フルフルに転生したので女の子にエロい事する 作: katate
ミラボレアスのけたたましい咆哮はまさに天変地異を起こす程の威力だった。地響きが起こり、遺跡にヒビが入り、山頂が崩れてしまうのではないかと思うくらい影響が及んだ。
少年は倒れない様に壁に身体を寄せながらなんとかそれに耐えた。そして威嚇が終わったミラボレアスは改めて自身の獲物達に目をやった。
人間が三人、モンスターが一匹。普通ならこの組み合わせは不思議に思う所だが、破壊本能だけしか無いミラボレアスにはさしたる疑問は無かった。ただ破壊する。切り裂き、踏みつぶし、噛み砕く。ただそれだけ。血走った瞳で獲物達を睨み、ミラボレアスは動いた。
「来るぞ!!」
ミラボレアスの動きに気がついて男性ハンターが周りに注意を促す。それに反応して漆黒の女の子もフルフル装備の子もそれぞれの武器を構えた。
ミラボレアスの長い尻尾が遺跡を破壊する。殆ど崩壊している建物が跡形も無く砕け散り、辺りに瓦礫を飛ばしながら尻尾が通過した。女の子達は身を低くしてすぐに躱す。男性ハンターも射程内から出る事によって回避した。だが少年だけは。
(ごぶばァッ!?)
「色欲……ッ!?」
ただでさえ重たい身体で俊敏な動きが出来ない為、反応が遅れて少年は避ける事が出来ずにミラボレアスの尻尾を喰らう羽目となってしまった。建物を破壊する程の威力を持つその尻尾は少年の身体に食い込み、メリメリと嫌な音を立てて彼の身体を吹き飛ばした。
壁に激突し、煙を上げながら少年は崩れ落ちる。腹部から伝わって来る痛みに耐えながら、彼はだらしないうめき声を上げて苦しんだ。
(ごほッ……ちょ、ま……いきなりかよ……!?)
決して油断していた訳では無い。そんな物ミラボレアスを前にした瞬間に吹き飛んだ。だが、だというのに、こんないきなりという事があるだろうか?気がつけば横から影が通り過ぎ、ミラボレアスの尻尾が自分の身体に食い込んでいた。それくらい一瞬の出来事だったのだ。少年は完全にミラボレアスの動きに付いて行けてなかった。
まずは一匹と言わんばかりにミラボレアスは咆哮を上げた。男性ハンターはすぐにバリスタを起動させると矢をミラボレアスに向けて放った。だが矢は漆黒の鱗によって弾き飛ばされ、何の傷も付けない。ミラボレアスはギョロリと男性ハンターの方を向くと、その血走った瞳で彼の事を視界に捉えた。
「バリスタが効かねぇ……ッ!!」
「逃げて……来る!!」
男性ハンターは負けじとバリスタを撃ち続けるがやはり効果が無い。そしてミラボレアスの身体に異変が起こった。痛みを感じた訳では無い。まるで何かを蓄えているような、そんな動作。それに気がついた瞬間、フルフル装備の子は声を上げて男性ハンターに逃げるように促した。だが男性ハンターにその声は届かない。
「ゴァァァァアアアアアアアアア!!!」
ミラボレアスがめいいっぱい口を開けて咆哮を上げた。次の瞬間、その口から大量の炎が吐き出され、男性ハンターの視界は紅蓮で埋め尽くされた。
豪と大きな音を立てて遺跡の一部が炎に包まれる。ほんの一瞬。僅かな動作。たったそれだけのミラボレアスは遺跡の一部を黒ずみにし、跡形も無く破壊してしまった。
そして炎が収まった後、その場には男性ハンターの姿も、設置されていたバリスタも無くなっていた。
「……ッ!!」
「集中して。油断すれば君もあの男みたいになるよ」
「……分か、ってる」
思わず瞳に涙を浮かべてフルフル装備の子は硬直した。
分かっていた事ではあった。相手はあのミラボレアス。こうなる事は十分承知していた。彼もそれは分かっていたはずだ。だが、こうもあっさりなど有り得るだろうか?あまりに非常な現実を受け入れきれず、フルフル装備の子は敵を目の前にしながら動きを止めてしまった。
