 所属不明
  篠崎 あゆみ:高等部2年9組 所属不明 学級委員長
   岸沼 良樹:高等部2年9組 所属不明
   持田 由香:中等部2年3組 所属不明 哲志の妹
    鈴本 繭:高等部2年9組 演劇部 通称雀ちゃん
  森繁 朔太郎:高等部2年9組 演劇部
   宍戸 結衣:高等部2年9組副担任 英語教諭 学校OG


 《白檀高校》
   刻命 裕也:2年4組 所属不明
   黒崎 健介:2年4組 野球部(ポジション不明)
   袋井 雅人:2年4組 所属不明 生徒会長
   片山 良介:2年4組 所属不明
   大川 智寛:2年4組 所属不明
    島田 快:2年4組 所属不明 雑誌モデル  
   山本 美月:2年4組 所属不明 生徒会書記 
   霧崎 凍孤:2年4組 所属不明
   卜部 恵美:2年4組 所属不明 “幸せの~”の情報提供者


 《桐章学園》
  冴之木 七星:高等部2年1組 所属不明 心霊作家・研究者


 《天神小学校》 ※学年・クラスは死亡当時。
  篠崎 サチコ:学校の呪いの元凶 ヨシエの長女 
  篠崎 ヨシエ:保健教諭・開業医 階段から転落死 サチコの母   
    管乃 雪:5年2組 被害者 舌と左目を失う
    吉沢 遼:3年5組 被害者 舌を失い腹部を刺される
    辻 時子:1年6組 被害者 舌と上頭部を失う
 柳堀 ヨシカズ:教諭(担当クラス不明) 容疑者とされのちに自殺 柳堀校長の長男
   柳堀 隆峰:校長 学校創設者 閉校当日に自殺 ヨシカズの父


OVAを含め、過去の『コープスパーティー』シリーズでは、繭や世以子にも代表されるように、メンバーの誰かが、サチコ・子どもたち・ヨシカズ・ヨシエに襲われたり、発狂した友人や仲間に殺される、校内のトラップに引っかかるなどして死亡する“絶対的法則”がありました。
しかし本作では、桜が丘・如月・白檀各校のメンバー計28人を、全員生存の上、元の学校に帰還させる、法則無視の“絶対的ハッピーエンド”を目指します。
特に桜が丘メンバーは国民的アニメ『けいおん!』の主役として、呪いや狂乱、トラップごときに誰1人として死なせられないという強い想いによるものです。
ほぼ全シリーズを通して、数知れぬいたいけな少年少女たちを破壊し地獄へと突き落とした、冷酷無比の“祁答院ワールド”(ほめ言葉)にせめてもの一石を投じるつもりでいます。

ただ世界観上、全員が無傷のまま終わってしまうとかえって“らしくなくなる”ので、誰かがケガをしたり(返り血も含む)服が破れるなど多少の過激な描写も入ります。
また七星はゲーム&OVAと同じく、おまじないの解説以降ホームページを放置、親友のさやか、弟子入りしている怪奇ライターの鬼碑忌、助手の田久地らと自ら天神小学校に赴き、そこで黒化の末に鬼碑忌を殺害(さやかはヨシカズに拉致、田久地は錯乱して死亡。)し、学校の一部に取り込まれている設定になります。
あゆみに引導を渡され消滅するのも同じですが、この引導シーンにはあゆみに加え、あと2~3人ほど登場する予定です。

基本的に桜が丘(けいおん!)メンバーを主役として、ゲーム&OVAの単なるなぞりではない、独自の展開で進行します。
そして『けいおん!』メンバーには、すでに紹介していますがまさかの“あの人”も……。

『けいおん!』側の時間軸は2期ではなく、1期の終盤(11話・12話直後)としました。
由香を除く高校2年生で組まれた『コープスパーティー』メンバーに唯たち5人(軽音部&和)の学年を合わせる関係です。
そして『コープスパーティー』側は、現在の実質的な礎である『ブラッドカバー』および、移植版『リピーティッドフィアー』と、OVA『トゥーチャードソウルズ』をベースとしています。
いずれかに偏るということはなく、場面場面を切り取って使うつもりです。

最後に余談、2期『けいおん!!』の3年2組クラスメイト・若王子 いちごのMAKOさんは、上記の七星の友人・さやかも担当しています。
表情を崩さない寡黙ないちごに対し、さやかは校内のフェンスを大胆に乗り越えるほどの活発さを持っていて、文字どおりその性格はまったくの対照的です。
もちろん上記の設定に合わせ、ここに登場はしません。

