ウルは目についたエリュシア兵を葬り続け、半壊状態にまで追い込んでいた。
自暴自棄になって襲いかかってくるもの、逃げ出そうとして他の兵を掻き分けるもの、全て等しく切り捨てた。
ウルにとってこれは作業とすら言えない。
ただ、息をするように何の感情も苦労も感じていなかった。
「……」
約半日ほど暴れたところで、ウルは手を止める。
辺りの瘴気の濃度が一気に跳ね上がったのだ。
それが意味するところは1つ。
「キャハハハハハハ!随分と強くなってるジャないですか~」
エリュシア兵の少し後方に黒竜に乗った高位魔族と、数百の魔族兵が空間転移してきてのだ。
「……」
ウルはその高位魔族を見ても、表情を変えない。
それはこの高位魔族が母を殺した魔族では無いから、というわけではない。
むしろ、この高位魔族こそが母の仇だと確信した。
その上で無表情で殺気すら出していないのだ。
「ワタクシはバアル・ゼブル。偉大なル魔王様にお仕えする騎士でゴザイマス」
ゼブルはウルの事を遥か格下だと思い、ふざけた態度でウルを挑発する。
「ところで、ワタクシに殺されそうになってビクビク怯えながら逃げ隠れしていた低俗な糞マオウの子孫がワタクシを殺すなどとほざいてるそうですが?」
「……」
「おっと、ワタクシを前にして怖くて口も聞けなくなりましたか~キャハハハハハハ」
ウルはどれだけ挑発されてもなにも応えない。
もしこの場面を眷族達が見たら、恐怖のあまり気を失うだろう。
「母様の魂を返せ」
「アあん、魂?嗚呼、あの女の魂ですね!もちろんイヤですよ。あの女の魂は
バアルは心底愉しそうに醜悪な笑みを浮かべながら、ウルの母親の魂をどう嬲ったかを語り出す。
だが、その話は最後まで話されることはなかった。
ウルは軽くジャンプしてバアルの前に肉薄し、乗っている黒竜の首ごとバアルの体を左薙ぎに両断する。
バアルは二の腕から下と胴体を切断されて、崩れ落ちるように地面に落下していく。
バアルの能力値は54000ほど、高位魔族の中でも強者に分類されるが、今のウルにとってどれだけ強い高位魔族であっても、敵ではない。
「ごがッ」
バアルの上半身が地面に落ちると同時に、ウルは声帯を切り裂き喋れなくする。
こいつの話など聞く必要もない。
すぐに殺さなかったのは、こいつを殺して母の魂が解放される保証が無かったからだ。
「もう一度だけ言う、母様の魂を返せ」
ウルの声に怒りの感情はない。
母の魂を解放すれば、リーネを闇森族にした高位天族の女と同じかそれ以上の地獄を味会わせるのだ。
バアルは信じられないものを見るようにウルを見つめていた。
「ぐがっ!がごがざが!?」
すると、突然辺りの瘴気が更に濃くなり、バアルが苦しむようにのたうち回る。
『まさか、前魔王の子がここまでの力を持つとはな』
バアルの口から、バアルのものではない声が紡がれる。
その声には信じられないほどの重圧がかかっており、ウル以外でこの声を聞いたものは、全て魂が砕け死んでいく。
『妾の邪魔にならぬように、今ここで消しておくか』
バアルの体を借りた何かは、急激に力を込める。
それに対抗して、ウルも戦闘体勢に入るが、
『お前様よ!今そやつと戦ってはならん!!』
珍しく本気で焦っているリューの声に制止される。
そして、リューは庇うようにウルの前に空間転移してくる。
「貴様が新たな魔王じゃな」
『いかにも、妾こそ史上最強の魔の王』
リューは全力で警戒しつつ、ウルの代わりに声の主、新たな魔王に話しかける。
『貴様はそいつの何なんだ?』
「儂はこの方の下僕じゃよ」
魔王はウルよりリューに興味があるようで、途中からウルの事を無視してリューだけを見る。
『ほう?貴様ほどの実力者が配下につくほどか……』
魔王は何か悪戯を考える子供のような声で呟く。
