朱くひくつく陰唇に伝吉の肉棒が当てられる。
「……そのまま、腰を突き出しなさい」
しほの声の導くままに、伝吉は腰を突き入れた。
「ああっ……、しほ、様……熱いです……!」
寝床の中、伝吉はしほの膣内の感触を想像しつつ己の肉棒を扱いていた。
しほの蠱惑的な肉体を、喘ぎ声を知った今ではその妄想はより生々しいものとなり、伝吉の自慰を捗らせる。
「しほ様っ! で、出ますっ、しほぉっ!」
自らの主人の名前を呼び捨て、伝吉は達した。白濁液が迸り、布団を汚す。
「……はぁ」
自慰の後の虚脱感を感じつつ、伝吉はため息をついた。搾精された直後のしほの言葉が頭から離れない。
「正解に達する事が出来たなら、私の膣内に射精していいわ」
あの耳元での囁きを思い出すだけで、達したばかりの肉棒がぴくりと反応してしまう。
「……うぅ」
明日も早い。伝吉は酷く自分を惨めに思いつつ枕元の塵紙で布団と股間を拭うと身体を横たえた。
答えを自分で出せと言われた伝吉だが、幾ら考えてもその答えは出てこなかった。
しほとの風呂での一件以外で女性と体を交えた事は当然無いし、それどころかまともな交際すらした事の無い伝吉にとって、女心を分かれと言うのは実際酷な話であった。
「うーん……」
寝返りを打ちつつ、まどろみの中で考える。
しほは普段は他の使用人と同様の扱いしか自分にしてこない。しかし、風呂の中では自分から伝吉を誘い、射精を促してくる。それは何故なのか。
「……やっぱり、相談してみるしかないか」
どういう風に相談したら良いだろう。そう考えるうちに伝吉は眠りに落ちていった。
翌朝、しほは伝吉が朝の務めを終える頃には既に屋敷に居なかった。
西住流は島田流ほど派手に展開はしていないが、一般層向けの道場も持っている。道場と言うと板張りの大部屋を想像しがちだが、戦車を扱う競技である戦車道における道場とはすなわち演習場の事だ。当然都市部にそういった広地を持つのは難しく、郊外に出ねばならない。
普段は師範がその教官を務めるが、定期的にそれを視察し、指導するのも家元の重要な役目なのだそうだ。
そう説明する菊代の話を聞きつつ、伝吉は朝食のみそ汁を飲み干した。
「あ、あの……菊代さま」
同じ卓の使用人がこちらに気を向けてない事を確認して、少し気おくれしつつも、顔を上げて伝吉は菊代に小声で言った。
「どうしました、伝吉」
「そ、その、ご相談したい事があるのですが……」
迷いが顔に出ていたのだろう。菊代は伝吉の言葉に頷くと、すぐに答えを返した。
「食器を洗い終わったら伺います。少し待っていてください」
伝吉は頷き、自分の食器を流しに置くと休憩所の片隅に座り待つことにした。
他の使用人たちも朝食を終え、三々五々に散ってゆく。庭の植木を刈る者、買い出しにゆく者、洗濯をする者、戦車の整備をする者、様々だ。
伝吉の背後で水音がする。菊代が皿洗いをしているのだ。
「あ、あの、菊代さま。手伝わせていただけないでしょうか?」
その音が気になり、伝吉は思わず菊代の背中に声をかけた。
「大丈夫です。それに伝吉、貴男は皿洗いをした事が無いでしょう?」
「い、いえ、! 家では母の手伝いもしていましたから……」
言いつつ伝吉は立ち上がり、皿を洗う菊代の横に立つと濯ぎを始めた。
皿の表裏の洗剤を流し、水切りに並べてゆく。
「ありがとう。伝吉」
菊代は微笑みつつ伝吉に礼を言った。
「い、いえ、そんな……」
畏まりつつ伝吉もそれに礼を返す。
