これからも更新はかなり空くと思いますが、無理をせず自分のペースで書くことにします。
イーが全てをさらけ出した後、その変化に気が付いたのは当事者の二人とアルリアだった。
「イーと眷族契約が結ばれている?」
擬似眷族契約とは違う、イーとの魂の結合をウルは確かに感じていた。
それを肯定するように、イーの能力値が1/100程度と僅かだがウルに上乗せされている。
「不安定ですが魂と呼べるものがイーの中で生まれていますね」
アルリアもイーを興味深そうに眺める。
本来、イーは人工的に創られた存在のため魂を得ることはない。
(ウル様の影響でしょうね。ふふっ、ウル様にこの世の法則は当てはまらないとはいえ……自分以外にも影響を及ぼすとは)
変化はイーに出ているが、状況を考慮すればトリガーはウルにあるのは明白だ。
本来なら絶対に有り得ない事態をウルは自分以外の者にさえ起こして見せた。
この特異性こそアルリアがウルに焦がれ、ウルに隷属したいと思った理由。
「アルリア様、私はどうすればいいでしょうか?」
アルリアが悦喜に耽っていると、イーが不安そうな声で尋ねてくる。
魂ができたのならウルと眷族契約を結ぶこともできるが、現状でそれをして安全か分からないため、アルリアの判断を仰ぐ事にしたのだ。
「ひとまずは安定するまでは経過を見守りつつ魂の成長を待ちましょう」
アルリアはあごに手を当て、長考の後に今すぐにでも眷族契約に変えたいと表情に出ているイーを諫め、様子を見ることを提案する。
例えるなら生まれる前の赤子、もしくはそれ以下の不安定な状態の魂だ。
眷族契約に切り換えるとなるとイーの存在が今ある魂だけになる可能性もある。
そうなれば最悪の場合イーの魂は自身の能力に耐えられず、自己崩壊を起こしてしまうかもしれない。
「恐らくですが、イーはウル様と共に在るために人造天族としてのイーを新しくできた魂に複製しているのだと思います」
アルリアは神としての経験と知識からイーの状況を冷静に分析する。
もちろん確証はない。
しかし、曲がりなりにもアルリアがそう推測するなら当たらずも遠からずといったところだろう。
「どうすれば私の魂は成長しますか?」
自分もウルの存在を強く感じられる。それだけでもイーにとってはこの上ない喜びだった。
しかもウルとの繋がりが強くなれば契約の恩恵が強く受けられる。
イーはウルの力になりたい一心でアルリアに問いかける。
「ウル様とこれまで以上に関わる事ですね」
イーの魂はウルとの繋がりが強まったことで発生したのだからウルとの絆が深まることでしか成長しないだろう。
それがアルリアの結論だ。
「とはいえ、これは異例です。ウル様にとって不都合な事にはならないと思いますが、何が起きても不思議ではありません」
アルリアならば大体の予想はつけられるが、彼女の法則の外にあるからこそ異例なのだ。確実とは言えない。
「少なくともしばらくは"分裂"は使わない方がいいですね。あれは自分の存在を分けるスキルなので生まれた魂まで分割する可能性があります」
それ以外にも魂の成長が進む事で人造天族の部分が失われスーやシーとのリンクが切れたり、生物としての機能がほとんど備わっていなかったりと心配事は山程ある。
「そこの女神様が予測できん以上は儂らがウンウン唸っていても仕方あるまい。それに、我らが主様はそのような些事など気にも留めていぬぞ」
皆が暗い思考になっているとリューが嘆息しながらウルの事を片目で流し見る。
ウルと長く接してきた仲間だから分かったが、ウルはリューの言う通り心配などしていない表情をしていた。
それどころか、むしろ嬉しそうに微笑んでいる。
それも当然だろう。イーはウルの事を思ってアルリアの法則を覆してくれたのだ。
もし、イーにとって最悪の事態が起こるとしても、それを認める気はないし、気にくわないのなら無理矢理にでも自分が望む結果に変えてやる。
ウルが初めて見せる暴君のような側面。
しかし、それはウルを慕う者達にとっては喜ばしい事でしかない。
「「マスターが望むならば、我々は全霊を賭して成就させます」」
絶対の忠誠心でウルに仕えているわけではないスーとシーもイーのように強い忠誠心と決意を瞳に宿らせ
「私は主様の盾であり矛です。主様の障害は私が打ち砕きましょう」
ジブルは天族特有の闘争心が滲み出た笑みを浮かべていつでも戦えるように翼を大きく広げる。
「よく分かんないけど、リーネはお兄ちゃんの味方だからね!」
リーネは無邪気に両手を握りしめ、
「ボクはウルに最後まで付いていくよ」
「私もご一緒しますね」
シャルロットは苦笑しつつ、リリスは満面の笑みでウルと共に在ることを宣言し、
「私たちにもお供させてください」
「どこまでも」
ウィズとウィラは真剣な顔で側に居させてくれと頭を下げる。
「それでいいんじゃ。この世の頂点はお前様なのじゃから」
リューは目を細め、満足そうに頷く。
ここにいるのはただの仲良しこよしの仲間ではない。ウルを絶対の頂点としてウルの手足になる事を誓っている集団なのだ。
ウルが王者のように振る舞う事でこの集団は更に強さを増すのは当然だろう。
それに、今までウルは状況に流され、明確な決意を持って行動したことは少なかった。
だからこそ皆はウルが自分の意思を押し通そうとしていることが嬉しいのだ。
「マスター、それでしたら……私の魂が早く成長できるように……その……伽のお相手をさせて下さい」
イーはちゃっかり頬を赤らめながらおねだりをする。
「ああ、構わない」
ウルは今までと同じように返すが、その言葉には明らかな変化があった。
それを知ってか知らずか、イーに嫉妬したスーとシーが飛びかかり、リーネは楽しそうにヤジを飛ばし、リリスとシャルロットがそれを諫める。
その変化に気付いているのも、その理由に見当が付いているのもリューとアルリアだけだが、明らかにウルの回りには明るい雰囲気が広がっていた。