生徒たちで満員になったデュエルアリーナで俺は栄養ドリンク、すなわちエナジードリンクの薬とも炭酸飲料ともいえる独特の風味を味わいながら、巨大スクリーンに映し出されたデュエル大会本選の組み合わせを確認していた。
第1日目
Aブロック 小南遊vs.小日向星華
Bブロック エド・フェニックスvs.ヨハン・アンデルセン
Cブロック 万条目準vs. ジェームス・クロコダイル・クック
Dブロック 天上院明日香vs.デイビット・ラブ
第2日目
Aブロック 遊城十代vs. アモン・ガラム
Bブロック 丸藤翔vs. 響みどり
Cブロック 天上院吹雪vs. オースチン・オブライエン
Dブロック 三沢大地vs.レジー・マッケンジー
全ての試合が終わり次第、次の対戦カードが発表されるということだ。俺の対戦は本選の初戦だった。対戦相手がよりにもよって響先生であることに対する翔の嘆きを聞きながら、この組合せを俺は理解した。デュエル場に向かう前に俺がこれまでに攻略してきたハーレムメンバーたちに「どうして、本選に出場できなかったのか」を質問した。すると、彼女たちは「自分たちの強さは良く知られているので対戦相手があまりいなかったからだ。」と異口同音に答えた。俺はその答えに納得した。栄養ドリンクを飲み干して、この場所を後にした。
デュエル場へと向かう廊下でレジー・マッケンジーとデイビット・ラブにあった。どうやら2人は俺を待っていたようだった。デイビット・ラブは「精霊のカードについて何かしているか?」と傲慢な表情で尋ねてきた。俺はそれに対して「十代と万条目が持っていると主張しているよ」と『ブラックマジシャン・ガール』と『墓守の暗殺者』の精霊をはべらせながら答えた。「なるほど・・・」とデイビットは嗜虐的な笑みで答え、この場を去った。後にはレジーと俺が残された。レジーは俺に近づいて「あなたはひどい人ね」とつぶやき、去っていった。俺はデュエル場へと向かった。
デュエル場では俺の対戦相手である小日向星華がすでに準備していた。小日向星華。彼女はデュエルアカデミアの2年生であり、このデュエルアカデミアのミスコンで2年連続で選ばれた人物である。まあ、今年のミスコンでは諸事情合って本選にすら選ばれなかったのだが。そんな彼女はデュエルアカデミアの生徒でありながらデュエルにはあまり熱心ではなく、このような大会で本選にまで残ることは意外だというのが俺以外のアカデミア生徒からの評価だった。
小日向星華は俺に対してどこか敵意を含んだ視線を向けてきた。それに対して事情を理解している俺は微笑みを返した。星華のにらみがより一層激しくなった。こんな状況の中、デュエルがはじまった。
「私の先攻からいくわ!私は手札から『苦渋の選択』を発動!『ブラックマンバ』3体と『呪念の化身ウルボヌス』2体を選択!さあ、選びなさい!」
「それじゃあ、レベル5で通常召喚に生贄が必要なので『呪念の化身ウルボヌス』を選択する。」
「わかったわ!『呪念の化身ウルボヌス』を手札に加え、残りは捨てる。『魔法石の採掘』を発動。手札の『呪念の化身ウルボヌス』と『猛毒マムシ』をコストにし、墓地から『苦渋の選択』を手札に加える。そして再び発動!『呪念の化身ウルボヌス』と『猛毒マムシ』2体、『蛇龍アナンタ』2体を選択する。」
「・・・『呪念の化身ウルボヌス』を再び選択する。」
俺の宣言に対して彼女は勝ち誇った顔で淡々とプレイをした。
「・・・これで私の切り札を出す準備は整った。私は場と墓地にいるすべての蛇を除外して『蛇龍アナンタ』を特殊召喚する!『蛇龍アナンタ』の攻撃力は除外した蛇の数×600。よって攻撃力は・・・」
『蛇龍アナンタ』攻撃力10000
「攻撃力10000・・・」
いきなりの高攻撃力モンスターの登場に会場は沸きだった。しかし、小日向星華は構わずにプレイを続けた。
「さらに手札から『闇エネルギー』(原作効果)を発動!『蛇龍アナンタ』の攻撃力を3倍にする!」
多くの頭を持つ巨大な蛇がさらに巨大化していった。その大きさは山を思わせるものだった。
『蛇龍アナンタ』攻撃力10000→30000
『蛇龍アナンタ』(漫画版『遊戯王GX』原作効果)
効果モンスター ☆8 闇属性 爬虫類族
攻撃力? 守備力?