それを見た漆黒の女の子は注意を飛ばし、フルフル装備の子も正気に戻って目に浮かんでいた涙を拭いた。今は、悲しんでいる暇は無い。
「やってくれるねぇ、ミラボレアス……ほんと、ゾクゾクして来るよ」
舌で唇をペロリと舐めながら漆黒の女の子はそう言い、剣と盾を構えた。走り出し、臆する事なく真っ直ぐミラボレアスへと向かって行く。
ミラボレアスは再び大きく息を吸い込み、力を蓄える動作をした。その瞬間漆黒の女の子は壁に身を隠す。フルフル装備の子も射程外へと逃げた。
遺跡の一部が炎で包まれる。だが壁を盾代わりにした漆黒の女の子は無事で、炎を凌いだ彼女は攻撃が終わると再びミラボレアスに向かって走り出した。
躊躇しない。例え黒龍であろうと弱点さえ潰してしまえば終わる。それはどのモンスターでも同じ事である。
地面を蹴って跳躍した漆黒の女の子はまずミラボレアスの背に乗った。暴れるミラボレアスに捕まりながら女の子は剣を突き刺す。だが通らない。やはり硬い漆黒の鱗で覆われている背中は簡単に引き裂く事は出来なかった。だがそれも承知の上。ならばと漆黒の女の子は再び跳躍し、ミラボレアスの首まで移動すると盾を投げ捨てて再び跳躍した。
「せぇぇ……りゃッ!!」
宙へと身を委ねた彼女は回転しながらミラボレアスの頭部へと近づく。そしてほんの少しだけ交差した瞬間、漆黒の女の子はミラボレアスの片目に剣を突き刺した。
いくら強靭な鱗を持つミラボレアスであろうと眼球を守る事は出来ない。弱点を付かれたミラボレアスは甲高い咆哮を上げ、身体をよじらせて暴れた。
「ゴァァアア……ッ!!?」
「……くっ!」
ミラボレアスが暴れた際に翼に引っ掛かり、漆黒の女の子は地面に着地した瞬間に痛そうに肩を抑えた。更に最悪な事にその手には剣が無い。彼女の剣はミラボレアスの目に突き刺さったままだった。
武器が無い状態で敵と対峙するのは非常に危険である。そしてそれを分かっているのか、暴れながらもミラボレアスは漆黒の女の子に向かって尻尾を振り下ろした。
(あぶ……ねぇ!!)
「色欲……!」
突如横から少年が乱入し、口で漆黒の女の子の事を持ち上げるとそのまま横へと飛び出した。ギリギリの所で尻尾を回避し、転がるように滑り込みながら少年は撤退する。漆黒の女の子も無事で、口から離された彼女は驚いた表情をして少年の事を見た。
「色欲、援護して!」
だがそれも束の間、すぐにフルフル装備の子から声が掛けられる。フルフル装備の子は大剣を担ぎながらミラボレアスへと向かうと、迷う事なくその巨大な鉄塊をミラボレアスの尻尾に向けて振り下ろした。
ガツン、と痛々しい音が響き渡るが、わずかに尻尾に切れ目が出来る。真っ赤な血がフルフル装備の白を汚し、女の子の頬に返り血が掛かった。
(んな事言われても……!)
援護をしろ、と言われても少年はそのような連携をした事が無い。とりあえず暴れているミラボレアスに電撃を飛ばすが、効果は無いようであった。流石は黒龍。痺れも全くか、と自嘲気味に少年は思うが、それでも何もしないよりはマシだろうと前向きに考える。
フルフル装備の子は上手く立ち回っていた。大剣でありながらも俊敏な立ち回りでミラボレアスの死角に入り込み、チビチビであるが着実にダメージを加えていっている。ミラボレアスも片目を失っている為、精神的にも大分ダメージを負っている様子であった。だがやはり古龍が相手では簡単にいかないらしい。フルフル装備の子の表情にも焦りが見えていた。
「はぁ……はぁ……」
(不味いぞ……逃げろ!!)
