ウルは徐々に眠りから覚めてゆく。目を開けると眷族達が朝食の準備を始めてもいた。
「ウルさん、おはようございます」
リリスがウルの目覚めにいち早く気づき挨拶をしてくる。そしてそれにつられて他の眷族達も挨拶をしてくるのでウルも挨拶を返す。
「久しぶりによく眠れたんじゃない?」
「そうかもな」
シャルロットは朝食の準備をしながらそんなことを言ってくる。
たしかに久しぶりに体から疲れがとれ調子がいい気がする。
考えてみればウルは普段睡眠をとるとき警戒して熟睡することがない。特に最近はイーが居たので尚更だっただろう。だが今日は周りが起きても、朝食の準備を始めても目が覚めることはなかった。それはイーに心を開いたことで今まで警戒して張り詰めていたものが緩んだからかもしれない。なんにせよ今日は熟睡していたことに間違いはないだろう。
「どうぞマスター」
体を伸ばし完全に意識が覚醒したタイミングでイーが朝食の入った皿を差し出す。
「悪いな」
ウルはその皿を受け取り手頃な岩に腰かける。今日の朝食は鳥の肉を団子に物を入れたスープと街で購入したパンと木の実や山菜を混ぜたサラダだった。
ウルは朝食が皆に行き渡ったのを見てから手を付ける。
皆が朝食を食べ始めているなかやはりイーだけが手を付けようとしない。
イーの行動はイーに組み込まれているプログラムの一環としてあるので現代の常識を知ってもウルが仲間と認めても変える事は難しいようだ。だから、ウルはイーに
「どうしても無理ならそれでいいが、出来るのなら他の奴らと同じようにしてくれ」
と言うと、イーはそれを命令と捉えることで自分を納得させたよで食事に手を付け始める。
「それで、そろそろ他の人造天族を感知できたか?」
ウルはパンを千切りスープに浸けながらイーに話しかける。イーから事前に聞いている情報では人造天族の再起動は同時進行で行われる訳ではなく、一体ずつ再起動が行われるそうだ。こちらとしては一体一体相手できるので好都合なのだが。それでイーの再起動に掛かった時間から計算するとそろそろもう一体が探知できるくらいに復活する頃合いらしい。
「いえ、まだ感知できていません」
しかしイーは首を横に降る。まだそのレベルまで達していないらしい。
「ですがそう遠くない間に関知できるはずです」
感知し次第必ず報告すると言う目を向けてくる。今ならイーのその目も信用できる。
「もう一度詳しく情報をくれ」
「はい、EX-04は魔法より近接攻撃を主体としている機体で耐久力と瞬発力が高く理論上は自己破損と引き換えに一時的に限界以上の力を引き出すことが出来る機体です。しかし魔法耐性が低く侵食系の魔法に弱いのも特徴です」
「理論上はと言うことは成功してないのか?」
「いえ、それを使ってしまうと完全に崩壊してしまうので許可なく使うことができず、今までの使用したことがないのです」
一瞬自分の強化魔法のことが脳裏に過り確認する。許可がとれる状態にしないことが目的なのだから許可が必要なら警戒する必要はないはずだ。
「EX-12は逆に魔法に特化しており高い魔法体制と魔法制御能力を持っています。近接戦は弱いですが魔法で防御力を上げられるため耐久力はEX-04以上と考えてよいかと」
やはり問題はEX-12だなと思いつつどのように対処するか考える。まず破壊するとして全力で戦えばそれはそれでいつか気づかれる。かといってイーのように無条件で下ると考えるのは楽観的過ぎる。
「分身体を出していると思うか?」
イー達人造天族には<分裂>と言うスキルが備わっているらしい。このスキルは分身体を創る事が出来るが、分身体を出せば出すほどステータスが分割されて弱くなっていくらしい。だからこの分身体を先に破壊しておけばイーのように復活した時に本来の実力が発揮できなくなるそうだ。
「恐らく私と同じように自動的に出していると思います」
イーが言うのであればその可能性は高いはずだ。だが出していないとも限らないのでどうしたものかと思考を巡らせ対策を考える。
「イーはこの状態で天族とコンタクトがとれるのか?」
「術式を展開すれば運が良ければと言ったところです」
(ならば俺の監視下に置いておくのが一番いいのか)
気付かれ本格的に敵対される前にこちらの目的を達成するこれが最良の策なのかもしれない。
「お代わりお願いします」
イーと話して考えている間に全部食べ終わったのかウィラがお代わりをする。
「すみません、私もお代わりを頂けますか」
「いいよ」
イーも食べ終えると皿を差し出しながらお代わりをしようとする。
シャルロットは驚きながらも皿を受け取る。
「珍しいねお代わりなんて」
イーの皿にスープを注ぎながら言う。今までイーがお代わりなどをする事はなかった。
「早く力を回復させたいのです」
そうであってもお代わりをするのはイーが遠慮をしなくなった証拠だろう。
「はい」
「ありがとうございます」
イーは皿を受けとる際に僅かに口角を上げる。それは殆ど変わらない、しかし確実に笑ったりこれはイーはウルに関することだけでなくウルの仲間に関することにもごく僅かなものだが感情を表に出すようになったためだろう。
「イー、無理して力を回復させようとしなくていいぞ」
「ですが私は早くマスターの役に立ちたいのです」
「悪いな」
変わったのはイーだけではない、ウルもイーに対し心を開き他の眷族達と同様に接するようになった。
