フルフルに転生したので女の子にエロい事する 作: katate
引っ越しという目標を掲げた少年はようやく森から脱出し、新しい大地へと降り立った。と言っても景色は然程変わらず、森丘にそっくりな平原もあれば雪原にそっくりな雪山も存在した。然程新鮮さを感じない旅となった事に少年はちょっとだけガックリとした。
そして再び森の中を歩いている最中、少年は発作的なあの病気を発祥させた。そう、エロい事がしたい。
女の子を犯すようになってから少年は定期的にこのような症状を発祥させるようになった。癖になってしまったというべきか、依存症に陥ってしまったというべきか、このような状態になると少年は女の子を襲いたくて襲いたくてたまらなくなり、普段よりちょっとだけ荒々しくなるのだ。
(うぅ……何処かに女の子は居ないのか?エ、エロい事がしたい……)
最早病気と言っても良いのではないかと思う程焦りを見せながら少年は木々に隠れつつ獲物を探した。此処まで来る道中に車輪を引きずった跡や人間の足跡があった事から既に此処が街の近くである事が推測される。だとすればこの森も狩猟場としてハンター達が居るはずだ、と少年はアタリを付けていたのだ。そしてその妙に鋭くなっている勘は的中し、少年は標的を見つける事が出来た。
(居た……!)
丁度木が生えていない一カ所だけ開けた場所に一人の女性ハンターが立っていた。
青色の長い髪を腰辺りまで垂らし、例のごとく頭装備を付けていない可憐な美少女。容姿は文句無く、ちょっとキリっとした目つきをしていてそそるモノがある。腰回りも大分いかがわしい形をしており、胸も十分にある事からまるでモデルのような完璧なスタイルをしていた。強いて言うなれば少し小柄だが、そこがまた女の子らしくて可愛い。そんな美しい女の子は背には大剣を、そしてフルフル装備を身に纏っていた。ナース服風の洒落た装備。あまり防具と言った見た目はしていないが、フルフルの素材を使っている事から少年は若干表情を曇らせた。
だがだからと言って同族の素材を使った装備を着ているという理由で襲うのを止める訳にはいかない。見た所女の子は一人でクエストを受けているのか、倒れている木々を探ったりしてキノコか何かを探しているようであった。所謂絶好のチャンス。少年は音を立てないようにソロリソロリと女の子に近づいた。
(……今だ!)
女の子は完全に油断している。このまま後ろから電流ブレスを一発で痺れさせる事が出来るであろう。少年は腹に力を入れ、口から電撃を飛ばした。だが刹那、女の子の姿がその場から消えた。
否、消えたのでは無い。女の子は跳躍したのだ。丁度目の前にあった木を土台代わりにし、跳躍して電撃を避けるとそのまま少年の背後へと降り立った。
(なッ……!?)
まさか避けられると思っていなかった少年はあからさまに動揺する。すぐに振り返って女の子の方を見ようとするが、振り返った瞬間、眼前から大剣が振り下ろされた。直前の所で少年が顔を引っ込めた事で大剣は地面に突き刺さる。
(おわわわわわわ!! あ、危なッ! あっぶな! ちょ、今の避けれなかったら頭潰れてたぞ!?)
何の躊躇も無い一撃に少年は一瞬死を感じ取り、冷や汗を掻いた。完全に今のは頭にヒットしていた。もしも回避していなければ頭を潰されていたはずであった。そして頭部を破壊されれば当然生命も終わりを迎える。つまり、今少年は死にかけたのだ。
自分から襲い掛かったのにも関わらず少年は怒りを覚えながら女の子の事を睨みつける。すると可憐な女の子は相変わらず美しい青色の髪を靡かせながら同じ様にフルフルの事を見た。
「フルフルか……こんな森になんて珍しい」
凛とした声が響く。女の子の声はまるで天使のように美しい声をしていた。声優デビュー出来るんじゃないか?と少年は能天気に考えるがすぐに現実に引き戻される。女の子が突如飛び出し、再び少年に大剣を振り下ろして来たのだ。すぐに後方へ飛ぶ事で少年は回避する。だが僅かに自分の皮膚が切れた事を体感した。
(こ、この女……めっちゃ強ぇぇ!)
