「何か浮かない表情をしておるの」
「リューか」
ウル達はエレニーを助けた恩人として特別に大きなテントを貸し与えられていた。
その中で眷族達が眠るなか、ウルは一人で城壁の上に登り星を眺めていた。
「あの娘の事が気になるのか?」
「……」
リューの質問には無言で返す。
しかし、リューはそれが答えだとばかりに温かい目を向けてくる。
「なぁ、リュー」
「なんじゃ?」
「お前は俺たち、ラグナルの一族を
「ああ。見ておった」
「なら……何で俺の先祖が魔王になったのかも知ってるんだよな」
「勿論」
「教えてくれるか?」
リューは以前何か悩みがあるなら昔話でもしながら相談に乗ると言った。
今がその時だ。
「では話そう」
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ウルの先祖、グローダ・ラグナルはラグナル一族の頭領の息子として生まれた。
母親が森族だったために、能力値も高く、若くして一族の中心人物になっていた。
「母さん、今日から3日ほど依頼で出掛けてくるから」
「はい。気を付けて行ってくるのよ」
ラグナルの一族は今で言うギルドのような体系で稼ぎを得ていた。
民間人の依頼や国からの要請で傭兵をしたりとその内容は多岐にわたる。
「お兄ちゃんこれお弁当」
3歳下の妹が手作り弁当を渡してくれる。
15になっても兄にベッタリなかわいいけど少し困った妹だ。
そんな妹に別れのハグをしてから、グローダは旅立つ。
今回の依頼はとある国の周辺に現れた魔族の討伐だ。
母の血を濃く継いでいるのか、グローダの能力値は1600を越えている。
瘴気が充満している所で魔族と戦えば分が悪いが、そうでないところならば殆ど敵なしだ。
今回も楽に仕事をこなす。
そして、4日後。
思ったより敵が多くて1日余分にかかってしまった。
グローダは妹にお小言を言われるだろうなと苦笑しつつラグナルの里へ帰る。
異変に気付いたのは里から数十km離れたところだ。
夜なのに里の方がやけに明るい。
嫌な予感に刈られてグローダは走り出した。
そして、嫌な予感は的中した。
里のあった場所は火の海と化し、辺りには一族の死体が転がっていた。
グローダは必死に辺りを駆け回り、生きている者がいないか探し回った。
しかし、見つかるのは親しかった者達の亡骸だけ。
そのどれもが苦悶の表情を浮かべ、直ぐに殺されず嬲り殺しにされた事を物語っていた。
「父さん、母さん、みんな」
グローダは一縷の望みをかけて屋敷があった場所へ向かう。
あそこなら母さんもいる。
そう簡単に落とせないはずだ。
そう思っていたが、現実は無情だった。
屋敷のあった場所には多くの一族の、そして父や母、妹が無惨な姿で積み上げられていた。
「あ……あああああああああああああああああ!!!!!」
グローダは拳が裂けるほど強く地面に叩き付け、血の涙を流しながら天に向かって吠える。
こんな家業をしている以上、いつかはこんな目に遭うかもと頭の中では思っていた。
しかし、現実に突き付けられると耐え難い。
「魔族か!」
一族をこんな簡単に滅ぼせる奴なんて、そうそういない。
間違いなく高位魔族の仕業だ。
あいつらはなぜ戦争を仕掛けてくるのか!
人族から魔族に戦争を仕掛けたことなど無いのに!
グローダの中にマグマのような怒りが沸き上がる。
許さない!!