まずはこちらが最終的にどのような結末を迎えるか、ご期待ください。


悪夢の儀式! -プロローグ-

≪2008年10月某日 桜が丘高校 3階 音楽準備室≫

 

 

それは、あの終始嵐のごとくドタバタした、なおかつ例年に増して大盛況だった学園祭が終わって間もないころであった。

(詳しくは、1期11話「ピンチ!」12話「軽音!」をご参照ください。)

 

軽音楽部、通称”放課後ティータイム”の面々5人と顧問の山中 さわ子は、校舎の中央に位置する最上階、部室にして練習場所である音楽準備室で、練習後、お決まりのように“お茶会”をたしなんでいた。

時刻はPM6:00を回ったところで、外はもう薄暗さが目に見えている。

 

 

「なあ、みんな。」

 

「ん?なんだ?律。」

 

「ちょっと、集まれよ。」

 

「ん?」

 

「なに?なにー?」

 

「どうしたの?」

 

「なんなんですか?律先輩。」

 

「これだよ!これ、これ!」

 

 

律は周りに集まったみんなに、あるものを差し出して見せた。

それは、人の形をした紙切れであった。

 

 

「なんだ?これ。」

 

「こないだ、ちょっとパソコンでドラムのこと調べてたんだ。で…ちょっと疲れてきたから、いろいろ見てたらさ。おまじないの特集、見つけたんだ。」

 

「おまじない?」

 

「律ちゃんが?」

 

「そう、そう。そこで見つけたのが、これってわけ。”幸せのサチコさん”ってんだ。」

 

「幸せの………。」

 

「サチコさん………?」

 

「そう。」

 

「なんの、おまじないなの?」

 

「これを、みんなでいろんな方向から持ってさ。一斉にちぎるんだよ。」

 

「うん。それで?」

 

「そうすれば、それをやったみんなが離れずに、ずっと友だちでいられるんだぜ。」

 

「ほんとですか?」

 

「ほんとだよ。けっこう、効くらしいぜ。」

 

「でもな………。そもそも、律っておまじないに興味なんてあったのか?」

 

「そういえば、初めて聞きましたけど……。好きなんですか?」

 

「あ、いや……。あたしも、部長だからさ。これから、チームとして団結しなきゃだし…、 部の命運と将来を握ってるっていうか……それで。」

 

「………それ、わたしの立場はどうなるの…………?(顧問的な意味)律ちゃん?」

 

「いやいやいや………。細かいことは、抜きってことで♪」

 

「抜きにしないでっ!お願いだから!」

 

「ま、ま…。それに、これ考えたのってどうもあたしたちと同じ高校生の子みたいだぜ。」

 

「そうなのか?」

 

「ああ。冴之木 七星(さえのき なほ)って、同じ2年生の子らしいぜ。プロフィールと顔写真見たけど、どう見たって、悪い子じゃなさそうだったしさ。ほら。この子だぜ。」

 

 

律は携帯を取り出し、みんなにその冴之木 七星(さえのき なほ)の顔写真の画像を見せた。

小豆色のブレザー、白いYシャツの襟に赤いネクタイを締めた、赤ぶちメガネの女の子だ。

ショートカットの左側頭部には、星の形をした赤いヘアピンのようなものが見える。

 

 

「なんか、オカルト関係の作家やってる子みたいだぜ。」

 

「オカルト関係……。う~ん……。」

 

「でも、おもしろそうだよね。ムギちゃん。」

 

「そうね。ちょっと、やってみたいわ。その子のおまじない。」

 

 

話をしているところへ、唐突に外からドアが叩かれる音。

 

 

コン!コン!コン!

 

 

「はーい。開いてますよ~。」

 

 

ガチャ…

 

 

紬の声に、ドアが開く。

 

 

「こんばんは~。失礼しまーす。」

 

「失礼しまーす。」

 

「あ。憂~♪純ちゃん。」

 

「いらっしゃい。」

 

 

唯の妹で、1年生の平沢 憂(うい)が、同じクラスの友人、鈴木 純を連れて入ってきた。

 

憂は、商社マンである父の海外勤務の関係で、彼と共に自宅を長く空けている母に代わって家事を務める関係で、部活に所属していない、いわゆる“帰宅部”であり、純はジャズの研究と演奏に特化した、ジャズ研究会、通称”ジャズ研”に入っている。

