湯殿で体を清めた私は火照る体を持てあます。先ほど起きたある出来事を忘れようと自慰に没頭し、床にくるまり眼を閉じて、アイツの顔を思い浮かべる。
子供の頃からは想像の出来ないような筋骨粒々で傷のある顔。だがその顔はとても頼もしい。
「ん…はっ!」
忘れたいとはいえ影響は受けているのだろう、今宵の私はいつもより敏感だった。
服の上から軽く撫でるだけで肌が痺れて気持ちがいい。あの時と違ってもう我慢の必要はない。枷を解いた私はベッドの中で乱れる。
「……」
タオルで息を殺しながら私は胸を揺すった。アイツが私の乳房を求めているところを想像し、アイツに揉まれている気分で触ると頭が沸騰してくる。
乳首が下着の中で隆起し適度な弾力で擦れる服に抗う。胸だけで大事なところがきゅんと疼いてしまった。
「ひゃん!」
あまりの気持ちよさにベッドの中を危惧した私はもぞもぞと寝巻きの下を剥ぐ。既にとろけるように熱い膣は蜜を溢れさせ、洗ったばかりのぱんつを湿らせていた。
「あぶない、あぶない」
危うくお漏らしでベッドさえ濡らすところだった私は、下半身裸でタオルを敷くと自慰を再開した。
そろそろこっちでも気持ちよくなりたいと私の孔も物欲しがり、それに私の指は答える。
「はふん!」
私はつい変な声を出してしまった。
人差し指を咥えただけでその指さえも快感に襲われたからだ。
否定したいがやはりあの出来事は私の体を発情させたのだろう。そしてあくまで私はそんな淫技には負けやしないと、アイツをおかずに自慰を続けた。
はあはあと漏れる私の吐息とぬちゅぶちゅと出入りする指の水音が無言の部屋に鳴り響く。浅い入り口だけでお尻の穴から屁が漏れそうなほどに気持ちがよく、私は夢中で乱れた。
「んあん……いいよお」
私は指に溺れながら、妄想の中でアイツに甘える。アイツも私の気持ちに答えて「好きだ、姉さん」と告白してキスをする。
腰の動きがそれにあわせて激しさを増し、私の奥の方をおちんちんでキスしてきた。膣を穿つ肉棒の熱は高まり蠢いている。
そろそろアイツも絶頂する。あの白いモノを私の膣内に注ぐのだろうと予感するだけで私は興奮の自家中毒で吐きそうなほど酔いしれる。
「射精る!」
アイツなりの優しさなのだろう。
わざわざ射精するとキスをほどいてから私の膣内でおちんちんを爆ぜさせた。
お腹を膨らませるほどに注がれた白濁液は、アイツがおちんちんを引き抜くと私の膣から溢れる。
白く濁ったそれが溢れる様子は自慰に浸る私にはとても耽美な光景だった。
現実には背中を剃るほどに絶頂した私は敷き詰めたタオルの上で愛液を流しながらへたっていたのだが、大好きなアイツには見せられないほどだらしない姿はある意味アイツに知ってもらいたい一面である。
そんな満足のいく自慰をして鬱憤を晴らした私の身には、今日はある災難が降りかかっていた。忘れたいが、事後報告もあるので忘れられない部分もそれには多い。
「───っというわけで、送っていきましょうか?」
「その必要は───」
この日の私はレストランで夕食を取っていた。ダイアンの誘いということもあり、彼の好意への申し訳なさもある私はそれに乗ったのだ。
一緒に食事をするくらいは友人の範疇だと思うし、無下にはしにくいなと私はぼんやりしてしまう。
ついメニューにあったドライソーセージをみて「アイツのおちんちんもこんな感じかな」とか、「小さい頃のアイツはこんな感じだったな」と妄想に耽ってしまう。
それゆえに話し半分で彼の話を聞いていた私の肩をダイアンは掴んだ。どうやら大事な話らしい。
「ソフィアさん、貴女よく聞いていなかったでしょう?」
「それは……」
「やっぱり。伊達にソフィアさんの観察を続けてはいませんからね」
「だが、いったいどういう風のふきまわしだ? そんなに必死になって私を送りたいだなんて。暴漢が潜んでいるのならむしろ私がお前の護衛をするべき状況だぞ。私は酔っていないが、お前は結構呑んでいたじゃないか」
「そういう腕っぷしの問題じゃないから言っているんです。それにソフィアさんの家まで行けば安全な帰宅ルートくらい既に……」
「この、変態」
罵られたダイアンの顔はどこか嬉しそうなにだが、きっと彼のマゾ心にでも触れただけかと私は流す。
変態の相手は出来ないと思いつつ、とりあえず私は彼を自室まで送る。さすがに千鳥足なダイアンを放って帰るわけには立場上いかないからだ。
私の肩を借りて帰宅するダイアンは、その道中で再度その心配の種について私に語ってきた。
「ですから、最近若い女性を狙った痴漢が出没しているんですよ。軍でも十人くらい被害者がいるそうで」
