※この作品はR-18です。

世界に絶望した救世主の救済方   作:ウル・ウルス

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お久しぶりです……
スランプで意欲がわかなかったり、ちょっと入院することになったりと色々あってこんなに更新が遅れてしまいました……
どんなに時間がかかっても完走するつもりですので、気長にお付き合いいただけたら嬉しいです
では久しぶりの本編をどうぞ


魔王の片鱗

 

名も素性も知らない魔族を助けてから約半日、ウル達は近くの川場で野営をしていた。

瘴気に汚染された川が荒れ狂い、手入れされていない草木は茂り放題。

けっして良い立地とは言えないが、開けた荒野で敵に囲まれるよりは幾分ましだ。

何より、こういった場所のほうがウルにとっては落ち着く。

 

「魔王からのアプローチは無し……か」

 

限界まで神経を研ぎ澄ませ、辺りを警戒していたリューは軽く息を吐く。

 

「ご主人様の切り札を見たんやから、何かしら駒をぶつけてくると思たんやけどな」

「こうも反応が無いと逆に気味が悪いね」

 

応えるキアラとシャルロットも周囲の警戒を怠らない。

ウルの仲間達はかつて無いほど警戒態勢をとっていた。

この中で警戒をしていないのはウルとアルリア、そして意識の戻らない魔族くらいだ。

 

「ウルさん……大丈夫ですか?」

「何がだ?」

「何だか、昔に戻ったような感じがしたので……」

 

いま、ウルの心はとても穏やかだった。

体に無駄な力が入っておらず、自然体の振る舞い。

しかし、ウルと一番付き合いの長いリリスだからその中に鋭さを感じ取れた。

 

「大丈夫、俺はなにも変わっていない。ただ……ちょっとな」

 

ウルはチラリと焚き火の側で眠る魔族の少女を見る。

既にこの少女とは魂が繋がっている。

だから意識がなくとも、少女の感情の一部が読み取れてしまう。

魔王への怯え、周りとの相違による苦悩。

そしてなにより、死に対する異常なまでの恐怖。

それらがウルの底で燻り、臨戦態勢を取らせているのだ。

 

「そうですか」

 

その言葉だけでリリスは理解してくれたようだ。

ウルは軽く笑みを浮かべ魔族の少女の側に行く。

その気になれば、その感情の原因まで知ることもできるが、それはしない。

仮にも眷族契約を結んだのだ。

少女が自分から話す気になるまで待つつもりだ。

 

「ッ!?」

 

少女の頭を撫でた瞬間、少女は体を震わせ、飛び起きる。

状況が飲み込めないらしく、怯えるように周りを見回し、ウル達を見て「ひっ」と悲鳴をあげる。

しかし、事の顛末を思い出したのか、次第に落ち着きを取り戻していく。

 

「異状はないですか?」

「え……ぁ……」

「安心しろ。こいつらは俺の仲間だ」

 

体を気遣い、声をかけるイーに対して怯える少女。

ウルはため息を吐きながら無害であることを伝える。

 

「え……あ……その……ラ……ラグナル……様……」

「その呼び方は止めろ」

 

以前ほどではないにせよ、ウルは一族の名で呼ばれることを嫌う。

思いのほか強く言ってしまい、魔族の少女は顔をこわばらせた。

 

「う……うぅ……ご……ごめん……も……申し訳……ありません……」

 

びくびくしながら、青褪めた顔でこちらの顔色を窺う少女にウルはまたため息を吐く。

さっき死にかけていたときと同じ反応。

おそらく、これが少女の素の性格なのだろう。

周囲から迫害され、心が折れてしまった者の症状。

ウルは少女の目線の高さに顔を合わせる。

 

「あ……あの……何か……気に障ること……」

 

ウルに正面から見据えられて、少女は必死に笑みを作ろうとする。

 

「名前は?」

「ナ……ナーシャ……です……」

「ナーシャ、お前は俺に全てを捧げると誓い、契約した。だから、俺達はお前を無闇に傷付ける事はしない」

 

心境の変化で眷族契約に対する敷居はかなり下がっている。

誰彼構わず眷族にするつもりはないが、今ならウルのために全てを捧げる覚悟をもっている相手なら眷族契約を結べる。

だから眷族契約を結んだからといって完全に心を開いたかというとそうではないが、追い詰める気はない。

 

「あ……ありが……とう……ございます」

 

ナーシャは怯えたままの表情で、何とか言葉を絞り出す。

安全だと分かっても、ビクビクと小動物のように怯え、縋るような視線を向けてくる。

 

「これ、人族領の食材ばっかり使ってるから口に合わないかもだけど」

 

イーが触診している間に温めていたスープを差し出しながらシャルロットは親しみやすい笑みを浮かべる。

人当たりもよく、初対面でもわりと仲良くなれるのはシャルロットの長所だ。

しかし、ナーシャはそんなシャルロットからスープを受け取ってもすぐに食べようとはしない。

 

「大丈夫、毒なんて入ってないから」

「あっ……いえ……頂いた物を疑ったわけでは……」

「気にしなくていいよ」

 

本当は疑っていたのは分かっていたが、不快にさせてしまったと平身低頭で謝っているナーシャに追及するのは不憫だと思い、シャルロットは気付かないフリをする。

 