いつもは唯より先に帰って、風呂や夕飯の支度をすることが多い憂だが、今日は唯のところに顔を出そうと、時間をつぶすため教室に残って勉強していた。

一通り勉強を終えてから、ジャズ研の練習がいつもより少し早く終わっていた純を連れ、帰る前に2人で準備室に寄ったのである。

憂と一緒に体験入部に参加した純は、当初こそそれなりに軽音部に興味を持っていたものの、ほどなく“かっこいい先輩”目当てに、正式入部を断念してジャズ研へ向かったのだが、親友である憂が姉の唯絡みで部室に誘ううちに、少しづつ興味が戻り始めていた。

 

そこへ、故意か偶然かもう1人の来客が。

 

 

「こんばんは!唯、がんばってる?」

 

「和………。」

 

「和ちゃんも!」

 

 

唯の幼なじみで、生徒会役員の真鍋 和(のどか)。

唯とは家が近所どうし、幼稚園の年少時代に仲よくなって以来、現在に至る。

入学当初は唯と同じクラスであったが、2年生進級時のクラス替えで離れ離れになり、代わりに、軽音部員でただ1人違うクラスに入った澪が、新たなクラスメイトになった。

わかりやすくすると、唯・律・紬が2年2組、澪・和が2年1組だ。

今日は生徒会の大事な仕事があり、それを済ませてから唯たちの様子を見に顔を出したのである。

 

 

「ねえ、憂!純ちゃん!和ちゃん。こっち、こっち!」

 

「立ち話もなんだから、どうぞ。」

 

「あ、はい。」

 

 

3人は言われるがまま、テーブルの近くに歩み寄った。

歩み寄って真っ先に目にしたのが、例の“幸せのサチコさん”の紙切れ。

 

 

「あら…?ねぇ。これ、なに?」

 

「お人形さんかな…?」

 

「あ、気になっちゃった?律ちゃん、お願い♪」

 

「OK。」

 

 

律は先ほど、唯たちに話したこととまったく同じ内容を、一字一句違わず残さずに、憂・純・和に話して聞かせ、例の顔写真の画像も見せた。

 

 

「ふ~ん。初めて聞くおまじないね。」

 

「おもしろそう。」

 

「でも………。なんか、ちょっと気にならない?」

 

「え?なんで?純ちゃん。」

 

「“幸せのサチコさん”って言ってるけど……。その“サチコ”さんって、誰のことなんだか、なんで幸せなのか全然わかんないし……。」

 

 

「純ちゃん………?」

 

 

言われてみれば、確かにそのとおりだ。

律の話している内容からすると、おまじないの効果が実現するのは間違いなさそう。

 

しかし、今純が言ったように、幸せのサチコさんの“サチコさん”が誰で、そもそもなにをもって “幸せ”だというのか。

そのあたりのことが、なにひとつこちらに明確に示されていないのである。

 

 

「律。そのおまじないのページに、説明とかはなかったの?」

 

 

切れものの和は、すぐに律に確認した。

 

 

「う~ん…。一応くまなく見て回ったんだけど、こうすれば必ずうまくいく、みたいにしか書いてなかったんだよな。“サチコさん”の由来も、なにがどうしてこうして幸せなのか…っていうのも、見当たんなかったしさ………。」

 

「大丈夫なのか?そのページの子、下手したらサクラかなにかかもしれないぞ。」

 

「そうですよ……。もしかしたら、同い年のふりした男の人で…、わたしたちをワナに引っかける魂胆だったらどうするんですか?」

 

「なんだよ?澪も梓も、疑ってるのか?サクラだったら、それらしくもうちょっと、手の込んだページ作るはずだぜ。どう見ても、あたしたちと同じ高校生の子の作ったページにしか見えなかったんだよ。いくら“バカ”って言われてたって、この目まで言われてもらっちゃ困るぜ?」

 

「う~ん…でもなぁ……。」

 

 

澪も梓も、まだ安心ならなかった。

”間抜けな味方は敵をもしのぐ”というくらいなので、気のいいのが売りの律がそれにつけ込まれているのではないかと思ったのだ。

律がパソコンやネットを始めたのは、澪に影響を受けたつい最近のこと。

それを含めても、軽音部で良識持ちの2人だからこそ、100%安易に考えるわけにはいかないのである。

 

すると紬が、

 

 

「澪ちゃん。梓ちゃん…。話してても、なにも変わらないし……。一度、試してみたほうがいいと思うんだけど………。」

 

