竹ほうきに散った青葉が絡みつく。まだ水気を残す青葉は、箒に貼りつき掃こうとしてもなかなかに纏まらない。
昨日、しほがヘリで帰ってきた際に吹き散らされた木の葉は予想以上に中庭を散らかしていた。午前を使って使用人総出で庭掃除を行っているが、その進みは遅々たるものだ。
そして、そういう日に限って今年一番の暑さだったりするのもよくある話である。
「ふぅ……」
伝吉は一息つくと、首に巻いたタオルで額の汗を拭った。
「伝吉、そっちはどうですか?」
近くで同様に箒で落ち葉を集めている菊代が言った。
「あ、菊代さま。こっちはもう少しです」
掃く手を止め、伝吉が返事をする。
「ついていませんね、こういう時に夏日なんて……」
そう言う菊代の顔にも幾つもの汗が浮かんでいる。その汗の一粒が首筋を辿り、少し緩くなっていた着物の胸元に流れ落ちた。
「……そ、そうですね」
少し赤面して顔を逸らしつつ、伝吉は答えた。
あの後―――伝吉が堪えられずにしほの眼前で自慰を行い、更にしほに口淫をして貰った後は、本当にしほの言う「続き」に戻った。まるで伝吉が自慰を始める前から時間が飛んだように何事もなく身体を流し、伝吉の精液で汚れた顔を洗い、髪をすすぎ、しほは片づけを行う伝吉を残して浴室を出ていった。
あの日分かったのは、理由は分からないがしほが伝吉を興奮させようとしている事、そしてそれがあの浴室の中でのみ行われるという事だけであった。
実際あの後伝吉がしほとすれ違う事は何度かあったが、頭を下げる自分に彼女は頷く程度に顔を動かす程度で、浴室内で行ったようなスキンシップは全く無かった。
伝吉は混乱するばかりだった。しほの考えが伝吉には分からない。
本人に聞いて素直に答えを貰えるだろうか。菊代に相談しようかとも考えたが、しほの行動が菊代にも知られていない事であれば、夫である常夫にも伝わるかもしれない。
使用人との不貞となれば、それが知られれば伝吉の悩みどころでない問題となるだろう。そう考えると、他人に相談する事も出来ない。
結局伝吉に残された選択肢は、このまま答えが出るまでこの謎めいた三助の務めを続けるしか無かった。
―――次は何をしてくれるのだろう。そんな下卑た期待が内心にある事も、伝吉は否定できなかった。
「……それにしても、何故奥方様はあんなに急いで帰ってこられたんでしょう?」
ようやく庭掃除の終わりが見えてきた頃、伝吉は菊代に尋ねた。
「TVの生放送への出演があったので、昨晩中に身支度が必要だったんですよ」
「生放送?」
菊代は微笑み、袖から懐中時計を取り出して時間を確認した。
「そろそろ、その時間ですね。休憩も兼ねて皆で観ましょうか?」
『……という訳で、本日は戦車道連盟理事長の児玉七郎さん。また、日本戦車道を代表する流派である西住流家元、西住しほさんに来ていただいております。本日はよろしくお願いします』
『どうも、よろしくお願いします』
『よろしくお願いします』
使用人たちが食事に使う休憩所の大型テレビの映像。
司会の紹介に合わせて一礼する紋付を着た恰幅の良い壮年と、普段の黒スーツより若干明るい色合いのスーツを着たしほの姿を、伝吉は冷えた麦茶を飲みつつ眺めていた。
世界大会の開催、プロリーグ発足など、廃れつつあった戦車道は近年になって国のテコ入れもあり急速にその知名度を上げつつある。しかし、それでもまだ『昔流行っていたスポーツ』程度の認識のままの人は少なくない。西住家に奉公に入る前の伝吉もその一人だ。