「お……おいしい……です……」

 

ナーシャは手を震わせながら一口だけ飲んでそう言うが、顔は引き攣った作り笑いだし、味どころか温度すら感じてないだろう。

それでも機嫌を損ねないように作り物の笑みを浮かべて全て飲み干す。

それを見てシャルロットはため息を吐く。

出来れば気持ちを落ち着かせて欲しかったが、仕方ない。

シャルロットは本題を切り出す。

 

「悪いんだけど魔王の事を知っているだけ教えて貰えるかな?」

 

ナーシャは能力値が跳ね上がる前でも高位化した魔族の中ではトップクラスだった。

間違いなく魔王軍の幹部だろう。

保護した魔族達からは聞けなかった魔王の情報を聞く事が出来るかもしれない。

 

「ぇ……ぁ……」

 

魔王の話題を出したとたんナーシャは全身を痙攣させ始める。

歯をガチガチと鳴らし、身を守るように体を抱いて縮こまる。

尋常ではない怯えようだ。

しかし、ウルの切り札を知られた以上、少しでも魔王の情報を仕入れて対策を立てねばならない。

 

「事は急を要する、多少辛かろうが話してもらうぞ」

「ひっ……は、話し……ます……話しますから……殺さないでください……」

 

リューが少し強めに圧力をかけると、ナーシャは大粒の汗を浮かべ、地にひれ伏して命乞いしそうな勢いで縋り付く。

それを見てリューは表情を曇らせた。

だがそれは一瞬で、人一倍敏感なナーシャでさえ気付かなかった。

 

「わ……私が……ソフィア様のこ、事で……し、し、知っているのは……ソ、ソフィア様は……他人に……」

 

そこまで言うと、ナーシャは更に激しく震えだす。

それでも必死に言葉を紡ぎ、何とか説明しようとする。

 

「ご、ごご、ご自分の、能力値を、か、貸し与える、事が、で、出来る……」

 

そこまで聞いて、リューは何かに気付いたのか、続きを催促するような形で質問を投げかける。

 

「超高位化した者のスキルとしては弱いの……まだ秘密があるじゃろ」

「は、はい……ソフィア……様の、ス、キルは、能力値を……貸した、相手が、死ぬか……能力値を、か、回収、す、すす、する時に、相手の、魂を、奪い……じ、自分の、能力値に、か、還元、す、する……」

 

ついにナーシャは言葉すら発せられなくなる。

この状態では何を聞いても答えられないだろう。

シャルロット達はこれ以上の追求を止め、新しく手に入れた情報の吟味に入る。

 

「思った以上に厄介なスキルだね……」

 

そう言うシャルロットの表情は重い。

この世界は純粋に能力値の大小で結果が決まる。

余程の僅差で特殊な条件でも満たさない限り、能力値が劣るものは能力値が勝るものに勝つことはできない。

 

「能力値を無尽蔵に増やせるとなると……」

 

相手はウルが能力値を倍増させることができる事を知った。

それを脅威に感じ、能力値を更に上げてくるかもしれない。

かといってこのまま急いで戦いを挑んでも勝てるかどうか……

 

「無尽蔵にということは無いじゃろう。いくら能力値を増やす力があるとはいっても、器には限界がある」

 

リューは顎に手を当てて熟考しながらシャルロットの考えを否定する。

この世界の生物は能力値の伸びに限りがある。

それは器(魂)に限界まで水(能力値)が溜まるからだ。

 

「高位化すれば器は大きくなるが、それでも限界はある」

「それに、能力値を与えれる相手も限られてくると思います」

 

リューの後を追うようにイーも意見を述べる。

 

「超高位化をしている者の力の一端を体に入れるのですから、受け取る側もある程度の力を求められるでしょう」

 

能力値上は少しだとしても、相手の力はまさに次元が違う。

かつて敵のスキルを盗むスキルを持った魔族と戦ったことのあるイーだが、その時は相手がイーの力に耐えきれず、魂が砕けた。

その経験を活かし、イーは魔王がスキルを使える相手の条件を探る。

 

「おそらくですが、受け取れる者は最低でも高位化をしている必要があるでしょう。さらに安定させるには中の上ほどの力は必要だと思います」

 

いま、魔族に高位化している者はそれほどいない。

かつて天族と魔族の間で起こった大戦争で力のある者や才能のある者はほとんど死んだからだ。

力を取り戻しかけたこともあったが、ウルの先祖のグローダ・ラグナルによって再び衰退した。

 

「魔族の中で高位化しとるもんは多くても十人くらいやろうね」

 

その内四人は既にウルが倒している。

 

「もし残っている者を全て取り込んだとしたら……80万ほどじゃの」

 

魔王の能力値を予測したリューが重々しく呟く。

現在のウルの能力値はナーシャを取り込んだことで21万ほどだが、魔王と戦うためには強化魔法を使う前提でも後20万ほど能力値を上げなければならない。

それがどれほど困難な事か分かるため、リューですら険しい表情を浮かべてしまう




魔王ソフィアの能力って結構考えて作ったのに、ブリ〇チに似たような能力のキャラがいたなんて……
後から知ってショックを受けたけど、設定変えれないのでこのまま行きます
次話はできるだけ早く更新できるよう努力します
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