※この作品はR-18です。

世界に絶望した救世主の救済方   作:ウル・ウルス

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爆発

 

「ウルさん、この近くにルイエという街が在ります。ただこの街はあまり治安が良くないそうなので今は無理に寄らなくてもいいと思いますがどうしますか?」

 

 最近ウルはかなり機嫌が悪い、しかし最近は人と接触することが無かったためあのドス黒い負の感情のせいではない。シャルロットとジブルこの二人の存在が原因なのだ、二人を前にするとなぜか正体の分からない感情が沸き上がって来る。その感情がウルを不機嫌にさせているのだ・

 シャルロットも自分が原因だと気付いているのだろう最近は無駄に話しかけることはしなくなり、今もウルが治安も悪い街に行って負の感情を溜めないように気を遣ってくる。

 だがその気遣いにさえ謎の感情が沸き上がって来る。

 

「・・・・武器だけ調達しに寄る」

 

 ウルは沸き上がって来る感情を抑え込みながら抑揚の無い声で答える。

 最近はジブルとの鍛錬でかなりの武器を消費してしまったここらで調達する必要があるだろう。

 最もウルの力に耐えれる武器など置いているはずもないので初めから消費用に購入するのだが。

 ウルに合う武器はアルリアでもまだ作れていない。アルリアはウル達が調達した素材だけで武器を作っているのだ素材が弱ければ武器も弱くなる。もちろんその素材で作れる武器の中では最高の物を作ってくれている。しかし弱い素材ではリリスやシャルロットが使うのならまだ良いがウルやジブルの力には耐えられない。

 

 そんな訳で出来るだけ大量に購入する必要があるだろうと思いながら山道を進んでいると前からあちこち破れているボロ布を頭から被った二つの人影が駆けてくる。

 普通ならまずならず者の類いだと思うのだろうがその人影はあまりにも小さすぎた。身長が低く二人共120程しかなくリリスより幼いのは間違いない。もちろんそれくらいの年の子がならず者にならないという訳ではないが。

 

「きゃっ!」

 

 一人の子供がウルに気付かずぶつかりしりもちをつく。その時一瞬ボロ布の間から黒髪赤目の女の子の顔が見える。

 

「何してるの!早く逃げないと追いつかれちゃう!!」

 

 もう一人の子が焦った様に叫ぶ。その子も髪こそ黒くないが赤い目をしている。

 

「最後のやつがいたぞ!」

 

 べつの方で声がする。声のした方を見ると鎧を着た兵士らしき男達がこちらに向かって武器を構えながら走って来ている。この子達を追いかけているようだ。

 

「助けてください!私達なにも悪い事してないのにこのままじゃ殺されます、お願いします!」

 

 このまま逃げ切るのは不可能と思ったのだろうウルにしがみついて何度もお願いしますと最後の希望に縋るように言い続ける。

 そうしている間に兵士たちが傍までやって来る。

 

「なあ、何してるんだこの子達何かしたのか?」

「なんだ旅の者か?訓練だよ」

「訓練?」

「ああ、そいつらは見ての通り魔族だ。魔族と戦うなら魔族を使って訓練した方がいいだろ。それに街の害虫駆除もできるし一石二鳥だろ」

「彼らは本当に魔族なのかい?亜人じゃなく?」

 

 彼らの言い分を聞きシャルロットが我慢できずに割って入る。

 シャルロットの中では魔族の血を引いている亜人でも人族の味方なら立派な人族だと思っている。更に言えば魔族でも人族に敵対しない魔族もいるので人族の敵を一概に魔族と言う言葉で表す事に疑問を抱いてさえいる。

 

「赤目黒髪の亜人だぞ魔族だろ何言ってんだ?」

 

 だがこいつらはそうは考えていないようだ。

 

「普通の人でも赤目や黒髪になることは有るだろ!」

「そんなの知らねえよ!どのみち街の害虫であることは変わらねえんだから」

「っ!?」

 

 兵士達はさも当然のように言う彼らと自分の認識が決定的に違うことにシャルロットは言葉を出せない。

 