だからこそ、こうやって戦車道の事をメディアで発信するのも必要なのだと菊代は教えてくれた。
戦車道の話をする時の菊代は何時も嬉しそうだ。かつて彼女も戦車道をやっていて、しほとはその頃からの付き合いだと聞いた事もある。やはり自身が入れ込んでいた競技が広まるのは嬉しいのだろう。
『そのー、戦車道ってのは本物の戦車と砲弾を使うんですよね。怪我とかは大丈夫なんスか?』
『ははは。確かに草創期こそそう言った危険はありましたが、昔の話です』
『……戦車全面をコーティングする強化カーボンの開発と、砲弾に搭載されたICチップによる衝撃判定装置により安全性は大幅に上がっています。小中学生から戦車道を始める少女も少なくありません』
『なるほど。では、そのカーボンの開発と安全性についての映像をご覧ください』
コメンテーターのコメディアン―――素人めいた意見を言って、視聴者の質問を代弁する役―――の言葉に理事長が破願すると、横のしほが補足の説明を行った。タイミングを合わせて司会のアナウンサーが映像の紹介に移る。
「ふふっ。奥方様、かなり緊張されてますね」
突然、映像を見ていた菊代が笑った。
「……そう、なんですか?」
怪訝な顔で伝吉は尋ねた。自分が見た限りでは、しほは何時もと変わらない平静な態度に見えた。
「ええ、あまりテレビ慣れしていない方ですから……」
菊代にしか分からない癖などがあるのだろう。彼女は微笑みつつ答えた。
そうしている間にも録画映像が終わり、再び画像はスタジオに戻った。
『西住さん。戦車道には様々な流派があるそうですが、西住流とはどんな流派なんでしょう?』
『西住流は、江戸中期の流鏑馬の流派から戦車道に発展した流派になります。それが1940年代に……』
司会に話を振られ、しほが西住流についての説明を始める。TV側も写りが良いと分かっているのだろう。さっきから理事長よりしほを映す頻度がかなり高い。
「………」
映像のしほを見つつ、伝吉は昨晩の事を思い出していた。
「(あのお顔が、昨夜は俺の精液塗れだったんだよな……)」
伝吉の白濁液に塗れた、少し紅潮したしほの顔が浮かぶ。
「……どうしました、伝吉?」
「……いえ、何でもありません、菊代さま」
思わず前かがみになってしまった伝吉に菊代が声をかける。伝吉は椅子を前後させ、誤魔化しつつ答えた。
その日、しほの帰宅は何時もより遅かった。朝から熊本から都内に向かい、TV収録を終えてその日の内に帰ってくる強行軍である。更にその移動中を利用して雑誌のコラム記事の口述筆記なども行っていると伝吉は聞いていた。
「伝吉、今日の奥方様は何時もよりお疲れのようです。丁寧に洗ってあげてください」
伝吉からはやはり何時ものしほにしか見えなかったが、菊代は神妙に伝吉にそう言った。
「(……やはり、菊代さまは何も知らないんだろうか)」
浴室の待機位置で座して待ちつつ、伝吉は考える。
だとしたら自分はしほの家族だけでなく、菊代も裏切っているのだろうか。
伝吉はそれに不安と、申し訳なさを感じてしまう。だが、同時に今夜は何があるのかと期待してしまう股間の疼きを抑える事も出来ないでいる。
昨晩、しほは自分の事を「奥方様」でなく「しほ」と呼ぶよう伝吉に言った。それはつまり西住流家元ではなく、しほ個人として伝吉に向き合わせようとしているのだろうか。
だとしたら―――自分は、しほの事を愛して良いのだろうか?
