青空にセミの声が響き渡る。太陽は明るく輝いているが、早朝のためまだ暑いというほどではない。誰もが一度は経験するであろう夏休みのある朝に俺は外に出て目的地に向かって歩いていた。
「ふぁあああ・・・・・・。」
目的地に着くと立ち止まって、一つ大きなあくびをした。そうしてから、建物の名前を確認した。「童実野ライディングデュエルスクール」。建物にはそう書いてあった。俺は建物の中に入って自分の名前を告げ、順番を待った。その間に手帳に目を通した。手帳には夏休みの予定や夏休みの宿題の進捗状況、ライディングデュエルのコツやルールなどが書いてあった。
「・・・しかし、夏休み中にライディングデュエルのライセンスか、プロデュエリストの試験に合格するか、アクションデュエルのプロテストに合格するかしろという宿題が出るとはね。・・・・・・いくらある程度は生徒個人の能力に応じて宿題の量を増やすことが認められているとはいえ少しやりすぎじゃないか。・・・・・・まあ、一つと言わずに全てクリアするつもりだがな。」
そういうと、少し苦笑した。そう俺は夏休みの宿題をこなすために、こうしてライディングデュエルスクールなどにいそいそと通っているのだった。いや、正確に言うと夏休みの宿題をこなすことが目的の1つだった。細目になり、過去のことを思い出し、未来のことに思いを馳せ始めた。
(一昨日のライディングデュエルではライディングデュエルを楽しんだ後にレジーと、昨日はプロテストの勉強をした後に先生たちと、アクションデュエルでは先週の木曜日にはタイラー姉妹、土曜日には明日香たち仲良し3人組と愉しめたからな。どうやら、ゲーム上はこの宿題を進めれば進めていくほど、セックスをすることができる仕組みになっているようだ。ならば、1つと言わず、すべてをクリアして最大限の快楽を目指すのは当然!それに・・・)
ふと鏡をみると、顔がにやけていた。変な人に思われたのではないかと気にしながら表情を真面目にし、思考をすすめた。
(それに、宿題を進めていけば新ヒロインに出会えるかもしれないからな。いつもなら誰かと一緒に来ていたのに、今日のように一人だけできた日には特に。)
結論まで思考を進めたところで名前を呼ばれた。今日はグループ実習だ。ヒロインが現れるとしたら、ここだろう。9割以上の期待と1割に満たない不安を持ちながら、指示に従って待機するよう指示された控室へと向かった。
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カリッカリッ。室内にペンの音が鳴り響く。最初に自己紹介で口を開いてから参加者同士で会話はせず、一心不乱に今日の実習の説明をメモしていた。6人が予定されていたグループ実習は2人が急に予定が入り、来ることができなくなったので、4人で行われることになった。しかし、それが、この気まずい関係をつくりだす要因になった。今日の実習予定をメモしながら、そう思った。
今日の実習の参加者4人は俺こと小南遊、アカデミアの先輩である小日向星華、シェリー・ルブランと名乗った金髪のロングヘアーの美女、ミゾグチというがたいのいい少々年を取った男性だった。実習の説明がある前に、少し参加者同士で話し合うということになったのだが、小日向先輩はこちらが話しかけようとすると、「話しかけないで!」とあわてたような態度をとり、二人組はこちらの質問にそっけない答えを返し続けた。そのため、その場にいた教官の方がこの場を和やかにしようと言葉を発するも、効き目はなくただ時間のみが過ぎていき、現在のようにぎずぎずした空気のまま説明をするという段階に入っているというわけだ。
話をしている教官もこの空気が嫌なのか、どこか元気のない声で話をしていた。そして、説明を終えてホッとした表情になり、こういった。
「では、今から皆さんには二人一組になってライディングデュエルを行っていただきます。ルールはみなさんに説明した通りに最もポピュラーとされているルールで行わせていただきます。それではみなさん。相手を選んでください。」
教官の説明が終わると、2~30秒の間、誰も動かなかった。チクタクッと部屋に飾られている時計の針が進む音が聞こえた。それからさらに15秒ほどがたつと誰かが俺の前にやってくるのが聞こえた。
「・・・ね、ねえ・・・こみな・・・」