「じゃあ、こいつらは何もしてなくて、お前らは訓練のためにこいつらを殺すんだな?」

 

 ウルは兵士たちに普通に話しかける。しかしウルを知るリリスとシャルロットは体の芯に氷を入れられた様な感覚に襲われ嫌な汗が噴き出す、ジブルでさえその場から一歩後ずさった程だ。

 

「ああそうだ、もういいだろ邪魔するな」

 

 兵士達はそんなリリス達の様子には一切気付かず鬱陶しそうに言う。それを聞いてからウルは彼らから視線を外し足元で震えている少女ともう一人の子供を見て呟く。

 

「なあ、助けてくれって具体的にどうして欲しいんだ?」

「え?」

「こいつらからただ逃げたいのか。それとも———————殺したいのか」

 

 少女は意味が分からないという顔をする。本気で助けてもらえるとは思っていなかったのだろう。

 

「なんだそいつら助けるのか?魔族を助けるって事はお前も人族の敵だな。」

「ちょうどよかった、こいつらただ逃げるだけで戦って来ないからな」

「黙れ下郎、主は今貴様らなどに話をしていない」

 

 ニヤニヤと笑いながら武器を構え直そうとする兵士達に対してジブルは慌てて威圧をし動きを止めさせる。

 

 今主の気に障る事をさせてはいけない

 

 天族の直感がそう警告していた。

 ジブルの声を聞き、鋭い視線を向けられただけで彼らは動けなくなり、息すら出来ていないようで顔を赤黒く変色させていく。

 

「で、どうしたいんだ?」

「それは・・・」

「殺したいです」

 

 ウルは兵士達の事など気にした素振りも見せずもう一度少女たちに問いかける。一人は言いよどむがもう一人ははっきりと殺したいと言う。

 それを聞いてウルは頷きジブルに命じる。

 

「ジブル———消せ」

「はっ」

 

 ウルの命を聞きジブルは翼を広げる。それを見た兵士たちは恐怖に顔をひきつらせ必死に何かを言おうとするが「かっ、ひゅ」と意味の無い音を出すだけだ。

 そんな彼らにジブルはそっと手をかざし無慈悲にも魔法陣を出現させる。

 

「竜巻(トルネード)」

 

 暴力的な風の渦が生まれ兵士達を切り刻み、すり潰していく。

 風が治まるとそこには真っ赤な血の海だけがそこに在った。ジブルは文字通り兵士達を消したのだ。

 

「あの、助けていただいてありがとうございます」

 

 少女はしばらく呆然としていたが急に我に返り礼を言ってくる。

 

「礼なら何があったのか詳しく教えてくれ」

「え?あっ、はい」

 

 ウルに言われ2人の少女は話しだす。

 二人はウィラとウィズと言いルイエの身寄りのない者や二人の様に迫害されている者が集まるスラム街で暮らしていたらしいのだが、今日いきなり軍に捕らえられ訓練の道具に使うと言われたそうだ。逆らった者や逃げようとした者は見せしめに殺され、二人の仲が良かった友達も木に括り付けられ魔術の的にされ殺されてしまったそうだ。それを見た者は従うしかなく、この近くまで連れてこられ訓練が始まり、皆は必死に逃げるが一人また一人と捕まり殺せれていきもう気付いたら二人だけになっていたらしい。後は逃げている内にウル達に出会ったそうだ。

 

「私達と違う方向に逃げた人もまだ生きているかもしれません、その人たちも助けてもらえませんか」

「残念ながらあなた方二人以外生き残っている者は居ません」

「そんな」

 

 アルリアの言葉を聞いて二人は泣きだしてしまったのでリリスは二人を慰める。二人は6歳と7歳だ無理もない。

 

「二人はこれからどうする?」

「分かりません・・・私達の居場所なんて何処にも無いんです」

 

 少女の悲痛な叫びが辺りに木霊する。ウルはしばらく黙ってから口を開く。

 

「なら俺と一緒に来ないか?」

「「「「え?」」」」

 