大それた願望だ。歳も地位も立場も、何もかも別世界の大人の女性にそんな事を思うのは。
でも、それが許されるなら―――
「伝吉」
「はっ!?」
いきなりの頭上からの声。慌てて膝立ちの伝吉が顔を上げると正面にしほの秘所の茂みがあった。昨日洗った時よりも間近で、しほの赤い陰唇を見てしまう。
「あ……!」
「……寝てはいなかったようね」
伝吉があれこれ考えている間に入ってきていたしほは、裸で直立したまま伝吉を見下ろしそう言うと、振り向いて湯船の前に屈んだ。
言葉を失っていた伝吉だったが、自分の務めを思い出して桶を手に取りかけ湯を行う。
今までは二度のかけ湯で済ませていたしほだったが、今晩は三度かけ湯を伝吉に行わせた。菊代の言葉通り、何時もより疲れが溜まっているのだろうか。
「………」
「………」
「………」
「………」
「(……長いな)」
待機場所で膝立ちで備えつつ伝吉は思った。今までより入浴している時間が長い。
最初は秘め事への期待で昂っていた気持ちも、時間の経過と共に次第に落ち着いてきていた。本当に今日のしほは疲れているのかもしれない。
自分の勝手な期待と思い込みに、伝吉は少し恥ずかしく思った。
やがて、しほは湯船から出て洗い場に座った。その背に回り、洗い始める伝吉。
「その……お、奥方様、TV出演、お疲れ様でした」
三度目という事もあり、気持ち的に多少慣れてきたのだろうか。伝吉はしほの背を擦りつつ、たどたどしくも言葉をかけた。
「ええ。慣れるものではないわね」
珍しくしほはそれに返事を返した。それだけで伝吉の中に嬉しさがこみ上げてくる。
「奥方様、腕を洗わせていただきます」
しほが腕を伸ばし、それを洗ってゆく。
「……?」
その時、スン、としほが鼻をひくつかせた。
「……伝吉、少し匂うわね」
「え?」
「汗臭いわ」
「え? あ! も、申し訳ありません!」
刺さるようなしほの言葉に、伝吉は洗っていた手を思わず離して半歩引いた。
言われて気付いたが、伝吉は午前の庭掃除で汗をかいたのを碌に流していない。無論使用人用の風呂もあるが、それはこの務めが終わってから入ろうとしていたのだ。
しまった、と伝吉は思った。僅かの会話で浮き上がった気分が急速に落ちてゆく。
しほはそんな伝吉の気持ちの推移を知りつつなのか、切れ長の瞳をこちらに向けて静かに、しかし厳格に言った。
「洗う側が不潔というのでは話になりません。貴方は、汚れた相手から洗って貰おうと思いますか?」
「……いいえ」
マットの上に正座し、伝吉は頭を下げた。自分が前二回で受けた快楽の事ばかり考え菊代から本来任されていた三助の務めを疎かにしていた事に気付かされ、伝吉は身を縮めてその言葉を受けた。
「誰でもそうでしょう。貴方がした事はそういう事です」
「はい……申し訳ありません」
「初めてという事で今回は許します。次はありませんよ」
「は、はい! 二度としません!」
伝吉はマットに手を置き、土下座しつつ言った。
「………」
「………」
両者の間に重い沈黙が流れる。
熱い筈の浴室内で、伝吉の額に冷や汗が浮かぶ。
「(どうすれば……奥方様をお待たせして、汗を流してくる? いや、でもそれを待ってくれるとは思えないし……!?)」
この状況からどう立て直せば良いか、伝吉は必死に考えた。しかし焦れば焦る程に判断力は鈍り、気持ちだけが急いてゆく。
「……伝吉」
「はっ、はいっ!?」
しほに呼ばれ、伝吉は上ずった声で顔を上げた。
「脱ぎなさい」
「……は?」
「今着ている、三助の服を脱ぎなさい」
背中を見せたまま、しほは顔だけ伝吉に向けて言った。
「は……はい、わかりました。奥方様」