明らかに今までのハンターとは違う。自分の不意打ちに気がつく上に、躊躇ない距離を詰める戦法。上級ハンターと言っていい程の実力をその女の子は持っていた。見た感じは大人しそうな風貌をしている癖に、ハンターとしては超一流。厄介さを感じながら少年は女の子から距離を取った。
女の子も距離を取られた事に気がつき、僅かに警戒した。自身の得意な大剣による接近戦に気がつき、それを警戒するように距離を取る。更には最初の不意打ち。女の子はすぐに目の前に居るフルフルに高度な知性がある事に勘づいた。二人の間に重い空気が流れる。やがて少年の方が先に動き出した。
(喰らえ! 先手必勝!!)
特に何も考えず少年はとりあえず先に攻撃すれば勝てる、という安易な作戦の元女の子に突進した。当然その攻撃は簡単に避けられ、少年は木に激突する。せめて電流ブレスでも放っておけば良かったものの、少年は頭に血が登っている事によっていつもの狡賢い作戦が発揮出来なかった。
「……短気」
(んだとコラァ!!)
少年のあんまりな動きに女の子は言葉が通じると知ってか知らずか、挑発するようにそんな事を言った。だがその間も顔は無表情。冷たい瞳だけが少年の事を見続けていた。
体勢を整えた少年は再度女の子に突進しようとする。だが今度は攻撃が当たる直前に大剣を横に振り下ろされ、少年のブヨブヨの身体に傷が付いた。
(ぎゃぁぁああ!! い、いってぇ! ちょ、痛ッ! 痛い痛いコレ)
幸い攻撃が浅かった為、少年の身体は僅かに斬られただけであった。だがそれでも痛みに耐性の無い少年は悲鳴を上げる。ろくに動く事も出来ず、そのまま倒れるように地面に伏した。
それを見ながら女の子は警戒心を強めつつ少年に近寄った。何の躊躇いも無く大剣を振り上げ、冷たい視線を向けたまま口を開く。
「これで、終わり」
まるで一つの作業を淡々とこなすように、フルフルを殺す事にも何の躊躇いも見せる事なく女の子は大剣を振り下ろす。だがその瞬間、フルフルは身体の芯に一気に力を込め、放電を起こした。辺りに大規模な電流が流れる。警戒していた女の子はすぐさまその場から一歩下がるが、首を伸ばしたフルフルの口が彼女を襲った。
「……ッ!」
ビリ、と女の子の肩が引き裂かれた。引き裂かれたと言っても装備が外れただけで、女の子の肩にはちょっと傷が付く程度であった。だが丁度切り裂いた部分がはだけ、女の子の下着が丸見えな状態となってしまった。此処で初めて女の子は感情的な反応をし、僅かに頬を赤らめると大剣を降ろして空いた片手で自分の胸を抑えた。
(よし、今の内に逃げる……!)
その隙に少年は起きあがると全速力でその場から逃げ出した。フルフルとは思えない程超スピードで狭い木々の間をくぐり抜け、少年はあっという間に見えなくなる。残された女の子はポカンとした表情をしながら小さくため息を吐き、自分の裂かれた肩部分の装備とはだけた胸部分を見下ろした。
「……痛み分け?」
何故かそんな事を呟き、女の子は悔しそうな表情をしながらもまたすぐに無表情に戻り、大剣を背に戻すと胸を抑えたままその場から歩き出した。
一方、女の子からの逃走に成功した少年は良い感じの岩陰を見つけた為、そこに踞るように隠れるとぜいぜいと呼吸を荒げていた。
(はぁ……はぁ……何だあの女は!? 人間じゃねぇよ。なにあれ?大剣ブンブン振り回してさ。むしろあっちの方がモンスターだろ!?)