魔族の存在を認めないと誓った瞬間、グローダの中で何かが弾けた。
全身に力が漲り、世界が別物に見える。
「これは……」
背中に違和感を感じて後ろを見てみると、グローダの背に
―――先祖返り
おそらく母の家系のどこかで天族と交わっていたのだろう。
それもただの天族ではなく、強大な天族だ。
だが、グローダにとってそんなことはどうでもよかった。
とにかく魔族とも互角に戦える力が手に入った。
それだけで十分だ。
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その後、グローダは依頼に出ていた一族を纏め上げ、破竹の勢いで人族領から魔族を駆逐していった。
やがて人々はラグナルの一族を勇者の一族と呼び、彼らの旅に同行するようになった。
そして遂にグローダは魔族領まで乗り込み、魔王との一騎討ちまでに持ち込んだ。
「はぁはぁ……」
「はぁはぁ……」
高位魔族の魔王と高位天族となったグローダの力は拮抗し、攻防一転の激闘が繰り広げられた。
その攻防は丸7日続いたが、徐々に形勢はグローダに傾く。
「ここまでか……」
魔力も枯れ、武器も折れて剣を突き付けられた魔王は諦めたように力を抜く。
「殺せ」
「言われなくても―――だが、最後に答えろ。なぜ人族領に攻め込む」
「はぁ……はぁ……我の民を生かすためだ」
「何?」
予想もしていなかった言葉にグローダはピクリと反応する。
「我ら魔族は……常に争い続けて、数を減らしていた。だから今までは人族領に攻める必要もなかったが……俺が魔族領を統治したことで死んでいく魔族が減り、土地と食料が枯渇した」
戦争の理由としては最もシンプルな資源確保のための戦争。
魔族がそんな人族と変わらない理由で攻めてきているとは思ってもみなかった。
「たが、その結果……お前と言う災厄を呼び込んでしまった」
「……」
「殺せ。だが、俺の首で手打にしろ。これ以上、俺の民を苦しめるな」
その言葉にグローダは雷に打たれたような感覚に陥る。
民を苦しめる?
俺が?
そこでグローダは初めて今の状況を客観的に見る。
確かに攻め込んだのは魔族側だが、何も魔族を滅ぼす必要はなかったのではないか?
人族のように平穏に暮らしている魔族達を俺が怯えさせているのではないか。
「ふ……お前を見ている俺の間違いがよくわかる」
「どういう意味だ」
「初めから暴力に訴えるのではなく、お前のようなやつと話し合うことで解決できたのではないかとな」
「……」
この魔王は後悔していた。
戦争と言う手段に頼ったことで、魔族だけでなく、
そこでグローダは視界の端に走ってくる魔族の少女を捉える。
その少女は死んだ妹と瓜二つで……
「やめて!パパを殺さないで!」
その少女はグローダから魔王を守るように立ち塞がる。
その目には涙をためて、殺されても魔王を守ると言う決意が滲み出ていた。
「……」
グローダは剣を下ろしていた。
(俺はこの魔王と同じだったのではないか?魔族だからと殺してもいいと思っていた。俺に家族がいたように、魔族にも家族がいるなど考えずに)
なぜ魔族と人族は争うのか?
いやそれ以前になぜ人族同士でも戦争をしてしまうのか。
グローダは考えた。
どうすれば俺のような悲劇を産み出さずにすむのかと。
そして結論を出す。
「魔王、俺はお前を殺す」
そう言ってグローダは剣を振り上げる。
「だが、安心しろ。お前の望みは俺が引き継ぐ」
「あぁ、俺の民と娘を頼む」
果たして魔王は何を思ったのか、死に際になって嬉しそうな笑みを浮かべる。
ブンッ!
グローダの剣が振り下ろされ、魔王の首が飛んだ。
その死に顔は未練などない穏やかなものだった。
「許してくれとは言わない。俺の事を一生恨んでいい。でも、少しでもお前が父を思うなら……俺を信じてくれないか」
魔王を殺した後、グローダは泣きじゃくる魔族の少女に近づく。
妹と瓜二つの少女を抱き締め、魔王を殺さざるを得なかった事に嘆きながら、心の内を明かす。
「俺が魔王となって、全ての悲劇を止めて見せる」
自分は勇者だ。
人族だけでなく魔族も救って見せると。
そのために前魔王を殺して魔王の座を奪う。
こうでもしなければ魔族はグローダが魔王となることを認めないだろう。
実際に魔族はすんなりとグローダを受け入れた。
しかし、人族の方は考えが甘かった。
人族を導く勇者だからこそ、魔族に寝返ったとされ、話を聞かれなくなった。
グローダは何度も人族と和平を設けようと呼び掛けたが、返されるのは罵倒と凶器のみ。
それでも、グローダは諦めなかった。
人族を恨む魔族を宥め、戦争をなくてもいいように改革を繰り返した。
その結果、魔族は更に力を増し、グローダは人族から怨敵として扱われる。
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「こうしてお前様の先祖は魔王となったのじゃ」
リューはウルの先祖の過去を語り終える。
ウルは終始無言で話を聞くだけだ。
「この話を聞いて、お前様がどう思うかは分からん。じゃが、何か得るものもあるじゃろう」
ウルはその言葉を飲み込み、深く考え、答えを出す。
ようやくウルの先祖が魔王になった理由が書けた
ここまで来るのに長かったなー(;ω;)
ここからは結構な勢いで話が進んでいくので最後まで楽しんでください