※この作品はR-18です。

遊戯王エロゲモンスターズNEXT   作:アメフト

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TURN20 パーティー

 夏の日照りが照り付けているが、日照りによる暑さはあまり感じられなかった。涼しい風がほおにかかってきた。この場所は青々と生い茂った鮮やかな緑に囲まれていた。鮮やかな緑の先には透き通った海があった。いつの間にか、音楽が聞こえてきた。音楽は俺がいつも聴くようなアニメソングやヒットソングとは違い、教養のある人々が聴くと思われるクラシックだった。「誰が作曲したのか知りたい」と思ったが、この場に居る人に尋ねると解答とともに軽蔑の目や失笑が返されることがわかりきっていたので家に帰って調べることにした。そう思うと、少し空腹を感じたのでテーブルの料理を食べることにした。テーブルは多数あり、一つのテーブルには複数の違った料理が置かれていた。よくみると、フランス料理、ドイツ料理、和食といった具合に国ごとに料理がわけられているようだった。その料理はどれも立食形式のパーティーの食事とは思えないほど立派でおいしそうだった。その中から俺はローストビーフを食べることにした。思った通り、料理はおいしかった。ローストビーフを食べ終えると、このパーティーのスタッフから「お飲み物はいかがですか?」と尋ねられた。「未成年なので、お酒はちょっと・・・。」と答えると、「でしたら、このオレンジジュースはいかがですか?」と笑顔たっぷりに言われ、されるがままコップを受け取った。そのオレンジジュースもまた甘くて美味だった。

 今日は海野幸子に誘われたパーティーに参加している。パーティーといっても小学生が友達と遊ぶためにするものや大学生が友達などとする飲み会ではなく、ドレスコードのあるきちんとしたパーティーである。正直、高校生にすぎない俺たちがやってきていい所ではない。専門店で店員に選んでもらった着慣れないスーツとネクタイを身につけ、手には白い手袋をはめながらため息をついた。一緒に来ているみんなも俺と同じ思いのようだった。

 居心地の悪い時間をしばらく過ごすと主催者のあいさつが行われた。壇上には幸子もいた。彼女はこうしたパーティーに慣れているようだった。自然に作ったように思える相手を不快にさせることのない笑顔を父親のスピーチの間、振りまいていた。その様子は俺に対して「庶民」と呼んだ理由がよくわかるものだった。俺は感心しつつ、彼女を眺めていた。幸子は自分を眺める視線に気付いたのか、こちらに目を向けた。そして、俺の存在に気付いたのかほんの一瞬だけ笑顔の質を変えた。その笑顔の変化に俺も笑顔を返した。そうこうしているうちにスピーチが終わり、周りが拍手をした。俺たちも周りに合わせて拍手をした。

 

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 主催者のスピーチが終わると、何人かの参加者に話しかけられたので、彼らと会話をした。それが何回か続いた後、海野幸子がやってきた。

 

「小南さん。お忙しい中、よく来てくださいました。大変うれしく思います。」

 

 幸子はいつもの傲慢な態度をおくびにも出さずにこの場に相応しい態度を演じていた。その態度をからかいたい誘惑に駆られたが、ここは合わせておくことにした。

 

「いえ、こちらこそこのような素晴らしいパーティーに誘っていただいて大変ありがとうございます。海野さん。」

 

 そう俺が答えた。そうしてから、俺と話していた複数の人たちが俺と幸子に「学校生活で海野さんはどうしているのか?」や「海野さんは小南君のことをどう思っているのか?」といった質問をしてきた。俺たちはそうした質問にあたりさわりのない答えをした。5分ほど質問に答えた後、自分たちの質問に対する回答に満足したのか、それとも気を使ったのかわからないが、彼らはこの場を去って俺たちを二人きりにした。