自分から戦いを挑んでおきながら少年は女の子に対しての文句を次々と出す。確かにあの女の子は小柄でありながら大剣を軽々と振り下ろし、驚異的な身体能力を発揮していた。だがそれは元からハンターに備わっている能力で、そこまで驚きべき事では無い。しかし確かにあの女の子は戦い慣れていた。その点で言えば驚異的な身体能力も長年のハンター生活で備わったものと推測出来る。
初めての強敵との遭遇、そして初めて獲物を逃した事から少年は色々な意味で悔しがっていた。エロい事をしたいという欲求も発散させる事が出来ず、少年はうめき声を上げながら岩に自分の顔を打ち付けた。
少年は誓う。今度あの女の子と会ったら今度こそコテンパンにし、エロい事をすると。
◇
フルフルとの戦闘を終えた後、フルフル装備を着た女の子は自身の拠点である街へと戻っていた。活気のある街に中央にはハンターズギルドが建てられており、そこを中心として辺りに店や施設が建っているという造りの街。まず女の子はクエストを終わらせた事の報告、そしてフルフルに遭遇した事を伝える為にギルドへと向かった。
「……ただいま」
ギルドに着くなり女の子はそう言う。彼女にとっては此処が自分の家のような場所の為、自然とそう言ってしまうのだ。フルフル装備の子が帰って来た事に気がついた受付嬢は彼女が無事だった事を知り、嬉しそうに手を振った。それを見てフルフル装備の子は相変わらずの無表情でカウンターへと向かう。
「お帰りなさーい……って、どうしたんですかその傷!?」
「ん……フルフルにやられた」
近くに来た事でようやく受付嬢はフルフル装備の子が傷ついている事に気がつき、叫び声を上げた。フルフル装備の子は肩部分の装備が外れ、引き裂かれたように衣服が破れていた。そして丁度胸部分がはだけているようになっている為、女の子は仕方なく手で胸を抑えていた。
「えええ!? フルフルって……いやでもこの街で最強のハンターって呼ばれてる貴方が傷を負うなんて……」
受付嬢は信じられなさそうにそう言ってフルフル装備の子を見る。それを聞いたフルフル装備の子は若干恥ずかしそうに頬を掻いた。
実は彼女はこの街では有名なハンターであり、先程受付嬢が言ったようにこの街で最強のハンターと呼ばれているのだ。実際その実力は折り紙付きであり、他のハンターも皆が認める程であった。そんな彼女がフルフルに手傷を負わされたという事態に受付嬢は驚き、周りのハンター達もフルフル装備の子が傷ついている事にざわつき始めた。
「おーい、新しいクエストが届いたよー」
丁度その時、別の受付嬢がクエストが発注された事を報告した。パタパタとハンター達の前に立ち、依頼書を手に取りながらその文面を読み上げる。
「目標は特殊個体のフルフルの捕獲。“色欲のフルフル”って呼ばれてて、元々は西の森丘で発見されたんだって。でも調査隊による報告だとこっちの方に流れて来たらしいよ。しかもコイツ、女の子を襲うんだって。怖〜」
やたら明るい声を上げながら軽い調子で受付嬢はそう説明する。一応は自分も女の身であるのだが、最後の怖いという口振りは明らかに嘘っぽかった。
そしてその話を聞いたハンター達はそれぞれ意見や質問を述べ合っていたが、そんな中一人だけ、フルフル装備を来たあの女の子だけが静かに瞳を揺らしながらその依頼書を遠目で眺めていた。
◇
この辺りのエリアをくまなく探索し、ある程度住処になりそうな洞窟を発見した後、少年は情報収集に徹していた。まずこの森林の近くにはやはり街が存在しており、そこにも当然ハンターズギルドが存在していた。そしてどうやら先日出会った女の子はその街の中でも最強のハンターと謳われているらしく、大剣使いとしてかなりの知名度を持っていた。
(まさかこの前会った女がそんな凄腕ハンターだったなんて……)
洞窟の中で尻尾を天井に張り付けてぶら下がりながら少年は感慨深いようにそう思った。
あの青髪の女の子がかなり強いハンターである事は分かっていた。だがまさか街一番というレベルとは思っても見なかった。少年は自分の身が無事であった事を感謝しつつ、女の子に対して復讐心を抱いた。
(ちくしょ〜、必ずリベンジしてやるからな)
殆ど自分が悪いのではあるが、少年は勝手に女の子に復讐を誓う。あの後結局症状を収める事が出来ず、少年は手付かずな状態が続いてしまったのだ。自業自得ではあるが、少年はその鬱憤を晴らしたかった。そして標的になったのがあのフルフル装備の女の子であった。