「そうだよ!サクラとかインチキなんて、やってみなくちゃわかんないよ。」

 

「ムギ……。」

 

「唯先輩……。」

 

「やらないで後悔するより、やって後悔するほうがいいと思うんだけど……。」

 

「やろうよ!やってみようよ!」

 

 

紬も唯も、すっかり乗り気になっていた。

 

唯と紬の反応に、戸惑う澪たち。

 

 

「和?どうする?」

 

「うーん………。」

 

「純は?」

 

「うーん………。」

 

「和ちゃん!やってみようよ。」

 

「純ちゃん…。やってみましょ?」

 

「やってみようよ!」

 

 

2人はしばらくの間、首をひねり続けていたが、

 

 

「……………そうね。ちょっと、やってみようかしら。ものは試しって言うし。」

 

「和………。」

 

「…………あたしも、やってみる。別に、減ったりするもんじゃないでしょ?」

 

「純も………。」

 

「うぉーい!!これで、決まりだね。ムギちゃん。律ちゃん!」

 

「さっそく、やってみましょ。律ちゃん。」

 

「お、おう!じゃ、みんな並んでよ。丸くなって。」

 

「あ………あの………。わたしは………?」

 

「あ……。さわちゃん、忘れてた………。てへっ♪」

 

「てへっ♪じゃないの~!一応、顧問なんだから。」

 

「ごめん、ごめん……。まぁ、落ち着いてよ。さ、はやく並んで。澪も、和もさ。」

 

「梓ちゃんも、純ちゃんも並ぼうよ。」

 

「……じゃ、並ぶか。」

 

「そうしましょ。」

 

「さ、並ぶよ。」

 

「……うん。」

 

「ねえ。まず、この机を端っこに移動したほうがいいんじゃない?終わったら、すぐにまた戻せばいいんだし。」

 

「お、そうだな。澪、唯。一緒に持ってくれよ。」

 

「ああ。」

 

「わかった!」

 

「梓ちゃんたちは、ソファーをお願いね。」

 

「はい。憂、純。こっち、持って。」

 

「うん。」

 

「わたしも、手伝うわ。」

 

 

 

さっそく、準備が始まった。

音楽準備室はほかの教室よりやや狭い上、テーブル代わりの4つの机(2つずつ向かい合わせにくっつけている)が場所を取っている。

9人全員が輪になって並ぶには、気になるほどではないが、若干きつめだ。

 

唯・澪・律・紬の4人が机4つを抱え、部屋のすみに移動させた。

いつもかばんなどを置いておくソファーも、梓・憂・純・和の4人が壁際に運んだ。

憂・純・和のかばんは、各自がそれぞれわかりやすい場所に立てかけておいた。

 

こうして準備は整い、円陣が組まれた。

律を中心に、時計回りで澪→唯→紬→梓→憂→純→和と並び、最後にさわ子がきて完成となる。

全員が並び終えると、律が例の人型の紙切れを取り出した。

 

 

「じゃ、始めるぜ。」

 

「ああ。」

 

「うん。」

 

「あと、言い忘れてたんだけど。」

 

「なんだ?」

 

「ただ、ちぎるだけじゃなくてさ……。」

 

「だけじゃなくて?」

 

「ちぎる前に、心の中で呪文唱えるんだよ。」

 

「呪文?」

 

「なんですか?」

 

「“サチコさん、お願いします”……これを、9回繰り返すんだってさ。」

 

「9回?」

 

「そう……。つまり、今いる人数のぶんだけ、唱えるってこと。あたしと、澪と唯とムギ、梓、和、憂ちゃんと純ちゃん、さわちゃんで9人だろ?」

 

「うん。そうね。ちょうど、9人ね。」

 

「それからさ。みんな、9回きっかり唱えてくれよな。誰か1人でも、1回足りなかったり、1回多かったりすると失敗になっちまうからさ。間違えても、そこで止めんなよ。」

 

「失敗?失敗したら、どうなるんだ?」

 

「そこまでは、書いてなかったけど……。まあ、とりあえずここはそのとおりにしな。」

 

「OK!」

 

「いいか?みんな?」

 

「おうっ!」

 

「いいわよ。律ちゃん。」

 

「それじゃ、いくぞ!みんな、念じろ!」

 

 

律の声を合図に、全員が今の言葉を心で念じ始めた。

 

 

 

(サチコさん、お願いします………。)⇒ 律

 

(サチコさん、お願いします………。)⇒ 澪

 

(サチコさん、お願いします………。)⇒ 唯

 