このカードは自分のフィールド上及び墓地に存在する「蛇」を全てゲームから除外する事で特殊召喚する事ができる。このカードの攻撃力・守備力は、除外した「蛇」×600ポイントになる。
『闇エネルギー』(魔法カード・漫画『遊戯王』原作効果)
闇属性モンスターの攻撃力を3倍にする
「これでターンエンドよ!さあ、抗えるなら抗ってみせなさい!!」
彼女はそう「女王」という呼び名にふさわしい態度で言い放った。
それに対して俺は自分のターンであることを宣言してカードを引いた。そして、手札6枚を確認した。・・・・・・。そうしてから、対戦相手をみた。
彼女は勝利への確信に喜んでいた。
「勝った・・・。私から栄光を奪った女の男に。・・・これで・・・これで・・・私は・・・」
「・・・・・・ごめん。」
「・・・!・・・・・・それは自分があまりにも弱すぎて勝負にならなかったことへの謝罪かしら?」
「違う。俺が勝ってしまうことに対する謝罪ですよ。」
ため息をついて俺はカードをプレイした。
「手札から『ブリキンギョ』を召喚。効果で『召喚僧サモンプリースト』を特殊召喚。手札の『サンダーボルト』をコストに『召喚僧サモンプリースト』の効果を発動。デッキから『オネスト』を特殊召喚。『オネスト』の効果によりこのカードを手札に戻す。『ブリキンギョ』と『召喚僧サモンプリースト』でオーバーレイ。ランク4『ラヴァルバル・チェイン』。オーバーレイユニットとなった『召喚僧サモンプリースト』を取り除いて効果発動。墓地に『異次元の女戦士』を送る。」
「・・・?シンクロ、エクシーズで強力なモンスターを出すわけでもなく、融合をするわけでもない。まして、ペンデュラムをするわけでもない。一体、なにがしたいの?」
「なに、簡単なことさ。昔の環境における最強カードを出すだけさ。」
「昔の最強カード?」
「墓地の光属性『異次元の女戦士』と闇属性『召喚僧サモンプリースト』を除外し、『カオス・ソルジャー -開闢の使者-』を特殊召喚する。」
光と闇が混じり合った後、光輝くエフェクトとともにかつて環境を支配したモンスターが現れた。
「・・・ふん。だけど、攻撃力はたかが3000・・・。」
「『開闢の使者』には攻撃を放棄することでフィールドのモンスター1体を除外する効果がある。」
「なんですって?」
いつも思うんだが、どうしてデュエルを少しかじった人間なら知っていそうなことをこいつらは知らないんだ?・・・たぶん、演出の都合ってやつだな。
「で、でもたとえその効果を使って『蛇龍アナンタ』を除去したとしてもあなたの場の攻撃できるモンスターは攻撃力1800の『ラヴァルバル・チェイン』だけ・・・。私のライフは残る。」
「ああ、その通りだ。だから俺は除去効果は使わない。」
「え?」
「バトルフェイズ。『カオス・ソルジャー -開闢の使者-』で『蛇龍アナンタ』を攻撃。」
「攻撃力の差が10倍もあるモンスターに攻撃?何を考えてるの?」
「・・・はっきりと言いましょう。」
「・・・なにを?」
「この状況で攻撃しないという選択肢は普通しませんよ。」
そして、俺は光属性にとってコンバットトリックにおける切り札とも言うべきカードを発動した。
「ダメージステップ開始時に手札から『オネスト』を発動。この効果により『蛇龍アナンタ』の攻撃力を『カオス・ソルジャー -開闢の使者-』の攻撃力に加える。いけ!〈開闢双破斬〉!!」
『オネスト』
効果モンスター ☆4 光属性 天使族
攻撃力1100 守備力 1900
(1):自分メインフェイズに発動できる。フィールドの表側表示のこのカードを手札に戻す。
(2):自分の光属性モンスターが戦闘を行うダメージステップ開始時からダメージ計算前までに、このカードを手札から墓地へ送って発動できる。そのモンスターの攻撃力はターン終了時まで、戦闘を行う相手モンスターの攻撃力分アップする。
『カオス・ソルジャー -開闢の使者-』
攻撃力3000→33000
『カオス・ソルジャー -開闢の使者-』の剣に『オネスト』が舞い降り、剣へと入り込んだ。すると、剣は今まで以上に美しく輝いた。それは「神々しい」と表現すべきものだった。『開闢の使者』はその剣をしっかりと握りしめると、ヤマタノオロチを思わせる蛇、『蛇龍アナンタ』へと飛びかかった。そして、『蛇龍アナンタ』を一刀のもとに両断した。
「っく・・・!」
小日向星華 LP4000→1000
「さらに、『カオス・ソルジャー -開闢の使者-』の効果。このカードが戦闘で相手モンスターを破壊した時、続けてもう1度攻撃できる。」
「連続攻撃?」
「いけ、『カオス・ソルジャー -開闢の使者-』!〈時空突刃・開闢双破斬〉!!」