そうして無い瞳を燃やしながら熱くなっている少年はふと外からの気配を感じ取った。モンスターの気配。だがこちらに気づいている様子は無い。少年は壁に引っ付きながらそろりそろりと洞窟の入り口から顔を覗かせた。
(……またアイツか)
洞窟の外ではババコンガが居た。簡単に言うとピンクのでっかい猿。現実に居れば恐ろしい化け物でしか無いそのモンスターが木々の間をくぐり抜けながら歩いていたのだ。
少年はこのババコンガをうっとおしく思っていた。頭が鶏冠のように独特の毛の形をしているこのババコンガは群れから離れた変わった個体らしく、特定の縄張りを作らずに毎日ふらりふらりとエリアを徘徊しているのだ。
通常モンスター達の間には必ず縄張りが存在する。時には縄張りを持たないモンスターを居るが、それでもある程度の線引きは持っているのだ。複数の食事場を持っている少年でさえ、あらかじめそこが他のモンスターの縄張りでは無い事を確認してからそこをマーキングする。そうしなければモンスター同士で争いが起こってしまうからだ。だがこのババコンガにはその常識が無い。
平気でリオレウスの縄張りに侵入して糞をまき散らして帰ったり、他のモンスター達の巣で卵を頂戴したりと、とにかく好き勝手やっている。特定の縄張りを持たないため、巣も無いから好きな場所で寝る。時には少年の食事場の洞窟に居座っている事もあった。
他所からやって来た少年が言うべき事では無いのかも知れないが、彼はこのババコンガに不満を持っていた。女の子にエロい事をする際も、このババコンガに見つかったら何をされるか分からないのだ。出来るだけ不安要素は排除しておきたかった。
(あの糞猿めぇ……いつも好き勝手しやがって。マナーを弁えろマナーを)
野外で女の子を襲うというあんまりな行為をしている少年は自分の事は棚に上げてそんな事を毒付いた。幸いこの洞窟の存在は知られていないらしく、ババコンガは欠伸をしたり頭を掻いたりと能天気な事をしながら歩き去って行く。
やはりあの猿は油断出来ない。少年は改めてそう思った。ババコンガは猿の為かある程度頭が回る所があり、樹液で毛を固めるなど器用な事も出来る。もしも何らかの形でコンタクトを取る事となったら、少年にとって良く無い事が起こるかも知れない。そう不安に思った少年は何とかあのババコンガをこの森から追放出来ないかと考えた。
(って言ってもなぁ。戦うなんてのは論外だし、ハンター達に期待するってのも難しそうだし……)
ヘタレな少年は自ら手を下すという事は考えない。対峙した所でへっぴり腰になり、糞でも投げつけられて終わりだという事を理解していた。その為どうしても他者の力を頼るしか無いのだが、実はこのババコンガも少年と同じ様に卑怯な手を得意としており、討伐に来たハンターを隠れて糞を投げつけたりと妨害し、最後は隙が出来た所を攻撃するという卑劣な手段を用いているのだ。ようするに少年と同じくクズという訳である。
(この前のあの女の子がババコンガを討伐でもしてくれれば楽なんだけど)
挙げ句の果てが自身の復讐相手である青髪の女の子頼み。完全に他力本願であった。結局自分からする事は無いと悟った少年は体力を補給する食事をする為、獲物を探しに洞窟から足を踏み出した。
◇
青々とした木々が無数に生えている大地でフルフル装備の女の子は精神を研ぎ澄ませていた。獲物はすぐ近くに居る。敵では無く獲物だと思っているのは、女の子にとって相手が狩る対象でしか無いからだ。背に背負っている大剣を抜き、構えを取る。その瞬間、木々の間から凶暴な顔をしたティガレックスが飛び掛かって来た。
「ーーーーッ!」
ほんの一瞬の交差。ティガレックスの噛み付きが女の子に外れた瞬間、彼女はティガレックスの懐に入り込むとその腹に大剣を突き刺した。当然突っ込んだティガレックスは動きを止める事が出来ず、そのまま腹を引き裂かれて行く。そして木に激突したティガレックスは悲鳴を上げて暴れたが、やがて糸が切れるように腕を落として動かなくなった。
「……ふぅ、これでクエスト完了……と」
大量の返り血を浴びた女の子は血を拭いながらティガレックスに突き刺さっている大剣を引き抜き、狩りが終了した事を実感した。
今回は森林で暴れているティガレックスの討伐。ソロでクエストを受けた彼女にはいささか厳しい内容ではあったが、それでも問題無くクエストを達成する事が出来た。
ポーチにしまってあった回復薬を飲みながら女の子は倒れているティガレックスに近づいた。ギルド職員が来る前に剥ぎ取りをしてしまいたかったのだ。だがその時。
「……?」
