6つ目の要を破壊してから1週間近くが経ったが、ウル達は殆どその場から動けていなかった。
これくらいの時間があれば次の要の場所まで移動できるのだが、魔王からのアクションを警戒して奇襲されにくい地形や戦いやすい場所などを選びながら移動しているためかなり遅くなっている。
「流石にこれだけ仕掛けてこないともう仕掛けてこない気もするけどね」
日が陰ってきた時点で行進を止め野営の準備をしながらシャルロットはため息を吐く。
安直な決めつけは危険だと分かっているが、必要以上に神経を尖らせた状態を維持してかなり疲弊が溜まっているのも事実だ。
「これも強力な結界やけど、気休めにもならんしな」
キアラも周囲に幾重にも結界を張り巡らせながら疲れたように言う。
超高位化した魔王を止めれる結界など存在しない。
仮にあったとしても毎日発動できる代物ではないだろう。
「なにか行動を起こしてくれれば私達も動きやすくなるのですが」
それだと後手に回ってしまうことになるが、行動が全く予想できないよりは断然ましだ。
そんな事をぼやきつつイーは食事の準備を進める。
リリスにウィラやウィズは当然でスーやシーまで手伝い大量の料理を作っている。
盛り付けや食器の柄まで拘るので人手が要るのだ。
本来なら食事もせず睡眠だけとって警戒を続けるべきなのだが、こうやって必要以上に休息をとらないと体はともかく精神的疲弊で参ってしまう。
特にウルは"瘴気耐性"でほとんど影響を受けないとはいえ、負の感情の塊ともいえる環境に身を置いているのだから、いつも以上に負の感情を溜め込んでしまう。
「でも、みんなと一緒においしいご飯をたくさん食べられるし、リーネはイヤじゃないよ」
リーネは音符でも付きそうなほど気楽な調子で笑顔を見せる。
勿論、リーネもこの状況の不味さは分かっているが、生い立ちのせいでネガティブな感情を心の奥底に押し込む性格になっているため、どんな状況でもポジティブな思考が表面に出るのだ。
そしてそれは悪いことではない。
「そうだね、悪いことばかり考えても気が滅入るだけだしね。休む時はしっかり休むべきだね」
シャルロットもそれに乗っかる形で重たい空気を払拭するように明るい笑みを浮かべ、鼻歌交じりに調理を始める。
「シャルロットさん。今日のスープは何?」
「今日はシチューだよ」
ウィラの質問にシャルロットが答えると、お子様組の二人は目を輝かせる。
まだ小さい二人は具材がたくさん入った甘く温かい料理が好きなのだ。
「この肉はなかなか質が良いです」
「この魔獣の肉ではかなり当たりの食材ですね」
「これは栄養を逃さないようにじっくりと熱を通すべきです」
「では膜で包んで蒸し焼きにしましょう」
スーとシーは脂ののった肉を見ていつもよりテンション高めで調理法を相談し合っている。
現在は自分で魔力を殆ど生成できない人造天族組は魔力への変換効率がいい動物の肉を好んでいるのだ。
「ウィラ、話してばっかりじゃなく手伝って」
「ごめんね」
野菜や果物を水洗いしているウィズに注意されてウィラは照れくさそうにしながら洗い終わった物を切り分けていく。
基本的に二人は味付けは殆どせず、素材だけの味で最大限おいしくなるような組み合わせてサラダを作っている。
これは森族組の好みに合わせてのことだ。
「……」
一方、イーはワイワイとしながら調理している他と違い、一言も発さずに真剣な表情で魚に下味を付けていた。
それもそのはずで、魚料理はウルの好物だからだ。
ウルは濃い味付けより淡白な味を好む。
森族組と違って素材そのものの味よりは多少味付された繊細な味の方が好きなので、自然と魚料理をよく食べるのだ。
だから、魚料理を担当する時は皆いつも以上に気合を入れて調理している。
「ウチはお酒に合えばいいんやけどね」
結界を張り終えたキアラは様々な酒をミックスして好みの味に近いカクテルを作っている。
既に何杯か飲んでるようで、頬を上気させ機嫌が良さそうだ。
「あまり酔いすぎるなよ」
ウル達が寝ている間は前から睡眠を殆ど取らない生活をしていたリューとキアラが見張りをしている。
いくら酔おうがその気になれば一瞬で酔いを醒ませられるが、深く酔うほど醒めるまでの時間が長くなる。
リューはキアラに釘を刺しつつリーネに呪術の解説をする。
「リーネはおいしければ何でも好き!」
リーネはリューの説明に頭をこんがらがせながらも、ちゃっかりと話に混ざる。
「それは同感じゃが、さっき説明したことを忘れてるようじゃの」
「ひゃっ」
リューのこめかみに血管を浮き上がらせた笑みを向けられ、リーネは半泣きになりながら呪術の練習をする。
「まったく」
リューはため息を吐きつつもおいしそうな匂いに舌づつみを打つ。
本来食事を必要としないので、食べるならおいしいものを食べたいと思うのはリーネと同じなのだ。