(サチコさん、お願いします………。)⇒ 紬

 

(サチコさん、お願いします………。)⇒ 梓

 

(サチコさん、お願いします………。)⇒ 憂 

 

(サチコさん、お願いします………。)⇒ 純 

 

(サチコさん、お願いします………。)⇒ 和

 

(サチコさん、お願いします………。)⇒ さわ子

 

 

 

時間にして、この間10秒あまり。

みんな一心不乱に、同じ言葉を3回、4回……。

5回、6回……。

ただひたすらに、きっかり同じ9回を目指して唱え続けた。

 

 

「よし!そこまでっ!」

 

 

みんながまた一斉に顔を上げる。

 

 

「みんな、9回唱えられたか?」

 

「唱えたよ!」

 

「唱えたわ。」

 

「大丈夫よ。」

 

 

残りのメンバーも、首を縦に振った。

 

 

「これで、いいのか?」

 

「ああ。あたしも、バッチリ唱えたぜ。」

 

「次、その紙切れをみんなでちぎるんですね?」

 

「ああ。あたし、頭持つから、みんな好きなとこ持ってよ。ちゃんと、爪でな。」

 

 

律が言葉どおり頭部を、ほかの8人は並んだ方向から、それぞれの部位を囲むように持つ。

どこもみな、人差し指と親指の2本の爪で、ガッチリとつかまれた。

 

 

「合図したら、一斉に手前に引っ張るんだぜ。ちぎったら、切れ端はなくさないように生徒手帳にはさんどいて。」

 

「うん。」

 

「わかったわ。」

 

「じゃ、いくぞ!」

 

 

紙切れをつかんだ9人の手に、ぐっと力がこめられる。

 

 

「せーの……。それっ!!」

 

 

 

つかまれた9方向から、一斉に紙切れが引っ張られ………。

 

 

 

ビリッ!!!

 

 

 

まるで図ったのかと思えるほどに、きれいな9つの切れ端ができあがった。

 

 

「……っしゃ!大成功だぜ。」

 

 

律はその切れ端(頭部)を、みんなに見せた。

みんなも同じように、手の中の切れ端を見せる。

 

 

「じゃ、みんな生徒手帳出して。切れ端、そこにはさむんだぜ。」

 

「ああ。」

 

「え~っと……手帳は……。」

 

「はみ出さないように、確実に入れろよ。」

 

「うん。っと……。」

 

 

律とみんなはそれぞれ自分の生徒手帳を、紺のブレザーの上着ポケットから取り出し、 学生証が収まっているページのケース内に、切れ端をていねいに、確実に押し込んだ。

これで、おまじないはすべて終了ということになる。

 

 

 

「よしっ!これにて、終わりっ♪みんな、切れ端は大丈夫か?」

 

「大丈夫!」

 

「入れたわ。」

 

「入れましたよ。」

 

「ちゃんと、しまったぞ。」

 

 

みんな、生徒手帳の学生証ケースに収まった切れ端を見せた。

 

 

「憂ちゃんたちも、面倒かけたな。」

 

「いいえ。そんなことないです……。」

 

「机とソファーは、あたしたちでもとに戻しとくからさ……。憂ちゃんたち、もう帰ってもいいぜ。」

 

「すみません。」

 

「じゃ、帰ろっか。憂。」

 

「それじゃ、わたしたちはこれで………。」

 

 

 

和がそこまで言った、その直後だった。

 

 

 

 

ガタガタガタガタガタガタガタガタガタ……………。

 

 

 

 

準備室の中に、異様な振動が起こった。

 

 

 

「なっ………なんだ!?」

 

「えっ?なに?なに?」

 

「どうしたの!?」

 

「ちょっと、これって………。」

 

「地震!?」

 

 

 

さらにまた次の瞬間、

 

 

 

ガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガッ………………!!

 

 

 

「うわぁあああああああああああ………!!」

 

 

 

ここにいる誰1人経験したことのない、すさまじい揺れがみんなを襲った。

 

 

 

ガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガ………!!

 

 

 

「わぁああああああああっ!!」

 

「お姉ちゃん!!」

 

「みんなっ!!早く、テーブルの下に!」

 

 

 

さわ子が叫んだとき、部屋のあちこちがきしみを上げ始めた。

 

 

ミシ……ミシ……

ミシ……ミシッ……ギシッ………!