ふと辺りから妙な気配を感じ取った。クエストが終わった後でも警戒心を研ぎ澄ませていた女の子はすぐにその気配に気がつき、辺りに目をやった。別段おかしな様子は無い。だが確かに近くに何かが居る。女の子は背に戻そうとしていた大剣を握り直した。その直後、木々が大きく揺れるとその上からババコンガが振って来た。
「……ババコンガ!」
気配には気づけたがまさか木の上から降って来ると思っていなかった女の子は対応に遅れる。ドスン、と大きな音を立てて着地したババコンガは周りに振動を送り、女の子の動作を僅かに遅らせた。その隙を逃さずに尻を向けて放屁をする。
「……ぐ!」
途端にとてつも無い悪臭が辺りに巻き散る。女の子は咄嗟に鼻を抑えた。相手に一歩リードされた事を実感しながら態勢を立て直し、大剣を構える。だが既に攻撃を開始していたババコンガは女の子に突進を喰らわせ、女の子は大きく宙を舞って木に激突した。
「うぁ……ッ!」
大したダメージでは無いがダメージはダメージ。女の子は肩を抑えながら何とか立ち上がった。再び向かって来たババコンガの攻撃を避け、すれ違い様に大剣を振るう。途端にババコンガの毛が刈り取られ、皮膚が引き裂かれた。
「ゴァァアァァアア!!」
「……お返し」
ババコンガは咆哮を上げて怒りを露にした。みるみる内に顔が真っ赤に染まり、怒り状態へと移行する。女の子は木を支えにするように寄りかかりながらそれを見つめていた。
チラリと自分のポーチに目をやる。スタミナを補給するアイテムは無い。回復薬も残り少ない上、この悪臭の中ではその効果を発揮する事が出来ない。既にティガレックスとの戦いで体力が消耗した状態でババコンガと戦うのは厳しいものだった。
もしもこの状況をババコンガが狙ったとしたら?自分とティガレックスが戦っていたのをずっと木の上から長め、勝負が付いたのを確認してから襲って来たのだとしたら?ふと女の子はそんな事を考えた。普通なら有り得ない。モンスターがそこまで高度な作戦を出来る訳が無い。だが先日のフルフルの事を考えると、簡単に否定は出来なかった。
「ブォァアアアア!!」
突如、ババコンガが背を向けるとティガレックスが激突して折れ掛かった木を折り、持ち上げて女の子に投げ飛ばして来た。まさか遠距離攻撃が来ると思っても見なかった女の子はギリギリの所で回避するが、木が衝突した際の突風で吹き飛ばされた。地面に仰向けで倒れ、女の子は苦しそうにうめき声を上げた。そしてババコンガはこの状況を待ち望んでいたかの要に女の子の上に乗り掛り、雄叫びを上げた。
「ぐ……ぁ……」
「ブホ、ブホッ!」
完全に拘束され、女の子は身動き一つ取れない状況になった。ババコンガはこれで勝利を確信したのか、これ以上ろくに攻撃しようとはせず、まるで弄ぶ様に女の子の大剣を奪い取っていた。愛剣を奪われた事で女の子は完全に戦意を喪失してしまう。最早武器となる物は腰にしまってある剥ぎ取り用ナイフだけとなってしまった。
あまり大剣に魅力を持てなかったのか、大剣を投げ捨てるとババコンガはいよいよ女の子の方に視線を向けた。これから嬲り殺すつもりなのか、挑発するように舌を出して笑っていた。
此処で終わる。女の子がそう思ったその直後、ババコンガの背後から電撃が飛んで来た。その電撃は見事ババコンガに直撃し、ババコンガは腕を上げてビリビリと身体を振るわし、その場に崩れ落ちた。仰向けになって動けない女の子は何が起きたのか分からない。やがて影が女の子に覆い被さり、ババコンガを倒した人物が現れた。それを見た瞬間、女の子はそっと笑みを浮かべた。
「グルル……」
「また……会ったね」
色欲のフルフル。つい先日剣を交えたばかりの敵が、目の前には立っていた。
女の子はまるで自嘲するように笑みを零す。助けてくれた訳では無いのに、結果的に見るとまるでフルフルが自分を助けてくれたような状況が笑えてしまったのだ。そして自分は今身動きを取る事が出来ない。足部分にババコンガが覆い被さっている為、抜け出す事が出来なかったのだ。仰向けになりながら女の子はフルフルを見つめた。これからどうなるのか?不思議と女の子の心境は落ち着いていた。
◇
少年はただ獲物を探していただけだった。ただ偶然先日戦ったあのフルフル装備の子がババコンガと戦っているのを見掛け、気になって様子を伺っていただけだったのだ。だがババコンガは卑怯な手ばかり使い、フルフル装備の子を追いつめた。何だか自分と似ている所があるなとやたら冷静に少年は見ていたが、ババコンガが女の子を押し倒した際、自分の中で何かのスイッチが入った。
(女の子を襲って良いのは俺だけじゃボケェ!!)
