EX-12がウルに忠誠を誓った後、三人はしばらく絶頂の余韻に浸っていた。
アルリアが作った媚薬は思いの外強く買ったことに加え、リンクを100%にしていたため快楽が3倍以上になってしまったのが原因だ。
それでもウル本人に抱かれた時に比べると劣ってしまうのだから普段から自分達がどれ程の快楽をウルから貰っているかよく分かる。
「私達はマスターの眷族にして頂きます。あなたもマスターに忠誠を誓ったのなら問題ないですよね」
眷族契約は眷族側が主側の一部となる契約だ。一度この契約を交わすと後戻りできない。それは天族に仕える存在からからウルのためだけの存在に完全に変わることを意味している。だが──
「勿論です。私の体は既にマスターのためのもの」
先ほどウルのものと同じものを膣に入れられた瞬間にEX-12の体は理解した。自分の体がどれ程のウルのために変化しているかを、どれだけウルを求めているかを。
人造天族としての思考はウルのことを主などではないと絶叫している。しかし、そんな論理的思考などでは太刀打ちできない膨大な感情がEX-12を支配している。
理性が本能的な感情に勝るはずもない。
既にEX-12自身、天族の尖兵でいることが出来ないのだ。
部屋の出入りの権限は既にアルリアから授かっているので、イー達はEX-12を連れて元の世界に移動する。
「マスター、EX-12を引き入れました」
イーの言葉を証明するようにEX-12はウルを見るとその場に跪き服従の姿勢をとる。
「EX-12です。当機はあなたを主と定め、あなたに忠誠を誓います」
EX-12の言葉からも嘘は感じられない。本当に忠誠を誓っているのだろう。これで当面の不安は無くなったことになる。
「それなら情報交換をしようよ」
パンと両手を叩きながらシャルロットが提案してくる。
確かに現在イー達は再起動が不完全だったりと本来の実力を発揮できない。その辺りの情報や自分達が持っている情報と合わせて現状を把握しておくのが得策だろう。
「でもその前にリリ、EX-12の名前を決めちゃおう」
半ば恒例となっているリリスによる命名はイー達の中で一種の儀式のようなものと位置付けられている。今までの名を捨て新な名を授かることで正真正銘ウルの配下となる。後戻り出来ない選択の前に立たされてもEX-12の心は変わらない。
「それじゃあ、女の子ぽい名前でシーちゃんてのはどうですか?」
「名称変更、以後私のことはシーとお呼びください」
本人もそれでいいようでEX-12の名前はシーに決定する。
その後はシャルロットが仕切りながら色々と情報交換をする。
一番の懸念であったイー達を通して天族に情報が流れることは絶対にないそうだ。これだけでもかなり気が楽になる。
他には今イー達のことで分かっていることはイーの能力値が8550ほどでスーが3000、シーは11200ほどだ。しかしシーはウル達から逃げるためにまだ再起動が完了してない部分を切り捨てて強引に再起動を完了させたためこれ以上戻せない状態にあるなどイー達の現状を把握していく。
「マスターと眷族契約を結び半神化をすれば能力値を上げることができるとのことですが、私にもその契約を結ばせていただけませんか?」
イー達と契約を結べば一気に倍以上の能力値を有することになる、そうなればほとんど敵はいなくなるだろう。もちろんその事に否はない。
「残念ですが、お三方は半神化も眷族契約も結ぶこともできません」
しかし、アルリアが断るようにそんなことを言ってくる。
「どういうことでしょうか?」
これに契約を結ぶことを強く望んでいたイーが聞き返す。
「お三方は人工的に創られた存在です、そこに魂は存在していません」
眷族契約とは魂と魂を繋ぐ契約だ。イー達のように正規の魂を保持していない存在とは結べないらしい。
「半神化についても同様ですあなた方は正規の器を持っていない」
本来魂を入れておく器は多少変化することができる。そのために生まれた時の能力値よりも数値を上げることができるのだ。
しかし、イー達の器は存在こそするが成長することがない。スーが能力値の増加を発動すれば自己崩壊を起こしてしまうのもこのためらしい。
これが原因でイー達が半神化することはできないそうだ。
「そう、ですか……」
イー達ははっきりと分かるくらいに落ち込んでいる。
「ですが、それに近い状況にならできます」
そんなイー達を見てここからが本題と重要なことを話し出す。
「お三方には眷族契約とほぼ同じ疑似眷族契約と疑似半神化をしてもらいます」