『カオス・ソルジャー 』は俺の言葉にうなづくと斬撃を斬り出した。その斬撃は遅いのか、速いのかよくわからなかった。まるで時間という制約から離れて繰り出されているようだった。物理法則を無視したそんな斬撃が星華の体に襲い掛かった。彼女はその衝撃でデュエル場から吹っ飛ばされた。
小日向星華LP1000→-32000
『カオス・ソルジャー -開闢の使者-』
効果モンスター ☆8 光属性 戦士族
攻撃力3000 守備力2500
このカードは通常召喚できない。自分の墓地から光属性と闇属性のモンスターを1体ずつ除外した場合に特殊召喚できる。このカードの(1)(2)の効果は1ターンに1度、いずれか1つしか使用できない。
(1):フィールドのモンスター1体を対象として発動できる。そのモンスターを除外する。この効果を発動するターン、このカードは攻撃できない。
(2):このカードの攻撃で相手モンスターを破壊した時に発動できる。このカードはもう1度だけ続けて攻撃できる。
俺はデュエルが終わると審判の勝利宣言も待たずに彼女に駆け寄った。彼女は血を流していなかったが、気を失っていた。念のために俺は彼女を揺さぶらず、声をかけるにとどめていた。しばらくすると、担架がやってきて彼女を保健室へと連れて行った。
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「・・・う、ん・・・」
俺は彼女の声に気付くと先生たちとの会話を中断し、ベットのそばへと駆け寄った。そして、彼女は覚醒した。
彼女は自分がどこにいるのかが、まだよくわかっていないようだった。だから、俺は助け船を出すことにした。
「体は何ともありませんか?小日向先輩?」
「!!アンタは・・・。」
驚いた表情をつくりしばらく絶句した。そして、そのあと、泣きだしそうな表情をつくって言葉をなにも言わなかった。その様子をみて、鮎川先生が手を差し伸べた。
「・・・小南君、響先生。小日向さんはまだ少し、調子がわるそうです。少し、席を外してくれませんか?あなたたちはまだデュエルに出なければいけないわけですから。」
「・・・そうね。行きましょう。小南くん。」
俺たちはこうしてこの場から去ることになった。その際の去り際に彼女に一言言い添えることにした。
「小日向さん、楽しいデュエルでしたよ。」
「・・・それは私に対する嫌味のつもり?」
「そんなことはない。」と言おうとして俺は言葉をつぐんだ。なぜなら、もしそれを言ってしまったら逆効果になることが手に取るようにわかったからだ。そのため、俺は無言でこの場を去った。そして、デュエルの観戦をすることにした。
デュエルの観戦をしながら、俺は小日向星華の立場について考えていた。彼女は今年入学した1年生、さらにいうと俺のハーレムメンバーたちが入学したことによって今年のミスコンでは最終選考に選ばれなかった。その理由はミス・デュエルアカデミアにはデュエルの秀でた生徒が望ましいからだというものだった。ミス・アカデミアになれなかったことで容姿に絶対の自信がある彼女は相当の屈辱を感じたのだろう。だから、彼女はミス・アカデミアに返り咲くためにこの大会に優勝したかったのだ。「自分が容姿だけに秀でた生徒」ではなく、「デュエルの秀でた生徒」であることを証明するために。そんな理由がなくとも負けたくはなかったのだろう。自分からミス・アカデミアの座を奪った女たちと親しい男には。
「・・・それにしても、絶望的に行為のないこんな状況からどうやって小日向星華攻略にまで持っていくのだろうか?・・・まあ、なんとかなるのだろう。この世界はエロゲーなのだから。」
そこまで考察を続けると、俺はデュエル観戦に集中することにした。
ちなみに残りのデュエル結果はBブロックのエド・フェニックスvs.ヨハン・アンデルセンはヨハン・アンデルセンの勝ち、Cブロックの万条目準vs. ジェームス・クロコダイル・クックの戦いは万条目の勝ち、Dブロックの天上院明日香vs.デイビット・ラブの戦いはデイビット・ラブの勝ちに終わった。中でも特筆すべきは明日香とラブの戦いだった。明日香はラブに先行ワンターンキルをされたのだった。そのプレイングをみて、「傲慢な態度をとっているのは自分の実力を過信しすぎているからではないな。」と俺は思った。かくして、今日のデュエルは終了した。
デュエルが終わった後、しばらくの間は参加者で歓談することになった。俺はヨハンと会話をしたり、エドをデュエルでの敗北でからかったりして楽しみながら、明日香の様子を確認した。明日香はラブにワンターンキルされたことでいつになく落ち込んでいるようだった。今夜は明日香と寝て慰めないといけないと思った。ハーレムをつくることとハーレムを維持することの大変さを感じた1日だった。