意味がよく分からない理論を叫びながら少年は電撃を放った。見事それはババコンガに命中し、ババコンガは女の子の足を抑えるようにして倒れ込んだ。女の子は武器を失い、身動きが取れない状態になっている。少年はそれでも先日の事から警戒しつつ女の子に近寄った。
「また……会ったね」
不思議な事に女の子は少年の存在に気がつくと笑みを浮かべていた。だがすぐにその笑みも消える。一体何故今笑ったのか?出会った当初はやたらと無表情で機械のような印象があったが、今はまるで自嘲するように笑っていた。その笑みの真意を知らない少年はとりあえず女の子の状況を確認する。
女の子は傷は負ってはいたがそこまで重傷では無さそうだった。どちらかというとスタミナの方が切れてしまっているらしく、今の彼女は息を荒くしながら頬を赤く染めていた。
何処か色っぽいその姿に少年はムラッとする。簡単に言うと興奮した。
「色欲……だよね?ギルドから聞いたよ……何でも、女の子を襲うとか」
女の子は少年に言葉が通じるか分からないがとりあえず喋った。言葉が分かる少年はまさか話し掛けて来るとは思っておらず、興奮していた事を忘れ女の子の顔を見つめた。
女の子は相変わらず冷たい瞳をしていた。美しい容姿をしていながらそんな機械的だと、まるで人形のようであった。実際黙っている時は人形にも見える程であった。思わず少年はうっとりとしてしまい、邪な気持ちを忘れる。
「良いよ。好きにして……今の私は身動きが取れないし、もう体力も無いから……」
何を思ったのか、女の子は自分が無防備である事を示すように手をヒラヒラとさせ、そう言った。果たして彼女はこれから自分がされる事を本当に理解しているのだろうか?思わず少年は耳を疑った。耳らしい物はちゃんと無いが、女の子が言った言葉が本当にその通りなのか疑ったのだ。
女の子は相変わらず仰向けのままフルフルの事を見つめていた。本当に拒絶するつもりが無いらしい。どうやら完全にこの状況に諦めがついているようだ。身体は拘束され、自身の体力も残り少ない、その為、ろくに抵抗した事で無駄であろう。その事が凄腕ハンターである彼女は分かっているのだ。だから抵抗しない。
思わず少年は女の子に近づき、首を伸ばした。女の子の身体に接近し、口をヒクヒクと動かしながらそっと衣服に触れる。その時女の子は僅かに肩を振るわせた。やはり何処か怖い所があるのだろうか。だが少年はそれ以上何もしなかった。急に首を引っ込めるとババコンガを足でどかし、女の子を解放する。すると女の子はポカンとした表情をして少年を見上げた。少年は何も語らずに歩き出す。
(悪いけど、ウェルカム系はノーサンキューなんですよねー)
言葉が通じない事は分かっている為、少年はそう心の中で呟くだけで女の子の前から去った。
少年は嫌がる女の子を無理矢理襲う系好きだが、自分から襲われるのを好む子はあまり好きでは無かった。特に今の様な諦め系はもっての他、犯しても何も燃えるシチュエーションが無い。その為、少年は襲う事を止めたのだ。
「……え?」
解放された女の子は襲われなかった事に大変驚いたように目を見開いていた。見えなくなってしまったフルフルの姿を探すが、もう彼は居ない。女の子は静かに立ち上がると、近くに落ちていた大剣を拾い上げ、小さく笑みを零した。
「……変なの」
本当に変。最初に出会った時もやたら短気で人間味があり、今回は助けてくれるというモンスターとハンターの間では絶対に起こらない事が起こった。女の子はフルフルの事はちょっと困った弟のように感じ、何故自分がそんな事を思ったのか不思議に思いながらその場から立ち去った。