しかしイーではなく、イーと繋がっている他の人造天族に知られては不味い情報もあるためウル達の素性や目的、秘密などは今も教えれない。
だがイーもその事は理解してくれているようで特に不満は無いらしい。
「出発するか」
全員が食事を終え後片付けをすまししばらく休憩した後そう言って旅を再開させる。
ウルはフェンリルを呼び出しその背中に跨がる。
ウル達は相変わらず人目につかないところではフェンリルを使って移動している。
もちろんウルの足で走る方がフェンリルより速いがウィラとウィズが付いてこれないためフェンリルを使って移動しているのだ。
しかし急ぐ必要があるのであればもっと足の早い魔獣を使いたいところだ。
「それでしたらアヴァザードを通るのならその時に竜を眷獣にしてはいかがですか?」
考えているとアルリアが助言をくれる。聞けば竜は地上で最速の魔獣らしい。もしアヴァザードを通るのなら眷獣にするのも考えて置いてもいいかもしれない。
「だが、問題はそれより人造天族だ」
監視下に置くとしても抵抗されない状態にしておきたい。
「大丈夫です。その事ならイーに考えがあるようですし」
「考えは有りますが、実行することはできません」
「大丈夫です、私も手伝いますから」
「……出来るのですか?」
「勿論」
二人でどうやら話はまとまったみたいだ。
作戦の具体的なことは教えてもらえなかったがその件については任せてくれとアルリアが言うので二人に任せることにする。
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その後しばらくは他の人造天族を感知することもなくアヴァザードを目指していた。
「マスター、EX-04が感知できました」
イーが突然真剣な目で報告してくる。
「どうだ?」
「残念ながらEX-04はマスターの事を主と思っていないようです」
敵対するつもりが有るかと聞けばあると答えられた。ウルの目付きが鋭くなっていく。
「分身体を出しているかは分かるか」
「出してはいますが自分の元に集めだしています。天族にマスターの事を報告するつもりらしいです」
確実にウルと敵対するつもりらしい。
「飛べるか」
「飛べますが正確な位置までは分からないので上空200m程離れて転移しなければ危険です」
どのみち分身体を破壊する必要があるのでそれで構わない。イーはウルの了承を得るとすぐに転移の準備にはいる。
転移が終わるとウル達は空へ投げ出され重力にしたがい落ちていく。しかしイーとジブルが<飛翔>を使い地面に激突しないよう掴んでくれる。
ウルはその際少し離れたところにイーの時と同じように魔獣が逃げ出している場所を見つける。
地面に着くとそちらの方へ向かう。
「分身体の位置と核の位置は正確に分かるか」
「はい」
「なら中でEX-04の真上の位置を教えてくれ」
「分かりました」
そう言ってウル達は遺跡の中に入っていく。例によって襲ってくる魔獣もいたが全て瞬殺する。そしてイーにEX-04の真上の位置まで案内させる。
「このまま下に降りる、分身体がいる階層になったら教えてくれ」
そう言ってウルは地面に向かって拳を降り下ろす。直後辺りが震え地面は崩れ落ち下の階層までの大穴が開く。ウルはその穴に飛び込み下の階層に行く。他の皆もそれに続くように大穴に飛び込む。
ウルは下で皆が降りてきたのを確かめるとまた拳を地面に叩きつけ大穴を開ける。これを繰り返し物凄い速さでEX-04の元を目指す。
「マスター、この階層に分身体がいます」
何度も地面を砕き下へ降った所でイーが報告してくる。ウルは頷くと膨大な魔力に任せて自分達の周り以外の階層全てを岩で押し潰す。
流石にこのやり方には全員が唖然とする。だがウルは気にせずまた地面に拳を振るい、降りる度に階層を岩で押し潰していく。
こうして最下層までたどり着くとそこには殆ど復活しているEX-04がいた。だが完全に復活しているわけではなく、肉付けが出来ておらずまだ不定形の部分があり
「GEEEEYYAAAAAaaaぁぁぁぁあああああ」
EX-04はウルとの力の差が理解できてないようで襲いかかってくる。イーのいっていた通り接近戦を仕掛けてきた。爪を立て首を切断しに来るがその勢いを逆に利用しEX-04を地面に叩きつけ腕を折る。
「Gaa」
EX-04が悲鳴を上げるが構わずEX-04の核を握り潰すつもりで鷲掴みにする。
「ぐあああああああああああぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
核にヒビが入り絶叫を上げ暴れるが上から押さえ付ける。段々とEX-04が形を保てなくなり不定形の塊に変わっていく。
「マスターもう意識はありません」
イーに言われて核を手放す。
「で、どうするんだ?そっちの案が危険すぎるなら今ここで破壊しておくが」
ウルはイーの考えている案を聞く。
「EX-04をマスターのモノにします」
「出来るのか?」
「出来ます」
イーが確信の籠った声で断言する。ウルはため息をつきイーに任せる。
イーはウルに礼を言いながらEX-04の核を不定形の塊に入れる。するとしばらくするとそれはイーと瓜二つの容姿をした人型になる。
「当分は意識を取り戻すこともないでしょう。その間に準備をします」
イーはそう言ってEX-04を担ぎ上げるとウル達を地上に転移させる。