しほの意図は分からなかったが、伝吉はそれに従わざるを得なかった。湯気を吸った股引きと腹巻を取り、全裸になる。前回晒した時には激しく勃起していた肉棒も、叱咤された直後という事もあり小さく縮んでいる。
「……そこに座りなさい」
今度はしほは自分が座っている横の、もう一つの洗い場を指し示した。おずおずと言うがままにそちらの洗い場の前に座る伝吉。
「(何をされるつもりなんだろう……?)」
座り台に着き、不安な表情を浮かべて伝吉は暫くそのままの状態でいた。その背後で桶にお湯が汲まれる音。
「ひゃっ!?」
ゆっくりと背中にお湯をかけられ、伝吉は思わず声を上げた。
「……じっとしていなさい」
背後からのしほの声。もう一度お湯をかけられる。
「お、奥方様、これは……?」
「今から使用人風呂に行ってもらう訳にもいきません。ここで洗います」
しほの言葉と共に、伝吉の背中に当てられるスポンジの感触。そのまま柔らかく背中から擦られてゆく。
「申し訳ありません、奥方様……」
自分の主人に体を洗わせているという事に恐縮し、伝吉は体を縮ませた。それに構わず、しほは伝吉の身体を洗ってゆく。
それは、しほの普段の厳格さからは想像できないような柔らかく、優しい洗い方だった。首筋や耳の裏まで丁寧に擦り、スポンジが届かないところは指先で擦る。くすぐったく、声が出てしまう伝吉。
「んんっ」
「腕を上げなさい」
言われるがままに腕を上げる。今度は腕を洗い始めるしほ。
「(……やっぱり、母親なんだな)」
その手慣れた感じに、伝吉はそう思った。まだ娘が幼い頃などは、しほが直接洗ってあげたんだろうか。そんな事を思いながら、伝吉はしほに体を任せていた。
「ふぁっ!?」
だが、伝吉のそんな緩やかな気持ちは背中に押し当てられた弾力ある感触と、胸板に回されたスポンジからの刺激であっさりと吹き飛ばされた。
「お、奥方様!?」
「じっとしていなさい」
耳元で囁かれるしほの艶めかしい声。体を密着し、伝吉の背中に柔らかくも張りのある両の乳房が押し付けられているのが分かる。そこに混じる固い感触はしほの乳首だ。
更に伝吉の胸を洗う手つきは背中を洗っていた時の動きとは異なる、まるで愛撫のように伝吉の乳首周りを集中的に擦ってくる。
「あぁ……お、奥方様、だ、ダメです……!」
叱られて萎んでいた肉棒は、与えられた刺激に図々しくも勃起し始めていた。制止しようとするが、しほの手は止まらない。そのまま次第にずり下がってゆく。
「ひあぁっ!」
スポンジが勃起した肉棒に触れ、伝吉の背筋が思わず跳ね上がる。
逆に背中に感じていたしほの乳房の感触は次第に上がり、伝吉の後頭部に当てられていた。力が入らなくなり座り台からずり下がった伝吉に対し、しほは膝立ちに姿勢を変えたようだった。後ろから抱きかかえられるような格好だ。
伝吉は身体が浮くような感覚の中で首を傾け、しほの豊かな乳房を間近で見た。うっすらと静脈の浮かんだきめ細やかな肌。そしてその先端で震える朱色の乳首、それは先程伝吉が見た時より硬さを増し、勃起していた。
「(奥方様も、感じているんだ……)くっ……!?」
「………」
しほの肉棒を擦る動きが変わった。伝吉の陰毛の周りを撫でるように擦っているが、肝心の固く反り返りビクビクと震える肉棒そのものに触ってこない。伝吉は腰を微妙に動かしてしほの手が肉棒に触れないかと試みるが、その手は動きに合わせて避けてしまう。
「お、奥方様……」
「……どうしたの?」
泣きそうな顔で伝吉はしほを見上げた。その表情はいつも通りの冷静な顔。しかし僅かに紅潮しているようにも見える。
「そ、その……これじゃ……!」
「言いたいことがあるのなら、はっきり言いなさい」