水音だけがしばらく流しに響く。右から菊代が渡してくる皿や椀を丁寧に洗い流してゆく。伝吉は家で母の家事の手伝いをしていた頃の事を思い出しつつ、無心に濯ぎを続けた。
やがて、最後の椀を洗い終えると菊代は手を拭い、伝吉に顔を向けた。
「さて、それでは話をしてください。伝吉」
「は、はい、申し訳ありません」
椅子のひとつを引き、伝吉はそこに座った。菊代はその正面に向き合うように座る。
柔らかい笑みを浮かべる菊代に伝吉は申し訳なく思った。自分は日頃世話になっている使用人頭の女性に、その主人に膣内射精するための答えを求めようとしているのだ。
「そ、その……」
どうやって話を始めたら良いか伝吉は迷った。色々な言い出し方を考えてはきていたのだが、改めて菊代を前にすると言葉が出てこない。
「……三助の務めの事ですか?」
「え!? い、いえ!」
言いにくそうにしているのを察したのだろう。菊代の方から伝吉に水を向けてきた。
それに対し思わず伝吉は否定してしまう。まるで自分の内心を見透かされたように感じ、背中に汗が浮かぶのが分かる。
「そうですか……そちらの方は慣れてきましたか?」
「は……はい、菊代さまの練習のお陰です」
「ふふ、そう言ってくれればやった甲斐もあったというものですね」
そう言うと菊代は笑った。その笑みにつられて伝吉の緊張も解けてゆく。
「さて、そちらの事でないとなると……何の相談ですか、伝吉?」
こちらの緊張が解けたのが分かり、菊代が改めて聞いてくる。伝吉は少し息を吸い、菊代に目を合わせた。
「そ、その、菊代さま……自分に、好きな人が、出来まして……」
「あら……」
意外そうに菊代は口に手を当てた。
ここまでは嘘は言っていない。しほの事は実際に好きだ。
「それで、じ、自分が相談できる女性が、菊代さましか……」
「……なるほど。それで、好きな人とは誰ですか?」
「えっ!? い、いえ、それは……」
「ふふっ、冗談ですよ」
慌てる伝吉に、菊代は悪戯っぽく笑った。自分より一回り以上年上の菊代だが、そうやって笑う時にはまるで少女のように伝吉には映った。
「で、その好きな子にどうやって声をかけたら……とかでしょうか?」
「いいえ、その手前というか……その人の事を考えていると、どうしても劣情が沸いてきてしまって、これが本当に好きって気持ちなのか……」
「劣情……ですか?」
「そ、その……」
伝吉は少し言い淀み、再び口を開いた。
「例えば、キスしたい……とか、あの、ええっと……」
「……『まぐわいたい』とかですか?」
「き、菊代さま!?」
菊代の口から出た思わぬ言葉に、伝吉は顔を赤くして声を上げた。
「私も木の股から出てきた訳ではありません。それに、好きな人と体を交えたいというのは単なる劣情とはまた違うものです」
「そ、そうなんでしょうか……?」
涼しい顔で言う菊代に、伝吉は不安そうに尋ねた。その違いが自分には分からない。
「ええ。劣情とは相手の身体のみを望む気持ちです。伝吉、貴男はその人と交わるだけで、それ以外の事は何もしたくないと思いますか?」
「それは……」
言われて、伝吉は改めて考えた。そんな事はない。確かにしほの身体は魅力的ではあるが、彼女の事をもっと知りたいと思うその気持ちに嘘はない……と思う。
「『そんな事はない』という顔をしていますね」
「……はい」
よくよく菊代の気付きは鋭い。伝吉は素直に頭を下げた。
「それなら伝吉、貴男はその人を愛しているという事です。その気持ちが伴った上で身体を交えたいと言うのであれば、それは劣情ではないと思いますよ」