 アルリアとジブルを除く全員が違う意味で同じ声を出す。

 ウィラとウィズは普通なら傍に居るだけで一緒に迫害される自分たちを傍に置くと言う提案に驚いて、リリスとシャルロットはウルが傍に自分から人を置く事に驚いて。

 実を言えばウルもこんな提案をした自分に驚いていたりする。普通なら絶対にありえないが今は正体の分からない感情とドス黒い負の感情が沸き上がってきている。だから更にありえない提案をする。

 

「もしお前たちが街に復讐をしたいのならやってやってもいいぞ」

 

 自分の正体がバレるかもしれないこんなリスクの有る事は避けたいのだが自分でも止められない。二人はじっくりと考えてから「お願いします」とだけ言う。

 リリスとシャルロットは何か言いたそうな顔をしているが何も言ってくることはなかった。

 

「ジブルこの近くの街滅ぼすぞ」

「畏まりました」

 

 そう言ってジブルは空へ飛び立つ。さすがにニ枚羽の天族一人でこの国を亡ぼすことはできないが、小国や街の1つだけなら訳ない。そこにウルも加わるのだ当然結果は見えている。

 

 その日ルイエの街は地図から消えた。

 

 

ー - - - - - - - - - - - - ー - - - - - - - - - - 

 

 

「ウルお兄さんはどうして私達にここまでしてくれるんですか?」

 

 ルイエの街を滅ぼし新たに二人のメンバーを迎えたウルは食事をしていた。ウィラとウィズは今まで食べた事の無い温かい食事を嬉しそうに食べながら聞いてくる。

 ウルは認識を元に戻し黒髪と赤い目を見せてやる。二人はウルの顔を見てもウル・ラグナルだとは分からなかったようだがウルが自分たちと同じであるという事は分かったようだ。

 

「ウルさん、お願いがあります」

 

 そうして食事をしていると最近ウルに話すこともなく何か考え事をしていたシャルロットが口を開く。食事に手をつけることもなく深刻な表情をしながら言ってくる。

 

「ウルさんの過去を教えてください」

 

 その瞬間ウルの雰囲気が変わるシャルロットが今まで避けてきたタブーに踏み込んできた。

 

「なぜだ?」

 

 ウルの声に殺気が籠る、返答次第では殺すつもりなのは明らかだ。だがシャルロットもそれくらいの覚悟はできている。しかし覚悟していても体が震えてしまう。

 

「ボクの役目は物事を中立の立場で見る事だ。でもボクはあまりにも世間知らずなのかもしれない」

 

 オリブントの街にも赤目や黒髪の者を差別し迫害することが無かった訳ではない、だが街の者もシャルロットと同じような考え方の人が多くいた為ウィズやウィラ達ほど酷くはなかった。

 知識では知っていたが酷くてもこの前の少年の時位だと思っていた。だがこの前の少年の扱いは本当にましな方だったのだ。

 オリブントの街はあまりにも治安が良すぎ、ギルド長をしていた為他の街の事をあまり知ら無い為それが常識だと思っていた。

 しかし現実は違ったシャルロットは自分の常識が正しいのか分からなくなる。

 そしてウルが受けてきた扱いがどれほどのものだったのか分からない。

 

「それを知ったところで何になる」

「どうしても知っておきたいんだ!」

「ふざけるな!!」

 

 ウルは手をシャルロットの方へ向ける。ウルの手は銃口とと同じだあと少し動作を加えるだけで兵器になる。シャルロットは震えながらも真剣な目でこちらを見てくる。

 またウルの中で正体の分からない感情が沸き上がる。

 

「主様、私も知りたいです主がどのような扱いを受けてきたか」

 

 ジブルが火に油を注ぐようなことを言う。遂にウルは我慢できなくなる、しかし魔法は放たれる事は無かった。あまりの怒りで魔力を魔法に変える事ができずそのまま放出してしまう。

 ただの魔力でもウルの膨大な量になればそれだけでも脅威だ、辺りを吹き飛ばし巨大なクレーターを作る。だが辺りを吹き飛ばすだけで全員無事だ。

 