そう言う間も、しほの手は伝吉の股間を擦りながらも肉棒には直接触れず、もどかしい快感ばかりを伝吉に与えてくる。
「お……奥方様、お願い、します……その、ちょ、直接、扱いて下さい……これじゃ、おかしく……!」
「……横になりなさい」
そうしほが言い、床に敷かれたマットの上に伝吉を促した。座り台から半ば落ちるように伝吉の身体は横になった。それに添い寝するようにしほは横になり、上体を起こして伝吉の顔に乳房を近づけ、泡の残る手で直接伝吉の肉棒を柔らかく握った。
「ああっ!」
「こうして欲しかったの?」
上からのしほの声に、伝吉は上ずりながら答えた。
「はっ、はいっ! 奥方様の手で、直接扱いてほしかったんですっ!」
「……そう」
短くしほは言うと、肉棒を握った手を上下に動かし始めた。時折緩急をつけ、親指で亀頭の先端を優しく刺激してくる。
その腕の動きに合わせて、伝吉の眼前で豊満な乳房がゆさゆさと揺れる。それを見ているだけで、伝吉の背中にゾクゾクとした刺激が走る。
「……そんなに、私の胸が好きなの?」
伝吉の食い入る視線に気づいたしほが問いかけてくる。荒い息の中、強く頷く。
「はっ……はいっ、好きです……うぅっ!」
「私が最初に入浴した時から、何時も胸ばかり見ていたものね」
「す、すみません、奥方様……!」
「……『しほ』と呼ぶのであれば、吸ってもいいわよ。私のおっぱいを……」
囁き声。断る理由は無かった。
「し、しほ様ぁっ!」
体を起こし、伝吉はしほの胸にしゃぶりついた。夢中で乳首を口に含み、力の入らない腕を精一杯動かして左右からその手に収まりきらない乳肉を揉みしだく。テクニックなどと呼べるものではない、欲情そのものの動き。
「(あぁ……しほ様のおっぱい、凄い……柔らかくて、重くて、温かい……!)」
「ンッ……んあっ……」
次第にしほの口からも喘ぎが漏れ始める。それが伝吉にも更なる興奮と自信を与える。
「(しほ様も感じてる……俺がおっぱいを揉んで、感じさせてる!)」
更に伝吉は左右の乳首を交互に舐めしゃぶり、吸い、顔を押し当てた。柔らかな弾力が伝吉の顔を押し返してくる。その様子をしほは淡々とした表情で、しかし時折喘ぎつつ見下ろす。その間にも伝吉の肉棒を擦る手は止まらず、絶え間なく刺激を送り続ける。
「うっ、うぁっ、ああっ!」
伝吉の股間の奥から何かがこみ上げてきた。精液が尿道を駆け上ろうとしているのだ。
「イッ、イクッ、しほ様、イキますっ!」
―――しかし、その瞬間しほの手の動きは止まった。
「えっ……し、しほ様!?」
「我慢しなさい」
数秒置き、再び扱くのを開始する。一度下がった快感が、また限界に近づく。
「そ、そんなっ、無理、ですっ!」
思わず乳房から顔を離し悲鳴を上げる伝吉に、しほは囁くように言った。
「限界まで堪えなさい……もし出来たら、今度は胸でしてあげるわ」
「うっ、ううっ……!」
既に理性が溶けかけている伝吉は、そう言われて必死に腰に力を入れ、射精を堪えようとした。尻穴を引き締め、歯を食いしばる。
「頑張りなさい」
その反応を見て、しほは手の動きを再開した。先ほどよりも激しく、汗とお湯とカウパーが混じり水音が起きる程の摩擦だ。
「あー! あっ、あはぁっ! ほ、本当にっ、無理ですっ! しほ様ぁっ!」
「まだよ」
背筋を逸らせて伝吉は悶えた。それに冷たく言うしほ。手は止まらない。伝吉の視界が白くチカチカとし始めた。強烈な快感に頭が弾けそうな程だ。
「でっ、出ますっ! 出るぅぅっ!」
「……いいわ。出しなさい」
そうしほが言って一際強く擦ったのをとどめに、伝吉は射精した。まるで噴水のように噴き出た白濁液はしほの手と、伝吉の股間を汚してゆく。余りの気持ちよさと脱力感に伝吉はぐったりと体の力を抜いた。