そう語る菊代の表情は真剣だった。真っ直ぐに伝吉の顔を見つめ、こちらの迷いを晴らそうとしてくれている。
「ありがとうございます……菊代さま」
「ただし」
頭を下げる伝吉に、菊代は一言付け加えた。
「それは、ちゃんと言葉に出してあげてください。物語などでは『言葉なしで通じ合える』などと言いますが、実際は例え愛していたとしても、口に出さなければ思いは伝わらないものですから」
「……はい。ありがとうございました」
伝吉は心に感謝と申し訳なさを抱えたまま、礼を言うと席を立った。
しほが演習場から帰ってきたのは、その日の夕方をかなり過ぎた暗い時刻だった。伝吉のような泊りでない使用人は既に帰り、菊代や伝吉を含めた数名で出迎える。
リムジンを降りたしほは伝吉らを認めると小さく頷き、無言で菊代を見た。主人の意図を察した菊代が彼女の背中に回り、ジャケットを脱がせる。
「お帰りなさいませ、奥方様。稽古に随分と熱が入られたようですね」
そう言いながら菊代が手にした黒いジャケットからは、軽く叩いただけで粉塵が舞った。スーツ姿のまま戦車に乗ったのだろうか。
「……!」
そんな事を考えながら何気なくしほの方に向き直った伝吉は、しほの白いシャツ越しに透けて見える黒い下着に視線を奪われた。男物のシャツながらその胸の部分は大きく押し上げられ、しほの動きに合わせて重そうに揺れている。
「思っていた以上に戦術面の仕上がりが遅れているわ。明日、もう一度指導に向かいます。明日の予定は全て取り止めます」
「承知しました。先方への連絡を行っておきます」
そんな伝吉の焦りに、否、存在自体に気付いていないかのようにしほは彼の前を通り過ぎた。それに続く菊代。
「お食事の用意が出来ておりますが……」
「お願いするわ。着替えている内に温めておいて」
「はい」
言葉を交わすほんの合間、菊代は伝吉に視線を向けた。声に出さず口の形だけ作る。
「(おしょくじの、あとで)」
それが何を意味するかは言うまでもない。伝吉は二人の背に一礼すると、小走りに自室に戻っていった。
使用人用の風呂で烏の行水よろしく素早く湯を被った後、汗を洗い流した伝吉は家人用の風呂に向かい仕込みを行っていた。湯船に手を差し入れ、湯の熱さを確かめて頷く。
「んー、大丈夫……だよな?」
スンスンと自分の肌に鼻を近づけ、臭いを確かめる。自分の臭いは分かりづらいものだが、それでも前回のような汗臭さは無い筈だった。
「……よし」
伝吉はこの後の事を考えた。しほはおそらく、今までの行為の意味への答えを聞いてくるだろう。そう思うだけで股間の肉棒がぴくりと反応し、血が集まってゆく。
そしてそれに対し伝吉が返す答えは決まっていた。正答かどうかは正直分からない。しかし菊代への相談を経て、自分の気持ちを顧みる機会を得た伝吉は既に心を定めていた。
「奥方様……」
思わず呟きが漏れる。抑えようと思っても、自身の中から湧き上がる熱を抑えきれない。その興奮の中に性的な欲情が有る事を伝吉は否定しない。しかし、それだけでも無い。
「……しほ」
「伝吉」
「ふわぁっ!?」
突然の背後からの冷たい声に、伝吉は奇声をあげて振り返った。
「わぷっ!?」
顔が何か柔らかいものに当たる。慌てて顔を後ろに下げると、湯気で濡れた臍周りが視界一杯に広がっていた。
「……寝ていた訳ではないようですね」
頭上からの声。おずおずと伝吉は頭を上げた。タオルを頭に巻き、長い黒髪をまとめたしほが無感情な瞳で見下ろしている。