フルフル装備の子動きに衰えが見え始めた。スタミナ切れだ。すぐに少年は咆哮を上げて逃げるように伝えるが、言葉は通じない。その咆哮が何を意味するのはフルフル装備の子には伝わらなかった。
彼女の横から尻尾が現れる。人間からすれば巨大な尻尾を叩き付けられたフルフル装備の子は簡単に吹き飛ばされ、その小さな身体を回転させながら壁に激突した。ズルズルと崩れ落ち、持っていた大剣も離してしまう。
(なっ……ぁ……!)
「あ〜〜……これはヤバいねぇ。うん、本当にヤバい……流石は伝説の黒龍と言うべきか。ここまでだなんてね……ゾクゾクを通り越してビクビクしてきた」
死んだかどうかは分からないが着実に再起不能の状態となっていた。男性ハンターも倒され、フルフル装備の子もこれ以上の戦闘は不可。こうなったらもう少年と漆黒の女の子だけが頼りであった。だが知っての通りヘタレな少年に戦闘は期待できない。更に隣の漆黒の女の子は現在武器が無い上に肩を負傷している。最悪の状態であった。
「やるしか無いね……色欲、援護頼んだよ」
(い、いや、やるってお前……武器はどうすんだよ?)
「あ、今武器はどうするって顔したね?何となく分かったよ……大丈夫、自分で何とかするから」
流石に少年の慌てぶりから意味が伝わったらしく、その事に嬉しそうに頬を緩ませながら漆黒の女の子は少年を安心させるように笑った。そして彼女は迷いなく走り出す。とりあえず少年も言われた通り電撃をミラボレアスに飛ばす事で援護した。
とにかく今は距離を空けながら漆黒の女の子に注意が行かないようにミラボレアスを攻撃するしか無い。それが少年の必死の策であった。
武器を持たない彼女は本当に怖く無いのか、それとも狂っているのか、笑いながらミラボレアスに向かって行った。背中へと飛び乗り、再びミラボレアスの頭部に向かって跳躍する。そして宙を舞いながら女の子は手を伸ばし、ミラボレアスの片目に突き刺さっている自身の剣を引き抜いた。
「もう片方も……貰うよ!!」
再び剣を取り戻した漆黒の女の子はそう言うと縦に剣を振り下ろし、ミラボレアスのもう片方の瞳を切り裂いた。鮮血が飛び散り、漆黒の女の子の鎧が真っ赤に染まる。ミラボレアスは今までに無いくらいの咆哮を上げ、苦しむように舌を出した。そして奴の暴れた際の腕が漆黒の女の子の背中を捉えた。
「ゴァァアアアアァァアアアア!!!?」
「……がふッ!?」
ザギリ、と何かが引っ掛かる音が響き、漆黒の女の子は地面へと叩き付けられた。背中部分の鎧が剥がれ、血が流れている。恐らく爪が引っ掛かったのであろう。
すぐに少年は飛び出して先程と同じように口で咥えて女の子と一緒に撤退した。幸いミラボレアスは暗闇の世界で混乱している為、追い打ちを喰らうような事は無かった。
(お、お前! なんつー無茶を……!!)
「はぁ……はぁ……い、痛ったぁ……これは、ちょっと……動けないかな?」
大分負傷してしまったのか、安全な所に移動して壁の裏に避難した後も漆黒の女の子は動けずに居た。無気力に地面に倒れ、薄笑いを浮かべながら汗を流している。もしかしたら背骨辺りをやってしまったのかも知れない。不安がる少年に対して漆黒の女の子は申し訳なさそうに笑みを浮かべた。
「ごめんね……報酬は、もうちょっと先になりそう……」
(んな事言ってる場合じゃねーだろ!?)