「ハァ……ハァ……!」
「よく頑張ったわね」
どこか遠い所から聞こえるようなしほの声。とても返事が出来ない。半ばぼやけた視界の中、伝吉の眼前で揺れていたしほの胸が遠ざかった。
「……約束通りよ」
声の位置が移動してゆく。やがて、伝吉は自分の股間に吐息がかけられているのに気付いた。
「んんっ!?」
何か生暖かい、とろりとした液体が亀頭にかけられたのを感じて伝吉の意識ははっきりと戻った。自分の股間に視線を送る。
「んぱっ……んっ……あぁ……」
そこには、半勃ち状態の肉棒に唾液を擦り付けるしほの姿があった。頭のタオルは既に取れ、長い黒髪を乱しながら伝吉の竿から亀頭までをドロドロにしてゆく。やがて、しほは自身の両胸に手を添えて左右に広げると、伝吉の肉棒を乳肉で挟み込んだ。
「ふわぁっ!? しっ、しほ様ぁっ! す、凄いっ、ですっ!」
「頑張ったんだから、ちゃんと、してあげるわ」
少ししほの呼吸も乱れてきていた。両側から捏ねるように、肉棒を挟みながらそれぞれの乳房を動かす。伝吉の肉棒はたちまち固さを取り戻したが、それでもしほの豊かな乳の谷間から亀頭が覗く程度だ。
「ちゅっ……んはっ……ンンッ……」
その亀頭にも容赦なくしほは責め立てる。舌先を伸ばし、鈴口をつつくように刺激し、また時には亀頭全体を舐めまわす。
「あぁ……! し、しほ様の、胸が……!」
伝吉の脳裏に、昼に皆で観たTVの画像が浮かんだ。皆の前で凛々しい態度で戦車道について語っていた女性が、今こうして使用人の自分のチンポをその豊かな乳房で挟みつつ舐めしゃぶっている。その落差と背徳感が伝吉に堪らない快感を与えていた。
「じゅるっ……本当におっぱいが好きなのね」
「し、しほ様のおっぱい、好き、ですっ! 堪らないっ、ですっ!」
更にしほは肉棒を挟みなおし、より深い所でパイズリを続けた。両の手で左右から乳房を動かし、時に強く、時に柔らかく肉棒を刺激してくる。次第にこみ上げる射精感。
「まっ、またイキますっ!」
「構いません、このまま出しなさい」
「あっ、ありがとう、ござっ、いますぅっ! イクゥッ!」
再び伝吉の肉棒から精液が迸った。乳の谷間から除く亀頭から噴き出るように放たれた白濁液がしほの顔と、その豊満な乳房を白く汚してゆく。
「ふぁっ……ハァ、ハァ……!」
「……今日はもう、体を洗って貰え無さそうね」
しほの責めに精魂尽き果てたようにマットに倒れたままの伝吉を見下ろし、しほは言った。
射精後の脱力感の中、伝吉は体温が下がるのと共にしほの事が更に分からなくなっていくのを感じていた。
やはりしほは自分を興奮させ、射精させるためにこの役を与えている―――だが、何のために?
「し……いえ、奥方様……」
『しほ様』と呼びかけ、伝吉はそれを止めた。呼んではいけない気がした。
「……何故、なんですか? これは、その、俺は……」
「まずは、貴男自身が考えなさい」
先程までの奉仕の姿からは考えられないほど、しほの声は冷たかった。それ以上、何も言えない拒絶が込められていた。
「……はい」
ようやく体を起こせるようになり、伝吉は俯いた。しほはその耳元に近づく。
「………」
「………!」
伝吉の目が見開く。その反応に対し、しほは眉一つ動かさずに浴室を出ていった。
「正解に達する事が出来たなら、私の膣内に射精していいわ」
拙作をお読みいただき、ありがとうございます。
感想欄で3万字、4話程度と言っていました本作ですが、プロットを組み直したところもう少し長くなり、4万字から5万字、話数的には7~8話となりそうです。
もう暫く、伝吉の右往左往にお付き合い頂ければと思います。よろしくお願いします。