「す、すみません、奥方様!」
どうやら思考に没頭して、しほが入って来た事にも気付いていなかったらしい。伝吉が気付いた事を認めると彼女はいつも通りに湯船の前で腰を落とした。何とか動揺を抑えようとしながら伝吉はその白い背中に湯をかける。
「ンッ……」
僅かな声。二度かけ湯を行うとしほは立ち上がり、湯船に入った。伝吉も恐縮しながら自分の待ち位置である浴場の片隅に移動し、膝立ちで待機する。
「………」
「………」
湯船の中でしほは身体を軽く動かしながらくつろいでいる。時折肩に手を置き、具合を確かめているようだ。
伝吉は戦車道について詳しくは知らないが、この夏の日にエアコンも無い鉄の塊の中で火薬の匂いや騒音と共に数時間過ごすというのが心身ともに相当に負担がかかる行為だという程度は容易に想像できた。おそらく伝吉では半日と持たないだろう。
そんな演習を一日行い、朝と同様の平静な態度でいられるしほを伝吉は素直に凄いと思う。
「……ふぅ」
吐息と共にしほは身体を動かし、二の腕を揉み始めた。今までの入浴中のしほは静かに湯船に浸かっている事が多かったが、今日はいつもより身体を動かしている。今日も結構な暑さだっただけに、流石に疲れがあるのかもしれない。
「(……今日は、無いかもな)」
伝吉は僅かな落胆と共にそう思い、ふと自分が当たり前のようにしほとの行為を期待していた事に気が付き恥ずかしさを覚えた。脳裏に菊代の笑顔がよぎる。しほの誘いがあったとはいえ、あくまで自分の務めはしほの入浴の補助なのだ。
「貴男の役目は、男娼めいた事をする事ではありません」
三助の務めを言い渡された時、菊代はそう言って赤面する自分を窘めた。もし彼女が自分としほとの風呂場での交わりを知ればどう思うか。伝吉は雑念を振り払うように頭を振った。
「伝吉」
その時、湯船に浸かったままのしほが伝吉に声を向けた。
「は、はい、奥方様!」
「貴男は、力はある方ですか?」
いつも通りの無表情のまま、しほは伝吉に視線を向けつつ尋ねてきた。戸惑いつつ素直に答える。
「は? ええと……まあ、人並みには、あると思います」
「そうですか」
まるで明日の天気の事を尋ねたかのように一言だけ淡泊にしほは言葉を返し、少しの沈黙の後に言った。
「どうも思った以上に今日の疲れが残っています。伝吉、洗う前に湯船の中で身体をほぐす手伝いをお願いできますか?」
「はい!?」
突然の言葉に思わず伝吉の声が上ずる。しほは淡々と言葉を続けた。
「服を脱いで入ってきなさい。私が許可します」
その瞳には悪戯めいた光は微塵もなく、あくまで淡々と、ただそれが当たり前かのように伝吉に向けられている。
無論、伝吉にそれを拒否する事はできない。「お願い」とは言っているが、使用人にとって家人の言葉は絶対であり、それを否定する事は許されない。
「分かり……ました」
そして、伝吉もそれを拒否する気持ちは無かった。
いそいそと肌着と股引きを脱ぎ、湯船に足を向ける。
「(うぅ……)」
既に股間の肉棒はこの後の事に期待してか、半勃ちでぴくぴくと震えている。流石に手で隠しつつ歩き出した伝吉に、しほは冷たく声を向けた。
「伝吉」
「……はい」
「ちゃんと歩きなさい」
「………」
家人の言葉は絶対である。
伝吉はおずおずと股間に添えていた手を横に置いた。当然ながら、半勃ちの肉棒がしほの視線に晒される。
しほはそれに対し、何の感情も見せなかった。まるで普段の伝吉と接するのと同様の無表情で肉棒に視線を注いでいる。