気まずい空気が俺たちを包み込んだ。そのため、会話も「夏休みはどう過ごしているのか?」などの世間話が中心になった。「夏休みはどう過ごしているのか?」という問いかけに対して、俺が素直にみんなと一緒に過ごしていると答えると、何ともいえない表情を幸子は浮かべた。その表情をみて、あわてて俺は話題を変えようとした。しかし、突然の侵入者が現れた。

 

「こんなところにいたのですか?サチコさん。おや、この方はどちら様で?」

 

 どこか鼻に突くような口調で男は話しかけてきた。幸子には敬意を、俺には軽蔑を隠そうともしない口調だった。その姿を確認すると、薔薇の花を手に持ち、ヨーロッパ中世の貴族のような姿をした男がいた。『没落貴族』。その単語が頭に浮かんだ。幸子はしばらく動けずにいたが、やがて正気に戻って社交辞令を行い始めた。

 

「・・・いつもお世話になっています。シュレイダーさん。」

「ははは。サチコさんにはジークフリードと呼んでいただいて結構ですよ。」

「いえ、せっかくですが、日本には『親しき仲にも礼儀あり』ということわざがありますので。」

「ははっ。なるほど。さすがはサチコさんだ。」

 

 なにがおかしいのか、シュレイダー、正確にはジークフリード・フォン・シュレイダーは笑い出した。ひとしきり笑うと、真顔に戻って質問をした。

 

「ところで、この方はどなたですかな?」

「ああ、この方は私の学友の・・・」

「ああ、サチコさんの御学友の方でしたか。それは、それは。・・・すまないけど、君。この場所を離れてくれないかな。」

 

 まるで召使いに命じるように、さも当然の権利のようにジークフリードは俺に問いかけた。当然のことながら、俺は質問した。

 

「どうしてでしょうか?」

 

 その質問にジークフリードは目をぱちくりとさせた。どうやら、彼は俺はしもべであり、しもべは主人たる自分に服従すべきであり、反抗は当然として自分の命令に対する質問すらあってはならないと考えているらしい。明らかに俺の頭の悪さを馬鹿にしているような表情でこんな言葉を投げかられた。

 

「やれやれ、こんなこともわからないのかい。私はサチコさんと戯れたいのだよ。だから、ぜひとも二人っきりにしてもらいたいのだがね。」

 

 「幸子はそうはみえない」と言おうとすると、幸子の父親がいつの間にか近づいて、ジークフリードに話しかけた。その会話の様子をみるに、明らかにジークフリードが「上」で、幸子の父親が「下」のようだった。会話の様子をみていると、スーツの裾が引っ張られた。振り返ると、幸子が悔しそうな表情を浮かべていた。俺は彼女にこういった。「少し、どこか別の所にいこうか」。幸子は黙ってうなづいた。

 

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 パーティー会場の隅にある閑散とした場所に幸子とパーティーに誘われた俺たちは集まっていた。ここに集合するまでにみんなは食事や会話、音楽などを楽しんでいたようだった。全員で幸子への感謝の言葉を述べた。その後、俺が幸子の置かれている状況を説明した。俺の説明を補足する形で幸子が全体の事情を説明した。

 簡単にまとめると、ジークフリードは会社社長であり、ジークフリードの会社は幸子の父親の会社の大株主である。また、業務においても幸子の会社はジークフリードの会社はお得意様である。そのため、ジークフリードの意向には幸子たちは逆らいにくい。そして、ジークフリードは幸子にご執心であり、しきりにお近づきになりたいと思っている。

 要するに、深夜のテレビドラマで使い古された設定のような状況に幸子は置かれているのだった。俺たちはそのことに同情し、深く憤慨していると、奴がやってきた。

 

「おや、サチコさん。御学友の方と一緒だったのですか?」

「・・・シュレイダーさん。」

「いえ、私のことはジークフリードといやジークとお呼びください。」

「・・・・・・いくら親しい中とはいえ、さすがにジークと愛称でお呼びするのは・・・。」

「大丈夫ですよ。なぜなら、私たちは結婚するのですから。」

「えっ!」

 