 

 

桜が丘高校の校舎は、さる有名なアメリカ出身の建築家によって建てられている。

日本文化を理解していた彼が設計したこの校舎、外観こそ今風の立派な鉄筋コンクリートの校舎に見えるが、中身はほとんどが趣きあるモダンな木製で、廊下から階段、教室の壁や床に至るまで、そこらじゅうが板張りになっており、学校そのものの長い歴史も相まった2008年現代の高校の校舎離れした佇まいなのだ。

そんなところに、突如激しい揺れが襲ってきたのだから、大概の想像はつくだろう。

 

 

メキッ!!

バリッ!バリバリ!!バリッ!!

ガシャッ!!パリン……!

ガシャッ……!

 

 

「うわぁああああああああああああああぁ………!」

 

 

 

あちこちで壁の漆喰がはがれ、壁板が割れ、天井に吊り下がる丸い電灯がブランブランと振り子のごとく大揺れし、タイル張りの天井から、タイルが数枚板張りの床に落下した。

壁際に運んだ4つの机の上からはポットやティーカップ、皿が次々床に叩きつけられて砕け、外に面した窓や、入り口のドアにはめ込まれたステンドグラス風の窓にも、今にでも割れようかというところまで亀裂が入った。

 

 

ピシ………!ピシ………!

パリ………!パリ………!

パリッ………!

 

 

「わぁああああああああああああああああ………!」

 

 

 

 

ガガガガガガガガガガガガガ………ガ………ガ………………。

 

 

 

 

 

どれくらいだっただろうか。

しばらくして、ようやく長い揺れがおさまった。

準備室の中は、もはやさっきの面影もほとんど消えた、見るも無残なまでの惨状………。

まさに“地獄絵図”と化している。

 

 

 

 

「………みんな、大丈夫!?ケガは?」

 

 

 

さわ子はみんなの状況を確認した。

誰もがみな床にへたりこんで、すぐには立って歩けそうもない状態だ。

 

 

 

「うん………。な、な………なんとか………。」

 

「はぁ………。はぁ………。はぁ………っ………。」

 

「すごい……揺れだったわね…………。」

 

「た………立てない………。立てないよ…お姉ちゃん………。」

 

「憂………。大丈夫だよ。落ち着いて……。」

 

 

普段のあのぐうたらぶりはどこへやら、唯は珍しく憂を励ましている。

ここはさすが姉というところか。

 

 

「はぁ…はぁ……。今の……震度何ぐらいだ………?」

 

「わからない………。5強か、6弱だろ…………。」

 

「ほかの教室…大丈夫かしら………。」

 

「もぉ……最悪………。」

 

「澪先輩………。」

 

「しっかりしろ、梓。大丈夫だ。」

 

「みんな。ちょっと、職員室に知らせてくるから、ここを動かないで…。指示があるまで、じっとしてるのよ。」

 

 

 

さわ子がそう言って、職員室へ向かおうと立ち上がろうとした、次の瞬間!!

 

 

 

メキ……

バリンッ……!!

 

 

 

「えっ…?」

 

 

 

唯が左手をついていた床が割れ、大きな穴が。

それに呼応するかのように、9人が座っている部分の床全体が、音を立てて、木くずをまき散らしながら崩れ落ちたのだ。

 

 

 

ババババリィィィィィィィィィィィィィィン…………!!!

 

 

 

「わぁああああああああああ…………!」

 

「うわぁあああああああああ…………!」

 

「いやぁああああああああああ…………!」

 

 

 

9人は甲高い悲鳴を上げながら、崩れた床の下へと吸い込まれていく。

 

 

 

「ぁあああああああああああ…………!」

 

「きゃぁああああああああああ…………!」

 

「あぁあああああああああああ…………!」

 

 

 

全員の視界には、飛び散る木くずと、上に飛んでいく景色、遠ざかるタイル張りの天井が写る。

やがて暗闇の中、ぷっつりとその意識が切れた。

 

 

 

 

【MUSIC POINT(1)】

 

■Reythm Linkage ―Ver.LinkCorpse―(オープニング)

    作詞:永野 椎菜

    作曲:永野 椎菜

    編曲:濱田 智之(原曲:永野 椎菜、熊本 克哉)

     歌:放課後ティータイム With 今井 麻美

 

 

 

※CDやスマホ・Youtubeなど音源をお持ちでしたら、“原曲”を再生してください。

 ボーカル・編曲者は仮想のもので、すべて実際のボーカル・編曲者とは一切関係ありません。

(詳しくは、活動報告をご覧ください。)

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