ライディングデュエルの決着がつくと、あっさりとシェリーは頭を下げて謝罪した。俺たちはその謝罪を受け入れてこの問題は一件落着した。謝罪を受け入れたら、すぐに試験官がやってきて試験結果を告げた。
試験結果は俺と星華、シェリーが合格で、ミゾグチが不合格とのことだった。ミゾグチが不合格の理由は俺とのデュエルの際に転倒したからだった。ライセンスを受け取った後、俺はおそらく大丈夫だと思ったが、念のためにミゾグチの容態を質問した。その質問に試験官が答えるよりも先に答えがわかった。なぜなら、当の本人がこの場に現れたからだ。ミゾグチは頭に包帯を巻いていて服がひどく汚れていたが、大丈夫そうにみえた。全員が安堵のためいきをついた。数十秒のときが流れた。そうしてからシェリーが動いた。
シェリーはミゾグチを従えて、この場を去ろうとした。その際に振り向いてこういった。
「遊、星華。ミゾグチがライセンスを手にしたら、また会いましょう。アナタたちに力を貸してもらいたいことがあるから。」
こうして俺はライディングデュエルのライセンスを手にしたのだった。
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ライディングデュエルのライセンスを手にしてから数日たった。
ライディングデュエルのライセンスを手にした感慨に浸らずに休む間もなく、プロデュエリストの試験勉強をすることにした。そのために俺は図書館にやってきた。童実野町の図書館は童実野町が海馬コーポレーションの城下町であることもあり、蔵書数も建物の大きさも町の図書館とは言えないほど立派だった。俺は『プロデュエリスト公式試験問題集』を借りるため、この図書館に入った。図書館は夏休みのためか小学生から大学生ぐらいの年齢の利用者が多かった。とりあえず、機械を用いて蔵書検索を行うことにした。
『公式試験問題集』は2階にある一番奥の本棚にあるようだった。蔵書として5冊図書館が所有しているが、1冊を除き貸し出されていた。最後の1冊を誰かに借りられる前に借りようと俺は心持ち早めに歩き出した。
2階の一番奥の本棚に到着し、目当ての本を見つけ出した。俺の胸ぐらいの高さに『公式試験問題集』があることに気付いて、安堵し手を伸ばした。すると、ほぼ同時に隣から手が伸びてきて、互いの手が触れあった。俺は相手を確認するために眼を向けた。そこにいたのは赤い髪で遊戯王の主人公を思わせるような特徴的な髪形をした少女だった。その少女を俺は何度かアイドルとしてテレビでみたことがあった。少女はテレビでみたときのような快活な態度とは違って年相応の少女らしく謝罪の言葉を述べた。
「・・・す、すいません。」
「・・・いえ、いいですよ。」
少女の小さな謝罪の言葉を受け入れつつ、俺は思った。ラブコメで使い古された出会い方だな、と。
俺たちはその後、少し話し合って近くの喫茶店で会話をすることにした。簡単な自己紹介をお互いに済ませてから、話をしはじめた。彼女はやはりアイドルだった。名前は嶺開花(りんかいほう)。トップアイドルほどではないが、それなりのアイドルとして人気がある女性だった。
「・・・ところで、リンさんはどうして図書館に?」
「え?」
「リンさんみたいなアイドルなら『プロデュエリスト公式試験問題集』ぐらいいくらでも本を買うことができるでしょ?それなのにどうして?」
「・・・お金がいるからです。」
そうしてからリンは自分の置かれている状況を淡々と語った。リンの生まれ育ったところは貧しい田舎町で学校も病院も道路や水道などのインフラも整っていなかった。そうしたところでの生活は苦しく、そこにいた住民はみんなこの現状を何とかしたいと思っていた。そんなときに転機が訪れる。偶然、その地を訪れた日本人のアイドルプロデューサーにアイドルとしてスカウトされたのだった。
「・・・そして、日本にやってきて、学業をこなしつつアイドルとして働き、生まれ故郷に送金をしているわけですか。」
「ええ、その通りです。」
リンさんは少し癖のある日本語で自然にできた笑顔をして、そういった。俺は少し冷めたコーヒーを口にしてから、つぶやいた。
「・・・すごいですね。誰でもできることじゃありませんよ。」
「ありがとうございます。」
「そうか、生まれ故郷に送金しているから、お金をあまり持っていなくて借りたかったわけですね。」
「その通り。」
リンはウインクをして肯定した。そうしてから真面目な表情になり話し始めた。
「アタシはどうしてもプロデュエリストになりたいので勉強をしたいんです。」
「・・・それはお金のためですか?」
「それもあります。だけど、純粋にプロになりたいんです。アタシは小さいころ、偶然にもプロデュエリストのデュエルをみたことがあります。それはとても素晴らしいデュエルでした。いまでもあのときのことが鮮明に思い出すことができます。」
「・・・・・・」
「あのとき以来、アタシの夢はプロデュエリストになることです。」
「そうですか・・・。」
純粋に夢を語る彼女はとてもまぶしかった。俺は少しだけでも彼女の支援をしたいと思った。彼女に図書館から借りた『公式試験問題集』を渡し、この喫茶店の代金を支払うことにしたのだ。リンは「そんな悪いですよ」といい断ろうとしたが、強引に押し切った。
それから30分ほどが経って、リンが予定があるために喫茶店を出た。俺は喫茶店に残ってコーヒーをもう1杯頼んだ。運ばれてきたコーヒーをすすりながら、今後の展開に期待するのだった。