ドローグの村に滞在する期間は思ったより長くなってしまった。
その理由の大半がドローグの村における新たなルールを決めるためだ。
ウルに付き従う事に決めた以上、ウルが決めた制約には従わなければならない。
しかし、村としての機能が確立されていたので、その擦り合わせが必要になったのだ。
もちろん、ウルの決めた制約を一方的に押し付けることはできるが、仮にも保護し、眷族に迎え入れた者達だ。
ある程度の融通は利かせてやる。
とはいえ、ウルに
「これは絶対に必要なことじゃが、我が主様の眷族であることを忘れず、主様が死ねと命じれば躊躇うことなく死ぬ立場であることを常に心に止めておくことじゃ」
まず初めにリューが口を開き、とんでもない内容を言い放つ。
それは自分達があくまでウルの駒であることを理解しておけと言う事だった。
「もし、その事を忘れ、マスターに対して害が及ぶ可能性のある思考をした者はすぐに粛清します」
リューの言葉を引き継ぎ、イーが淡々と告げる。
ドローグの村の住人はウルの目につかない場所で生活することになる。
それはウルの存在がウルの認知していない場所からバレる可能性があると言うことだ。
そんなリスクを背負ってまで保護しているのだから、ウルに対して絶対服従の意思を常に持てと言うことだった。
あまりにも重すぎる内容だが、それに口出しするものは誰一人としていない。
そもそも、ウルが居なければドローグの住人達は死んだままだったのだ。
この命はウルから与えられたもので、自分のものではないと誰もが思っているのだ。
「次に他の森族との接触だけど、これも一切禁止にしないとダメかな」
自分でマッピングした地図とにらめっこしながら、シャルロットが呟く。
ドローグは閉鎖的な村だったが、他の集落と多少の交流はあった。
しかし、ウルの存在がバレる恐れがあるので、他者との接触は控えなければならないとシャルロットは言う。
「となれば問題は食料をどうするかですな」
セラとシュビィ以外の住人は半神化をしていないため、食事が必要になる。
ドローグでも果物や山菜は取れるが、部屋化した範囲だけではいずれ賄いきれなくなる。
「それでしたら、わたくしの力でなんとか出来ます」
ドローグの住人と一緒に広間に集まっていた世界樹が手を上げて発言する。
森族領の恵みは全て世界樹の恩恵を受けている。
世界樹がその一部をドローグに優先的に回せば食料不足には陥らないだけの恵みを得られる。
しかし、その発言に森族は全員驚愕した。
世界樹が自分達と同じくウルの庇護下に入ったことは聞いてはいたし、実際に依り代を使ってドローグに滞在している。
しかし、世界樹は森族に平等に恩恵を与える存在として語られてきた。
その世界樹が自分達だけを優遇すると言ったのだから、森族にとっては驚天動地の事だろう。
「わたくしは既にご主人様の眷族です。全ての
森族の視線に微笑みながら答えた世界樹に、感極まって泣き出す森族達。
それだけで世界樹がどれ程、森族にとって重大な存在かが分かる。
「それで、世界樹の力でアインワイドの情報は分かるんかいな?」
「はい。わたくしの恩恵の届く範囲であれば」
この森族領は世界樹の根の上に成り立つ大陸だ。
それつまり、森族領であれば世界樹に分からない事はないということだ。
「なら、定期的にご主人様にアインワイドの情報も流して貰うようにしたらええな」
ベルクは滅ぼしたとは言え、森族至上主義を唱える森族は大勢いる。
むしろ、最大勢力であったベルクが消えたことで覇権争いが起こり、ベルクが狙っていたシュビィを手に入れようと考える者は多いだろう。
そんな輩を無視するわけにもいかないので、森族領の情報収集は必須になっていた。
「それと、一応警備のために
リリスは万が一の時を考えてウルの使い魔達をここに残していった方が良いのではないかと提案する。
「そうだな……ウィズとウィラ。二人もここに残れ」
そこで初めてウルが口を挟む。
「「え!?」」
ウルの発言を聞いて、今まで共に旅をしてきた人族の子供二人は耳を疑った。
このままウルの側にいて旅を続けられると思っていたのだから当然だろう。
「ま、待ってください!私達はウルお兄さんと一緒にいたいんです!」
「お前達は無理に危険な俺の側にいる必要はない」
ウルはドローグに住む二人と同年代の亜人を見ながら言う。
二人は魔族の血を引いているが故に人族領で迫害を受けていた。
そこでたまたま通り掛かったウルが二人を保護したのだが、それはあくまでウルの自己満足だ。
二人はウルの気まぐれに付き合わされ、危険な旅に同行していたにすぎない。
しかし、ここなら安全で、同じ境遇の同じ年齢の子供がいる。
無理にウルに付いて来るよりも、ここで暮らす方が幸せだろう。
しかし、二人の反応は違った。
ウィズは慌ててウルの側に駆け寄って縋り付き、ウィラはその場で泣き出してしまう。
「私達はウルお兄さんの戦力になれないです!で、でも、ウルお兄さんのお相手なら出来ます!」
「それは俺のために一生を捨てることになる。二人はまだ小さいからそんな決断をする必要はない」
ウルの相手をするためには半神化していなければならない。
しかし、アルリアはウルに絶対服従を誓った者にしか半神化を施すつもりはなかった。
「それで構いません!私達はウルお兄さんが助けてくれなかったら死んでました」
二人はこの村の住人と同じくウルがいなければ死んでいた。
だから自分の命はウルのものだと考えている。
「嫌な感情を吐き出すための道具でも良いんです!ウルお兄さんのお側に居させてください!!」
「それは本心から願っているのか?」
ウィズはリューと同じように嬲られても良いとまで言う。
もし仮にそれで死んだとしても、ウルの役に立って死ねるのなら構わない。
そう訴える二人を見据えて、ウルは問いかける。
「「はい」」
二人はウルの目をしっかり見つめて答える。
ウルは長いため息をついて諦めたように「分かった」と言う。
普段大人しい二人がここまで言うのだ、ウルとしても聞き入れないわけにはいかない。
「「ありがとうございます!」」
二人はウルが同行を認めたことで拝み出しそうな勢いで頭を下げる。
ウルは出来れば二人に危険な目に遭わないドローグに止まって欲しかったのだが、安全よりも自分の側に居たいと言われて嫌な気はしない。
ウルはため息つきつつも微かに笑みを浮かべていた。
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大まかなルールが決められ、後は細かな擦り合わせをするだけになると、ウルは部屋に戻った。
別に寝る必要はないのだから、その場に留まってもよかったのだが、何となく国政の話は聞きたくなかったのだ。
部屋に入るとウルは独りで横になる。
いつもなら眠るときは必ず誰か
(なぜ俺はこんなことをしているのだろう?)