「私とデュエルして。遊。」
「なっ!」
俺の前へと歩いてきた小日向が俺に決闘を申し込む前に、こちらを振り向くことなく座ったままのシェリーが言葉だけで俺にデュエルを申し込んできた。それに対する俺の答えはもう決まっていた。
「わかった。やろうか、シェリー。」
「ちょっと!」
「・・・では、小南さんとルブランさん。小日向さんとミゾグチさんがデュエルするということで。さあ、デュエルサーキットへと向かいましょう。」
教官はそういうと扉を開けて、外へ出ていった。無言でシェリーとミゾグチが続いた。
「・・・・・・」
30~40秒ほど、メデューサのように俺を恨めしそうに睨みつけた後、小日向先輩も出ていった。やれやれと肩をすくめて、先輩を刺激しないよう少し距離をとり、俺も後に続いた。
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(この世界の設定やライディングデュエルがあることなどから、ある程度予想はしていたが、5D’sのキャラが登場するとはね・・・。しかも攻略途中のキャラがいるときに登場するとはね。・・・まあいい。いずれにせよ、同じことだ。この世界では登場する攻略可能キャラは全員攻略するただそれだけのことだ。)
そう決意を新たにして練習用のDホイールをサーキットへと押していった。スタート地点にはすでにシェリーがいた。小日向先輩とミゾグチさんは別のサーキットにいる。スタート地点につき、ヘルメットをかぶる。両者の準備ができたところで、教官から連絡が入った。
「小南さん、シェリーさん。準備はいいですか?」
「ええ、いつでもいいです。」
「ええ、かまわないわ。」
「わかりました。それではシグナルが青になったらスタートしてください。」
その言葉の後、連絡が消え、Dホイールのオートパイロットモードを伝える機械音が聞こえた。10秒間のカウントダウンが始まった。カウントダウンが5から4に変わるときにシェリーに一方的に話しかけられた。
「遊。アナタの実力。みせてもらうわ。」
その言葉を聞き終わると、カウントが0になり、それまで赤だった信号が青に変わった。それを合図にDホイールを発進させた。こうしてライディングデュエルがはじまった。
Dホイールをスピードカーでも追いつけない速さで走らせながら、このライディングデュエルのルールについて確認した。今回のルールは遊戯王5D'sのルールに少々の改良を加えたものだ。
つまり、この世界の通常のデュエルのルールに加えて、①SPと名の付くカード以外を使用した場合には使用したプレイヤーが2000ポイントのダメージ、ただしペンデュラムカードにはこのルールは適用しない。②フィールド魔法は『スピード・ワールド2』で統一し、『スピード・ワールド2』を取り除くことはできない。③第一コーナーを先に走り抜けた方が先行。④Dホイールで走ることができなくなったら敗北。
他にもいろいろな細かい取り決めなどがあるのだが、今はこれぐらいでいいだろう。そう思い、思考を中断した。そして、第1コーナーをシェリーが回ってから、ゆっくりと第1コーナーを回り、初期手札をドローした。
『スピード・ワールド2』(フィールド魔法・アニメ遊戯王5D’sオリジナルカード)
「Sp(スピードスペル)」と名のついた魔法カード以外の魔法カードをプレイした時、自分は2000ポイントのダメージを受ける。お互いのプレイヤーはお互いのスタンバイフェイズ時に1度、自分用のスピードカウンターをこのカードの上に1つ置く。(お互い12個まで)自分用スピードカウンターを取り除く事で、以下の効果を発動する。
●4個:自分の手札の「Sp」と名のついたカードの枚数×800ポイントのダメージを相手ライフに与える。
●7個:自分のデッキからカードを1枚ドローする。
●10個:フィールド上に存在するカードを1枚破壊する。
「悪いけど、先行はもらうわ。私のターン。」
・・・先行を取られるのは、やむを得ない。現実世界と比べて、運動神経や体力が格段に向上しているとはいえ、それにもおのずから限界があるからな。まあ、そのことを想定したデッキを組んでいるわけだが・・・。
「カードを3枚伏せ、『聖騎士ジャンヌ』を攻撃表示で召喚。これでターンエンドよ。」
「・・・俺のターンドロー。」