とりあえず漆黒の女の子はこれ以上の戦闘は無理。フルフル装備の子も同様。この後をどうするべきかと少年は周りの状況を確認した。
ミラボレアスは視界を塞がれ完全に混乱状態になっている。奴はどれ程鼻が効くかは分からないがしばらくは自分達の存在には気付けないだろう。ならばもう逃げても良いのでは?と少年は一瞬そんな事を考える。
こちらは既にボロボロ漆黒の女の子も傷も深いしフルフル装備の子も気絶している。ならば逃げたって問題は無いだろう。
時間ならもう十分に稼いだ。それどころかミラボレアスの両目を潰したのだ。戦果としては大き過ぎる程である。もう良いだろう。最初からあんな化け物を倒せる訳が無かったのだ。これで十分。少年は自分に言い聞かせる。だが彼は目にしてしまった。暴れ回るミラボレアスが口から炎を吐きながら辺りを地獄に変えている事に。
(もしもアレがあのまま暴れれば……森はもちろん、その内街にも被害は回るよな……)
視界が見えなくなったと言えどミラボレアスの脅威は消えない。それどころか混乱している今の奴はより危険な存在となったと言えるだろう。なりふり構わず、周りの被害など関係無しにとにかく暴力行為を振るい続けているのだ。正に災害そのものである。そんなのがもしも街まで辿り着けば……一体どうなってしまうのか?
少年はふと先程の男性ハンターの事を思い出した。あまりにもあっさりと、無情な程に殺されてしまった男性ハンター。彼は決して油断などしていなかったし実力も十分だった。だというのにあんな……簡単に。
もしも街に辿り着けばあのような行為が繰り返されてしまうかも知れない。少年は初めて責任を感じた。
(今なら……やれる……)
両目を潰されて混乱しているミラボレアス。奴を倒せるチャンスは今しか無い。再び冷静さを取り戻せば今度こそ倒せる機会は無くなる。今しか無いのだ。唯一殺せる瞬間。唯一隙がある状態。そしてそれを行えるのは……自分しか居ない。少年は身震いした。
決して正義の心に目覚めた訳では無い。ただ彼の肩には責任が伸し掛っていた。一人の男性ハンターが犠牲となった。一人の少女が傷を負った。一人の少女が動けなくなった……こんな惨状を目にすれば誰だって責任を感じる。彼は今、ようやく一人前の人間としての行動を取ろうとしていた。
少年は隠れていた壁から出ると目的の物を取りに行った。フルフル装備の子が持っていた大剣である。気絶している彼女の元まで走って移動すると、落ちていた大剣を口で拾い、まるでハンターが構えるかのようにそれを咥えた。
この鉄の塊ならばミラボレアスの腹を貫けるはずである。硬い鱗がある背中なら難しいが、暴れている今なら腹を狙えるはずだ。加えてモンスターの筋力で大剣を震えば威力はハンターの比では無いはず。これが彼が考えた最後の作戦であった。
丁度その時、気絶していたフルフル装備の子が目を覚ました。だがダメージが大きいのか身体を震わせて苦しそうに少年の事を見上げている。
「色……欲?」
(悪いがこの剣借りるぜ。あー、返せないかも知れんが……それはめんご)
大剣を借りるという趣旨で翼を動かして大剣を指差し、少年は自分の意思を伝えた。するとそれが伝わったのか、フルフル装備の子は目を見開くと駄目とでも言うように首を横に振って手を伸ばそうとした。だがその手は届かない。
「だ、駄目だよ……そんな事したら、貴方が……」
これから少年がしようとしている事を理解し、フルフル装備の子は止めようと身体を起こそうとした。しかし身体は言う事を聞いてくれない。立ち上がろうとしても力が入らず、再び地面へと崩れ落ちるだけだった。
そんなフルフル装備の子の頭を翼でポンと叩いた後、少年は大剣を咥えたままミラボレアスの方へと向かって歩き出した。
(じゃな……)
最後にそれだけ言い残し、彼はずんずんと歩いて行く。遠くなって行く少年にフルフル装備の子は必死に手を伸ばした。やっぱり届かない。フルフル装備の子は涙を流しながら必死に声を張った。彼の名を呼ぶ。それも届かない。