目を閉じて体を休めながらそんなことを考える。
シュビィの存在があったからドローグの村を助けた。
そして秘密がバレないように眷族化を施した。
だが、この村を不幸にならないように気を使う必要はないだろう。
(嫌な感情が抜けたせいか)
世界樹とキアラの献身でウルの中に溜まっていた負の感情は殆ど無くなっていた。
未だにこの世界を救う来など更々ないが、この世界に対する憎悪が薄れている。
ならば母の魂を取り戻した後この世界をどうしたいのだろうか?
答えの出ない疑問が頭を巡り、時間だけが過ぎていく。
かなりの間そうしていると、誰かが部屋に入って来る。
部屋は完全に暗闇にしていたが、ウルが目を凝らせば昼間のように部屋の様子を見ることが出来る。
(ウィズとウィラ?)
部屋に入ってきたのは先ほどウルに同行したいと懇願してきた二人だった。
二人は半神化していないため、手探りでベッドを探し、ごそごそとベッドに潜り込みこんでウルのズボンに手をかける。
「ダメだ」
「「っ!?」」
ウルが上半身を起こして制止すると、二人はびくっと体を大きく震わせる。
「二人とも知ってるだろ」
ウルの力は強大すぎて半神化していない者がウルの精を体に取り込んだら体調を崩し、最悪の場合死に至る可能性すらある。
二人が何をしようとしたか理解しているウルは諭すように二人に語りかける。
「俺はお前達にそんなことをさせるつもりはないぞ」
「でも!私達も何かウルお兄さんの役に立たないと……ウルお兄さんの側にいれないかもしれないと思うと……」
二人にとってウルの側にいれないことは、例えそれが保護されているとしても死ぬより辛いことなのだ。
「何で俺にそこまで固執する?」
確かにウルの正体を知っているため、野放しにすることはできないが、二人がウルの側にいたいと思う理由はないはずだ。
「それは……」
「ウルお兄さんのことが好きだからです」
「ウィラ!」
ウィズが言葉を詰まらせると、ウィラが言葉を続けるが、ウィズは慌ててウィラの口を塞ぐ。
「俺のことが好き?」
「いえ!違うんです……」
ウルは好きと言う意味が分からなかった。
いや、言葉の意味は理解しているのだが、二人がなぜ自分にそんな行為を向けているのかが分からなかったのだ。
「何で隠そうとするんだ?」
「それは……私達はウルお兄さんのお役に立てていないのに、好きなんて……」
ウルは世界の頂点である神のアルリアさえ従える存在なのだ。
そんなウルに対してなんの取り柄もないスラムの小娘が行為を抱くことすら不敬と呼べるだろう。
実際ウルにそんなん考えはないが、少なくとも二人はそう考えている。
「だから!ウルさんの側にいられなくなるかもと思ったら気持ちが押さえられなくて……そんなことになるくらいならウルさんのお役に立って死にたいんです!」
例え性行でウルの力が増さなくても、ウルの感情の捌け口として嬲られて死にたいと訴えかけてくる。
「何で俺にそこまで好意を持つ?」
「ウルお兄さんは必要とされなかった私達に初めて手を差し伸べてくれて、一人の人間として扱ってくれました。それが私達には何より嬉しかったんです」
まるで思い出を振り替えるようにはにかみながら、二人はウルの質問に答える。
「分かった。お前達を抱いてやる」
「本当ですか!?」
「ただし、今じゃない。アルリアに半神化してもらってからだ」
「……それって」
「お前達を俺の眷族として迎え入れる」
ウルがそう言うと、二人は信じられないとばかりに目を見開き、次の瞬間には涙を流して喜ぶ。
「「私達、力は弱いですが……ウルお兄さんのお役に立てるよう昇進します!」」
二人は床に手をつき、頭を下げてウルの仲間として初めて決意を語る。
ウルは無表情で二人の宣言を聞くが、そこに迷いの色はなかった。
次回こそはエロ回です!
多分早く出せると思うので、期待して待っていてください