 その言葉を聞いて、全員が驚いた。幸子も、俺たちも、聞き耳を立てていた紳士淑女もだ。

 

「サチコさんのお父様と二人だけで相談いたしましてね。お父様の会社の経営の健全化のために従業員をリストラできないか。すると、お父様はそんなことはすぐにはできないとおっしゃった。ですから、私は『なら、株を売るしかありませんね』と申し上げた。お父様は『それだけは。なんでもしますので、それだけは』と頭を下げて、いや日本でいう土下座をされた。その姿が哀れに思えましたので、こういってさしあげたのですよ。『もし、私とあなたが家族だったら、どうにかして差し上げることができるのですが・・・』とね。まあ、そういうわけなのですよ。」

 

 言葉を聞き終えると、全員が黙っていた。静かに怒りを覚えながら、怒りを募らせていった。「怒り」という炎はどんどんと燃え上がっていき、今にもジークフリードを襲おうとしていた。しかし、その炎をかき消す「水」がかけられた。

 

「・・・わかりました。ジーク・・・さん・・・。」

「幸子?」

「小南さん、そしてみなさん。私はこれで、その・・・婚約者とお話がしたいので。」

「ええ、喜んでお聞きしますよ。幸子さん。」

 

 幸子が「没落貴族」を婚約者として認めたのだ。その表情はとても認めているようには見えなかったが。だから、俺は真意をただそうと彼女に質問をしようとした。

 

「・・・ユ・・・」

「小南さん。申し訳ありませんが。帰ってください。」

「・・・・・・」

「かえって・・・ください・・・。」

 

 ああ、そういうことか。ようやく理解できた。こいつは守りたいんだ。従業員を、会社を。そしてそれが自分の義務だと思っているんだ。社長の娘として生まれた自分の義務だと。『ノブレス・オブリージュ』。幸子のしようとしていることはこの言葉がふさわしいと思った。俺は笑みを浮かべた。

 

「・・・わかった。」

『遊!?』

「はっはっ。ようやく理解してもらえたか、小南君。ならば申し訳ないが、すぐに・・・」

 

 勝ち誇った笑みを浮かべ、勝利宣言をしているジークに対して、俺は手にはめていた白手袋を顔に投げつけた。

 

「何のマネかな?これは・・・。」

「わからないのか。こういうことだよ。」

 

 残った片方の手袋でジークの顔をはたいた。そして宣言した。

 

「決闘しろ。ジークフリード。」

「庶民!いったい何を!」

「・・・ほう。この私に決闘を挑むと・・・。」

「ああ、その通りだ。」

 

 そして、俺はデッキを取り出した。

 

「ふむ。君のような身分違いの人間と決闘をするのは私の家名に傷がつくのだが・・・まあ、いいだろう。」

「決まりだな。じゃあ、このパーティー会場の中心地でやろう。そこなら、見届け人も十分だろう。」

「ああ、ならば行こうか。」

 

 ジークは先に中心へと歩いていった。俺もついていこうとしたが、裾をつかまれた。振り返ると、幸子だった。幸子はうれしそうでいて、悲しそうな表情を浮かべていた。うれし涙なのか、悲し涙なのかがわからない涙を目に浮かべていてもいた。

 

「庶民・・・。ありがとう。」

「・・・・・・。」

「だけど、おやめになって。このことはあなたに関係は・・・。」

「言っておくけど、俺は君のために決闘をするんじゃあない。」

「・・・え?」

「俺は自分のために決闘をするんだ。」

 

そう、自分のことを顧みず、他者に尽くそうという一面を知り、海野幸子のことがより好きになった。そのことで絶対に自分のものにしたいと思った自分のために。

俺は幸子の引き留めを振り払うと、決闘をするためにゆっくりと会場の中心へと歩いていくのだった。

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