ミラボレアスは相変わらず暴れてばかりだった。だが少年が近づいて来た事に気がつくと、目を瞑りながらも感覚で相手の居場所を感じ取っているのか、少年の方に顔を向けて低い唸り声を上げた。思わず少年は一歩後ろへ下がってしまう。だが逃げる訳には行かない。覚悟を決めて大剣を強く咥え直し、ミラボラスと対峙した。
「ゴァアァァァアアアアアアアアアアアア!!!」
ミラボレアスがこれまでに一番大きな咆哮を上げた。辺りの瓦礫が揺れ、遺跡が崩壊してしまいそうな程の衝撃波が飛んだ。だが少年は引かない。大剣を構えて走り出すと、真っ直ぐミラボレアスに向かって突き立てた。
ミラボレアスが炎を吐く。少年の身体に擦る。少年は引かない。大剣がミラボレアスの腹に突き刺さる。
全てほんの一瞬の出来事だった。大剣をミラボレアスの腹に突き刺すと同時に少年は更に強く大剣を押し込み、ミラボレアスに突進を喰らわせた。ミラボレアスは甲高い悲鳴を上げてのたうち回る。暴れに暴れ、爪が、牙が、尻尾が少年を襲った。だが少年も離さず、更に深く大剣を突き刺した。
バキリ、とミラボレアスと少年が立っていた地面にヒビが入った。散々暴れた為か山頂の一部が崩壊し始めたのだ。そのまま雪崩のように地面の一部が崩れ始め、その崩壊にミラボレアスと少年は巻き込まれて行った。いくら翼を持つモンスターと言えど突然の土砂崩れ、加えて戦闘中だった為、岩に挟まれながら二匹は落下していった。
「色欲ーーーーッ……!!」
その光景を見ていたフルフル装備の子は少年の名を呼んだ。
岩が崩れ落ちて行く音にその声は消され、少年の姿も見えなくなって行く。ミラボレアスと少年の姿は完全に闇の中へと沈んで行った。
戦いは実にあっという間に終わってしまった。フルフル装備の子は土砂崩れが収まった後も放心した状態で、一体何が起きたのかが理解出来ずに居た。ようやく身体が動けるようになると身体を起こし、立ち上がって崖になっている山頂の一部を見下ろした。深い深い闇が広がっている。こんな所から落ちればひとたまりは無いであろう。終わってしまったのだ。全て。
フルフル装備の子は小さく涙を零した。その涙は風に吹かれ、何処かへと飛んで行ってしまった。
◇
調査報告第二レポート。
“黒龍ミラボレアス”は北北東の古代遺跡にて消息不明。此処では三人のハンターと“色欲のフルフル”による共闘が行われたらしく、遺跡の一部は崩壊し、土砂崩れが起こったされる。ミラボレアスとフルフルはこれに巻き込まれた模様。
この戦闘で一人の男性ハンターが死亡。彼の亡がらは回収出来ず、唯一残った彼の武器が遺品として家族に送られた。
また“最狂のハンター”も重傷を負い、後遺症を残してしまった。昔のようなハンター生活は出来ないと思われる。現在は療養しながら各地の村を点々としている噂が有力。
“最強のハンター”も負傷はしたものの無事ハンターに復帰。ミラボレアスの撃退の功労者として崇められ、議員達から報奨金を与えられた。だが本人はこれを拒否。被害にあった街や村の再興として使って欲しいという意思が強かった為、本人の意向を汲む事となった。
後日、古代遺跡で調査が行われ、崖崩れがあった場所を調べる事となった。落下場所にはミラボレアスの死体があり、胸には報告にあった通り大剣が突き刺さっていた。だが奇妙な事に色欲のフルフルの死体は発見出来なかった。
近くで飛竜の足跡が確認されがそれがフルフルと同じ物かどうかは定かではない。調査員はより細密な調査をする必要があると判断したが、ギルドはこれを拒否。街の復興などに資金が当てられた為、これ以上の調査を望む事は出来なかった。
結果、ミラボレアス死亡。色欲のフルフルも死亡扱いとされた。
此処からは個人的意見とする。