「(あぁ……)」
その視線を受け、伝吉の肉棒は更に固さを増してしまう。反り返った固い肉棒は赤い亀頭を半ば露出させ、腹に貼りつかん程だ。
しかしそれでもしほの表情は変わらない。伝吉は肉棒を勃起させたまま入浴した。
「うわ……」
思わず声が出てしまう。使用人の風呂とは使っている湯まで違うのだろうか。全身を柔らかく包む湯質と、自分が設えたとはいえ程よい温度に伝吉は息を漏らした。
「そのまま私の後ろに回りなさい」
しほの言葉のままに、伝吉は湯船で中腰になりつつ彼女に近づいた。
スン、としほが僅かに鼻を鳴らす。
「……入浴はしてきたようですね」
「は、はい!」
やはり入浴しておいてよかった。伝吉は緊張しつつ答えた。裸同士ながら主としての姿勢を崩さないしほの姿に、充血していた肉棒が緊張に合わせて硬度を弱めてしまう。
しほは伝吉が背後に回った事を察すると、右腕を水平に伸ばした。
「二の腕の、ここの辺りをお願いするわ」
左手で示す箇所に伝吉は手を添え、強すぎない程度に揉み始めた。
「ふぅ……」
艶やかな口元から吐息が漏れる。
彼女の言う通り、確かにしほの腕の筋肉はかなり張っていた。伝吉ははしほの疲労を気遣いながらも、二人の娘を持つとは思えない若々しい肌の張りを指先から感じていた。
「大変なのですね、戦車道って……」
普段の伝吉であれば、自分からしほに話しかけるなど考えられない事であった。しかしこの一緒に入浴している状況と、今までの数度の淫猥な交わりの経験が伝吉を大胆にさせていた。
「……そうね。装填手の練度が低かったから実施指導を行ったのだけど、高速装填を一試合分行うのは流石に堪えたわ」
珍しくしほは普通に答えた。少し振り返り、伝吉に流し目を送る。
「今度は肩をお願い」
「は、はい」
伝吉は胡坐をかくような姿勢になると、しほの背後に回り肩に手を置いた。その時、
「……少し、遠いわね」
しほはそう言うと湯船の中で体を浮かせ、伝吉の組まれた足の上に腰を落とした。
「お、奥方様!?」
伝吉は焦った。風呂の中という事もあり重さこそさほど感じないが、丁度しほの尻のところに半勃ち状態に戻っていた肉棒が来てしまっている。おそらくはしほにも気付かれているだろう。
「そのまま、手を」
しかし密着した状態のまま、まるで気に止めていないかのようにしほは指示を出した。
「は、はい……!」
震える指で伝吉はしほの肩を揉み始めた。長い黒髪はタオルで纏められ、濡れたうなじが伝吉の目と鼻の先にある。伝吉はくらくらしそうになりつつも肩もみを続けた。
「うあっ!?」
突然の股間からの刺激に伝吉は思わず背を反らした。しほが肉棒を尻の谷間に当てたまま腰を動かし始めたのだ。
「おくっ、奥方様っ!?」
「……続けなさい」
驚いてしほに尋ねようとするが、しほは淡々と言いつつ腰を捏ねるように動かした。肉棒は再び半勃ち状態から完全に隆起し、熱い湯の中でしほの尻肉の動きが与える刺激ひとつひとつに反応する。
「ンッ……んふっ……」
しほの吐息に艶やかさが混じる。むっちりとした豊満さと肌の張りを備えた尻の谷間に伝吉の肉棒はすっかり挟み込まれ、湯の熱さとは別の温度と快感を伝えてくる。
時折、亀頭が肌とは微妙に異なる感触の箇所に当たる。その度、しほも僅かに身体を震わせているようだ。
「(こ、ここって、奥方様の、お尻の……!)」
そう想像するだけで、伝吉は危うく達しそうになった。