『それほどの力があるなら、妾の倦怠と無聊を慰めてくれるかもしれん』
今度はリューではなく、ウルの方に興味を持った視線を送る。
『ならば、貴様の母の魂は妾が預かろう。返して欲しくば、妾の領土に乗り込んでこい』
「今ここで殺してやっても良いぞ」
ウルが再び目付きを鋭くさせ、バアルの体を睨む。
「駄目じゃ!こやつは間違いなく超高位化をしておる。実力は儂と互角かそれ以上じゃ」
高位化できる者は天賦の才を持ち、その中でも選ばれた者しかなることができない。
しかし、その高位化した者の中には更に1つ上の次元に足をかける者がいる。
それが歴史上でも数十人しか成し得なかった、超高位化。
その能力値は最低でも40万と他の追随を許さない。
『そんな妾の退屈しのぎの道具に相応しいか、貴様に試練を貸そう』
魔王はウルの能力値を盗み見してるのか、完全に相手にしていない。
しかし、リューを従えていることで何らかの片鱗を感じているのか、ウルの実力を計ろうとしている。
『古の勇者に倣って、妾の領土の要所に部下を配置しておく。その部下を全て倒したなら、妾の遊び相手にふさわしいと認めてやる』
あくまで上から、ウルを暇潰しの道具としてしか見ていない。
「良いだろう。その代わり、母様の魂に手を出すな。もし出したなら、この世の地獄を味会わせてる」
そんな面倒な条件を呑むのは不本意だが、相手が母の魂を握っている以上、迂闊に行動できない。
『はは、威勢が良いな。精々妾を楽しませろ』
魔王はそれだけ言うと、この場を去る。
それと同時に辺りの瘴気が薄くなり、依り代にされたバアルは力なく倒れる。
既に息はなく、心臓も止まっている。
魔王の憑依に肉体が耐えられなかったのだ。
だが、死を得て輪廻の輪に入るはすだったバアルの魂は、アルリアによって捕らえられ、部屋に送られる。
これからバアルは一生地獄を味わうのだが、もうそんな事どうでも良かった。
早く魔族領に向かわなければならい。
しかし、まずはこの戦争と後処理をしなければならない。
ウルは念話で眷族たちに指示を出す。
本気で蹂躙しろと。
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ウル達が実力を隠す必要がなくなってからは、あっという間だった。
リューは空間転移で航空部隊の前に戻ると、"貪欲な狩人"を発動させる。
すると、上空に歪みが生じ、それはどんどんと大きくなっていく。
天地の万物を吸い込み、押し潰す。
星、命の終焉を表す闇の塊。
リューが作り出した暗黒星は飛行艇どころか大地を吸い上げ、原型も留めぬほどに破壊していく。
この"貪欲な狩人"は籠めた魔力に比例して破壊力を増す。
いまリューは雀の涙ほどしか魔力を籠めていない。
それでこれほどの威力を誇るのだ。
他の眷族たちもそれぞれエリュシア兵を殲滅している。
リーネは早々に魔道部隊を"呪術"で壊滅させて、手こずっているリリスのサポートに回っていた。
シャルロットはキアラたちの力を借りて、魔道部隊を殲滅していく。
そして、エリュシア国内では竜が空を飛び回り、地は魔狼が駆け回る。
およそ世界の終焉ともいえる光景を目にしたエリュシア国民は呆然と立ちつくし、神に祈って怯えることしか出来ない。
そして、青くなって自室で失禁しながら震えていたフィリップス王は、場内に侵入した魔狼によって食い殺された。
後はキアラが民衆の前でエリュシアの国旗を焼いて、ラピックスの旗を掲げたことで、エリュシア国民は自国が敗戦国になったことを知らされる。
エリュシアは会戦から一日と経たずに、完膚なきまでに蹂躙された。
しゃー、次回書いたらようやくエロ回じゃ!
しばらくエロがなかった分、濃いやつ書きたいと思います