明けましておめでとうございますm(_ _)m
本年も世界に絶望した救世主の救済方をよろしくお願いします
ウルの魅了が治まった後、眷族達に僅かな変化が出ていた。
キアラは今までのようにウルにじゃれ付きながらも、ふとした拍子に顔を赤らめ、ウルの視線を受けきれずに恥ずかしがり、もじもじと落ち着かない様子を見せる。
ついに己も女であることを自覚し、戸惑っている様子だ。
リューは今まで置いていた一線を取り払ったかのようにウルに寄り添うようになっていた。
戯れるでもなく、ウルの存在を感じるように体を密着させる。
明らかに以前と比べて関係が柔和になっている。
「世界竜は雌しかおらん」
リューはウルの隣に座りながら唐突に話し出す。
「強い個体はまま別の種族になることができる。じゃが、雌でなければ他種族の力を元の種族に残せんのじゃ」
種族は生んだ母の種族に依存する。
強い男の天族が森族の女と子を成したとしても、生まれてくるのは森族になる。
しかし、これが女の天族なら話は変わる。
男の遺伝子を受けて、天族に戻れば生まれてくる子は天族になり、森族のままなら森族の子が生まれる。
「強い個体であった古の世界竜はその特性を利用し、他種族の強い遺伝子を後世に残していったのじゃ。その結果、生まれてくる世界竜は雌だけになってしまった」
リューは特に誰に向かって話すでもなく、独り言のように言葉を紡ぐ。
「しかし、近年は少し特殊な種が生まれての」
リューは眼下に広がる人族の町並みを見ながら、なにか考える様子を見せた。
「人族は大して強くもない。じゃというのに他種族に己が種族の子を生ませ、逆に他種族の力を受けることもできる」
他種族と交わり、種を繁栄させる事が出来るのは人族だけだ。
「普通に考えれば、弱い人族が生き残るために身に付けた特性だと思うじゃろう。じゃがの、人族は生まれたときからこの力を持っておった」
人族の発祥はただの猿が突然変異を起こしたことから始まる。
その人族の始祖は他の種族と交わり、次々に数を増やしていった。
「お前様はこの事をどう考える?」
そこまで言って、リューは初めてウルに問いかける。
リュー目は真剣で、ただの暇つぶしに聞いていることではない。
「お前と同じように、強い力を取り入れるためじゃないのか」
「そう考えるのが自然じゃろう。儂もそうだと思った。じゃが、人族は他種族の力を受けても大して強くならんかった」
リューはそこで一度言葉を区切り、ゆっくりと続ける。
「これは受け売りになるんじゃが―――人族は全ての種を纏めるために生まれてきたのではないか?」
それまで幾度も戦争を繰り返し、種を、世界を磨り減らしてきた現状に耐えかねて全ての種を繋げたいと願った。
それが人族の由来ではないか。
「……」
ウルはリューの仮説に口出しせず耳を傾ける。
なぜそんな仮説を話すのかは分からないが、なんとなく聞き入ってしまった。
「そこで疑問なんじゃが。もし人族が全ての種を繋げたとして、それは上手くいくのか」
人族や天族は魔族を敵視し、魔族は天族を宿敵としている。
例え全ての種が交わり、関わりを持ったとして、争い事は消えるのだろうか?
「無理だな」
リューの疑問をウルはバッサリと切り捨てる。
人族同士ですら戦争を止められないのに、他種族との遺恨を無かったことにするなど不可能だ。
「しかし、お前様の周りには様々な種が肩を並べて共存できておるじゃろ」
「これは違うだろ」
確かに魔族や森族の血を引くもの、天族や森族、世界竜や世界樹など多種多様な種族がウルの周りにはいる。
だが、これは例外中の例外と言って良いだろう。
この関係が成り立っているのは、ウルに対する絶対的な忠誠が有るからだ。
自分と同じくウルに全てを捧げ、ウルを支え、ウルの寵愛を受ける仲間だからこそ築ける関係。
それにウルはこの関係を人族だからなどという理由で括りたくなかった。
「それはすまんかったの」
ウルが少し不快そうにすると、リューは軽く頭を下げて謝罪する。
しかし、まだ何か言いたげな表情でウルとその眷族達を見ていた。
それはこれからウルの周りがどう変化して行くのか、その変化に世界はどういった反応を示すのか気になるといった様子だ。
好奇心と多少の不安を感じながらリューは口を閉ざす。
- - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - - -
リューの背に乗りながら移動すること数日。
その間、ウルは一度も下界に降りていなかった。
だからだろうか、ウルは一人で思考に耽ることが多くなっていた。
「最近考え事が多いの」
寝転んで目を閉じているウルの側にリューが腰かける。
その表情はウルが何を考えているかまで理解している顔だ。
「確かに考えることは大事じゃが、お前様の場合は自分が何をしたいかを考える方が良いかもしれんぞ」
ウルの手を愛撫しながらリューはニッコリと笑う。
「世界の行く末を一人の裁量で決めるのは難しいじゃろ」
ウルはバカではないが、教養を身に付けているわけでもない。
理詰めで考えても無理が出てしまう。
そもそも、ウルに世界を救う気は全くと言っていいほど無い。
そんな状態で思考を巡らせても無意味だと言われる。
「俺のしたいこと……」
ウルは世界を滅ぼしたいのか?
そう問われると、答えに困るだろう。
別に世界に対する憎悪が消えたわけではない。
ただ、関心がなくなったのだ。
世界が滅ぶなら勝手に滅べば良いと。
ならなぜ世界の行く末を考えてしまうのか。
これも簡単だ。
ドローグの村を庇護しているからだ。
あの村は部屋化しているが、この世界に存在している。
この世界が滅んであの村は無事なのか。
仮に無事だとして、世界が滅んだ後どうなるのか。
それが枷となり、ウルの思考を縛ってしまっている。
それを一旦取り払い、ウルのしたいことだけを考える。
これが以外にも難し。
ウルは生まれ育った環境のせいで冷酷な性格をしているが、
この一面が自分中心に考えることを躊躇させているのだ。
「優しすぎるのも問題じゃの」
「優しい?俺が?」
リューの一言にウルは心底意外そうな顔をする。
優しさとは自分に最も無縁な言葉だと思っていたからだ。
「お前様は十分に優しいぞ」
リューは優しく微笑みながら諭すように続ける。
その最たる例がリューだ。
リューは初めてウルと殺し合いをした仲だ。
しかも、ウルに対して隠し事をして裏で何か画策している。
そんなリューを処罰せず、自分の側に置くなど普通では考えられない。
「それ以外にも女神様の頼みとはいえ、恨んでいる世界を救うか救わないかを真剣に考えておる」
ウルがここ数日考えていたことは、まさしく世界の行く末についてだ。
結果は堂々巡りだったが、それでも世界の事を考えていたことには違いない。
「もしお前様が本気で自分の気持ちと向き合いたいと思ったのなら、儂が昔話でもしながら相談に乗ろう」
リューはその時が以外と近いだろうと思いながらウルに進言しておく。
前回から執筆意欲が高まりまくって書き溜め出来たので、正月は毎日投稿してみます