「暴漢ねえ。それだけ被害者が多いのなら、既に警察にマークされているんじゃないのか?」
「そこなんですが……言いにくいことに、被害にあった女性たちが隠そうとして警察も軍も掴みきれていないそうで」
「まあ、痴漢の被害を告白するなんて女性として恥ずかしいからな」
女性たちが隠そうとする理由も、そしてダイアンが私を心配する理由も本当は別にあったのだが、このときの私は気づかなかった。
仮にそんな相手がいるのなら私が捕まえてやろうとさえ思ったほどだ。数少ないわかっていることは「テマン」だか「スジ」だか名乗っているというあやふやな話とヤマト訛りということだけ。
ヤマト出身なら上品な喋り口と艶のある黒髪だろうと予想した私の想像図はいわゆるスケコマシの美男子だった。顔で釣って女をたぶらかすなどと怒りながら、心配するダイアンを背に、彼を送り終えた私は家までの短い家路につく。
そんな私の怒りに答えたのか、件の暴漢は本当に現れた。
「ちょっと……そこのお嬢さん?」
声をかけられた私が振り向くと、そこには黒髪の男がいた。たしかにヤマト訛りだが蛇のように長い舌は美男子どころか気持ちが悪い。
「なんでしょう?」
「ちょっとワイと……気持ちええことせんか?」
「おあいにく様。私は娼婦ではありませんので」
私は十中八九例の男だと思いつつ、もしただのナンパする異邦人なら手出しできないと常識的な応対で断る。
だが相手はやはり件の暴漢のようで、私にフラれた彼は激昂する。
「せやか……だったらワイの腕で力ずくにいいことしてもらいましょか。フシミのテマンスジを舐めたらいけまへんで!」
男はそういうと、二の腕を私に見せつけた。中指を立てた手と腕は街灯に照らされ、指の屈筋がメキメキと隆起する。
一目見てそれが猥談小説に出てくる手マン筋と言われるモノだと私も気づいたが、その驚きはあくまで「本当に愛撫のしすぎで筋が浮かぶ男がいるのか?」という半信半疑のものである。
だが暴漢は違う意味に捉えて私に迫る。
「その顔……手マン筋を知っとるようやな。味わってみたいって顔してはる」
「そんなことはない」
「いややいややも好きのうち。アンタはんの内心はワイの手に惚れとるで」
そんな馬鹿なと困惑する私の隙をついて、暴漢は私の股間に右手を掠めた。とっさに飛び退いたが体に毒が打ち込まれたかのような違和感が襲いかかる。
後に聞いた話ではブドーに通じる「気」の概念のうち「性の気」を操る達人が例の暴漢だったらしい。ブドーの達人であるアマネならものともしないそうだが、ブジツ止まりで気など使えない私はその毒をもろに受けた。
「さわっただけで即マンシャワーや」
自分の体に起きた異変でようやく私は被害者の真意やダイアンの心配の意図を理解した。時既に遅いが、気持ちの問題なら私にも一つ拠り所がある。なかなか会えない大好きなアイツと、身近にいて恋愛までは考えられないが便りになるダイアンのためにこんな男に負けるわけにはいかなかった。
「キサマ……痴漢で警察につきだしてやる」
「気の強い女はみーんな最初はそう言うんや。でもお嬢さん、アンタはん顔に『ワイの指が欲しい』って出てはるで。堪忍な」
「変な技ができるからと図に乗るな!!」
私は襲いかかる暴漢の淫指をあえて胸で受けた。
毒のようななにかが私の中に入ってくるが、それに耐えつつ私は暴漢を組伏せた。
マウントした私は暴漢の両腕をひねって肩を外し、そしてヤツのズボンを脱がした。
「さんざん侮辱しておいて、キサマのその貧相ななめたけはなんだ?」
私は男の気に抗うため必要以上に怒っていた。
このように男の性器をさらす必要は本来ないが、そうしないと気がすまない。
「アンタが痛くするうから萎えてしもたんや」
「口答えするな!」
私は怒りに任せて暴漢の股間を蹴る。
何度か蹴るうちに痛みの限界を超えてしまったのだろう。もはや痛みを感じなくなった暴漢の股間は意味もなく勃起する。
「あばば……」
「なんだ、蹴られて勃起したのか。この変態が!」
最後の怒りの捌け口としてそそりたつ竿を蹴り飛ばすと、しばらく蠢いたあとに汚い汁を撒き散らした。
その様子にハッとした私は急いでズボンをはかせると、暴漢を警察につきだした。
夜も遅いので私への事情聴取は明日からということになった。一仕事終えて湯殿で体を清めた私が夜の秘め事を始める前に、このような事件が今日は起きていた。
「ルート……おねえちゃん、頑張ったよ」
自慰で淫らな毒を吐き出した私は寝入る。
この日、子供の頃のアイツと私は夢の中で健全な遊びに興じていた。