今年は去年以上に時間が取れそうにないため、更新頻度はかなり落ちてしまいますが、お付き合いいただければ嬉しいです
「これはいったい……」
6つ目の要を破壊してから2週間、ようやく7つ目の要がある場所まで来たウル達だが、目の前の光景が理解できずに思わず呆けてしまう。
もともと魔族たちの街だったのか辺りには潰された住居らしき物が散乱し、簡易的な防壁などが設置されている。
しかし、それ以上に目を引くのは要の周りに撒き散らされた魔族の血と、人外の力で捻じり潰された肉塊だ。
「辺りの家々は随分前に壊された物のようですが、この死体は最近のものですね。しかも……」
住居の劣化具合と死体の検視をしていたジブルは途中で何かに気付いたようで言葉を詰まらせる。
「これらの死体は全て同時に殺されています」
辺りに転がる死体は軽く100を超える。
更に死体の細胞などを見てみると、ほとんどが7千近い能力値を有しており、守護者であろう死体は最低でも3万以上の能力値があったと見られる。
そんな手練れたちを同時に、一切の抵抗も許さず殺せる者など限られている。
「魔王の仕業なのかな……」
ジブルの説明を聞いた全員の頭に過った考えをシャルロットが代表するように口に出す。
「そうなんやろうな。けど、なんでこないなことを……」
魔王の奇行にキアラも首を傾げる。
既に魔王はウルの切り札を見ているのだから、もっとウルの手札を暴こうと要を護る守護者に細工をすることこそあれ、自分で殺す理由などないはずだ。
敵の思考が読めないほど行動は制限される。
相手が自分達より格上なら尚更だ。
しかし、ウルは困惑する仲間達を他所に要に近付き、躊躇いなく破壊する。
「なっ!?」
いつも慎重なウルらしくない行動に仲間達は絶句する。
「大丈夫なんかご主人様……」
「問題ない」
不安そうな様子を見せるキアラに対してウルは平然とした様子で返す。
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「ウル、こんな堂々と動いてるけど、大丈夫なのかい?」
7つ目の要を壊してからウルは今までのように慎重に身を隠すことも無く、堂々と次の要を目指していた。
ウル以外の仲間は魔王の罠を疑っているためウルの行動が理解できず、野営中にシャルロットが真意を訊いてくる。
「魔王は俺達の事を探るつもりはないだろう。間違いなくこの先の要にも守護者はいない」
「……どうしてそう思うんですか?」
その言葉に確信めいたものを感じてリリスは首を傾げる。
ウルがそう感じるならおそらく間違いないのだろうが、それでもリリスにはそう感じた理由までは分からなかったからだ。
ウルはリリスのそんな反応に軽く笑みを浮かべながら自分の考えを仲間達に語る。
「あの魔王の本質はキアラに近い。わざわざ俺達を自分の領土に招き入れて俺に先祖の真似事をさせたりと幼稚で、対等な存在がほぼいないからこそ対等に遊べる相手に焦がれている戦闘狂。それが魔王ソフィアの本質だ」
その言葉に最も驚いていたのはリューとキアラだ。
二人は歴戦の戦士であるがゆえにウルがどれほど常識外れな事をしているか理解してしまっているのだ。
確かにリューもキアラもある程度格下の相手なら一瞥しただけで本質を見抜くことができる。
しかし、自分と同程度、あるいは格上の相手ならそうはいかない。
少なくとも格上なら一戦交えなければ相手を理解するなど不可能。
それをウルは一戦交えるどころか相手を一度も視認することなくやってのけたと言ってるのだ。
それこそリューからしても神の領域と思ってしまうほどの洞察力と言わざるを得ないだろう。
ウルの規格外さに戦慄している二人を見てウルは苦笑い。
「そんな大したことはしてない。ナーシャの魂を取り入れる時にナーシャを介して魔王の魂に軽く触れたから分かっただけだ」
それは仲間達と魂を通わせ続けたから出来たこと。
そもそも相手の魂に触れておきながら7つ目の要で守護者が殺されているのを見るまで分からなかったくらいだ。
それでも僅かな接触で心を開いていない敵の本質を読み解くのは普通ではないのだが、それを知るのはアルリアただ一人。
そのアルリアはやはりウルが自身の法則からズレていることを感じれて嬉しそうに微笑んでいた。
「つまり、主様の考えでは魔王は主様の力を見たことで対等な存在と判断し、楽しむためにあえて主様の事を探るのを止めたと」
「だろうな」
ウルの発言を聞いて仲間たちの反応は3つに分かれた。
リュー、キアラ、ジブルはすんなりとウルの考えを理解し、頷いたり尊敬の眼差しを向けている。
イー、スー、シーの人造天族組とリーネはウルの考えを受け入れ、特に何の反応も示さない。
しかし、リリスやシャルロット、シュヴィやウィズとウィラはウルの考えを受け入れはしたが、少し表情を曇らせている。
このあたりの差はウルが語った魔王の本質に馴染みがあるかの差だ。
この性質を大なり小なり持っている実力者はすんなりと受け入れられ、そうでない者は理解しきれないだけで、ウルの考えに指摘をする者はいなかった。
「そ、それなら魔王が高位化してる魔族を取り込んでない可能性も」
魔王の恐ろしさはその成長速度の速さだ。
他者を取り込み、自らの糧とするそれは眷族契約に近いものがある。
もし魔王が残りの降雨い魔族を取り込んでいた場合、能力値は80万くらいだが、もし取り込んでいなければ50万ほどに留まるだろう。
それでも格上なことに変わりはないが、少しでも戦いやすくなるのではないかと考えたのだ。
「それはさすがに楽観的過ぎじゃの」
しかし、その考えはリューによって否定される。
「戦いを楽しむために相手を探らないのと、勝つための準備をしないことは同じではない。我が主様の力量を生で測るために今は取り込んでおらんじゃろうが、すぐに自分に還元できるようにはしておるじゃろう。現に先の番人は生前の能力値と死体の状態が一致せんかった」
「どういうことですか?」
リリスはきょとんとした様子でリューに聞き返す。
"神眼"では魂が失われた死体の能力値を見ることはできないが、死体の状態から生前の能力値を予想するなどこのメンバーには朝飯前だ。
しかし、"神眼"がなくともリューは"神眼"以上の情報を引き出すことができる。
「あの番人の肉体は確かに高位魔族のものだったが、死体があまりにも弱々しすぎる」
数多の戦闘を経験してきたリューには死体のオーラや圧と言った物が感覚的に分かる。
それは肉体の状態に影響されないものだ。
「あの死体は能力値の何分の一も覇気を感じなんだ」
それは既に能力値を抜き取られている証。
「問題はない」
リューの話を遮るようにウルが口を挟む。
もともとウルは最大の力を敵がぶつけてくるものとして戦う準備をしている。
多少それが上下したところで大した問題ではない。
「敵が何をしてこようが俺たちのすることは変わらないだろ?」
どうやって魔王ソフィアに挑むか、そのことはあえて仲間達には話していないが、仲間達もその意図を汲み取り自分の役目以外の事を詮索しようとしない。
自分の役目は意思を持つウルの手足となり、ウルのために役立つ事だ。
それを全員が再認識したことで場の空気がどんよりと纏わりつくような陰鬱なものから鋭く研ぎ澄まされた剣のようなものに変わる。
ウルはどこまでも自分に尽くしてくれる仲間達に笑みを浮かべて答える。
そろそろエロ回挟みたいですね