しほの動きは更に激しくなる。上下に小刻みに動きつつ、左右に尻を揺らし亀頭をこしこしと刺激してゆく。二人の動きで湯船には波が立ち、ちゃぷちゃぷと水音を立てる。
「あぁ……お、奥方、さま……っ!」
「………」
既に伝吉は肩を揉む事も出来なくなり、まるでしほを背後から抱きしめるように腕を回していた。しほは何も答えない。まるで伝吉の反応を観察しているかのように機械的に、しかし貪欲な動きで体を押し付け、尻肉に挟み込まれた肉棒を絶頂に導いてゆく。
「あぁ……!」
思わず伝吉は肩越しに揺れるしほの重そうに揺れる豊かな乳房に手を伸ばした。
「ンンッ……!」
僅かにしほが反応する。既にその先端の朱色の乳首は固く尖っていた。
掌に伝わるずっしりとした重みを感じつつ、伝吉はしほの巨乳を揉みしだいた。
「手が、止まって、いますよ……?」
「ああっ……!」
お返しとばかりに、しほは喘ぎつつ腰の動きに回転を加えてきた。湯の中で、相手の重さを気にせず動けるが故の大胆な動きだ。堪らず伝吉は声をあげた。
「だ、駄目っ、ですっ! このままじゃ、出ますっ!」
家人の風呂の中で射精するのだけは避けようと、悲鳴めいた声で伝吉は哀願する。
しかし、しほは伝吉に顔を向けると耳元で囁いた。
「いいわ、このまま射精しなさい」
とどめとばかりにしほの腰に力が入り、引き締まった尻肉が伝吉の肉棒を擦った。
「ふあっ! おっ、おくがたっ、さまぁぁっ!」
「……『しほ』と呼んで射精しなさい」
「しっ、しほっ、しほぉっ!」
遂に限界に達し、伝吉は背を震わせつつ湯の中で射精した。止まらない射精感と共に、密着したしほの尻と伝吉の腹の間で湯とは別の熱さの液体が噴き出てくる。
「あっ……はぁぁ……しほぉ……」
ぐったりと声を漏らす伝吉に対し、しほは数度の呼吸でいつも通りの調子に戻ったようだった。
「今度は、『様』を付けずに言えたわね」
「ふぁ……ああっ!」
まだしほの腰の動きは止まっていなかった。腰を僅かにずらし、射精したばかりの肉棒に今度は秘唇を押し当ててくる。伝吉が喘ぐ間もなく、肉棒は固さを取り戻してゆく。
「……まだ、出来るわね?」
しほの言葉に、伝吉は言葉を忘れたように激しく頷いた。しほの膣内に挿入し、思い切り射精したい。それだけが頭を支配していた。
「(あぁ……し、しほの、おまんこ……!)」
だが、そこで彼女は腰の動きを止めた。
「(え?)」
「伝吉、この前の答えは出せましたか?」
しほは、驚く程冷静な表情で伝吉を見ていた。
「………!」
瞬間、熱に浮かされたような伝吉の脳裏に菊代の顔が浮かんだ。興奮を抑え切れないままではあったが、何とか答える。
「……はい」
これが正解かは分からない。しかし、伝吉の素直な気持ちではあった。
後ろから抱きしめる姿勢のまま、伝吉は言った。
「好きです、奥方様」
「……そう」
その時、しほは僅かに、しかし確かに微笑んだ。先程射精を促した時のように首を傾け、伝吉の耳元で囁く。
「失望しました」
つい、と伝吉の肩口が指で軽く押された。それだけでバランスが崩れ、しほとの距離が離れる。そのまま湯船から上がる肢体を、伝吉は呆然と見ていた。
「上がります。湯を抜いて、浴槽を洗っておきなさい」
普段の家元としての厳格な雰囲気が彼女を再び包む。伝吉は動かない。
「………」
しほはそれ以上何も言わず、伝吉を振り返る事もなく浴室を出た。
「………」
伝吉は無言で浴槽の中で濡れた天井を見上げる。
先ほど射精した精液が、湯船に白く浮き上がってきていた。