私は色欲のフルフルは生きていると思う。三人のハンターと共闘したという報告をギルドはただの偶然だ、と判断したが、私は三人のハンターの内の誰かが色欲と意思疎通を計り、協力を煽ったのだと推測する。
色欲のフルフルは我々の言語を理解している節がある。私は何度か色欲の生態を調査していた為、彼の人間らしい仕草や行いなどに度々疑問に思っていた。もしかしたら彼は突然変異によって生まれたモンスターの新しい“形態”なのかも知れない。
ラオシャンロンの出現、ミラボレアスの降臨、その中心にはいつも色欲のフルフルが居る。彼が時代の真ん中に居るのだ。ひょっとしたら、我々は新しい時代が誕生する瞬間を目撃していたのかも知れない。
少し話が逸れた……とにかく私は色欲のフルフルが生きていると思う。ので、もう少しだけ個人的に調査をしたいと思う。
以上で報告を終了する。
◇
「……という事で、私は色欲のフルフルは生きていると思うんです。彼と最も接点がある貴方なら何か知っていると思うんですが……その辺りどうなんでしょうか?」
あれから十年が経った。ミラボレアスの襲撃事件も少しずつ人々の記憶から薄れ始め、街の復興もようやく一団欒付き、世界は落ち着きを取り戻していた。
そして今日、ある一人の女性の家でギルド職員の赤い制服と帽子を身に纏った女性がある取材をしていた。メモ帳を片手に、もう片方の手で握っているペンを走らせ、一言一句逃さないように筆を走らせている。彼女はかつて色欲に犯されながらも取材したという偉業を残したギルド職員の少女であった。
「懐かしい話だね……もう十年か……」
質問を受けている女性、長い青い髪を垂らし、少しつり目な美しい瞳をした女性。彼女はあのフルフル装備の女の子であった。
十年が経ち成長した彼女はすっかり大人となり、背も伸びて身体付きも大人の物へと変化していた。首筋や頬には切り傷の跡があり、あの後も相変わらずストイックなハンター生活をしていた様子が窺える。もうハンターは引退したのか、フルフル装備は着ず、白いワンピースのような衣服を着ていた。
そんな彼女は色欲のフルフルの話をされ、懐かしそうに頬を緩めて笑みを零した。
「率直に聞きます。あれから貴方は色欲のフルフルと会いましたか?」
「会ってないよ……そもそもあいつは死んだんじゃないの?」
「私はそうは考えてません」
ギルド職員の女性の質問に対して青髪の女性は静かに首を横に振りながら答えた。その答えに対してギルド職員の女性は目を細くしながらペンを動かし、メモ帳に何かを書き込んでいる。
どうやらギルド職員の女性はまだ色欲のフルフルが生きていると考えているらしく、それで色欲と接点が多かった彼女の元へとやって来たらしい。
青髪の女の子はお茶を入れたコップを握りしめながら小さくため息を吐いた。
十年……あれからもう十年も経ってしまったのか。青髪の女性はおもむろに家の壁を見た。そこにはあの時の大剣が飾られていた。ミラボレアスに致命傷を負わせたとされる大剣。女性からすればこれは単なる愛用していた剣であるが、ギルドの職員達がやたら大袈裟に言う為、こうして家の壁に仰々しく飾る羽目になっていた。だが彼女は時々思い出す。あの大剣を咥えてミラボレアスに立ち向かって行った色欲のフルフルの事を。
「お母さーん」
ふと、部屋に第三者の声が響いた。青髪の女性が振り返ると丁度扉の前に少女が立っていた。
肩まで伸ばした青色の髪に、青髪の女性と同じ様に若干つり目な美しい瞳をした少女。彼女はその丸い瞳をコロコロと揺らしながら手を伸ばした母と呼んだ青髪の女性へと抱きついた。
「あれ、どうしたの?お昼寝してたんじゃないの?」
「怖い夢みたー」
「それは大変だったね……大丈夫、お母さんが側に居るから」
瞳に涙を浮かべながら訴えて来る娘に青髪の女性は相変わらずの無表情で受け応えするが、ポンポンと彼女の頭を撫でてやったりと優しい素振りも見せる。そして安心させるように優しい声を掛けると、彼女を持ち上げて自分の膝の上に乗せた。