それぞれがそれぞれの事をしながらも、しっかりと一つの輪を作っている。
そんな雰囲気の中、調理は進んでいく。
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和気あいあいとした食事が終わり、ウルはリーネを連れて少し離れた場所に移動する。
最近ウルはリーネとすることが多いのだが、リーネは意外と外でするのが好きだ。
正確には温泉や森の中、夜空の下などの癒される場所でするのが好きなのだが。
「ナーシャよ、具合の方はどうじゃ」
リューは二人が離れてから暫くしたタイミングでナーシャに話しかける。
「あ……は、はい……イー様が……て、手当てを……して、下さった……ので、あ……問題……ない、です……」
ナーシャは相変わらずオドオドとした様子で答える。
「
「え……あ、私……の、命を……救って、下さった、お方で……私の……ご主人様、です」
「ならばそれ以外の者たちは」
「ご、ご主人様の……お仲間、で……」
しばらく待ってもそれ以上の答えが返ってこないので、リューはため息を吐きつつ顎でついてくるように命じる。
「あ……あの……」
「…………」
ナーシャは不安そうな声でリューに話しかけてくるが、リューはそれを無視して茂みの奥へ進んでいく。
そしてしばらくしてから足を止めて声を出さないようにと人差し指を口に当ててから茂みの先を見るように指をさす。
「ッ!!!??」
リューに指示されるままに先の様子を見たナーシャは思わず声を出しそうになり、慌てて両手で口を塞ぐ。
そこにはウルの肉棒で秘所を突かれ、快楽に狂っているリーネの姿があった。
「主様が眷族と共に能力値を上げられることは聞いておるじゃろ。あれがその方法じゃ」
リューは顔を真っ赤にして目を白黒させパクパクと口を閉じたり開いたりしているナーシャに淡々と語り続ける。
「主様と眷族はまぐわうことで力を得、眷族が得た力も主様に還元される仕組みじゃ」
「あ、え、あ……」
「ああやって主様に体を委ね、精を身に受けることも眷族の務―――」
そこまで言ったタイミングでウルがチラリと視線を向けてきたのでリューは言葉を詰まらせる。
ウルは仲間に見られた状態で性交をすることもあるので、見られることに抵抗があるわけではない。
しかし、二人っきりで交わっている処に水を注されて咎めるような目付きをしていた。
リューは後で怒られそうだな、などと思いながらそそくさと逃げるようにその場を立ち去る。
「あ、あああ、あの……リュ、リュー様……」
「なんじゃ」
「な、ななな、っ、なん、で……あ、ああの……」
「なぜあの光景をオヌシに見せたかか」
「ははは、はい……」
まだ顔を真っ赤にして頭から湯気を出しているナーシャにリューは人の悪い笑みを浮かべながら答える。
「オヌシも主様の眷族になったのじゃ、いずれは主様の相手をする時も来るじゃろう」
「あ、あ……わ、私は……こ、殺さないで……いただける、なら……なんで―――」
ナーシャは言葉の途中で口を紡ぐ。
いや、正確にはそれ以上言葉を発することができなくなったのだ。
「っ……ぁ……ぁっ……」
いま、ナーシャは巨大な竜に牙を突き立てられ、少しでも力を入れられれば全身を粉々に噛み砕かれる。
そんなイメージを鮮明に思い浮かべていた。
「やはりその程度か」
そのイメージの巨竜たるリューが底冷えするような声を発しながら近付いてくる。
その一歩一歩に牙が体に食い込む感覚が伴う。
「オヌシは確かに主様と眷族契約を結ぶことができた」
そしてついにリューが目の前で立ち止まり、両手でナーシャの顔を固定して顔を反らせないようにする。
「確かにその時は主様に全てを捧げる意思があったのじゃろう」
ナーシャの瞳を覗き込むリューの目はドロドロとした暗い光を宿している。
「今も眷族契約の強制力でその気持ちはあるのかもしれん」
ナーシャの足はガクガクと震え、立っている事さえできず膝から崩れ落ちる。
「逆に言えばっ強制力に頼ってその程度ということだ」
リューの両手によって固定され倒れる事さえできず、ナーシャはガチガチと歯を鳴らす。
「主様が死ねと命じれば契約によって自害はするだろう」
ナーシャはリューの冷たい瞳から視線を逸らすこともできず、恐怖で顔を引き攣らせながら涙を流す。
「だが、主様の命令がなければ自分で死を選ぶという考えがまるでない」
リューの放つ重圧に呼吸すらできなくされ、ナーシャは苦しそうに喘ぐ。
「
顔を掴む手に万力のような力が籠められ、ナーシャは股間から生暖かい液体を出して辺りを濡らしていく。
そんなナーシャのことなど一切関心を持たず、リューは最後の一言をゆっくりと、しかし確固たる意志を持って言う。
「殺すぞ」
その時、ナーシャの世界は止まった。