疑似眷族契約は今アルリアと結んでいる契約だ。この契約は眷族契約と同じ効果をもたらすが、魂と魂の繋がりはない契約だ。これならば魂を保持していないイー達とも契約を結べる。
「疑似半神化てのはなんだ?」
「半神化と言うよりは再構築と言った方が正しいかもしれませんね。お三方のシステムを少し書き換えて半神化に近い状態にします」
疑似半神化とは要するに、イーに感情を芽生えさせた時と同様に新な機能を加えて再構築することらしい。
「ただし、これも緩やかなもので半神化のように目まぐるしいスピードで能力値の上限が上がるわけではありません」
既に再起動は済んでいるので、そこに新な機能を追加しても馴染むのに時間がかかるとのことらしい。
「それでも構いませんか?」
「我々に依存はありません」
確認をとるアルリアに対して即答で応えるイー達。アルリアは満足そうに頷き三人の方へ手を翳す。そして三人が淡い光に包まれていく。
「これで疑似半神化が完了しました」
光が三人の中に溶けて行き全て取り込んだところで疑似半神化が完了する。見た目は全く変わらないし変化も感じられないが、アルリアが完了と言うならばそうなのだろう。
「イー、スー、シー、汝らは我を主と定め永久の忠誠を誓うか?」
「「「お誓いします」」」
疑似眷族契約は眷族契約と違い口付けにる魂の連結が必要ないので、口上だけで契約は結ばれる。
かくしてウルは本当の意味で人造天族、EXシリーズを仲間に迎え入れたことになる。
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情報交換も終わり、ウル達は元居た禁域の周りを囲んでいる山脈の麓まで転移で戻ってくる。
「まず、この山脈を越えるとそこからは禁域内に生息している魔獣達が現れるようになる」
すでに辺りは暗くなってきていたので今日は禁域に入るのを見送る。その代わり今後の計画を念入りにチェックすることにした。
ここでもシャルロットがテキパキと仕切っている。
「山脈を越えてからアヴァザードまでは直線距離で大体500kmほどだと言われてる。僕たちが今いる場所はここだから多分430km位で行けると思うけど」
シャルロットは地図に印をつけ、アヴァザードまでのルートを書き込みながら説明する。
「アヴァザードに近づくほど魔獣の強さも上がっていって、禁域内の平均は大体2000程でアヴァザードの平均は5000と言われているんだ」
今ウル達の能力値はリリスは1700ほど、シャルロットは2800ほど、ジブルは8200ほど、そしてウルは22500ほどとなっている。
現状ならなんとかアヴァザード踏破できるくらいの力は備わっている。
「ただ、問題は竜ですよね」
竜と出会わない洞窟を辿るルートは倍ほどの時間がかかってしまうそうなので地上ルートからアヴァザードを越えることにしているのだが、竜の平均能力値は8000、さらに強大なものなら20000を越えるものもいるらしい。
つまりこのメンバーで竜とまともに戦えるのはウルとシーしかいないことになる。
「後は自然の脅威だね」
アヴァザードは険しい道と猛吹雪になど生物が生存するのには厳しい環境になっている。
こちらは倒すことが出来ないのでなんとか対応するしかない。
「万が一はぐれたとしてもウルに召喚してもらえば良いからそこは安心できるけど」
主は眷族を自分の元へ召喚することができる。それを利用して絶対に離れない陣形を作ることができる。
「アヴァザードないでの隊列ははウルが先頭で殿はシーちゃん、左右はジブルとイーちゃんで固めて中心にボクとリリとスーちゃん。これでいいね」
紙に陣形を書き、アクシデントに対する変化も想定していく。
「それと、ボクたちは部屋を使わない方がいい。部屋からアヴァザードの環境へいきなり移ると体が鈍くなる恐れがある」
ただでさえアヴァザードでは反応が遅れる見込みなのだからこれ以上リスクを犯すのは愚策だ。
「だから禁域内では夜営することになる。夜の警戒はイーちゃんに任せっきりになると思うけど」
「構いません」
ウル達はできる限り余力を残すために睡眠を取る必要がある。となると夜の警戒は睡眠を必要としないイー達になる。
「注意しておくべきことはこれくらいかな?後はみんな装備をしっかりとすることだね」
最後にそう締め括ってシャルロットの話は終わる。その後は各々武器を整備したりイメージトレーニングをしたりと明日の禁域突入に向けて準備する。
シーだけ番号と違うのは元々他の言語で12を現すシビーにしようと思ってたんですけど、どうせなら統一しようと思って変えたけどしっくり来なかったので番号を変えちゃいました。その辺は生暖かい目で見逃してください