「ウル様」

 

 アルリアはそっと声をかけてくる。それで少しは落ち着くが顔は怒りで歪めたままだ。

 

「アル見せてやれ」

「畏まりました」

 

 底冷えするような冷たい声で言うとアルリアはシャルロットとジブルの手を持ちウルの過去を見せる。

 

「うっ!?」

「!?」

 

 シャルロットはすぐに吐いてしまい、ジブルは顔をしかめる。アルリアはどうやらただ見せるのではなく追体験をさせたようだ。

 

「これで満足か?」

 

 ウルは辛そうに言う。自分も過去を思い出してしまったのだろう。

 

「本当にすみません」

 

 そんなウルを見てシャルロットは泣きながら土下座をしてくる。

 

「何がだ」

「こんな酷い扱いをしていたなんて、本当にすみません!!!」

 

 別にシャルロットがウルに対して酷い仕打ちをしていたわけではない。だがそれでも謝らずにはいられなかった。

 

「今はっきりと私の気持ちが分かりました。主様、私を主様の眷属にしてください」

 

 ジブルが覚悟を決めた顔で言ってくる。

 

「何でだ」

「天族は生涯一人の者しか愛しません。私が主様の傍に居たのは主様がその相手かを確認する為でした。そして今主様の過去を見て確信しました、あなた様が私の運命の相手だと」

「それがどう関係ある」

「私はあなたに全てを捧げ力になりたい、その為には眷属になるのが一番良いと思いました」

「そんなのはどうでもいい、俺はお前を眷属にする気はない!」

 

 ウルは拒絶するように言い放つとジブルは翼を広げ目の前に持ってくる、そして翼を持ち一気に引きちぎる。

 翼は天族の象徴でもあり誇りだ、それを引きちぎる事はよほどの覚悟がいるはずだ。なのにあっさりとそれをやってのける。

 

「これが私の覚悟です。天族としての思い出駄目ならただの力としてあなたの役に立ちたい」

 

 相当の激痛があるはずなのに顔色一つ変えない。それを見てシャルロットも覚悟を決める。

 

「ボクも眷属にしてくれ。奴隷契約で信用できないのなら眷属契約しかないはずだ。半神化すれば簡単には死なないそうだしアルリア様もいるだからボクを使ってくれ」

 

 これまでの扱いが我慢できないのなら自分をサンドバッグの代わりにしてくれればいい。更に眷属契約をすることでウルの力になれる。それがシャルロットが考えたウルに対する贖罪だ。

 

「なんなんだよ、お前ら」

 

 二人を前にしてウルは抑えていた感情が一気に溢れ出しヒステリックに叫び出す。

 

「なんで俺に近付こうとする!?なぜ俺の傍に居ようとする!?なぜ俺に普通に接する!?」

 

「なんでそんな風にするならもっと早くにしてくれなかったんだ!?なんで助けてくれなかったんだ!?なんで・・・なんで・・・なんで」

 

 最後の方は滅茶苦茶な事を言っている出会っていない者が助けられる訳がない。だが叫ばずにはいられなかった。

 二人が少し体験しただけでここまでの反応を示したほどの体験を18年も受け続けてきたのだ、その感情は本来とても一人で抱えられる物ではないはずだが、ウルはそれを一人で抱え込んでいたのだ。リリスの時は母を亡くした直後だったためウルからリリスを求めていた為こんな事にはならなかったが、二人は自分からウルに接してきた、だから二人の態度が抑えを外してしまったのだ、それはウルが心を開きかけていた証拠でもあるのだが。 

 ウルは泣きじゃくり子供のように喚き魔力をまき散らす、二人はそんなウルを抱きしめる。それはちょうど親が子供を落ち着かせる様な図だ。

 魔力も体力も使い果たしたところでようやく落ち着く。二人は暴れるウルを抑えたため全身ボロボロだ、それでも最後まで離さなかった。そんな二人を見てウルは呟く。

 

「本当に眷属になるんだな、後悔しないな」

「「はい」」

 

 二人は即答する。

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