事件が終息し、問題となった物品を解析したダイアンはこう語った。
「多孔質の小石に興奮作用のある麻薬の一種を油に溶かして染み込ませたようですね。それだけではなんの変哲もない石ころにすぎませんが、ピアスとして身に付けると肌の熱で次第に薬が溶け出して……一定のレベルを越えたところで所持者の性欲を暴走させる。賢者の石とはよくもまあ。辛抱たまらずに始めたオナニーを終えれば、誰でも賢者と言うわけですか」
話は数時間前に遡る。
ダイアンとマリッサがちょっとしたアルバイトの打ち合わせをしていたところ、もじもじと何かを我慢していたマリッサが突然狂ったのだ。
「だめ…もう…」
「?」
小声でなにか呟きつつ悶えだしたマリッサの様子にダイアンも小首を傾げる。今日も向こうの様子は変わらずかと彼女からの聞き取りに飽きが来ていたダイアンも、これには警戒してしまうのも当然であろう。
「らめ、こんなところれ」
「……レベッカ!」
様子がおかしいマリッサを見て、彼女を使った何らかの攻撃を疑ったダイアンはレベッカを呼ぶ。駆けつけたレベッカはすぐに状況を改め、ひとまずダイアンに害がないことを把握した。
「毒物が散布された様子はありませんね。様子がおかしいのはマリッサだけ」
真顔で状況に当たる二人の横で、盛りだしたマリッサは大きく股を開く。最初はスカート上からもじもじと陰部を撫でていたのだが、それだけでは物足りないのだ。
めくったスカートのしたからぱんつの中に手を伸ばし、きれいな割れ目を指でなぞる。幻覚に捕らわれたマリッサには自分の指が恋人のそれ見えており、「こんなところでダメよ」と口で抵抗しながら激しく淫核を中心に擦り出した。
次第に殺していたあえぎ声も大きくなり、見て見ぬふりをしていたレベッカだけでなくダイアンも見ざるを得なくなった頃、彼女はおもむろに耳に手を伸ばす。
「今日はすっごく元気なんだから。いれちゃうのね?」
ピアスを耳から外したマリッサは、それをゆっくりと膣に入れたのだ。
「マリッサ!」
「しゅごぃぃい。ひもひよふれ、ひりひりしまふぅぅうう」
レベッカの呼び掛けなど当然届かない。
それどころかピアスを入れた途端、彼女の様子が加速し始める。
幻覚の中では普段は病床に伏せる恋人が激しく腰を前後させている。愛液がピアスに仕込まれたあるものを溶かし、その薬効でマリッサは激しい快感と幻覚に捕らわれていた。
しばらく激しく指で膣を擦るマリッサ。幻覚の中で恋人が膣内射精をし、気持ちよさで彼女の膣壁が一旦絞まると、脱力して弛緩したそこから小石が飛び出す。
からんと音を立てて転がった小石を拾ったダイアンは様子の元凶をそれに見いだし、そして状況を把握することとなる。
「ま、これは僕達の間だけの秘密にしておきましょう」
「ありがとうございます」
「感謝する必要はないよ。だって、軍やソフィアさんに報告しても面倒なことにしかならないし」
目覚めたマリッサから事情を聞いたところ、どうやらこの石は露店商から購入したらしい。願いを叶える賢者の石を使ったピアスという触れ込みで、値段も安価だったこともあり彼女は購入したという。
これがもし敵対勢力が仕掛けた罠ならば手を打つ必要があったのが、この露店商は小金儲けでインチキ商品を売り歩いていただけらしい。脛に傷を持つ男だったようで、すぐ別件から足取りが取れたため、ダイアンは問題ないだろうとこの件を伏せることにした。
一応はエーリッヒにだけ「友人として」伝えたが、突如オナニーを始めたマリッサの話に失笑するに留まる。
そんな技術開発局での一騒動。
ダイアンらは片がついたと思っていたのだが、ひとつだけ見落としがあった。
「これ、願いの叶う御守りです」
「急にこんなものを渡して、どうしたんだ?」
「先日お酒をご馳走になったお礼ですよ。彼に思いが通じるといいですね」
「え?」
「片思い彼氏さんのことですよ。少佐もいろいろ言っていたじゃないですか」
「待て! それは忘れろ。上官命令だぞ」
「了解しました」
どうやら酒の席でルートのことをぽろっと話してしまったのか、恋人がいる女としての余裕を見せられた私は大人げなく彼女を怒鳴る。
彼女もそれがわかっているのだろう。口では従順でもどうやら口を閉ざす程度にしか命令は聞いてくれなさそうだ。だが恐いと思われていた頃よりはマシかと、私は受け取った小包を袖の下に入れた。
その日の晩、私はもらった小包を枕元で確認した。
なにやら色を塗った小石のピアス。願いが叶うという触れ込みにしては、あからさまなインチキ商品と言うやつだろうか。
無下には出来ないが、使うことはないだろうとアロマキャンドルの脇に置いた私は寝入ったのだが、短くなった蝋が偶然を運んだことに私は気づくはずもない。
炎が小石に近かったことで、仕込まれた媚薬が部屋に充満してしまったのだ。
「(どうしたんだ? ものすごくムラムラする)」
夢の中で、私は自分の異変に戸惑う。
くだけた言葉にすれば「滅茶苦茶オナニーがしたい」
はしたないし、恥ずかしいので我慢を続けるが、それも次第に無理になってくる。
股間を押さえてもついつい手が小刻みに動き、その振動が気持ちいい。溢れる蜜がぱんつどころかスカートまで濡らし、手にまで染みたところで私は倒れた。
「(もう、我慢できない)」
横になった私は操られるように股を開き、スカートを捲った。
右手は軍服の上から乳房を虐め、左手は膣の入り口を虐める。次第にオナニーのことしか考えられなくなり、次第に誰かに愛撫される幻覚を見始める。
それは先のマリッサのように……私は知り得ないが、彼女と同様に、私は思い人の姿を幻視していた。淫らなヴィジョンズの前に私は簡単に雌になる。
「お前の好きなようにして!」
幻覚の中で私はルートに後ろから突かれた。
お尻に彼の股間がパンパンと当たり、体全体に気持ちいい杭が打ち込まれていく。
両手を後ろに引きながら強引に打ち付けるルートの杭に私はメロメロになり、出来れば彼の顔を見ながらならと念じてしまう。
わかったかのようにルートは繋がったまま姿見の前に私を誘導すると、そこには耳まで真っ赤な顔をしたルートとにやけた私の顔があった。
「らめ! はずかひい!」
「恥ずかしくなんかない。気持ちいいんだ」
「ひく! ルートに顔をみられてひく!」
「ねえさん!」
鏡越しでルートと見つめあい、恥ずかしくなった私はきゅんきゅんと腰でルートを受け止めつつ果てた。
公衆の面前でいきなりオナニーをし、いつの間にかルートとセックスをしていたという支離滅裂な展開。よく見る夢のようで、実際夢であったので問題はなかったが、ベッドと寝間着はいつも以上に乱れてしまった。
だがこれが現実にも起こり得たことを、後日「危険なのであの石は返してもらえますか」とマリッサに告げられて私は知ることとなる。
いや、情報が不十分だった彼女の口だけでは幻覚を見るだけにとどまって、実際にオナニーをしてしまうことまではわからない。私が真実を知ったのは、ダイアンを締め上げて裏取りをしたときなのは言うまでもない。