俺がカードを引くと同時にスピードカウンターが乗る音が聞こえた。そうしてから自分の手札と相手の使用しているカードに対して考察をすることにした。
・・・シェリーが使用した『聖騎士ジャンヌ』は確かアニメで使用していたカードだった。しかし、だからと言って漫画版のカードを持っていないとは、また漫画版のようにサイコパワーを持っていないという保障はない。そのために慎重にプレイしていく必要があるだろう。俺はジャッジキルを恐れるプレイヤーのように慎重に確認をしていくことにした。
「なにもなければ、メインフェイズまで移行したいがかまわないか?」
「ええ、どうぞ。」
「なら、メインフェイズ。『BF-蒼炎のシュラ』を召喚する。チェーンはあるか?」
「いえ、ないわ。」
「なら続けて、『BF-疾風のゲイル』を特殊召喚する。チェーンは?」
「・・・ないわ。」
「ならば、『ゲイル』の効果で『聖騎士ジャンヌ』の攻撃力・守備力を半減する。」
『聖騎士ジャンヌ』
攻撃力1900→950
・・・あの様子だと、『ゲイル』の効果を止めることができたな。しかし、止めなかった。おそらく特殊召喚可能なBFや『BF-月影のカルート』が手札にあることやシンクロ召喚される可能性、特殊効果を止めるなら『シュラ』撃った方がいいという判断が働いたのだろう。・・・俺の手札には自力召喚可能なBFも『カルート』もない。となると・・・。
「このまま、バトルフェイズに入る。『BF-蒼炎のシュラ』で『聖騎士ジャンヌ』を攻撃だ。」
「攻撃宣言時にリバースカードオープン『ブレイクスルー・スキル』。『BF-蒼炎のシュラ』の効果を無効にする。」
「だが、バトルは続行される。『聖騎士ジャンヌ』を破壊する。」
シェリーの使用した『ブレイクスルー・スキル』によって体が赤くあり、本来の力が発揮できなくなった『シュラ』はそれでも弱体化した『聖騎士ジャンヌ』を破壊し、墓地に送った。
シェリー LP4000→3150
「『聖騎士ジャンヌ』が戦闘によって破壊され、墓地に送られたことによってリバースカード『自由解放』(アニメ効果)と『聖騎士ジャンヌ』の効果をそれぞれ発動。チェーンは『自由解放』、『聖騎士ジャンヌ』の順。チェーン2の『聖騎士ジャンヌ』の効果によって手札の『見習い騎士』を捨てて、『聖騎士ジャンヌ』を手札に戻す。チェーン1『自由解放』の効果によってフィールドのモンスターを全て持ち主のデッキに戻す。」
「・・・シュラに『ブレイクスルー・スキル』を使ったのはこのためか。」
もしも、使っていなかったらシュラの効果が優先権の関係で『自由解放』の前に入り、がら空きのフィールドに『ピナーガ』あたりを特殊召喚されてリカバリーすることが可能になるからな。
「・・・メインフェイズ2。手札からカードを2枚伏せ、ターンエンド。」
小南遊 LP4000 手札2枚 スピードカウンター:1
フィールド:伏せカード2枚
「私のターンドロー。手札から『SP ‐エンジェル・バトン』を発動。スピードカウンターが2つ以上ある時、デッキからカードを2枚ドローし、手札を1枚墓地に送る。この効果でカードを2枚引いて『聖騎士ジャンヌ』を墓地に送る。もう1枚、『SP ‐エンジェル・バトン』を発動。効果で2枚ドローし、手札の『聖騎士の盾持ち』を墓地へ。リバースカードオープン。『堕天使の施し』。このカードの効果でこのターン手札から捨てられた『聖騎士ジャンヌ』と『聖騎士の盾持ち』を手札に加える。『聖騎士の盾持ち』の効果を発動。墓地の『見習い騎士』を除外し、デッキからカードを1枚ドローする。そして、『聖騎士の盾持ち』であなたにダイレクトアタック!」
「クッ・・・。」
小南遊LP4000→3200
『聖騎士の盾持ち』(遊戯王タッグフォース5オリジナルカード)
効果モンスター ☆4 光属性 戦士族
攻撃力800 守備力1300
このカードが召喚に成功した時、自分の墓地に存在する光属性・戦士族モンスター1体をゲームから除外する事で、デッキからカードを1枚ドローする。
攻撃が通ったことを確認すると、シェリーは笑みを浮かべてこういった。
「私はカードを2枚伏せてターンエンド。さあ、遊。デュエルは始まったばかりよ。楽しみましょう。」
「・・・ああ、そうだな。」
俺は返事をすると、ハンドルを強く握って、アクセルを加速させた。