「じゃぁ……私は今日はこのくらいで」
「うん、また来て良いよ……まぁ、貴方が知りたい事は教えられないと思うけど」
これ以上はお邪魔かなと思ったギルド職員の女性はお茶を飲み干すとそう言って席から立ち上がり、お辞儀をした。青髪の女性も娘の頭を撫でながら空いているもう片方の手を振って彼女を見送った。
ギルド職員の女性が去った後、青髪の少女は瞳をコロコロと転がしながら母親の事を見上げた。まん丸な瞳で見つめられた青髪の女性はふと首を傾げ、どうしたの?と娘の事を見つめ返した。
「あのねー、シッキーがねー。また新しい玩具くれたの。みてみてー」
「へぇ……凄いね。紙を折って作ったの?本当、あいつは器用だね……」
娘の掌から出された鳥の形に折られた紙を見て青髪の女性は感心したようにそれを持ち上げた。
実によく丁寧に折られている。本当にどうやってあのブヨブヨな皮膚でこんな器用が出来るのやら、と彼女は疑問に思った。
青髪の女性は小さく笑みを作る。十年前のあの後何があったのかは誰も知らない。あの後、色欲のフルフルが無事だった事は自分と漆黒の女の子しか知らない。これは三人だけの共有の秘密であった。
青髪の女性は優しく娘の頭を撫でる。自分の大切な宝物。母親に成長した彼女の笑顔は、とても優しいものだった。
◇
「なに君、またあの女の娘に折り紙教えてたの?」
とある森林で一人と一匹が歩いていた。一人は漆黒のドレスを身に纏った赤髪の女性。言わずもがな彼女であった。彼女もまた十年という月日によって成長し、すっかり大人となっていた。更にいやらしい体つきになり、美女と言っても過言では無い姿になっている。ただし以前のように武器は持たず、鎧も着ていない。今は単なる旅人の彼女は相変わらず黒が好きなため、漆黒のドレスで身を包んでいた。ついでにティアラも付けている。
(別に良いだろ。時々しか会えないんだし……)
対してもう一人は、色欲のフルフルと呼ばれるあの少年であった。
彼は漆黒の女性の指摘に対してグルグルと唸り声を上げた。その言葉だけで意思が伝わったのか、漆黒の女性はやれやれと言わんばかりに首を振って呆れたようにため息を吐いた。
十年前、ミラボレアスと共に落下した少年は何とかミラボレアスを下敷きにする事によって事なきを得た。だがそれでも落石などで身体を痛めつけてしまい、ある程度負傷した彼は森の中でしばらく身体を休める事を余儀なくされた。
ギルド職員の調査から身を隠しながら、大好きなエッチな事も我慢し、彼は珍しく療養に集中した。そして途中で合流した漆黒の女性と共に、今はこうして当ての無い放浪の旅をするようになっていた。
今回はたまたま近くを通りかかった為、かつてのフルフル装備の女の子と、その娘に会いに来ていたのだ。
ちなみに“シッキー”というのは娘が勝手に付けたあだ名で、流石に色欲という言葉は不味いだろうと青髪の女性が判断し、娘にそう呼ばせるようにしたのだ。
(さーて、それじゃそろそろ腹ごなしに誰か可愛子ちゃんでも襲おっかなー)
「あ、エッチな顔してる。本当相変わらずだねー、君は」
少年が醜い顔を歪ませながら良からぬ事を考えると、漆黒の女性は長い付き合いの為、彼が何を考えているのかすぐに分かった。
またいつものエッチな事か、とため息を吐き。彼女はジト目で少年の事を見る。だが少年は気にしていないように歩き出し、女性もその後を追った。
長い長い戦いを終えた少年は傷つき、様々な物を失った。主にプライドとかメンタル的な物を。だがそれでも得た物があった。それはエロがどれだけ素晴らしい物かという改めて気付かされたものであった。
エロは素晴らしい。可愛い女の子があられもない姿になり、嫌がりながら感じてる姿はまさに女神そのもの。故に少年は女の子を襲う。そこに女の子が居るから。
彼の戦いは、まだまだ始まったばかりだった。
これにて完結です。
短い間でしたが有り難う御座いました。